誰もが、” 幸せ ” を求めています。
多くの人が、それを求める割りに、
以外と ” 幸せ ” について誰かと日常的に
語り合うことはない。
なぜなら、幸せを語る上で、自分が
それをまだ手に入れていないことを公に
しなければならないから。
誰だって、
” ああ、この人は不幸だね。可哀そう・・ ”
とは思われたくない。
また、” 幸せ ” というテーマが漠然と
し過ぎていて、語り合うにしても大して
内容のある会話にならないでしょう。
” 私の幸せは、
理想の異性と結婚することです ”
” ああ、そうですか・・ ”
無論、何を持って ” 幸せ ” なのか?という
哲学的な話を誰かと論じ合うこともない。
ただ、多くの人は、その ” 幸せ ” という
ものを人生のメインテーマに置き、
常に探し求め、旅をしているのです。
つまり、” 幸せ ” という一大テーマに、
誰もが語り合う友も無く、一人きりで
取り組んでいるという状況。
だから、もし、あなたにそういったことを
打ち明けられる友や家族がいたならば、
それは、とても幸運なことです。
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” 幸せ ” のイメージが足かせになる
さて、” 幸せ ” とは、一体、何でしょう?
例えば、理想の相手と結婚し、家庭を作り、
大きな家に住み、経済的に制約の無い生活が
送れることが ” 幸せ ” だと言う人も
いるでしょう。
もしくは、ドラマや映画で登場する誰かの
人生を指して、
” これが私の求めているものだ ”
と言う人もいるでしょう。
キャリアで成功し、社会的地位を築くことが
幸せだという人もいます。
それぞれ、理想のイメージを語りながらも、
多くの人は心の底では、それが100%実現
するとは思っていない。
私たちは ” 現実 ” を知っています。
理想の相手と一つ屋根の下で暮らし始めた
としても、いつまでも理想のままでいて
くれるわけではないことを知っている。
ドラマや映画、もしくは、実在する成功者の
影を追いかけ続ければ、いつか、脚本には
描かれていない不都合な事実を突きつけ
られることを知っている。
キャリアで成功するために、何かを
捨てなければならないことを知っている。
そして、失われたそれは永久に戻らない
ことも知っている。
だから、私たちは突き詰めれば壊れてしまう
” 幸せ ” のイメージを曖昧な状態にして
残しておく。
希望を失わないために。
*
それは一見すると、単なる現実逃避にも
見えます。しかし、この現実逃避が私たちに
恩恵をもたらしていることも事実です。
理想を実現するためには目標の具体化が
大切だということがよく言われます。
つまり、幸せになるためには、明確な
イメージが必要だと。
実際、幸せになりたいと強く願う人は、
幸せに対する明確なイメージを持っている。
それは、ある意味 ” 執着 ” です。
幸せを求める強い気持ちによって、
特定の幸せの形にこだわりを持つように
なる。そして、
” 自分はこうじゃないと幸せになれない ”
という考えを形成する。
それ以外のものを評価せず、受け入れる
ことが出来ない固定観念によって、理想に
ピッタリと当てはまるパズルのピースを
永久に探し続けることになる。
具体的な幸せのイメージが足かせと
なるのです。
自由を失うというリスク
幸せのイメージをぼんやりとした幻想
レベルで留めておくことで、あらゆる
可能性を引き受ける柔軟性が出来る
わけです。
例えるなら、目的地に行けさえすれば、
そこまでの道のりが、飛行機だろうと
高速バスだろうと自分の車だろうと、
どれでも構わないということです。
もし、どうしても飛行機でなければ
ならないというなら、ファーストクラスか
ビジネスか、エコノミーかまでは限定
しないということです。
目的地までのルート全てが完璧に
スケジューリングされていたとしたら、
一つ何らかのアクシデントが起これば、
その全てがあっと言う間に崩れ去ってしまう。
そして、人生にアクシデントは
つきものです。
*
ならば、綿密な計画など立てずに、その場
の状況に流されながら生きて行くことが、
幸せへの近道だと言うのでしょうか?
先ほどはイメージを具体化してしまうと、
結果、自身を縛ることになると言いました。
厳密には、具体化したイメージ、
言い換えるなら、” 明確な目標 ” に
拘束された結果、選択肢を失ってしまう
ことが、私たちを苦しめるのです。
具体化したイメージが、
あなたを苦しめるわけではない。
実行途中で計画の変更や調整が必要ならば、
その都度、組み立て直せば良いだけです。
問題は、その時に変更したり調整するだけの
選択肢が手元に残されているかどうかです。
例えば、高年収の青年実業家と結婚する
ことが出来た幸運な一人の女性に焦点を
当ててみましょう。
彼女は夫との収入の格差があり過ぎて、
家庭内では自分に主導権がほとんど与え
られないことに後から気づいたとしても、
すぐに離婚を決断出来ない。
住む場所、仕事、人間関係、生活習慣、
生活レベル・・これまでの人生設計を
振り出しに戻さなければならない。
一つの理想を実現させるために、周囲の
環境がそれ用にカスタマイズされて
しまった状況が、彼女を拘束し選択肢を
奪うのです。
*
仮に、具体的なイメージを持たず、
状況に流されながら生きていくとしたら、
どうでしょう?
