夢の細部を見落とさないために|” 道路 ” に関する夢

大抵、夢とは、
何となくぼんやりと見るものです。

そして、目覚めた時に
細かな設定は忘れ去られていく。

夢の細部は実はいい加減に作られていて、
そもそも意味は無いのだから無視して
構わない・・とは言えません。

” そんな細かなところまで
計算されているはずがない ”

本当にそうでしょうか?

確かに計算はしていないかもしれない。

潜在意識が作る夢とは、
どちらかと言えば本能に近い部分ですから、
もっとピュアな動機によって作られる。

それは、自然界の仕組みと同じです。

鳥の翼は精巧な仕組みで作られている。
それ故に、美しい一貫性があるのです。

夢とは、あなたの心が生み出した ” 自然 ” です。

細部にまで作られた理由がある。

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削ぎ落とされる情報

次は、社会人になったばかりの
若者が見た夢の一例です。

車を運転している。
一本道の細い側道から
大きな道路に差し掛かる。
 
大通りは交通量も多く、
車がスピードを出して走っている。
 
タイミングが取れず、
大通りに入ることが出来ない。

今、夢の内容を簡単にお伝えしましたが、
文章で書くと数行です。

しかし、夢を見た本人には、
この内容には書かれていない
もっと多くの情報が伝わっているはずです。

筆者が、鑑定の依頼を受ける場合、
夢の内容を最初に伺いますが、内容を
完璧に説明してくれる依頼者は皆無です。

補足の聞き取り調査は必須です。

多分、依頼者は
自分なりに簡潔に話をまとめるため、
特に重要でないと判断して、
情報の一部を無視したりするのでしょう。

その時に細部の描写が削ぎ落され、
多くのヒントを失ってしまう。

ストーリーの大筋だけである程度、
夢を読み解くことも可能ですが、
時に細部を見落とすことで
全く違った解釈になってしまうこともある。

また、細部によって
大筋で行った解釈に矛盾が無いかを
確認するという意味でも必要です。

*

例えば、あなたが嫌いな人物と職場で
会議をしている夢を見たとしましょう。

そこだけを見れば、日常業務が夢になった
だけのように思えます。

解釈としては、
職場でのストレス原因の視覚化、
仕事を休みたいという心理の表れ
といった感じでしょうか。

あるいは、嫌な奴と一緒に仕事を
しなければならない出来事の暗示。

そして、その人物が胸元に見慣れない
ブローチをしていることや、
髪型がいつもと少しだけ違って見えたとしても、
それを ” たいして重要でないこと ”
として片づけてしまう。

見慣れないのは、
ブローチや髪型ではありません。

あなたが嫌いな人物の違った一面を
発見したのです。

しかし、それを認めたくないという気持ちが、
見たことの無かった別の一面を
ブローチや髪型に置き換えた。

” 彼女がいつもと違って見えるのは
髪型のせいよ ”

もしかしたら、
その人物の違った一面を発見し、
見方が変わる出来事があるかもしれません。

このように潜在意識は、
表立って描きたくない事実を
小さな演出に隠蔽することがあります。

とりあえず大まかに

では、話を戻して、先ほど紹介した夢を
大まかに解釈してみましょう。

この夢を見た男性は、
学校を卒業したばかりの
これから社会に出ていく若者です。

そして、最近、
自動車免許を取得したばかりでした。

この状況から考えると、
車の運転を憶えたばかりの初心者が
路上で苦労している単なる日常を
描いているようにも見えます。

しかし、この夢は単なる彼のドライブ技術を
伝えているわけではありません。

もう少し
大きな視点をテーマに描かれた夢です。

” 大通り ” は、社会を表し、
” 一本道の側道 ” は、
これまでの学生生活を象徴しています。

行き交う車は第一線で働く社会人たち。

大通りに入っていくことが出来ない。

つまり、
” 自分はこの目まぐるしい社会の流れに
うまく乗っていけるのだろうか? ”

という彼の中の不安が
この夢に表現されているのです。

夢の内容が今回のようにシンプルであれば、
このように大まかな解釈でも、
ある程度のことは分かります。

と言っても、細部をもう少し観察することで、
より深い解釈が可能かもしれません。

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細部の観察

では、次は細部を見ていきましょう。

その前に、
そもそも、細部とは一体、何でしょう?

夢を構成しているのは、登場人物、行動、
セリフ、GBM、場所など、形として捉える
ことができる要素だけとは限りません。

例えば、家族でドライブに行く夢で
なぜか父親だけが不在というような、
当然、登場するはずの人物が
登場しないということにも意味はある。

夢の中のある場面で感じた感覚、
頭を過った考え、憶測、認識なども、
夢を構成するパーツの一つです。

*

今回の夢についてはどうでしょう?

