夢の中の ” 親戚 ” |見知らぬ家族のような人々

夢の中に ” 親戚 ” が登場する。

それは、実在する人物の場合もありますが、見知らぬ人なのに、夢の中では、なぜか、親戚という設定になっている不可解なケースも。

また、親戚と言っても、人によっては、その付き合い方は様々でしょう。

家が近くで古くから交流があったとか、ほとんど付き合いが無いという場合もあります。その関係性によっても、夢に登場する ” 親戚 ” の意味は変わります。

今回は、架空の親戚が登場する夢、そして、実在の親戚が登場する夢、二つの具体例を挙げながら詳しく解説していきましょう。

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駅のホーム

まずは、架空の親戚が登場するケースから、次は、とある女性が見た夢の一例です。

何人かの親戚と列車に乗る予定。
 
発車時刻が近づいている。
 
誰かが 言う。
” まだ一人来てない ”
 
時間になったので仕方なく、来ている親戚だけを乗せ、自分は遅れている一人を待つために駅に残る。
 
” 後から行く ” と告げ、動き出す列車を見送る。

夢の中では ” 何人かの親戚 ” が登場しています。そして、実際には姿を見せませんが ” 遅れている一人 ” が登場している。

この夢を見た女性の説明では、登場した人々は、実在の親戚ではなく ” 見知らぬ人物たち ” しかし、夢の中の彼女の認識では、その集団は ” 親戚 ” という設定だったと言います。

一体、この奇妙なシチュエーションは、何を意味しているのでしょう?

さて、夢の内容を掘り下げる前に ” 親戚 ” と ” 家族 ” の違いについて、少し考えてみましょう。

普通ならば、親戚よりは、家族の方が近い存在だと言えますが、今回の夢では家族は全く登場していません。

潜在意識は、なぜ、身近な家族よりも、親戚をキャスティングしたのか? しかも見知らぬ人物に ” 親戚 ” という役割を与えています。

まず、この夢において、潜在意識があえて家族を使わなかったのは、家族のイメージが固定化されているから、という理由が考えられます。

例えば、夢のストーリーに ” 通行人A ” として、エキストラが一人必要だったとしましょう。

果たして潜在意識は、それほど重要でない ” 通行人A ” の役に母親のイメージを割り当てるか?

もし、道を歩いている途中に母と出会えば、” こんなところで何してるの? ” と声をかけてしまいそうです。そうなると、潜在意識の意図するストーリーに不必要なノイズが紛れ込むことになる。

つまり、その人物には ” 母 ” というイメージが固定化されているために、エキストラ役を割り当てることが出来ない。

映画の世界でも有名な俳優が主演になると、俳優のイメージが先行して、作品の方が引っ張られてしまうことがあります。それと同じ現象です。

つまり、潜在意識が家族をキャスティングしなかったのは、その夢が伝えるべきテーマに ” 家族 ” のイメージは不適切だったから。

そもそも、それは夢ですから必要なら芸能人でも、架空の人物でもノーギャラで起用できる。

では、今回の夢に登場している見知らぬ親戚たちは、一体、何者なのか?

それは、彼女の ” 分身 ” です。

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見知らぬ家族たち

登場している ” 何人かの親戚 ” は、人物一人一人に焦点が当たっておらず、あくまで ” 何となくそこにいる集団 “ という、ぼんやりとした認識の中にあります。

夢の作り手である潜在意識にとっては、集団の人数、誰がいるのかということも気にしていません。

むしろ、曖昧にしておくことで柔軟なキャスティングを可能にしている。

結局、そこにいるのは、全員が彼女自身なのです。

彼女にとって ” 親戚 ” とは、顔は思い出せても名前が出てこないとか、いつの間にか一人生まれて増えているとか、離婚したとか、再婚したとか、よく把握出来ない人々。

日常生活においては ” 遠い存在 ” しかし、血縁や家系という意味では縁の深い存在。言わば、

” 本来は家族ではないが、
家族と言えば家族のような人たち ”

彼女の潜在意識は、家族とは別の存在でありながらも、ある意味、自分と距離の近い ” 親戚 ” という立場を利用して、自らの ” 分身 ” を表現しているのです。

ただし、この解釈は、あくまで彼女の場合に限ったものです。もし、親戚との交流が深い場合、それがイメージの固定化となり、あえてキャスティングから外される可能性もあります。

では、今回の夢を振り返ってみましょう。

駅のホームで彼女は、自らの分身である親戚たちと列車に乗ろうとして、一人いないことに気づく。

一体、彼女は、分身たちを使って、何をしようとしているのでしょう?

