深夜、ふと目覚めると、冷蔵庫の音が気になって眠れない、といったことがありませんか?
日常では特に気にならない音でも、全てのボリュームが下がった深夜では、その些細な音が騒音に聞こえる。
これは、眠っている時にも起こる現象です。
睡眠中、意識が通常の生活から解放され、内面の小さな変化に向けられやすくなることで、気づかなかった些細な体やメンタルの不調が、より大きな不調として感じられるといったことです。
この性質は、不調をいち早く知るための手掛かりになるかもしれません。
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睡眠を維持するための細工
次は、次は筆者が見た夢の一例です。
ペットフードを食べている。
まだ、山盛りになって残っている。
夢の中では、なぜか、不味いと思いながら、一生懸命ペットフードを口に入れ続けていました。
それから、夜中に目が覚めると、わずかに胸のあたりに違和感があり、口の中の苦み。
原因は、就寝直前にヨーグルトを食べ、それが寝ている間に、少し逆流してしまったようです。
就寝直前の間食という悪習慣によって、睡眠を妨げられた例です。
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では、もう一つ夢を紹介します。
チェーンソーで木を切っている。
アクセルをふかして切れ目を入れるが、途中から、なかなか進まない。
これも筆者の夢ですが、筆者は林業に携わったこともありませんし、チェーンソーを使ったこともありません。
ただ、目覚めると、少し歯が痛かったのです。
夢の中で、不慣れで危険な作業に意識を集中させることで、歯の痛みに気づかせないようにしている。
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このように体に不調があった場合、潜在意識は睡眠を維持できるように夢を作り、誤魔化そうとする性質があります。
そして、眠っている本人の意識を夢に留めておくために、大抵は ” 目標 ” を持たせる。
先ほどのペットフードの夢では、一皿食べ終わるまで、そして、チェーンソーの夢では、木が切り終わるまでという目標を持たせることで、途中、意識が夢から離れてしまわないよう細工をするのです。
この場合、身体の不調が最初の発端ですから、夢は後付けとして作られています。
しかし、潜在意識は、不調の原因が、夢の中の状況によって引き起こされている、という設定によって私たちに錯覚を与える。
冷静に考えれば、ペットフードが不味いなら残せばいいことですし、危険な作業ならば、途中でやめればいいのです。そこに強制力はない。
つまり、潜在意識は、当然のことに ” 気がつきそうで気づかない ” という微妙な心理状態を巧みに利用して、夢を成立させている。
そこに、ちょっとした ” 勘違い ” さえあれば、いいのです。
夢の役割
次は睡眠中に眩暈を起こした、と思われる女性の見た夢の一例。
ベッドがなぜか海に浮かんでいる。
波に煽られて大きく揺れる。
自分は海に落ちないように、必死にしがみついている。
大きな波が来て、ベッドはひっくり返り、一回転して元に戻る。
彼女は日常でも、時々、眩暈を起こすということで、この夢から目覚めた時も、しばらく天井が回って見えていた。
眩暈は身体に起きている異変なので、ストレスや感情のように夢で処理することはできません。
それでも彼女の潜在意識は、体の異変をベッドが揺れているという状況に置き換えて対処しようとしています。
ベッドにしがみついてさえいれば問題は無いと、意識に思わせることで心の平静を保とうとしている。
ここでも、やはり、原因を夢の中に置き、錯覚を利用しています。また、身体の不調時であっても、常にメンタルのバランスを正常化しようとする夢の性質が垣間見えます。
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夢が身体の病気を直接、癒すことはありません。
それはあくまで、睡眠を維持して疲れを取るためであったり、ストレスを和らげるため、といった間接的な効果でしかない。
ただ、それが全く機能しなければ、多分、私たちは、もっと脆く弱い存在になっているでしょう。
夢の役割とは、何か?
それが健康習慣であれ、食生活であれ、実感できる効果が無いと、それを無意味だと感じてしまうものです。
健康な人は、健康であることの喜びに気づかない。病気なった時にだけ、必死に努力をする。
仮に、あなたに、就寝前にストレッチをする習慣があるとして、それは目立った効果は無いかもしれません。
しかし、長期視点に立てば、睡眠の質が向上し、体のバランスが崩れにくくなったとしたら・・その習慣は、あなたにとって必要不可欠と言えるでしょう。
要するに、プラスではなく、マイナスになるのを防ぐ、という分かりにくい効果です。
筆者は、夢にも同じ役割があると考えています。
一見すると、あまり意味の無いものに見えるが、実際は、気づかないところで、陰ながら私たちを支えている。
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無自覚の病気について
さて、ここまでは本人に自覚のある体の不調が夢になった例ですが、無自覚の病気が夢になるということはあるのでしょうか?
