神話上の動物が登場する夢|現実的視点

神話上の動物が登場する夢。ペガサス、ユニコーン、ドラゴン、複数の頭を持つ蛇、一つ目の巨人、半人半獣・・

その神秘的な存在の登場によって、夢はより意味深げな雰囲気を持つ。それ故に、それが ” 特別な夢 ” のように感じられるかもしれません。

こうした夢に登場した動物が、宇宙の神秘や魂、神といったスピリチュアリズム視点で解釈されるとしても、それらが ” 神話上 ” の存在であるなら、結び付けられるのは必然でしょう。

ただ、夢の作り手である潜在意識は、意外にリアリストです。

目的達成のために幻獣バジリスクのイメージが必要ならそれを利用する。潜在意識にとって、そのイメージはどこかで取り込んだ一片の記憶に過ぎない。

ここでは現実的な視点で、神話上の存在について考えてみましょう。

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川岸のケンタウロス

次は、とある女性が見た夢の一例です。

川の向こう岸に人影が見える。
 
目を凝らすと、
それは半人半馬だった。
 
私は怖くなってその場を逃げ出す。

この夢を見た女性は、アウトドア好きでキャンプを趣味にしているということで、夢の舞台も森林の川沿いになっています。

筆者は彼女に尋ねました。

「キャンプ中に夢を見たのですか?」

彼女いわく、キャンプ中に森の夢を見ることは無く、むしろ、自宅にいる時に、よく自然の中にいる夢を見ると言います。

ただ、この夢に限っては、半人半馬が登場したということで何か特別な意味があるのかと思い、今回の依頼に至った。

半人半馬とは、上半身が人間で下半身が馬というギリシャ神話に登場する動物で ” ケンタウロス ” とも呼ばれています。

筆者は、キャンプに行けない時期に自然に関する夢を多く見るという話を聞いて、彼女にとってアウトドアを愉しむことが、日常生活のストレス解消になっているのだろうと思いました。

