夢の中には様々な人々が登場します。
家族や、友達、会社の上司、意中の人、
嫌いな人物、見知らぬ人物、通行人A、群衆・・
例えば、心に引っかかっている家族の問題が
夢になるとき、家族が登場するのは、
ごく自然です。
その夢には必要不可欠な登場人物。
そうではなく、あまり、必要性が
感じられない人物が夢に登場することがあります。
” 何、この人? 別にいなくてもよくない? ”
夢の中で、
通りの向こうから歩いてくる見知らぬ男性。
車の運転中、後ろの席に座っている女性。
どこから来たのか分からないが、
あなたのスカートを握りしめる小さな子供。
何気に喫茶店の片隅に座っている老人。
ストーリーには、直接、関わっていないが、
なぜか登場している脇役たち。
彼らは、偶然、
居合わせた通りすがりではありません。
こういった夢の中のエキストラたちにも
登場する理由があるのです。
では、彼らには、一体、
どういった役割が与えらえているのでしょう?
広告
見知らぬクラスメートたち
次は、とある女学生が見た夢の一例です。
校舎の階段下で三人の男子生徒が
柔道の稽古をしている。
顧問の教師と私たちは、それを見ている。
誰かが ” 可愛そう ” と言うと、
” しかたないよ ” と他の誰かが答えた。
” 登場人物は、全員、実在の人物だったのですか? ”
筆者の質問に、彼女は次のように答えます。
” 先生だけが実在します。
他は全員知らない人でした ”
” 私たちは・・ということは
あなたの周りに誰かいたということですか? ”
” はい。四、五人ほどの女子生徒がいました。
多分、クラスメートか何かだと思います ”
” つまり、あなたは
周りにいた見知らぬ女子生徒を
クラスメートだと認識していた? ”
” 確かに変ですね。知らない子なのに
クラスメートだと思っていたのは・・ ”
夢の中でこうした誤認識は、
よくある現象です。
それは夢の中の曖昧な記憶ではなく、
潜在意識があえて彼女の認識をすり替えているのです。
それは、一体、
何がすり替えられた結果なのか?
*
” 先生は現実世界でも
柔道の顧問をされているということでしょうか? ”
” そこが変なんです。
柔道の顧問は別の先生なんですけど、
夢の中にいたのは生徒指導の先生でした ”
” つまり、あなたは生徒指導の先生を
柔道部の顧問だと思い込んでいた? ”
” そうです。変ですね・・ ”
筆者には、もう一つ
奇妙に思えることがありました。
” 体育館や道場ではなく、
階段の下で柔道をしていたのですか? ”
” ああ、そこも変なんです。
私もなぜこんな場所で柔道なんて
するのだろう?と思っていました ”
” 夢の内容では三人でとありますが、
柔道は通常、二人でするものだと思うのですが、
二人が組み合っているのを
一人が見ていたということですか? ”
” 二対一という感じで組み合っていました ”
” それは、つまり、二人が交代しながら
一人を相手にしていたということですか? ”
” いえ、そうじゃなくて、二人がかりで
一人を抑え込もうとしていた感じです ”
” 因みに三人は道場着でしたか? ”
” いえ、学生服のままです ”
” 少し話を整理させてください。
つまり、階段下で三人の男子生徒が
学生服を着たまま二対一の柔道をしていた。
それを生徒指導係の先生とあなたたちは見ていた・・”
” そうなりますね ”
この状況から見て、
それが柔道ではないということは確かです。
夢が作られた本当の理由
この夢は、潜在意識が彼女のいくつかの
誤認識を利用して、本来描くはずだった
” 何か ” をカモフラージュしようとしている。
その ” 何か ” とは・・
筆者は尋ねました。
” イジメに心当たりはありませんか?
