夢占いが職業として成立しない理由

占いには様々な種類がありますが、その中
でも夢占いは、少々、異色なジャンルと
言えるでしょう。

タロット占い師や風水占い師という職業は
ありますが夢占い師という職業は、あまり、
聞きません。

SNSなどでも、占い師の方は多くいますが、
プロの夢占い師の方を見かけたことは
ありません。筆者が知らないだけなのかも
しれませんが・・

さて、それ以外の占い師に比べて、
夢占い師という職業が浸透しないのは、
なぜでしょう?

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夢占い師が存在しない理由

そもそも、夢占いをするためには、
” 夢 ” が必要です。

占ってもらいたい時に夢をタイミングよく
見るわけではありませんし、占ってもらい
たい内容の夢を見るとも限らない。

恋愛についての相談をしたいが、仕事の
夢を見れば、占えるのは仕事に関すること
だけです。

タロット占いの場合は悩み事を聞き、
カードを切るだけです。占い師によっては
誕生日などを尋ねることもあるでしょうが、
いつでも用意出来る情報です。

夢占いでは占うための夢を見るタイミング
も内容も選べないという難点があります。
その点からも、ビジネスとして成立させる
には不向きなジャンルです。

とは言え、インターネット掲示板などでは、
絶えず誰かが夢の内容を書き込んで回答を
募集したりはしています。夢について
悩んでいる人は、必ずどこかにいるのは
確かです。

仮に需要があったとしても、もう一つ
問題があります。それは、正確性です。

占いの世界では ” 的中率 ” と言われること
もありますが、要するに相談者が満足できる
回答を提示できるかどうかという問題です。

タロットカードで占う場合、タロットの
78枚の絵柄は人生で起こりえるイベント
を抽象化したものです。78枚もあるわけ
ですから、ケルト十字スプレッドで占う
としても、そのパターンの組み合わせは
ほぼ無限です。

とは言え、経験値のある占い師ならば
よく出やすい定番のパターンやベースと
しての解釈方法が確立しており、
あまり細部に入り込まず、人生における
問題を普遍的視点で解釈することで
的の範囲をカバーするというノウハウが
あります。

例えば、出会いが無いという悩みを抱える
相談者に対して求められる答えは、
” 近々、良い出会いがあります ” とか、
” 待っていても縁は来ない。積極的に外出
しましょう ” といった回答でしょう。

細かなことまでをアドバイスすると、
かえって無駄な情報を伝えてしまい依頼者
を混乱させる場合もあるという意味では、
普遍的な視点に立ったアドバイスは
依頼者の理解を助けることになります。

無論、タロットはデタラメだと言っている
わけではありません。それが抽象的な回答
であっても、大まかな方向性を示すことは
できる。ただ、タロットで推測できる範囲
には限界があるというのも事実です。

仮に、出会いに関する夢を見たとして、
夢に描かれていることは、かなりリアル
な事柄です。

逆を言えば、具体的なことを描き過ぎて
いるために抽象的、普遍的視点で解釈する
ことが難しいという側面があります。

少し込み入ったケースを見てみましょう。

10月、ドラッグストアに勤める一人の
女性が、とある男性と出会う。それは
運命的な出会いではなく、お店に訪れた
一般客の一人として。

その男性は、彼女に尋ねる。
” 塩分を摂れるタブレットを探している
のですが・・ ”

彼女は、夏場に熱中症対策のために陳列
されていた某商品を思い出し、次のように
答える。

” すみません。今切らしておりまして ”

” ああ、そうですか・・ ” と言って、
男性は残念そうな表情で店を出ていく。

この出来事の数日前に彼女の見た夢は、
次のようなものです。

8月。店内で働いている。
某商品が大量に入荷されている。

彼女は、なぜ、二か月前に戻っている
のでしょう? 数日後に出会う男性客に
次のように答えるためです。

” ああ、タブレットですね。
こちらにありますよ ”

多分、出来事が起こるまでは、この夢が
とある人物との出会いを意味しているとは
誰も思わないでしょう。しかし、夢の内容
は、その出会いが特定の季節商品に関係
していることを示している。