夢の中の ” 駅 ” が実在の場所でない場合、それは、しばしば ” 人生の出発点 ” を表していることがあります。

” 出発点 ” と言うと、進学や転職といった大掛かりな人生のイベントを連想してしまいますが、日常生活の中で気持ちを新たにするといったことも、一つの ” 出発点 ” であり、気持ちを切り替える時期によく見られる夢です。

例えば、映画を観て影響されたり、友達に励まされてやる気を取り戻したリ、誰かに怒られて気を引き締めるような出来事など、日常的な気分の変化もそれに入るでしょう。

また、選択される舞台が駅とは限らず、” 港 ” や ” 飛行場 ” なども、そこからどこかへ出発する、という意味では同じシチュエーションです。

さて、この夢を見る限り、彼女は何らかの気持ちを切り替える時期に差し掛かっているようです。

それについて尋ねると、最近、バイト先で人間関係が上手くいっていないと言います。

バイトを始めてからしばらくして、ようやく仕事も覚えて慣れ始めた時期、シフトのことで問題が起き、それがきっかけで人間関係がこじれだした。

彼女としては、すぐに辞めるという決断をすることは出来なかった。

この夢は、彼女の心の迷いが描かれています。

夢の中で自身を何人かの ” 分身 ” という形で分割し、その一部を列車に乗せて別の場所へと送り出そうとしています。

そして、自分だけは、遅れている一人を待つために駅のホームに残る。

このように自身を何人かに分割して ” 複数 ” として扱う手段は、潜在意識が使う技法の一つです。

自らを複数にすることで、葛藤する二つの感情の割合に応じて、別々に行動させることが出来る。

この夢の場合、次の場所へ行きたいという気持ちが、現状維持を望む彼女を残して、親戚を送り出している。

” 親戚 ” は彼女自身でもあるので、自らを折半して、その半分に別行動を取らせているのです。

親戚のほとんどは列車に乗ったということなので、彼女の中で変化を望む気持ちの方がより大きい、と読むことも出来ます。

さて、彼女自身は、遅れているもう一人の親戚を待つために駅のホームに残っています。

そして、その一人は、あくまで ” 遅れている ” だけであって ” 来ない ” という設定ではありません。

また、彼女自身も親戚一同を見送る際に ” 後で行く ” と言っている。

この設定からも、現在の職場から、いずれは離れるつもりでいるという彼女の気持ちが伺えます。ただ、今は、まだ、列車に乗ることは出来ない。

最後まで夢に登場することのなかった ” もう一人の親戚 ” は、現状維持を望む彼女の気持ちを象徴する人物。

潜在意識は、二つの相反する感情の双方を処理するために、彼女の半分を列車に乗せ、もう半分を駅のホームに残した。

気持ちの整理をつけるための ” 妥協点 ” を探っているのです。

もし、夢の中に親戚が登場し、それが見知らぬ人物の場合は、潜在意識が、なぜ、” 親戚 ” という設定を選んだのかを考える必要があります。

実在の人物ではなく、あえて、見知らぬ人物を起用した理由を探るのです。

この夢では、自分に近い存在であり、実在する家族以外の選択肢として ” 親戚 ” が登場していました。

仮に、家族、親戚以外で利用できそうなイメージとして、クローンが登場したら・・

・・やっぱり変ですよね。

自分と瓜二つの人物が、集団で駅にいたらびっくりしてしまうでしょう。それは、潜在意識の伝えたいテーマとは関係の無い要素です。

また、” 親戚 ” のイメージを利用する例として、ルーツへのアクセスがあります。

例えば、何らかの理由で、自身の生い立ちやこれまでの人生を省みる機会が訪れた時、架空の旧家に訪れて、見知らぬ先祖の末裔と話をするといった夢を見る。

” なぜ、こうなってしまったのだろう? ”

実際は、抱えている問題の根本原因を探すために、記憶をたどっているだけですが、夢の中では ” 家系 ” という構造的イメージを遡って答えを得ようとしています。

類似構造を使って、シチュエーションだけを置き換えるのです。

実在する親戚

では、次に実在する親戚が登場した場合は、どう解釈すればよいでしょう?

