キーワード検索で探せない夢|夢の生まれる場所

キーワード検索では、どうしても探せない
ものがあります。

それは、” 文脈 ” です。

例えば、保険会社のセールスマンが
尋ねてくる夢を見たとします。あなたは
夢の意味を調べるためにキーワードに
次のように入力する。

” 夢 保険会社 訪問 心理 ”
” 夢 セールスマン 心理 ”

多分、まともな回答は得られないでしょう。
少し趣旨がズレますが、次のように入力
した方がよいかもしれません。

” 夢占い 保険会社 セールスマン ”

あなたはスピリチュアルな回答を
求めていたわけではなく、単に深層心理
について知りたいだけだったが、
回答を得られそうなキーワードが
” 夢占い ” しかないという状況です。

夢占いでも深層心理の部分をフォロー
している場合がありますので、今は、
それで我慢しましょう。

もしかしたら運よく、保険に加入する夢、
もしくは、セールスマンが訪ねてくる夢
といった似たような設定について
解説している夢占いサイトを見つける
かもしれません。

しかし、保険会社のセールスマンが
尋ねてくるという完全一致の設定に
ついての解説ではない。

要するに、夢の意味に限らず、
あらゆる情報について言えることですが、
キーワード検索で探せる情報には、
よほど単純な質問でもない限りは、100%
正しい回答を期待できないということです。

答えているようで論点がずれている。
ありきたりな回答しか返ってこない。
回答自体が間違っている。

そして、人生の中で自分の力では
解決できない問いとは、常に複雑です。
AIに解を求めても、何も答えてはくれない。

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胸に開いた穴

夢とは、特定の状況下だけで使われている
隠語のようなものです。

例えば、とある掲示板でピーナッツを
販売する業者がいるとしましょう。

でも、少し変です。それは、1個とか、
10個単位で取引されている。

もう、この時点で ” ピーナッツ ” という
単語が本物のビーナッツではないこと
ぐらいは分かりますよね?

一見すると普通の単語に見えるが、
そこには裏の意味があり、界隈に
精通している人にだけは意味が伝わる。

AIはそれを識別することは出来ないが、
人ならば、その単語の使われる場面や
背景から ” 何か変だな? ” と察することは
出来るでしょう。

言い換えるならば、夢とは、あなたと
あなたの潜在意識の間で交わされる
隠語による会話なのです。

ゆえに、夢の意味をインターネットで
調べるというのは、夢解釈のアプローチ
としては返って遠回りになる。

隠語の意味を知りたければ、ルールに従う
必要があります。そして、そのルールを
決めたのは、あなた自身です。

次は、とある女性が見た夢の一例。

自分の胸のあたりが四角く切り取られ
ポッカリと穴が開いている。

体の一部に穴が開くという
とてもショッキングな内容の夢です。

彼女もこの夢を見たときはびっくりして、
すぐにネットで夢の意味を調べた。

しかし、様々なキーワードを入力して
調べても当てはまりそうな回答は無く、
やむなく筆者に夢鑑定を依頼したという
ことでした。

さて、この夢は、一体、
何を意味しているのでしょう?

筆者は、まず、詳しい状況を確認するため、
いくつかの質問をしました。

四角く切り取られていたというのは、
どれぐらいの大きさだったか?

手術を受けたように痛々しいもの
だったのか?

彼女は、それは ” 傷 ” ではないと言います。

胸の当たりに、丁度、文庫本ほどの
大きさの長方形の縦穴が開いていた。

血は全く出ておらず、内臓が見えていた
わけでもなく、まるで異次元への入り口
のように、くっきりとした輪郭の穴が
ぽっかりと開いていた。

筆者は、この不可思議な描写に一つ
思い当たることがありました。それは
スペインの画家サルバドール・ダリが描いた
1950年の作品 ” ポルト・リガトの聖母 ” です。

この作品は聖母の胸部に四角い穴があり、
そこに胎児が腰かけているという幻想的な
作品です。

取り合えず彼女にその絵を見てもらい、
知っているかと尋ねました。
知っているならば、何かのヒントになる
かもしれない。

しかし、彼女は初めて見たと答えます。

ただ、その絵を見て彼女は、強い関心を
持ったようでした。それで、筆者に
次のように尋ねたのです。

” この絵はどういった意味なのですか? ”