もし、彼女が夢の性質を知っており、
似た状況が以前にもあったというなら、
夢の中で大量に入荷されたそれを見て、
その商品を買い求める人が来るかも
しれないと、推測することが出来たかも
しれません。

そして、二か月も時間を巻き戻してまで
後悔を取り返したいとするなら、彼女に
とってその出会いはよくある一般的な
利用客ではなかったということです。

もし、この出会いをタロットカードに
よって予想するとしたら、未来の位置に
” カップの2 ” が出たかもしれませんが、
その出会いでどんなやり取りが交わされる
のかまでを知ることは難しいでしょう。

つまり、占いとしての優劣という話では
なく、タロットは普遍的な事柄、方向性に
フォーカスが当てられており、夢解釈は
あくまで夢を見た本人の感情の動きに
フォーカスが当たっているという特性の
違いを理解しておく必要があります。

なので、タロット占い師が多面的な洞察を
得るために、依頼者から夢の話を聞き取り、
独自解釈を加えていくという方法は、
ある意味、有効だと思います。

カウンセリング的側面

” 夢占い師 ” が職業として成立しない理由
のもう一つは、夢が依頼者の人生に
密接に関わり過ぎているという点です。

夢を誰かに伝えるという行為は、ある意味、
人生相談をするためにカウンセリングを
受けているような状態に似ています。

夢解釈するためには、その人のこれまで
体験してきた事柄、それによって培って
きた人生観、思想、抱えている悩み、
そういった内面的なこと一つ一つを理解
しなければならなくなる。

無論、1時間の面会で完了する仕事ではなく、
カウンセリングやセラピーのように、予約
を取って毎週会うといったことも必要かも
しれません。

一人の人間の人生の一部を理解するわけ
ですから、時間的コストパフォーマンスは、
かなり悪くなります。

そして、扱うテーマが普遍的ではなく、
個人的な事柄が中心になりますから、
それを無理やり力業で解釈すれば、有料で
行う占いとしての的中率はほとんど得られ
ないでしょう。

故に、飛び込みで来た依頼者に、頭の中の
データベースから適切な解釈を選び出す
といった単純作業で解決できないのです。

依頼者としては、ネット検索で出てくる
解釈と同じことを言われるなら、自分で
検索した方がよいと思うでしょう。

今は自然言語で回答するAIも登場して
いますから、夢の内容を書き込めば、
一般的な解釈を示してくれるような時代も
すぐそこまで来ているのかもしれません。

いずれにせよ、夢が気になるようなら、
ネット検索すればよいのです。何かしら
情報はあるでしょうから大抵の需要は
それだけで満たされてしまうわけです。

そして、それは自分がいつ結婚できるのか
というような人生の重大テーマに対する
需要に比べると弱い需要です。

夢占いではなく、医学的な視点から夢を
分析することはあります。精神科医が
心理分析の一環として夢を解釈する場合です。
ただ、あくまで治療を目的とした
医療行為の一つですから、夢解釈を職業
としているわけではありません。

唯一、医学としての心理分析には無く、
夢占いだけが持っている特性としては
スピリチュアルな側面でしょう。
精神分析では予知や暗示といったスピリ
チュアルな部分まではカバーしていません。

心理分析と夢占いでは大いに重なる部分も
ありますから、もし、エキスパートを
目指すなら精神科医を志すというのも
一つの方法でしょう。ただ、そこまで人生
の時間を費やすことが出来るなら、職業
として夢占い師ではなく精神科医を選択
するのは当然です。

つまりは、夢を理解することが出来るなら
人の心を理解できるということですから、
人の心に関わる仕事をすることも選択肢
としてはあるかと思います。

逆に、現在、あなたが人の心に関わる仕事
をしており、心を深く理解しているなら、
夢を理解することはそれほど難しくはない
でしょう。仕事の補助として夢について
知識を深めるというのは間接的なプラス
にはなるでしょう。

ただ、それを主体としてビジネスにする
ということは難しいかもしれません。

負の相関

このブログは、夢について語り、様々な
解釈を載せています。

一応、広告をつけてはいますが、実際、
ほとんど収益らしきものはありません。
収支管理していませんので正確には分かり
ませんが、いろいろな雑費を差し引けば、
多分、赤字でしょう。ある意味、
ライフワークのような位置づけとして
運営しているだけです。

