もし、あなたの見た夢が、あまりにもリアルで、あたかも未来を予知しているかのように思えたら・・
それは、いわゆる ” 正夢 ” なのでしょうか? それとも、単なる夢?
もし、正夢だとすれば、それは本当に起こるのでしょうか?
ここでは、具体例を交えて、” 正夢 ” が作られるプロセスを見ていきましょう。夢の本質を理解することで、一つの判断材料になるかもしれません。
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再現率と残り1割の誤差
実際、” 正夢 ” と呼ばれる夢の中でも、未来を100%の状態で映し出しているものは、極めて稀です。
そのほとんどは、誤差があり、未来の出来事を正確に描いてはいない。
しかし、それを体験した人は、100%の一致でなくとも ” 正夢 ” だと認識する。
なぜなら、自分の見た夢と、実際に起こった出来事との間に、共通点と強い因果関係があることに気づくからです。
なので、体験者の言う ” 正夢 ” とは、厳密には ” 正夢と言っても過言ではない ” という認識に基づいた夢、と表現した方が正しいでしょう。
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” 正夢 ” の言葉の定義がどうであれ、実際の出来事をどれぐらい再現しているか、という ” 再現率 ” はケースによって違います。
” 一部は一致しているが、それ以外はよく分からない ”
” 半分ぐらいは合っていると思う ”
” 9割方、見たままだった ”
その再現率は夢によってばらつきがあります。一体、この再現率が、正夢と何の関係があるのでしょう?
もし、その夢が、9割方、事実を描写しているとしたら、残りの1割は実際の出来事と違っていたということです。
この ” 1割 ” の違いは何でしょう?
なぜ、夢は 100%一致した描写をしないのでしょうか?
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次は、筆者が見た夢ですが、明確な ” 正夢 ” ではなく ” 正夢に近いもの ” と言った方がよいかもしれません。
玄関のチャイムが鳴る。
そこには 50代ぐらいの女性が立っている。
女性は持っていた封筒を差し出す。
筆者は目覚めてから、夢の内容について考えてみましたが、その時点では、特に思い当たることはありませんでした。
それから、数日後、玄関先でチャイムが鳴り、ドアを開けると、そこに50代ぐらいの女性が立っていた。
その光景を見て筆者は、先日見た夢を思い出したのです。彼女の背後には、車検に出していた筆者の車が止まっていた。
女性は自動車修理工場の人で、車検の終わった車を自宅までわざわざ届けてくれたのです。
そして、彼女は、筆者が借りていた代車に乗って帰っていった。
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この出来事は、ある意味 ” 正夢 ” と言うことも出来ますが、厳密には違っている部分があります。
それは、” 封筒 ” です。 彼女は車を届けに来ただけで、封筒は持っていなかった。
夢の中では、近所に住んでいる住人が、町内会の集金に来たという認識でした。そして、町費を入れる空の封筒を手渡されたのだと。
しかし、現実では、女性は町内会ではなく、修理工場から車を届けに来ただけ。封筒は、後日、車検の請求書が入った郵便物として届くことになります。
請求書には、故障したパーツの交換代金が加算されており、ため息が出るほどの金額になっていた。
さて、この夢と、その後に起こった出来事に因果関係があると仮定するならば、潜在意識は、この一連の出来事を、なぜ、今回のような夢にしたのでしょう?
正夢と暗示の違い
その理由は、次のように考えられます。
車検の代金が予想に反して高額なので、潜在意識は事実を都合の良い形に書き換えた。
女性を修理工場の社員ではなく、近所の住人に置き換え、後日届く請求書を町費を入れる封筒にすり替えて、それを彼女に持たせた。
きっと、こう思ったのでしょう。
” こんな高額な請求は受け取りたくない。町費の集金の方がマシだ ”
出費は出費でも、町費ならば大した金額ではありません。
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夢はその人の ” 主観 ” を映し出している。
” 主観も入ることがある ” ではなく、主観でしか描かれないのです。これは、夢の性質として理解しておくべき点です。
つまり、潜在意識にとって、事実をそのまま鏡に映すかのように、描写する動機はどこにも無い。
そして、心の中の何らかのストレスを処理するために、やも得ず事実を部分的に描写している。
それは、あくまで ” やも得ず ” であり、結果そうなったというだけです。
潜在意識に、事実を正確に描写しようとする意思はありません。都合の悪い出来事をそのまま描写することにメリットが無いからです。
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夢を見ている本人の ” 主観 ” によって、書き換えられた部分。これが正夢における1割の誤差となって現れている。
もし、出来事の全体像で都合の悪い部分が大きければ、それだけ書き換えなければならない範囲も大きくなっていきます。
1割が、半分に、そして一部を残して、そのほとんどが書き換わってしまうこともある。
そうなっていくと、もはや ” 正夢 ” ではなく、夢占いで言う ” 暗示 ” ということになるのですが。
正夢とそれ以外の夢に明確な区切りは無く、これらは延長線上にあるものです。単に書き換えが行われた範囲が広いか、狭いかという ” 程度 ” の問題でしかない。
では、書き換えられる範囲が ” 全て ” だったとしたらどうなるでしょう?
