建設中の建物や工事現場といった場所が
夢の舞台となることがあります。
仮に、夢を見た人が、建設業や
工事に関係する仕事をしている場合は、
それは、仕事に関する夢と判断することが出来ます。
しかし、全く関りのない人が、
そういった夢を見た場合、どう解釈すべきでしょう?
一般的には、工事現場は
” 何かを作りかけている途中段階 ”
を表す解釈されることもありますが、
夢の内容、置かれている状況によっては、
解釈に違いが出る場合もあります。
いずれにせよ、
潜在意識が、夢を作る段階で、
その場所、その職業を選択したことには、
何らかの理由があるはずです。
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抽象化された課題
次は、筆者自身が見た夢の一例です。
デコボコの地面をローラー車が、
ゆっくりと前進しながら潰していく。
少し遠くに大きな起伏がある。
ローラー車が、
整地作業を行っているという夢です。
特にストーリーと言えるものはなく、
筆者が遠くからその様子を眺めている
という状況でした。
この夢は、何を意味しているのでしょう?
*
その当時、仕事やプライベートで
いくつかの用事を抱えていて、
とても忙しい時期でした。
一体、何から手をつけてよいのか、
分からないほどゴタゴタした状況。
とにかく、一つ一つ片づけていくしかありません。
夢の中では、
面倒な用事に煩わされている日常を
” デコボコした地面 ” に例え、
それをローラー車で踏みつぶしているわけです。
作業が終われば、整地された地面のごとく、
全ての課題がきれいさっぱり片付く、
ということなのでしょう。
つまり、潜在意識は、
簡単には片付かない日常的な雑事を
” 整地作業 ” に置き換えることで
一気に処理しようとしている。
では、遠方にある大きな突起は、
何を意味しているのか?
それは、ローラー車で潰すには、
骨が折れそうな地面の膨らみだった。
つまり、雑事の中では、
より大きな仕事を表しています。
多分、健康診断のことだったのでしょう。
幸い何事も無く終わることができましたが、
筆者にとっては心理的ストレスとなっていたようです。
*
このように日常の煩雑な出来事が
抽象的なシチュエーションとして
夢に描かれることは、よくあります。
出来事の全てを映像にするのは骨が折れますが、
それらを抽象化することで
一つの場面として再現できるのです。
それによって、心にひっかかっていることを
簡潔に処理できる。
例えば、現実世界では、
複雑に絡み合った問題を把握するために、
会議室のホワイトボードに簡単な図を描いて、
矢印を入れたり、
AやBといった適当な名前をつたりして、
問題一つ一つの関係を整理したりしますよね。
私たちは、ぼんやりとではあるが、
複雑な物事の全容をホワイトボードに描いた
” 一つの図 ” として認識するわけです。
潜在意識も似たような仕事をします。
人生の大きなテーマを ” 道 ” として例えたり、
災いの全てを ” 一羽のカラス ” に見立てたり、
複雑な心境を ” 一つの表情 ” として伝えたり、
上記の夢では、煩雑な日常を
” 地面 ” として表現している。
現実世界の複雑な出来事が、
こうした抽象的な夢になりやすいというのも、
人がそういった認識の仕方をするためです。
職業の役割
では、工事現場に関する夢をもう一例、紹介しましょう。
次は、とある男性が見た夢です。
作業員の一人として働いている。
すぐ近くで現場監督が、
携帯電話で何やら話し中のようだ。
電話が終わると、
工事を延期することを伝えてくる。
” なぜ、工事現場なんでしょう? ”
彼は筆者に尋ねました。
と言うのも、某食品メーカーに勤めていた彼は、
発注を管理する担当者ということで、
夢の中に出て来たような工事現場とは、
全く接点の無い職業だった。
” 過去にそういったご職業に就いたことも
無いのですね? ”
” ええ、ずっと今の職場で働いていますので ”
” ご家族の誰かが建設業で働いているとか、
家の近くに工事中の場所があるといったことは? ”
” いや・・無いと思います。
車の運転中、通り過ぎたことが
あったかもしれませんが、
これといって印象に残ってないですね ”
彼のように、夢の中で縁も所縁も無い職業に
就いているといった奇妙なシチュエーションは、
時折、起こる現象です。
一体、なぜでしょう?