無論、筆者は芸術評論家ではありません
ので、ダリが精神世界を描く芸術運動、
シュールレアリズムに参加したこと、
そして、多分、絵は精神世界を描いて
いるのだろうと簡単に説明しました。

説明を聞いた彼女は、自分の夢について
次のような考察をしました。

” もしかして、四角い穴は、
精神世界を表しているのでは? ”

筆者も彼女の分析と同じ意見だったのです。

” 穴の向こうには、何があったのですか? ”

筆者は尋ねました。

彼女は、うつむいて胸部を確認しただけ
なので、その奥に何があったのかは
見えなかったと言います。

ただ、人に見られてはいけないと思い、
慌ててそれを隠すため、近くにあった
衣類をつかみかかったところで目が覚めた。

もしかすると、彼女の胸元にぽっかり
開いたものは ” 穴 ” ではなく、
” 窓 ” ではないだろうか?

筆者がふと感じた疑問について話すと、
彼女は何かに思い当たったようでした。

彼女いわく、
自分は感情が顔に出やすいタイプで
取り乱したり緊張する場面があると、
赤面し、表情がこわばってしまうという
悩みを抱えていると。

以前、大勢の社員の前でそのことを職場の
上司に言われて、とても恥ずかしい思いを
したことがあった。

彼女は言いました。

” 隠そうと思っても顔を見ると分かるらしく、
心の中を見透かされているように
感じるんです ”

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失われた扉

つまり、彼女の胸元に空いた縦長の穴は、
いわゆる ” 心の窓 ” をそのまま映像化した
ものだったのです。

窓ならば扉があるはずですが、夢の中では
扉の描写が無かった。つまり、本当は
ついているはずのものが無いという状態を
描いているのです。

扉を失ったそれが ” 穴 ” のように見えた。

それは、彼女の悩みである顔の表情で
心の中がまる見えになってしまうという
状態を表しており、表情を改善するのは
難しいですが、胸元の穴ならば衣類で
隠すことが出来る。

彼女は、夢の中で自身のコンプレックスの
場所を胸元に移し替えて、どうにか解決
しようとしているのです。

夢とは、極めてプライベードな創作物。
そこには夢を見た人だけのストーリーが
ある。

今回の夢に関しては、彼女が抱えている
悩みが胸元に開いた穴という形で
描かれていた。無論、その経緯を
知らなければ、夢の意味は分からないまま
になっていたでしょう。

夢は、単語の集合体として構成されている
わけではなく、まさに ” 文脈 ” によって
作られている。

意味は単語に与えられるのではなく、
文節から文節への ” 流れ ” に与えられる
のです。

ここで言う文節とは、文章の構成要素
のことではなく、私たちが生きていく上で
培った記憶、体験、感情、そういった
精神的な物語の一場面、一場面のことです。

丁度、映画のスクリーンショットだけを
見ても何も伝わらないのと同じように、
物語の一場面だけを切り取っても何も
見えてはこない。

キーワードで何かを検索するという行為は、
まさに情報の ” 切り取り ” です。

あなたが何か悩みを抱えていたとして、
教会の懺悔室で牧師さんに告白したとします。

多分、今のあなたに最も響く言葉を
聖書の一説から引用してくれるでしょう。

もしくは、あなたが聖書の愛読者ならば、
どこかの一説から、自ら新しい解釈を
見つけだすかもしれない。

” 答えはここにあった ” と。

検索エンジンが聖書の一説を検索結果
として表示することはありませんし、
新しい解釈を作り出すこともない。

もし、あなたが夢を見て、その意味を
知りたくなったとしたら、まず、
ブラウザを閉じることをお薦めします。

そして、その夢に誰が登場しているとか、
何をしていたか、舞台はどこかという
キーワード検索出来そうな ” 単語 ” を
探すことをやめる。

夢から ” 隠語 ” だけを切り離さないで
ください。その隠語は、あなたの作った
ルールの中でようやく意味を持つのです。

そして、あなたの私生活や抱えていること、
あなたのプライベートについて振り返って
みてください。

夢は、そこから生まれる。

でなければ、胸元に空いたものが
” 穴 ” だと思い込んだまま、無意味な
答え探しを繰り返すことになるでしょう。

” 答え ” とは、あなた自身の中にしかない。
なぜなら、夢はあなたが作りだしたもの
だからです。

 

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