それが、あなたが日々、見ている夢です。
あなたは、出来事と夢との関連性に気づかずに ” 単なる夢 ” として片づけてしまっている。
それです。
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” 都合 ” によって事実は歪められる
潜在意識の意図によって書き換えられる範囲が比較的小さかった場合、それは、出来事の原型を辛うじて留めた夢になる。
そして、私たちはそれを ” 正夢 ” と呼んだり、” 予知夢 ” と呼んだりする。
さて、書き換えが行われる理由は、その出来事に都合の悪い部分があるから、ということですが、もし、出来事に都合の悪い部分がない場合は、どうなるのでしょう?
全く、都合の悪くない出来事。別の言い方をすれば ” 都合の良い出来事 ” とも言えます。
まず、言えることは、都合が悪くないのなら、その出来事に取り立てて注意を注ぐ必要が無いということです。
例えば、朝、会社に出勤する時、いつも通りの通勤ルートを使い、会社に到着する。
都合の悪いことは何一つ起こらなかったわけですから、潜在意識が処理しなければならない仕事は何も無い、と言えます。
つまり、夢は作られない。
仮に、列車が何らかのアクシデントによって遅れ、大事な会議に出られなかったとしたら、それは、夢になるかもしれません。
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ならば、宝くじが当たるとか、理想の異性に出会うというような幸運が舞い込んでくるとしたら、どうでしょう?
悪いどころか歓迎すべき都合の良い出来事ですから、書き換えは行われず、事実をそのまま描写するのでしょうか?
答えは、” NO ” です。やはり、主観による書き換えは行われる。
例えば、小さな幸運が一人の女性に舞い込んできたとします。意中の男性から携帯にメッセージが届く。
それは単なる業務連絡でしたが、好きな人からのメッセージには違いありません。
彼女は、こう思う。
” これがデートの誘いなら良かったのに・・ ”
そして、彼女の潜在意識は、その数日前に、男性からメッセージが届く夢を作る。無論、メッセージの内容はデートの誘いです。
つまり、彼女の潜在意識は、事実をより都合の良い形に ” 盛った ” のです。
それが小さな幸運なら、より大きな幸運を欲しがるのが人の性。その ” 欲張り欲求 ” は、確実に主観として夢に影響を与え、事実を歪める動機になります。
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では、小さな幸運でなく、もっと大きな幸運ならばどうでしょう? これ以上望むなんて出来ないと思えるほどの大きな幸運。
そういった事態になった時、人がどんな反応をするのかを思い浮かべてみてください。
まず、疑う。そして、運を使い果たしたように感じて怖くなる。
突然、友人から、年収が10倍になる仕事があると誘われたら、あなたならどうしますか?
そういうことです。
大きな幸運を受け止めきることが出来ない潜在意識は、素直に事実を描かない。
やはり、事実は歪められるのです。
稀に生まれる正夢
ただ、脚色を加えず、事実そのものを描く夢は、稀にあります。それは、ストーリー性の無いシンプルな構成を持った夢に表れることが多い。
ついウトウトしたときに、脳裏に過るビジョンのような短い夢などです。
夢を作る工程は、いくつかの段階に分けることが出来る。まず、舞台となる背景を用意し、ストーリーが始まる最初の形を作ります。
それから、夢を見ている本人の視点が入り、ストーリーが開始される。
つまり、最初の段階であるシチュエーションの完成時は、まだ、主観が完全に反映されていないことがあります。
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例えば、自宅で過ごしている時、煙草の火で絨毯を焦がす出来事があったとします。急いで消し止めて大事には至らなかった。
その数日前に、灰皿の上から落ちそうな煙草の映像だけを見て、あなたは目覚める。
もし、夢に続きがあれば、落ちそうなそれを危ないと思ってもみ消したかもしれませんが、それがストーリーとして動きだす前に夢が終わっているので、夢は単に事実を描写しただけになります。
このように問題に対処する前に目覚めた場合は、結果的に事実のみの描写になることがある。
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また、あまり自分にとって影響の無い、些細な出来事が夢になることがあります。
例えば、政治に関心の無い人がそれに関する夢を見た場合、政治の大きな動きですら、その人にとっては ” 些細な出来事 ” に過ぎないので、事実を歪める強い動機が生まれません。
” ああ、そうなんだ。何か法案が決まったらしいよ ”
という程度の緩い感覚が夢に描かれるとしたら、比較的、書き換えられる範囲が小さいかもしれません。そういった場合は、社会の出来事を予知したようにも見える。