例えば、内臓の状態が悪いなど、表面上、直接の痛みがあるわけではないが、水面下で悪化しているといった場合です。
これら見えない症状は、夢になる可能性があるとも、無いとも言えます。
そもそも ” 無自覚 ” とは、どういった状況なのでしょう?
例えば、肥満になってしまう場合、ある一定の体重を越えるまで、自分はいつもどおりだと思いながら食生活を送ります。
しかし、体重に日々気を使い、こまめにチェックしている人は、一日毎の体重の変化に敏感です。
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” 無自覚 ” と言っても、どれぐらい健康管理に関心を持っているかによって、その度合いは変わります。
健康に全く関心が無ければ、生活習慣病のほとんどは無自覚と言えます。
逆に、常に体の調子をチェックしていれば、夢を観察するまでもなく、それが、いつもと違うことに気づくでしょう。
また、病気についてあれこれ考えてばかりいる心配性の人にとっては、ちょっとした疲労感ですら不安を助長する格好の材料になります。
その健康への執着と不安が悪夢を作り出す。
それが100%無自覚というなら、それは夢にならないでしょう。逆に、わずかな自覚さえあれば、それは夢になる。
しかし、自覚があるとしても、それは不安が作り出した幻想かもしれません。
” こんな乱れた生活してたら、いつかしっぺ返しが来るかも・・ ” と、心のどこかで思っているだけで、その思いが夢になるわけです。
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次は、夢の一例です。
手術室で大掛かりなオペが行われている。
医師が、メスで切り開かれた腹部から黒い物質を取り出す。
この夢を見た女性は、その時期、便秘に苦しんでいました。
ネットで便秘の解消法について調べていると、関連する病気についての記事を見つけ、逆に怖くなってしまったと言います。
彼女いわく、夢の中で腹部から取り出された黒い物質は、コールタールのようなドロドロとしたもので、それを取り除くのに医師が苦労していた。
一見すると、彼女が大病を患う暗示のようにも見えますが、この夢における黒い物質は、彼女の中の ” 病気への不安 ” が形状化したものです。
そして、医師が除去に手間取っていたというのは、彼女の不安を完全に取り除くのは、容易ではないことを表している。
何年も先は分からない
仮に彼女の健康状態が思った以上に悪かったとして、潜在意識がそれを知っていたとしたら、事実を真正面から描くでしょうか?
そのような受け入れがたい事実は、潜在意識も受け入れようとはしません。つまり、夢はカモフラージュされ、病気から遠い別のものへと置き換えられる。
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そもそも、夢とは病気そのものを暗示する以前に、生活上の不摂生や悪習慣に警鐘を鳴らすのです。
例えば、ヘビースモーカーに煙草のボヤ騒ぎを起こす夢を作ったり、運動不足の人にジムで運動している夢を作る。
筆者が見たペットフートを食べる夢も、本来は、就寝前の間食という悪習慣に対する警鐘ですが、その悪習慣を続ければ、いずれ逆流性食道炎という病気になる可能性も出てくるでしょう。
つまり、こうした耳の痛いお説教のような日常的な夢は、ある意味、私たちが知りたがっている ” 病気を暗示する夢 ” と言うことも出来るわけです。
悪い生活習慣が病気リスクを高めるということは、明らかです。
ただ、人々は潜在意識の警告を ” まだ、大丈夫。病気じゃないから ” と無視し続ける。
そういった意味では、あなたも既に何らかの形で ” 病気を暗示する夢 ” を見ているでしょう。ずっと昔から。
そして、これからも、それを見続けることになるでしょう。
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生きていれば、病気になる可能性がゼロではないことぐらいは、誰でも知っています。
つまり、その可能性を ” 自覚 ” している。
とするならば、そもそも、100%無自覚の人などいるのでしょうか?
健康に関する夢を見たとして、それは、日常では気づきにくい、小さな体の変化を潜在意識が察知したということ。
また、病気に対する恐れも、やはり、メンタルの変化という意味では夢になります。
もし、二週間後に風邪になる予定ならば、何かしらの不調は既に始まっている。
実際に頭痛や倦怠感といった明らかな症状が無くても、睡眠不足が続いているとか、朝食を抜いているとしたら、免疫力が落ちていることぐらいは予想がつくでしょう。
それを自覚するか、しないかは、結局、その人の健康に対する関心の度合いに依存します。
関心が高ければ、” 寝不足 ” という不調に気づくでしょう。関心が薄ければ、それは ” いつものこと ” として片づけられてしまう。
五年後、自分は何の病気になるのか、という予知を夢に期待するなら、それは無意味です。
五年後に向けて、あなたが、今から何をするかによって、その結果は変わるのですから。
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