彼は夢の中で、
” 側道 ” は、一方通行の認識があった。

別に標識があったわけでもなく、
単にそう思い込んでいたというだけですが、
この彼の認識も ” 側道 ” を
どう解釈するかのヒントになります。

彼がこれまで過ごしてきた ” 学校 ” は、
よい成績を修めるという目的があり、
進むべき方向が決まっている場所。

止まることはあっても戻ることはない。

夢は学生生活を ” 一方通行の側道 ”
として表現しています。

*

大通りについてはどうでしょう?

彼に詳細な状態を尋ねると、
大通りは、8車線ほどの大きな道路で、
全ての車は右側から左へ走っていく状態
だったと言います。

つまり、対向車線が無い状態ですが、
この時点で、夢の舞台が
架空の場所であることが分かります。

” 対向車線の無い8車線道路 ” は、
社会に出ていく彼に、いくつかの
選択肢があることを示している。

どの車線を走るかは彼次第。

対向車線が無いというのは、
どの車線を選択しても、最終的には
全員が同じ方向に進んでいくという
彼の社会に対する認識を表しています。

つまり、社会人が皆、より良い暮らしや
幸せを手に入れるために、
明日に向かって走り続けている姿を
” 大通り ” の情景に置き換えている。

そうなると、それぞれの車が向かう先、
彼から見て左側にあるものは、
” 明日 ” であり、” 未来 ”
と解釈することが出来ます。

*

彼は、その左手から
太陽の明るさを感じたと言います。

大通りを出て、
流れにうまく乗ることが出来れば、
より明るい将来が待っている。

そんな彼の期待感が日差しの方向に
表れています。

セッションの終盤、
彼は次のような質問をしました。

” 夢の中の8車線の道路は、
僕が見ている社会なんですよね?
ということは、
実際の社会とは違うということですか?”

” そうですね。
あくまで主観を描いているので
現実と違っているということはありえます ”

” つまり、明るい未来が
待っているわけではない? ”

” 確約された未来ではありません。
潜在意識が感じ取った範囲では、
明るい未来を描けているという
ことだと思います ”

” それは、少し残念ですね。
良い夢かと思ったんですが・・ ”

” ところで車間距離はどうでしたか? ”
 
” え、車間距離・・? ”

” 全く入れそうになかったのでしょうか? ”

” そうですね。けっこうなスピードで
車が走ってくるので・・でも、
入れそうなタイミングが来て、
行ける!と思った時に目が覚めました ”

潜在意識が最も伝えたかったこと、
それが、最後に彼が感じ取った
” 大丈夫、行ける! ” という感覚
だったのでしょう。

ある意味、この夢は潜在意識からの
エールだったのかもしれません。

バランスよく観察する

もし、あなたが何か夢を見たなら、
細部をよく観察してみましょう。

目に見えるものだけでなく、
そこで感じたことや、
思ったことなども観察対象です。

細かな部分を思い出すことが出来ない
場合もありますが、夢を思い返すという
習慣が身につくと細部にも目が届く
ようになります。

これは、技術というより
習慣的な話だと思います。

細かな気遣いが出来る人は習慣として
そういった行為を自然に行っている。

目をギラギラさせて、
常に気遣いポイントを探し回っている
わけではありません。

つまり、” 慣れ ” です。

*

無論、細部も含めた夢の内容の全てを
解明するということは、
とても時間のかかる作業です。

一つの夢に対して数日間かけて、
ようやく7、8割が読み解けるといった
ケースもある。

いずれにせよ、
100%を求めるべきではない。

それを求めだせば、
身動きが取れなくなってしまいます。

細部に目を配れと言いつつ、
完璧にすべきではないと言うのは
矛盾しているようにも聞こえますが、
良きところでバランスをとりながら、
やり過ぎない程度で観察する。

” やり過ぎない程度 ” とは、
どれぐらいなのかは人によるのでしょう。

それは、自身で見極めるしかない。

*

夢解釈とは、テスト問題とは違います。

読み解いて結果を知ることが
最優先事項ではありませんし、
解けなかったら不合格というわけでもない。

大切なのは夢について考える中で
自身について、自身の心の状態について、
振り返るという内省的作業です。

” ああ、今、自分はこういう状態なんだ・・ ”

潜在意識は、夢という形で
冷静に自身を客観視するための
きっかけを提供しているのです。

 

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