ゆえに、ストレスが蓄積されていくと、自然の夢を見るのだと。

「現在の私生活は、どういった状況ですか?」

「ここ最近は仕事が忙しくて、休日も疲れた体を休める程度で、ほとんど家でゴロゴロしています。キャンプに行くようなゆとりは無いですね」

「キャンプというのは、誰かを誘って行くのでしょうか?」

「いえ、一人です。誘っても誰も来ないです」

「自然がお好きなんですね」

「ええ、日常のしがらみから解放されて、リセットする感じです」

筆者は話を聞きながら、今の彼女の心が無性に自然を求めているようにも思えました。

彼女のその強い気持ちが今回の夢を作ったのならば、この夢は、彼女が自然に還るためのものです。

夢の中で彼女の前に流れる大きな川は、自然界と人間界を隔てる ” 境界線 ” を意味し、彼女は向こう側に渡るために川岸を訪れた。

嫌気のさした人間界を離れ、自然界に入ろうとしながらも川の前で立ち止まる。

「もし、本当に自然界に身を投じてしまったら、その先に何があるのだろう?」

心の中に、そんな疑念が浮かんだのかもしれません。そして向うの川岸にたたずむ一匹の半人半馬が、その ” 答え ” です。

人間でありながら獣でもある。
人と自然が融合した存在。

彼女は、現代社会から離れて自然界に入るということが何を意味するのか、その存在を目の当たりにして悟る。

そして、川を渡るのを断念した。

この解釈を話すと、彼女は言いました。

「以前から自給自足の生活に興味があったのですが、さすがに私にそこまでする勇気はありません。

今の生活を手放すとしたら・・ちょっと怖いですよね。きっと、そのことだと思います」

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鳩の群れ

次は、とある男性が見た夢の一例です。

帰宅途中、鳩の群れが路上に散らばっている。
 
一匹だけ燃えている。

「燃えているというのは、どういう状況なのでしょう?」

「普通に燃えてました」

「その鳩は死にかかっていた、ということですか?」

「死にかかっていたわけではないと思います。もがき苦しんでもいませんし、見たところ、おとなしくしていました」

「燃えているというのは、どの部分が?」

「全体です。火の鳥みたいに・・」

彼いわく、鳩の群れの中に ” 火の鳥 ” が混じっていたと言います。

「帰宅途中ということでしたが、夢の中の通りは実在の場所ですか?」

「ええ、住宅街の通りです。実際に鳩の群れが近くに住み着いているみたいで、よく見かけます」

「つまり、火の鳥以外は日常的な光景だったと」

「そうですね」

日常風景の中に紛れ込む異質な存在。

潜在意識は、ほぼ現実に近い設定をしながらも、一部分だけそぐわない演出を行っている。そこに何か意味があるようにも思えます。

筆者は尋ねます。

「火の鳥が、フェニックス ( 不死鳥 ) の別名だと知ってましたか?」

「はい、火の中で死んだ鳥が復活する、という話を何かで読んだ記憶があります。それで、死に関係するんじゃないかと、ちょっと怖くなりまして・・」

「鳥の姿は、どういった?」

「炎で全身を包んでいました。鳩と同じサイズで、燃えていたからなのか、色は黒っぽい感じでした」

「長い尾は?」

「いえ、そういうのは無かったです。形も鳩に似てましたし、以外に地味な鳥でした」

彼の話を聞く限り、それが伝説の鳥フェニックスのイメージとは、少し違っているようにも思えます。

ただ、炎を身に纏いながらも、その鳥は平然と生きていた。

「夢の中では帰宅途中とありますが、会社から帰宅している途中ということですか?」

「ええ、自宅に帰る途中でした」

「車は使われない?」

「はい、車を持っていないもので。近くの駅を利用しています」

「もしかして、都心にお住まいですか?」

「いえ、地方です」

「地方で車が無いというのは、大変でしょう」

「ええ、実は車が乗れないんです。癲癇を患っていまして」

「癲癇・・・
突然、気絶してしまったりする病気・・ですね?」

「ええ、最近、発作がありまして・・ここ一年ほど音沙汰が無かったので、このまま治まってくれたらいいなと思っていたんですが・・」

「それは、お気の毒に・・」

「発作の後に、今回の夢を見たんです」

この経緯から推測すると、夢に登場している不死鳥は、彼自身を表しているのかもしれません。

見慣れた日常風景に配置された鳩の群れは ” 人間社会 ” を表し、それぞれの鳩は、彼と同じように日常生活を送る ” 一般の人々 ”

その中に混じる炎を纏った一羽の ” 不死鳥 ”

それは、病気を抱えながらも、何度、倒れようと起き上がって生き続ける彼の姿そのものです。

この場合の ” 炎 ” は、身体にダメージを与え続ける ” 病気 ” という解釈も出来ますが、同時にメンタルに対するダメージという意味合いもあるかもしれません。

彼の潜在意識は、鳩の群れに人間社会の縮図を写して、自分の置かれた状況を客観的視点で見せたかったのでしょう。

彼を勇気づけるために。

” あの鳥だって普通に生きている。
だから、俺は大丈夫さ ”

神話に対するイメージ

さて、神話上の動物は、もちろん誰も実物を見たことが無いわけですが、そうなると、そのイメージはどこから来たのでしょう?

映画や漫画、ゲームなど、考えられるルートはいくつかありますが、大抵、ギリシャ神話のような古くからの伝説などが元になっています。

だから、ほとんどの人のイメージは一致しており、それらは現実世界には存在しない、という共通認識があるわけです。

故に、神話上の動物が登場した場合、誰が見ても似たような解釈になるという側面はある。

ただし、必ず、同じ解釈になるというわけではありません。今回の夢のように、個人のプライベートが深く関わっている場合は、また違った解釈が必要です。

例えば、ユニコーンが登場する夢を見たとしましょう。

中世ヨーロッパでユニコーンの角に解毒作用があると言い伝えられていた歴史を知っている人にとっては、ユニコーンに刺されて死ぬ夢は ” 毒を抜く治療 ” と解釈することも出来ます。

しかし、知らない人にとっては、単なる ” 死 ” か ” 天罰 ” という意味になるかもしれません。

それは、結局、ケースバイケースなのです。

神話上の動物が登場する夢は、インパクトがあり、神秘的であることから、何か深い意味が隠されているようにも感じます。インターネットで神話について、調べてしまうかもしれません。

しかし、あなたが、元々持っている神話に対するイメージが夢を作るわけですから、最初に自分がどんなイメージを持っているのかを整理しておく方が重要です。

夢を解くために、基本的に新しい知識は必要ないのです。夢は、あなたの中にある記憶を材料に作られるものだから。

いずれにせよ、夢に神話上の動物が登場したとしても、冷静に分析することが大切です。そのほとんどは、現実的視点によって説明出来るのです。

 

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