夢の中で ” 虫 ” が登場することがあります。
虫と言えば、蝶のように美しい存在
もあれば、蜂のように危険な存在、
ゴキブリのように不快な存在もいます。
また、見たこともない模様の虫や、
巨大な虫、何かと何かが合体したような
奇妙な虫など、現実には存在しない生物が
登場することもある。
それら実在しない昆虫は、
どのように解釈すべきでしょうか?
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奇妙な模様の蜘蛛
次は、筆者自身が見た夢の一例です。
朝、目を覚ますと、布団の上に
拳ほどの大きな蜘蛛がいて、自分の
右腕に糸を巻きつけようとしている。
それを必死に振り払う。
蜘蛛は黒と青色のストライプ柄の
奇妙な模様。
夢占いでは、” 蜘蛛 ” は不快な出来事の
訪れを暗示すると言われます。
また、シチュエーションによっては、
良い知らせの予兆とも言われている。
さて、良いか悪いかで言えば、
この夢は、悪い夢ということになります。
それは、夢占いの項目を調べて、
不吉な解釈が載っていたからではなく、
単に、この夢を見た筆者が不快に
感じたからです。
*
さて、個人的に不快に感じたから、
という浅はかな理由だけで
判断してしまってよいのでしょうか?
本来なら、しっかりとした根拠に基づき、
誰が解釈しても同じ答えを導き出せる
ことが適切な夢解釈だと。
確かに、個人の勝手な感想で
答えがコロコロ変わるとしたら、
何が正しいのかが分かりません。
しかし、残念なことに、実際は、
夢の意味は、人によってコロコロと
変わるのです。
例えば、朝に蜘蛛を見る夢は、夢占いでは
良い知らせが来る暗示とされていますが、
通勤時、どこからともなく小さな蜘蛛が
飛んできて、あなたの肩に着地する
という夢を見たとして、
それが朝の設定だったとしたら、
それは、
幸運の兆しと判断すべきでしょうか?
重要なのは、
あなたがその場面で何を感じたのか・・
その蜘蛛を見て、
” あら、かわいい ” と思ったのか、
もしくは、その瞬間、体をのけ反らせて
振り払ったのか、それによって
解釈が分かれるということです。
夢の作り手である潜在意識は、
自ら用意したその蜘蛛が
何を意味しているのかを知っています。
つまり、肩に着地したのが、蜘蛛に例えた
別の ” 何か ” であるということを
知っているのです。
そして、潜在意識とは、
あなた自身でもある。
*
これは蜘蛛の解釈に限った話ではなく、
夢解釈全般に言えることです。
夢を見た本人の ” 感覚 ” が、
それを読み解く鍵となる。
なぜなら、夢で描かれる全てが
” 感覚 ” によって構築された世界だから。
主観によって作られた世界
夢とは、
その人の中にあるイメージの集合体です。
そして、それは、
” 主観 ” によって作られたもの。
主観とは、
個人の感覚でとらえた認識そのものです。
簡単に説明すると、あなたは
庭先で一匹のチャバネセセリを見かける。
それは、セセリチョウ科に分類される
蝶の一種で全体が明るい茶色です。
しかし、昆虫に詳しくなかったあなたは、
それをてっきり蛾だと思い込んでいた。
その晩、夢にその蝶が登場したとしたら、
そのイメージは ” 蛾 ” として
登場しているのであって、
” 蝶 ” という扱いにはならない。
現実世界におけるあなたの誤認識は、
夢の世界では、事実です。
*
さて、” 蛾 ” が登場する夢は、
夢占いでは不吉な夢の代名詞のように
扱われていますが、もし、あなたが
夢の中に登場したそれを見て、
次のように感じたとしたら、どうでしょう?