*
もし、あなたが夢の中で、自分とは
全く無関係な職業に就いていたとしたら、
それは、潜在意識が、そこまでして
取り入れなければならなかった演出
ということです。
つまり、その職業でなければならない
何らかの理由がある。
その場合は、職業の役割について
考えていく必要があります。
例えば、警察官であった場合、
犯罪者を取り締まる立場ですから、
自身の中の邪悪な部分を抑圧するために
選択したと考えることが出来る。
しかし、逆に、警察官の強い権限を使って、
自分の中のわがままな考えを
” 正義 ” という名目の下で
押し通そうとしているのかもしれない。
捉え方によっては全く正反対の
解釈になることもあります。
それを判別するためには、結局、
夢を見た背景と夢の内容の全体から
文脈を理解するしかないのです。
では、今回の夢の場合はどうでしょう?
*
” あなたは、工事現場で
何をなさっていたんでしょう? ”
” 大きな機械を動かすために
操縦席に座っている状態でした。
それで、現場監督らしき人が
作業を止めると言い出して・・ ”
” 電話をしていたとありますが、
誰からですか? ”
” 多分、監督よりも偉い人だと思いますが、
取引先か、会社上層部なのか、
そこまでは分かりませんでした ”
” 大きな機械というのは? ”
” 何でしょう? ブルトーザーなのか、
パワーショベルなのか分かりませんが、
とにかく大きな機械でした。
操縦席から降りれば全体を確認できたかも
しれませんが、降りなかったので・・ ”
” 夢の中では、その機械を操縦できる
という認識だったのですか? ”
” ええ、なぜか、何年もやってきた
仕事のように思っていました。
なぜでしょう? 触ったこともないのに・・ ”
彼が夢の中で持った奇妙な認識。
” 大きな機械 ” は、何か別の事柄を
物体として例えた結果なのかもしれない。
工事現場と彼の本来の仕事とは
共通点が無いように思えますが、
どちらも仕事であるということから、
やはり、彼の仕事について、
もう少しリサーチする必要があると感じました。
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重責と権限
” あなたのお仕事について、
お尋ねしてもよいですか? ”
” ええ、どうぞ ”
” 発注のお仕事というのは、どういった? ”
” 食品製造に必要な原材料の仕入れ
などをやっています。例えば価格交渉とか ”
” それは、かなり、
テクニカルなお仕事なんですか? ”
” そうですね・・交渉力と言いますか、
そういうのは要求されると思います。
取引先は高く売りたい、
こっちは安く仕入れたいというところで
話をまとめるのが大変ですね ”
” 重要なお仕事ですね・・ ”
” 一回の取引でも大量の原材料が動くので、
価格によってはかかるコストが
全然、変わってきます”
” それは、あなたお一人で? ”
” ええ、社長には、もう一人
増やしてくれと頼んではいるんですが ”
” そのお仕事は、どれぐらい
お続けになっているんですか? ”
” ああ、もう、4、5年ほどにはなるのかな・・ ”
*
彼の一連の話から察するに、
夢の中の ” 大きな機械 ” とは、
会社の中における彼の大きな影響力を
物体化したものと考えることが出来そうです。
つまり、彼の采配次第で
経営に大きな打撃を与えることも、
利益に貢献することも出来る。
機械操作を何年も前からやっている
という奇妙な認識は、彼の勘違いではなく、
何年も前から携わっている発注業務が
置き換わった結果だから。
では、なぜ、彼の潜在意識は、
本来の仕事を ” 大きな機械 ” に
置き換えたのでしょう?
それが ” 機械 ” ということならば、
操縦席から降りれば、重責という
荷物を肩から下ろすことが出来る。
現実世界では彼の代役はおらず、
簡単に仕事を放棄することも出来ない。
工事現場では、全責任を負う現場監督がいて、
そこでは、彼は一作業員ですから、
ただ、指示を待っていればよいのです。
*
さて、電話中の現場監督は
一体、誰の指示を仰いているのか?
現場監督といっても、それは、彼が
責任を回避するためにキャスティングした
” 身代わり ” です。
夢を作ったのは彼自身ですから、
夢の世界において、
彼よりも偉い人物は存在しない。
つまり、電話の相手は彼自身ですが、
その彼が、工事をストップするように指示を出している。
なぜ、止める必要があったのでしょう?