もし、あなたの夢に実在する親戚が登場したなら、その人について考えてみてください。何かしらの記憶があれば、それを掘り下げていきます。

例えば、幼少期によく遊んでもらったという過去の思い出があるなら、その記憶は夢を読み解くヒントになるかもしれません。

今でも覚えている特定の出来事があるなら、それについて考察します。

次は、とある女性が見た夢の一例。

鼻水を垂らした少年が、砂利道に落ちている石を拾い集めている。

彼女の話では、夢に登場した人物は幼少期に一度だけ遊んだことのある親戚の男の子だったと言います。

年齢は二つほど上で、鼻をすすっていた姿が印象に残っていると。

「現在、交流の方は?」

「いいえ、全く。ご両親が離婚されて、母親と一緒に遠方の実家に帰った、という話は聞きましたが・・ ”

「その後、一度もお会いしていない?」

「ええ、その子のお父さんが、私の母の兄にあたる人で、お母さんは違うので・・」

「なるほど、親戚として会う機会が、ほとんど無くなったと」

「はい」

「先ほど、その子と一度だけ遊んだ記憶がある、と言いましたが、何か印象に残っている思い出が?」

「ええ、あの日のことは今でも覚えています。私とその子が公園で遊んでると、どこからか大きな野良犬がやってきて、襲われかけて・・」

「無事だったんですか?」

「その子が石を投げて、追い払ってくれたんです。私は泣きながら、その場に座り込んでいました・・
・・・・
この夢は、あの時の事と関係があるんでしょうか?」

「何か、お気づきになったことが?」

「ええ、今、思ったんですが・・」

ここで彼女は、夢の中で少年が石を拾い集める理由を考察しました。

つまり、少年は、彼女を守る準備をしている。

ここで二通りの解釈が考えられます。一つは、現在、彼女に身を守らなければならない状況がある。

もう一つは、今後訪れるであろう災いに備えている。

「現在、何かから攻撃を受けている、といったことに心当たりは?」

「攻撃ですか?」

「そうですね・・・物理的な攻撃とは限らず、例えば、職場で精神的なハラスメントを受けているとか、実在の親戚が登場しているので、家族、または、親族間のトラブルとか・・」

「特に、思い当たることは・・・
でも、夢を見た前日に、母に嫌なことを言われて・・・そのことかな?」

「何を言われたのですか?」

「ああ・・いつまでもあなたの面倒を見ていられないと・・・」

「それは、どういう意味ですか?」

「多分、私が親に頼り切った人生を送っているので、いつかは一人になってしまうことを言いたかったんだと思います」

「ご実家でお暮しに?」

「ええ、両親と私の三人で暮らしてます。それを言われた後、母とちょっとした口論になってしまって・・分かってはいるんですが・・」

ここまでの彼女の話から察するに、夢の中で少年は、待ち受ける現実から彼女を守ろうとしていたのでしょうか?

「幼少期の思い出について、もう少し聞かせてください。お二人で公園に行ったと言いましたが、その日が初めて出会った日なんですよね?」

「はい。実家のすぐ後ろが公園なので、そこで遊んでいました。確か・・私の母と男の子のお母さんが、大事な話があるとかで家の中で会話を」

「その方は、滅多に来られない?」

「始めてだったと思います。
今、思えば、故郷に戻る前に挨拶しにきてたのかも・・

そうか・・あの日だったんだ」

その日、彼女は少年に出会い、窮地を救われ、そして、別れを経験した。

その一日は、彼女にとって人生の縮図のような体験だったのでしょう。潜在意識は、その記憶を利用して大切な何かを描いた。

「思い出しました。夢の内容」

「何を思い出されたのです?」

「男の子は、集めた石を手のひらに乗せて、私に差し出して、それから微笑んで・・そこで目が覚めました」

「その意味が分かりますか?」

「自分の身は自分で守らないと・・
この夢の意味は、そういうことですよね?」

どうやら、暗示では無かったようです。

この夢で潜在意識は、両親がいずれ寿命を全うし、彼女の人生の外側へと出て行ってしまうという状況を ” 家系 ” の外側に出ていった実在の母子として例えています。

そして、幼少期に体験した公園での出来事からインスピレーションを得て、今の彼女にとって大切なメッセージを伝えた。

もし、夢に実在の親戚が登場した場合は、思い出の断片だけにフォーカスを当てるのではなく、その親戚との関係性や関連した現実世界でのストーリーを視野に入れながら、精査していく必要があります。

例えば、あなたから見た甥っ子は、家系として見れば三親等にあたります。

そこであなたが、甥っ子が家に尋ねてくる夢を見る。

夢に登場する ” 家 ” があなたの人生そのものを表すならば、あなたが直接関わっている人の知り合いが、今後、あなたの人生に関わってくる暗示、という解釈も可能です。

この場合、夢の中の甥っ子は、間接的関係性を持つ人物を表しており、三親等ですから、知人の知人という位置関係になります。

要するに、抽象的な関係性を ” 家系 ” という具体的なものとして表現する潜在意識の性質を理解しておく必要があります。

これは、” 家系 ” だけの話ではなく、あらゆる抽象的なものが潜在意識の扱う対象です。

 

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