あなたの周りで ”
” ああ・・やっぱり、
夢の意味はそれだったんですね ”
彼女はすでに
夢の意味を理解しているようでした。
” つまり、あなたの学校でイジメがある? ”
” はい・・ ”
*
彼女にとって、それは、あくまで
” 柔道の稽古 ” でなければならなかった。
生徒指導の教師は、
柔道部顧問を兼任しなければならなかった。
そして、その現場の目撃者は、
複数人でなければならなかった。
彼女一人が目撃者なら、
イジメを見て見ぬふりをした
罪悪感を一人で背負わなければならない。
彼女の周りにいる数人の女生徒は、
罪悪感を分担し合うために
キャスティングされた ” 分身 ” です。
それによって彼女はイジメを目撃しながらも
何もせずに、ただ見ている人たちの中に
紛れ込むことが出来る。
” 見て見ぬふりをしたのは、私だけじゃない ”
女生徒の誰かが ” 可哀そう ” と言い、
誰かが ” 仕方ない ” と答える。
彼女のイジメに対する本音を代弁しています。
彼女は見知らぬ女生徒数人を
クラスメートだと誤認していた。
数人の女生徒は、彼女の罪悪感を
軽減するために配置された分身ですから、
彼女とは、元々繋がりがあるわけです。
それを彼女は、クラスメートとしての
繋がりだと勘違いをした。
これは潜在意識が、あえて仕組んだ ” 錯覚 ” です。
*
この夢はイジメという事実を
隠蔽するために作られた。
彼女の罪悪感を打ち消すために。
もし、そうであれば、一つの疑問が残ります。
なぜ、潜在意識は、この夢を作ったのでしょう?
イジメから目を背けておきたいのであれば、
最初から夢を作らなければよい。
彼女の潜在意識は、カモフラージュしながらも、
どうにかして事実を描こうとしている。
夢の中では柔道部顧問が立ち会うという名目で
生徒指導係の教師を配置しています。
つまり、イジメの現場に指導する立場の
大人を呼んだのです。
この設定がイジメに対する
彼女の唯一の積極的対処です。
彼女は、学校で行われている
イジメを黙認しながらも心の中で苦しんでいた。
イジメという事実を見過ごすことが
出来なかった彼女の思いが
この夢が作られた本当の理由です。
広告
エキストラの役割
それから夢を見た数日経った頃、彼女は
実際にイジメの現場に遭遇してしまうのです。
二人の男子生徒が一人の生徒を
階段の上から突き落とそうとしていた。
” その階段とは、
夢の中で見た場所だったのですか? ”
” いえ、夢の中の階段は架空の場所だと思います。
でも、状況が似てませんか? ”
夢の中では、階段の下で
柔道をしているという設定でしたが、
彼女が目撃した実際のイジメの現場は
階段の上だった・・
彼女の潜在意識は、数日後に
目撃する出来事を予見し、
現場を階段の上から下へと移動した。
危険を回避するために。
生徒指導係の教師だけが、
唯一の対処ではなかったのです。
*
潜在意識は、時折、私たちよりも先に
未来の出来事を察知する。
そして、夢の中で対処しようとする。
夢は、それが未来の出来事であったとしても
都合よく脚色されて作られるのです。
ゆえに、一見すると
全く無関係に見えることもある。
そして、私たちは実際の出来事と
夢に関連性を見つけることが出来ず、
見過ごしてしまう。
*
夢の中に登場する人物は、
全て役割を与えられています。
彼女の周りに立っていた見知らぬ女生徒たち。
彼女たちには、罪悪感を分担する
役割が与えられていた。
教師には、名目上の ” 稽古 ” に立ち会う
部活顧問としての役割、そして、
” イジメ ” の現場を目撃するという
生徒指導係としての役割の二つを担っていた。
もし、あなたの夢に不必要に思える人物が
登場したなら、その人物には、必ず、
存在理由があるはずです。
そもそも潜在意識は、
エネルギーを浪費して不必要な仕事をしない。
潜在意識が望んでいるのは、
夢に誰も登場しないこと、すなわち、
私たちが精神的に安定しており、
夢を作る必要が無い状況です。
潜在意識が、どういった目的で
エキストラを配置したのか、
その意図を探ってみてください。
関連記事 : 夢の中の ” 無意味な人物 ” |この人って必要?
広告