” 夢の舞台が工事現場ということですが、
何の工事だったか覚えていらっしゃいますか? ”
” うーん・・何の工事かまでは分かりませんが、
現場監督が電話の相手に向かって、
「今から変更は出来ない」というような
ことを言っていました”
” それは、スケジュールの変更について? ”
” 建設中のものを壊すという指示だったと思います。
それで、しばらく言い合いをしていました。
仕方なく、一旦、延期ということに・・”
” 結論を持ち越した? ”
” そうですね。そんな感じでした ”
*
もし、彼が今の仕事に嫌気が差し、
距離を置きたがっているというならば、
彼一人が操縦席から降りてしまえば
いいような気もします。
降りる口実が欲しければ、夢の中で
機械を故障させることも出来たでしょう。
しかし、そうではなく、
工事全体を振り出しに戻そうとしている。
一体、なぜでしょう?
” 途中経過 ” としての表現
” 会社をお辞めになることを考えたりは? ”
” ああ・・はい、あります。
夢だけで、それも分かるんですか? ”
” いや、今のあなたが振り出しに戻すとしたら、
ご自身のキャリアぐらいしか
思いつきませんでしたので・・ ”
” 最近、肉体的にも精神的にも、
ちょっと限界に来ていまして、
そのことについて家族とも話していたんです ”
この夢における ” 大きな機械 ” は、
彼が背負っている責任であり、職務です。
それを操縦しながら、これまで
自分のキャリアを築き上げて来た。
つまり、” 工事現場 ” は、
彼の人生の途中経過を切り取った象徴です。
そこに一本の電話が入ってくる。電話の主は、
築き上げてきたものを振り出しに戻せと迫る。
現場監督は、身代わりであり、
彼の中の現状維持を望む側面が擬人化された存在。
彼自身は ” 傍観者 ” として夢に参加しています。
やがて電話交渉は決裂し、結論は延期となる。
この夢は、彼の中の
内面的葛藤が描かれています。
*
さて、今回は工事現場に関する夢について
解説していきました。
紹介した二例の夢では、
” 途中経過 ” を描いてはいますが、
それが必ずしも ” 工事現場 ” である必要は
無いのかもしれません。
坂道を登っている夢であっても、
それは表現出来ますし、
車の渋滞に巻き込まれる夢であっても、
” 途中経過 ” を描いているということになります。
待ち合わせをしていて
誰かを待っているというのも、
食事をとるのも、掃除をするのも、
何か目的があり、未達成の状態であれば、
全て ” 途中 ” です。
人生とは、生から死へと向かう途中経過
そのものですから、人生の一部を描いた夢が
途中経過であるというのは、
当然のことなのかもしれません。
つまり、それが工事現場であっても、
そうでなかったとしても、
夢とは、そもそも途中経過を描くものです。
*
もし、” 工事現場 ” が夢の舞台となった場合、
途中経過であるということとは別に、
そのロケーションを採用した理由について
考えてみましょう。
最初に紹介した整地作業の夢では、
日常の複雑な事柄をシンプルに表現し、
解決するために、デコボコした地面を
ローラーで潰すというシチュエーションによって
” 抽象化 ” を行っていた。
次に紹介した夢では、
これまで作り上げて来たキャリアを放棄するか、
どうかという葛藤に焦点が当たっていました。
そこには大きな機械があり、現場監督がいて、
作りかけの ” 何か ” があった。
この夢も、人生の解決困難な問題を
単純にしているという点では、
” 抽象化 ” と言えるかもしれません。
つまり、こういったことです。
例えば、あなたが自分のミスで、
同じ職場で働く人々に迷惑をかけてしまう
という出来事があったとしましょう。
それから、あなたは次のような夢を見る。
室内をあちこち歩き回った後に
自分が靴を履いたままだと気づく。
振り返ると足跡が続いている。
職場であった出来事と
この夢は、全く無関係に見えますが、
本質的な部分には共通点があります。
” 自分のせいで周囲が悪影響を受けた ”
という点です。
潜在意識は、出来事の本質的な部分のみを
取り出し、様々なシチュエーションに
当てはめて夢を作る。
この性質を把握しておく必要があります。
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