今回は夢占いが職業にならない理由を
いくつか挙げたわけですが、これは
あくまで筆者の視点による一意見に
過ぎません。

例えば、あなたがビジネスに精通して
いるなら夢占いの解釈をデータベース化し、
AI検索機能がついたスマホアプリを開発
することも可能でしょう。

夢占いをエンターティメントとして、
動画サイトで提供することも可能かも
しれません。

ただ、夢という個人的な世界と商業的な
アプローチは根本的な理由から両立が
出来ないことも理解しておかなければ
ならないでしょう。

つまり、商業的であれば、それだけ夢解釈
の精度を犠牲にしなければならず、犠牲を
避けるなら商業的アプローチを諦めなければ
ならない。要するに、負の相関です。

丁度良い 50:50ぐらいを狙うという考えも
ありますが、収益性向上を求めてどちらかの
数字を高めようとすれば、その反対側が減る
ために動かせないというスケールアップ
できないビジネスモデルです。

とは言え、筆者は夢解釈という神聖なものを
ビジネスという汚れた世界で利用すべきでは
ないと堅苦しいことを言っているわけでは
ありません。それが両立でき、夢に対する
世間一般の関心に変化を与えるという意味
では、プラス側面はあるとは思います。

占いに関しても、宗教に関しても、資本
主義社会の中で利益を得るためにビジネス
の規模を拡大していけば、その形は歪に
なっていきます。そして、どこかの時点で
選択に迫られる。

富を取って、真理を捨てるか、
真理を取って、富を捨てるか。

夢占いとは少し違いますが、ビジネス展開
として成功した事例として ” 瞑想 ” が
あります。

” マインドフルネス ” とも呼ばれますが、
書店に行けば、瞑想関係の書籍が数多く
並んでいた時期もありました。海外の
大手企業でも社員教育の一環として瞑想を
取り入れたという話もありました。

筆者も何冊か瞑想に関する本を持って
いますが、一通り読んで、それ以来一度も
開いていません。なぜなら、書いてある
ことと言えば、目を閉じてゆっくり呼吸
すること、だけだから。

瞑想教室や、瞑想アプリもありますが、
結局、自宅で一人でも出来ることですし、
お金をかけてまでするようなことでもない。

マインドフルネスも、人々が
” 何だ、それだけのことか ” と気づくまでの
一過性のブームだったような気がします。
ブームが過ぎ去った理由は、無論、伝える
べき情報が少なく、次に展開するだけの
コンテンツが無かったから。

瞑想は、ある意味、シンプルであること、
心の断捨離とも言える行為ですから、
ビジネスのためにあれこれオプションを
付ければ、本質から遠ざかってしまうという
負の相関です。

” 瞑想 ” が一つのブームになった理由は、
瞑想そのものの価値というよりは、
日常に取り入れることが比較的簡単であり、
英会話やプログラミングのような学習コスト
もなく、それでいて仏教という歴史的、
哲学的なバックグラウンドがあることで
” 深み ” を感じさせるものだったから。

西洋文化圏の人々にとっては、中国の気功
と同じく、” 何だかよく分からないが、
効果がありそうなエクササイズ ” として
受け入れられた。ある意味、マインド
フルネスブームはそのネーミングも含めて、
マーケティングの妙によって広まった、
ということなのでしょう。

無論、筆者は、瞑想の効果を否定している
わけでも、中身の無いものを中身がある
ような振りをして人々に売りつけたと批判
しているわけでもありません。

長い間、少数の人口で静かに親しまれていた
習慣をビジネスのロジックを使って拡散
させたことは評価に値するでしょう。

とは言え、多分、ブームの仕掛け人は、
マーケティングのプロフェッショナルです。
私たちが夢に詳しいから夢占い師になる
という話とは次元が違います。

つまり、夢にせよ、瞑想にせよ、ビジネス
として展開するならば、それぐらいの
規模感が必要なのかもしれません。

無論、筆者には無理ですが・・

 

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