夢には、様々な人物が登場します。
そして、
それらの人物一人一人に意味がある。
なぜ、その人物が登場したのか?
なぜ、その配役なのか?
また、登場するはずの人物が、
あえて登場しないといった形で
メッセージを伝えるケースもあります。
なぜ、いるはずの人がいないのか?
登場人物のそれぞれの意味を探ることで
その夢が何を伝えたいのか、
読み解くためのヒントになるのです。
*
とりわけ、” 家族 ” が登場する夢は、
日常的に近い存在であるということから、
他の夢に比べて、
比較的見る頻度は高いでしょう。
また、家族とは、
” 最も自分に近い他者 ” と言うことも出来る。
他人でも無く、自分自身でも無い
” 家族 ” という特別な存在。
そして、両親は自身のルーツでもある存在。
もし、夢の中で、
この ” 特別な存在 ” が登場した場合、
どのように解釈していけばよいのでしょう?
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夢の中の ” 両親 “
次は、とある受験生が見た夢の一例です。
部屋で歴史の漫画を読んでいる。
父親が部屋に入ってきて怒鳴る。
” 勉強はしたのか? ”
向こうの方で母の声がする。
” いいじゃないですか、たまには ”
ストーリーとしてはシンプルな構成で
何か日常的な風景が
そのまま夢になったように見えます。
この夢には、三人の人物が登場します。
自分、父、母。
父が部屋に入ってきて、
漫画を読んでいる自分を怒鳴るという場面。
この夢を見た彼女の話では、
父は心配して様子を伺うことはあるが、
夢の中のように部屋に来て怒鳴るということは、
まず、ありえないと言います。
むしろ、それは母の役目だと。
*
一見、日常的に見えるこの夢の最も
不可解な部分は、父と母の態度が
逆転しているという点です。
無論、夢の中のこの奇妙な設定に気づけるのは、
いつもの両親の態度を知っている彼女自身だけ。
夢の作り手である潜在意識も、
彼女にだけ分かる設定で、
あえて夢を作っています。
さて、なぜ、彼女の潜在意識は、
両親の態度を逆転させているのでしょう?
” いつもどおり ” を壊す
この問いについて考える前に、
もう一つの疑問について考えてみましょう。
それは、なぜ、部屋に来て、
漫画を読んでいる自分を注意する役が、
母ではいけなかったのか?
という点です。
いつもどおりでは、
いけなかったのでしょうか?
*
この夢を作ったのは彼女自身です。
つまり、彼女にとって、
夢の中の状況がいつもどおりでは
いけなかったのです。
彼女の潜在意識は、いつも
小言ばかり言う母ではインパクトが小さく、
自分自身に対する警告としては
効果が薄いことを知っています。
より強い警告を与えるためには、
いつもは怒らない人が怒った方が効果がある。
そして、その役にピッタリなのが、
日頃は温和な父です。
では、潜在意識はこの逆転の効果によって、
彼女に何を警告しようとしているのでしょう?
無論、夢の作り手である潜在意識は、
彼女そのものですので、結局のところ、
それは、自分自身に対する警告となります。
つまり、今の自分自身を戒めようとしている
” 心の声 ” というわけです。
*
筆者は、彼女に
受験勉強の状況を尋ねました。
” 受験勉強の方は順調ですか? ”
話によると、最近になって集中力が続かなく
なってきているということでした。
” 勉強をしなければ ”
という気持ちの焦りあるが、それが、
実際に行動に結びつかない煮詰まった状態。
” リフレッシュが必要なのかもしれない ”
と彼女は言いました。
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控えめな擁護者
この夢は、勉強が思うように進んでいない
自分を戒める気持ちが、
父の姿を借りて自分を責めています。
母ではなく効果的な父をキャスティング
しているという点からも、
彼女の中の焦りの強さが伺えます。
ただ、夢には、姿こそは出てきませんが、
母が声だけの出演として登場しています。
” いいじゃないですか、たまには ”
そして、なぜか、漫画を読んでいる彼女を
控えめに擁護している。
自分を戒める気持ちとは裏腹に、
勉強をしたくないという気持ちを、
母に代弁させているのです。
ただ、声だけの出演ということで、
部屋に入ってきた父を制するほどの
インパクトはありません。
この控えめな演出は、
” 自身を戒める心の声 ”
に対するささやかなる抵抗なのです。
*
そして、両親の態度を逆転させている
理由のもう一つは、父と母、
二人の関係があります。
彼女の家庭では、日頃、母が主導権を
握っているように見えますが、
大事なことを決める時は、最終的に
父に実権があることを彼女は知っています。
潜在意識は ” 勉強しなければ ”
という自身を戒める心と、
” 怠けたい ” という抵抗、
二つの感情の代弁者を割り当てる際、
より優先度の高い戒めの心を父に、
ささやかなる抵抗を母に割り当てています。
二つの感情の割合が、丁度、
両親の主導権の割合と一致していたのでしょう。
これも、家族でなければ分からない
家庭内の事情を前提にしたキャスティングです。
*
この夢で描かれている ” 勉強への焦り ” と、
” 怠けたい気持ち ” の葛藤は、
夢の中で彼女が読んでいる漫画にも垣間見えます。
ただの娯楽漫画でもなく、
歴史の参考書でもなく、
” 歴史の漫画 ” という中間的なアイテム。
” 怠けたいけど、勉強もしなきゃ ”
という彼女の矛盾した気持ちを表しています。
家族にしか分からないこと
さて、今回は夢の中の父と母は、
彼女の中で葛藤し合う二つの気持ちの
代弁者として登場しています。
そして、” 家族 ” であるからこそ
知っている家庭の事情を巧みに、
夢の演出として取り入れ描いている。
*
家族が登場する夢で大事になってくることは、
その家族でしか分からない習慣や、価値観、
考え方、夫婦関係、兄弟や親子の関係など、
” 家族ならではの文化 ” を理解することです。
なので、内情を知らない第三者が、
誰かの見た家族の夢を解釈するのは
とても難しい。
長い間、一緒にいる人には遠く及ばないからです。
*
夢占いの項目には、
” 母 ” や ” 父 ” という項目もありますが、
まず、こうした一般的な解釈を当てはめるよりも、
自分の家族について、一度、
振り返ってみることの方が大切です。
現実世界でもそうであるように
夢の中に登場している ” 家族 ” は、
間違いなく唯一の存在なのです。
そして、特別な存在には、
特別な意味が与えられている。
それは、家族であるあなたにしか、
分からないことなのです。
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