長い竿でバランスを取りながら、
ピンと張られた一本のロープの上を
綱渡りする男。
頭の中に ” 落ちる ” という
イメージが過った瞬間、
彼の中に小さな動揺が生まれ、
足を滑らせ、真っ逆さまに落ちる。
そして、セーフティーネットに救われる。
彼は、一瞬の恐怖感によって
” 悪い結果 ” を招いてしまった。
人は、ネガティブな感情によって、
心のバランスを崩し、本来の力を
発揮出来なくなることがあります。
” 落ちる ” イメージが、
皮肉にも、実際に彼を落したのです。
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疑いの心
綱渡りは、渡り切ることの方が、
落ちるよりも遥かに難しい。
そもそも、渡り切るか落ちるか、
どちらしかありませんから、
渡り切ることが出来なければ、
後は落ちるだけです。
綱渡りに限らず、日常に起こる出来事の
ほとんどの結末は、良い結果、
悪い結果、結果の先送りのどれかです。
そして、ネガティブな感情に囚われることで、
冷静さを失い良い結果を遠ざける。
それは、必然的に悪い結果を引き寄せる。
とても、シンプルな仕組みです。
*
ここに一組のカップルがいます。
二人はお互いに疑いあっている。
彼から毎日来ていたメッセージが
途絶え始めると彼女は不安になり、
次のようなメッセージを送ってしまう。
” 今日、何してた? ”
この短いメッセージを見て、
二つの受け止め方があると思います。
一つは、
プライベートを詮索するために、
” 探り ” を入れようとしている。
一つは、単なるコミュニケーションとして、
会話のきっかけを作ろうとしている。
もし、メッセージを受け取った
彼が言葉の裏を読んでしまうなら、
きっと前者を選択するでしょう。
もし、彼が前向きな気分なら、
きっと後者を。
この場合、彼女は探りを入れるつもりで
メッセージを送ったわけですから、
言葉の裏を読んだ捉え方で正解だったのです。
ただ、ここで重要なのは、
メッセージの真意を見抜いたか
どうかではない。
彼女の思惑を見抜いた彼は、
そのメッセージにこう返信する。
” 別に、いつもどおりだけど ”
メッセージを受け取った彼女は
心の中でこう思う。
” なぜ、はぐらかそうとしているの? ”
これを見る限り、二人の溝は、
両者の小さな ” 疑いの心 ” によって、
より深くなる。
真実とは良いことか?
ならば、後者のポジティブな捉え方なら、
どうだったのでしょう?
疑う心の無い彼は、彼女の思惑に
気づかずこう返信してしまう。
” 最近、忙しくて連絡出来なくてゴメン ”
嘘です。忙しくありません。
彼は、毎日メッセージすることが面倒に
なっているだけなのです。
しかし、こうも思う。
” 彼女の方から、
心配してメッセージをくれた ”
彼としては彼女の気持ちを確認する
よい機会になったわけです。
お互いに思惑があり、嘘がある。
しかし、二人の関係は、
この表面的なやり取りによって、
以前より良好になる。
*
無論、必ずしもこのケースのように
なるわけではない。
男女の関係は千差万別ですから。
ただ、真実を知りたいがために
ネガティブな思考に囚われてしまうことが、
返って状況を悪化させることもある。
その ” 真実 ” は、本当に
その人を幸せにするのでしょうか?
時には、真実から目を反らし、
あえて騙されてみる。
それは、相手のいる場合に限らず、
” 自己暗示 ” のように自身を騙して、
良い結果に導くことも同様です。
ネガティブな感情に囚われている時、
自分に正直であることが、
必ずしも良い結果に繋がるとは言えない。
ネガティブな気持ちに正直になれば、
その後にあるのは、
ネガティブな結果だからです。
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” 自分らしく生きる ” を言い換える
” 負け癖 ” という言葉があります。
スポーツにしても実生活にしても、
常に自己実現出来ない状態が続くと、
いつしか、自分のことを
” ダメ人間 ” として扱うようになる。
最も良くないのは、
それがいつからそうなったのか、
自分でも気がついていないという状態です。
何となく自信を失っていき、
そういった状況で様々な場面に遭遇し、
それに見合った人生を選択していく。
振り返った時に、
” なぜ、私の人生は
こうなってしまったんだろう? ” と思う。
そして、どこかで聞いた
” 自分らしく生きる ” という
耳障りのよい言葉で心の中の疑念を
丸めこんで消し去ろうとする。
*
” 自分らしく・・” の
” 自分 ” とは作っていくものです。
なので、” 自分らしく ” が
何なのか分からないのは当然です。
それは、日々、
成長し変化していくもの。
” 自分らしく ” 生きたりしないでださい。
なるべきは ” なりたい自分 ” であって、
今の自分ではない。
それが、” 今の自分 ” から遠く及ばなくても、
これからそうなればいい。
それは、表面的な目標設定、
即ち ” 自分に嘘をつく ” ということです。
その嘘を実現するために
私たちは日々努力している。
*
” ありのまま ” という言葉があります。
それは、自信を失った状態のあなたを
受け入れるということではない。
あなたの中の変化を望む気持ちの
タガになっている ” 拘り ” という
鎖から解放されるために、
将来に設定された ” 嘘 ” を
実現するために、それが必要なのです。
” 自分らしく ” に囚われないでください。
それは、別の言い方をすれば、
” 現状維持 ” です。
その現状が良くても悪くても、
そこに留まり変化を求めないということ。
夢、希望、理想、人々に生きる目的を
与えるそれらは ” 形無き嘘 ” の
言い換えなのです。
なので ” 自分は嘘をつくのが嫌いだ ”
という人がいるなら、その人は
人生の目標を持つことができない。
目標に向かって努力するためには、
それを頭の中でイメージしなければならない。
イメージとは ” 嘘 ” です。
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