家族や知り合いが登場する夢。
夢の中で、なぜか、いつもと雰囲気が
違って見えることがあります。例えば、
顔が少し違っていて別人に見えたり、
態度がいつもと違っていて、
” あれ、こんな人だったっけ? ” と、
今までのイメージと違った印象を受ける
というような。
特定の人に対する夢の中のイメージが、
現実世界のイメージと違っているという
現象は、単なる記憶違いではなく、
あえて仕組まれた ” 演出 ” の一つです。
では、具体的には、
どういった現象なのでしょう?
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片思い
次は、とある男性が見た夢の一例です。
停車中の列車に乗っている。
意中の女性が向かい側の座席に座り、
隣の友人らしき女性と話をしている。
化粧のせいなのか、
何だかいつもより綺麗には見えない。
彼女たちは喋りながら立ち上がり、
列車を降りていく。
日常の風景を描いているようにも
見えますが、彼が日常生活で列車に乗る
ことは、ほとんど無いということです。
つまり、普段は馴染みの無い場所が、
夢の舞台として設定されている。あえて、
この場所を選んだ潜在意識の何らかの
意図が感じられます。
*
筆者は彼に、意中の人であるその女性とは、
どういった関係なのかを尋ねます。
その女性は同じ大学に通う学生で、会話を
したこともなく、ただ、遠くから眺めている
だけで、多分、向こうは自分の顔さえ覚えて
いないだろうと今の状況を説明しました。
つまり、完全な片思いの状態。
そして、彼自身が、かなりの奥手という
ことで、ほぼ、自分の気持ちが相手に
伝わることは永久にないだろうと思っている
ようでした。
彼の恋愛に対する消極的な性格は、この夢を
読み解く一つの手掛かりを与えています。
彼は夢の中で、叶わぬ思いを断ち切るための
努力をしている。
夢の舞台となっている駅は架空のものという
ことなので、象徴的意味合いが込められて
います。
” 停車中の列車 ” という状況を用意して、
意中の人と自分を車内に配置しています。
そして、一旦、配置しておいた意中の女性を
列車から降ろし、彼だけが取り残される状況
を作っている。
*
彼は夢の中で、自分は何か用事があって
別の駅で降りなければならないという
認識だった。
彼の潜在意識は、やもえず、同じ駅には
降りられないという状況を再現したかった。
なぜか?
それが、やもえない事情なら、彼女への
気持ちも諦めがつくから。
” 状況が悪かった。アプローチ
できなかったのは自分のせいではない ”
そんな彼の言い訳が、都合の良い
シチュエーションを設定しています。
この場合の女性が降りた駅は、彼にとって
” 自分とは無関係な別世界 ” を意味します。
いつもと違うイメージ
では、この夢のもう一つの演出。
意中の女性の顔が、いつもとイメージが
違っていたという部分は、どのように
解釈すべきでしょう?
彼いわく女性は、いつもよりも不細工に
見えた。
この不可解な演出は、夢の舞台を停車中の
列車内にしたことの延長線上にあります。
つまり、彼は諦めるために意中の人を
いつもよりイメージダウンさせている。
夢の中で彼女と一緒にいた友人は、彼には
理解出来ないガールズトークを延々と
話していた。
友人は、” 盾 ” です。
意中の人と目を合わせる機会は無かった
という口実を作るための。
そして、二人は、彼に全く気付かないまま
立ち去っていく。彼はその様子を見ながら、
彼女がいつもと違って都会的で、
よそよそしく距離を感じたと言います。
暗く冴えない男が入り込む余地の無い
状況をあえて再現しているのです。
*
さて、この夢は、単に、叶わぬ恋を
諦めるために描かれたものなのでしょうか?
確かに、そう解釈することができます。
ただ、一つ引っかかるのは、夢の舞台が
停車中の列車であるという点。
先ほどは、やもえぬ状況を作るためという
ことでしたが、逆に舞台を駅のホームにして
意中の女性が列車に乗って去っていくという
ストーリーでも目的は達成できます。
しかし、あえて列車内の出来事として
描かれている。
この夢の伝えているもう一つの意味は、
彼は、彼女への気持ちを断ち切って、
前進しようとしているのです。
彼が列車に乗り続けているのは
何か用があって、ということになっている。
用事について尋ねてみましたが、それは、
よく分からなということでした。
つまり、行き先は ” 未確定 ” であった。
停車中の駅は ” 現在 ”
そして彼が向かう先は ” 未来 ”
彼の視点は、同じ場所に留まるという
現在にではなく、未来に向けられています。
夢と現実の境界線
さて、今回は、ある人のイメージが夢の中で
違って見えるというケースを紹介しました。
もし、あなたの夢に登場した人物が、
いつもと雰囲気が違って見えるとしたら、
あなたの中に、違っていなければならない
理由があるということです。
そこには、願望や心理的葛藤など、
様々な要因が考えられる。その一つ一つを
振り返りながら、思い当たる事柄が無いか
探してみましょう。
この夢に限らないことですが、夢の内容
だけで分析していては、その意味を読み解く
ことは出来ません。
今回の夢では、彼の性格、恋愛についての
消極的な姿勢を知ることで、ようやく、
夢が何を伝えようとしているのかを理解
することが出来た。
夢は、現実世界とリンクしている。
夢の世界と現実世界は ” 地続き ” です。
今回の夢を見た彼にとって、動き出そうと
している列車に乗り続けているという
状況は、心の中で起こっている ” リアル ”
なのです。
それは、彼が日々、現実世界で感じていた
ことであり、それに対する彼自身の ” 答え ”
でもある。
*
夢は、人が眠っている間に見た単なる幻影
ではありません。
あなたが起きている時、日常生活で体験
したこと、そこで感じたこと、常に考えて
いることなど、現実世界での出来事が夢の
ストーリーの一部なのです。
ドラマで例えるなら、夢が本編で、
その前日にあった出来事が予告の場合も
ありますし、今日あった出来事が
今夜見る夢でエンディングを迎えるという
可能性もある。
もしくは、数日後に起こる出来事の
エンディングを今夜、夢の中で見る
ということも。
現実と夢、現在と未来、そこには境界線は
無いのです。
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