” あ、これ見たことある。
こんな綺麗な茶色の蛾もいるんだ ”
それが、蝶であろうと、蛾であろうと、
あなたが、それを見て感じた感覚が
真実です。
潜在意識にとって、
それが何科に属するものなのかは、
どうでもよいのです。
ただ、あなたに
” 今まで見過ごしていた美しさ ” に
気づいもらいたかっただけ。
無論、美しさとは、チャバネセセリの
羽の色のことではありません。
それは、あくまで潜在意識が思いついた
” 例え ” です。
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早朝のホームで
では、話を蜘蛛の夢に戻しましょう。
まず、筆者は今回の夢を見て、
とても不快に感じました。
実際に夢の中でも、腕を振り払って
蜘蛛を遠ざけようとしています。
ここで気になるのは、
蜘蛛の黒と青の奇妙なストライプ模様。
もちろん、実際には存在しない蜘蛛で、
明らかに筆者が作り出した架空の生物だった。
ただ、夢を見た直後は、
なぜ、潜在意識が単なる蜘蛛ではなく、
奇妙な模様の蜘蛛をキャスティング
したのか、分からなかったのです。
その時は、気味が悪い
という印象しかありませんでした。
*
それから数日ほど経ち、用事があって
とある大きな駅を訪れた時のことです。
乗車予定の列車が来るまで、
少しばかり時間があったので、
ベンチに腰かけて待つことにしました。
早朝ということもあり、睡眠不足のせいか、
何度もあくびをしていた。
荷物を足元に置いて。
しばらくは、睡魔に耐えながら
意識を保っていたのですが、
ふと、右側に人気を感じ、視線を向けると、
いつの間にか背広を着た中年男性が
座っていた。
駅のホームに人気は無く、
他にも空いているベンチはあったのですが、
なぜかその男性は、筆者のすぐ隣、
ちょっと肘を動かせば触れる程度の
至近距離に座っているのです。
妙に不自然に感じました。
それから、彼の胸元に目が止まった。
ネクタイの柄を見て、
夢の中の蜘蛛を思い出したのです。
それは、全く、同じ模様では
ありませんでしたが、何となく、
あの蜘蛛の模様にも似た青と黒の柄。
筆者は静かに席を立つと、
その場を去りました。
” 思い過ごし ” という事実
結局、それらしい出来事は
何も起こらなかった。
あの男性が、
なぜ、筆者の隣に座っていたのか、
それは、今でも分かりません。
筆者の思い過ごしなのかもしれない。
実際、夢にまつわるエピソードには、
こういった出来事との関連性が
はっきりしないことは、よくあります。
先ほども言ったように、夢は、その人の
” 主観 ” を描いているだけなのです。
今回のケースでは、筆者が駅で出会った
男性に不信感を抱いたことには
間違いありませんし、
その感覚が発端となった。
実際に、手荷物を盗まれるというような
被害が起こらなかったとしても、
男性にそのような意思が初めから
無かったにしても、
結局、夢に描かれるのは、筆者が
どう受け止めたかという主観なのです。
それが、暗示として夢に表れた・・
*
夢とは、出来事そのものを描く
わけではなく、出来事に対する
個人の ” 感想 ” が描かれるのです。
今回の夢では、蜘蛛のストライプ柄と、
男性のネクタイの柄は似てはいましたが、
厳密には違っていました。
これも、結局は、
筆者の中のぼんやしした ” 印象 ” が
再現されているだけなのです。
もしくは、気味悪く感じた奇妙な模様は、
” 疑わしさ ” や ” 不信感 ” という
感覚を映像として表現した結果だった・・
そう解釈するならば、
この夢における蜘蛛は、筆者にとって、
” 疑わしき存在の象徴 ” だったのかもしれません。
*
さて、夢の中に
実在しない生物が登場した場合、
どう解釈すべきでしょうか?
今回のエピソードでは、
実在しない蜘蛛を取り上げたわけですが、
それが、蝶であれ、カタツムリであれ、
謎の生物であれ、
それらは、夢を作った本人の ” 主観 ”
によって再現された存在だということを
頭の隅に入れておく必要があります。
その生物に何を感じたのか、
まず、自分の感じた ” 感覚 ” を
もう一度振り返ってみてください。
それを見て ” 触ったら噛まれそう ” とか、
” 日の当たらない場所で生息していそう ”
” 捕まえたら高値がつきそう ” など、
何か感じることがあれば、そこから
分析を始めてみてもよいかもしれません。
そして、その虫は何らかの例えである
ということを踏まえながら、
自身に心当たりのありそうな願望や出来事を
洗い出していく。
*
また、架空の虫に対する印象は、
色彩に対する印象にも似ています。
例えば ” 赤 ” と言えば ” 情熱 ” と言った具合に
色から連想する言葉がありますが、
一体、なぜ ” 赤 ” が ” 情熱 ” なのか?
と聞かれても、
” 何となく ” としか答えようがありません。
そこに明確な根拠など無い。
しかし、そう感じてしまった以上、
その感覚に基づいて夢は作られる。
潜在意識は、私たちに理解出来るように、
論理的範囲、言葉で説明できる範囲で
夢を作ったりしてはくれない。
夢は頭で理解するために
作られるものではなく、
感じるために作られるのです。
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