それは、選択を放棄している状態です。
選択を放棄し続ければ、いずれ、
どちらにも転ぶことの出来ない状況へと
追い込まれていく。やはり、最終的に
選択肢を失ってしまう。
イメージを具体化すれば選択肢を失い、
流れに身を任せても選択肢を失う。
自ら選んだ人生に拘束されるのか、
周囲に押し付けられた人生に
拘束されるかの違いに過ぎません。
人が ” 選択する自由 ” を失うことは、
鳥から翼をもぎ取るようなものです。
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本当の意味で望んでいること
彼女には、夫に話していない一つの
秘密がありました。
会社経営をしている夫が、ほとんど帰って
こない新築の家で、彼女は経営学の勉強を
していたのです。
夫の収入に依存し過ぎた今の生活から、
本当の意味で自立をしたいと願っていた。
自分がどこまで出来るのか試したいと
思っていた。
自分の可能性を信じて、彼女は、
新しい選択肢を開拓しようとしています。
自分がどう生きるか、それを選択できる
人生を取り戻そうとしている。
*
仮に、彼女が起業を考えていることを夫に
打ち明けたとして、彼が次のように
言ったならどうでしょう?
” じゃあ、店やってみる? 立ち上げまで
俺が準備するから、その後、お前に任すわ ”
全てのお膳立ては夫が行い、突然、経営者
の椅子をポンと与えられる。
彼女が望んでいるのは、これでしょうか?
きっと彼女は夫の提案に納得しないでしょう。
夫は、次のように言うかもしれません。
” 何で? 経営者になりたいんだろ?
誰が店を用意したかなんて、どうだって
いいだろ ”
彼女は自らの手によって ” 選択 ”
したいのです。
選択した結果、経営者になるというだけで、
経営者なることが目的ではないのです。
*
多くの人が抱く幸せに対するイメージは、
結果的に高い地位に着くことや、結婚し
家庭を持つこと、年収を目標額に到達
させること、大きな家に住むというような
” 目に見える成果 ” を手に入れた状態を
描いています。
彼女のように ” 体験 ” を求める人には、
それら成果は体験した後の ” 痕跡 ” に
過ぎない。
筆者は ” 幸せ ” とは、体験に属するもの
であって、痕跡に属するものではないと
考えます。
つまり、” 幸せ ” を具体的に映像として
イメージすることは、実質、不可能。
翼に怪我をした鳥
もし、” 幸せ ” が ” 体験 ” であると
するなら、それを体験するよりも前に、
脳裏にそれ自体を再現することは誰にも
出来ないでしょう。
仮に、起業を目指して勉強をしている
彼女が、もし、イメージをするとしたら、
市役所に行って開業届けを提出する場面
になるのでしょうか。
それとも、最初の注文が入って、電話対応
している場面になるのでしょうか。
” 幸せ ” のイメージとしては、かなり地味
ですが、それは、結局、間接的な映像表現
に過ぎませんし ” 体験 ” そのものではない。
” 体験 ” とは感覚ですから、思い浮かべる
ものではなく感じ取るものです。
*
だから、” 幸せ ” は、実際に行動し、
そこで何かが生み出され、その現場に
居合わせて初めて訪れる。
自分で立ち上げた事業が始まって、彼女が
実際に最初の注文を受け取った時、映像
としては単に電話の対応をしているだけ
ですが、多分、そこにはひとしきりの
感動がある。
それが、彼女が本当の意味で望んでいた
ものです。
ゆえに、” 幸せ ” とは、実現した後に
思い出して噛みしめることは出来るが、
まだ、実現出来ていない幸せのイメージは、
薄っぺらな空想にしかならない。
それをリアルに感じたいのなら、行動する
以外に ” 幸せ ” に近づく方法は無く、
イメージをどれだけ具体化したところで、
近づくことはできない。
実際に体験するリアルには、
勝てないのです。
*
無論、行動するにあたってイメージ
ではなく、現実的な計画性は必要になる
でしょう。
また、自分が何を求めているのかを
理解しておくことも大切です。
もし、彼女が自分の求めているものが、
経営者になることだと思い込んでいた
としたら、多分、夫の提案を受け入れて
しまうのでしょう。
そして、社長の椅子に座り、心の中の
ぽっかり空いた穴から目を背けながら、
次のように思う。
” 私は夢を実現した。だから、
幸せを手に入れたはずだ。多分・・”
そして、いつか彼女の潜在意識は夢を作る。
翼に怪我をした瀕死の鳥を助けようと
している夢を。
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