しかし、こういったケースは、やはり稀です。
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願望夢と正夢との見極め
さて、あなたが毎日見ている夢の全てが、未来に関する出来事を描いているわけではない、という点についても話しておく必要があります。
先ほど、全てが都合によって書き換えられてしまった場合、私たちが見過ごしている夢がそれだと言いました。
正確には、見過ごした夢の中に、そういった夢が含まれている場合がある、と言った方がいいでしょう。
無論、一般的な願望夢も私たちは見ている。
なので、ここでは、一般的な願望夢と未来に関する夢の間にある違いについて、少し説明しておきましょう。
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まず、最初に、知っておくべきことは、未来を予知する夢と、一般的に ” 単なる夢 ” として片づけられ、見過ごされていく多くの夢の間には、見た目、何の違いも無いということです。
再現率の幅はあれど、結局、全ては同じ目的を持って、同じ場所から生まれた創造物であり、潜在意識は、ある条件につき、他とは違う ” 特別な夢 ” を生み出すといったことはありません。
潜在意識にとって、それは ” いつもの仕事 ” です。
では、外観上、違いが無いとすれば、それを見極める方法が全く無い・・・というわけではありません。
それは、本質的部分に注目することで、ある程度可能です。つまり、夢を読み解いて、その意味を理解した後でなければ、判別することが出来ない。
例えば、一人の女性が家の隅々まで掃除をしている夢を見たとしましょう。
彼女は、その夢を見たきっかけに心当たりがある。二週間前に掃除をして以来、部屋を散らかしたままなのです。
この夢が、彼女の ” そろそろ掃除をしなければ ” という心の焦りを描いている願望夢であることは明らかです。
ならば、次のような場合はどうでしょう?
彼女が夢を見たタイミングが、掃除をした二週間後ではなく掃除をした直後なら。
部屋は綺麗な状態ですから、夢が作られる動機となる ” 心の焦り ” は彼女の中に無いはず。
なぜ、彼女の潜在意識は、掃除の夢など作ったのでしょう?
一つ考えられるのは、夢の中で彼女が行っているのは ” 掃除 ” に見せかけた心の浄化なのかもしれない、ということです。( その時に浄化が必要なら )
つまり、これも願望夢です。
しかし、そうではなく、潜在意識が彼女の面倒臭がりの性格を理解した上で、次のように考えたとしたら・・
” どうせ、また散らかすに決まっている ”
この認識に基づいて、二週間後の部屋を掃除している夢が作られる。つまり、夢の中では、未来の部屋を掃除していることになります。
ただ、自身の行動パターンを認識できていない彼女にとっては、なぜ、こんな夢を見たのか心当たりが無い状態になる。この状態が未来を示唆するのです。
証明不可能性
これは、あくまで分かりやすく説明するためのシンプルな例えですが、実際の夢は、再現率の誤差や書き換えが行われるので、複雑な設定やストーリーとして作られ、読み解くことがより難しくなる。
この記事だけで、その全てを説明することはできないので、ここでは割愛します。
いずれにせよ、あなたの見た夢が現実に起こりえるのかどうかは、その夢が何を描いているかを理解した上で考えなければなりません。
あなたが見たものが、凄くリアルな夢だったとして、それが本当に ” リアル ” を描いているとは限らないのです。
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さて、ここまでは、夢が未来の出来事を予知する、という前提で話を進めてきましたが、そもそも、そのようなことが、実際、起こりえるのでしょうか?
懐疑的な人なら ” 科学的根拠を示せ ” と言うかもしれません。
仮に、それが事実だとしても、残念ながら証明することは不可能なのです。
例えば、誰かが見た夢をどう証明するか?
考えてみてください。証明する方法はありません。科学の発達した現代においても。
それは、恋人の ” 愛している ” という言葉が、永遠に不確かなのと同じです。心で思ったことや感じた感覚を第三者に証明することは出来ない。
夢とは ” 感覚の産物 ” だから。
仮に、夢の内容を何かに記録したとします。誰がそれを信じるでしょう。夢など、どのようにでも解釈できる。本当に夢を見たかどうかですら、証明不可能です。
そこにあるのは、預言として捉えることもできる単なる記述でしかなく、因果関係を解明できたわけではありません。
最終的には ” 偶然 ” で片づけられる。
あなたが、もし、正夢を見たとして、まだ、それを体験していない人に証明しようとしても無意味です。
その人自身が体験しなければ、その真実は証明されないでしょう。
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