夢の中で見知らぬ ” 部外者 ” が登場するという夢。
例えば、自宅のリビングでくつろぐ
家族の中に見知らぬ人物が紛れ込んでいたり、
なぜか、職場で見知らぬ人と
一緒に仕事をしているといった設定。
一見すると、その謎の人物は、
ストーリーの中で取り立てて重要な役割を
持っているようにも見えない。
そして、何となくその人物に感じる
場違いな ” 違和感 ”
しかし、そこにいるということは潜在意識が、
その人物をキャスティングした理由が
あるはずです。
一体、その人物はどこから来たのでしょう?
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夢の中の ” 思い込み “
次は、とある女性が見た夢の一例です。
私、恋人、そして見知らぬ男性の三人で
車に乗っている。
見知らぬ男性が運転席、恋人が助手席、
私は後部座席に座る。
全員、沈黙している。
走っている方向が、全く逆。
夢の中で彼女は運転席に座っている男性を見て、
ずっと ” 誰、この人? ” と思っていたそうです。
目覚めてから思い出してもそのような人物は
身の回りにはおらず、全くの架空の人物だった。
筆者は、尋ねます。
” その男性に何か設定はありましたか? ”
通常、架空の人物が登場する場合、
友人であったり、親戚であったり、
職場の同僚であったりと、
夢の中での設定というのがあります。
しかし、今回の夢では、
そのような設定は一切無く、彼女自身、
なぜ、男性が運転している車に二人が
乗っているのかも分からなかったと言います。
助手席に座る恋人の知り合いなのかとも考えたが、
一言も会話を交わすことなく、
見た所、そうでも無さそうだった。
*
筆者は、質問を続けます。
” その男性の印象はどうでしたか? ”
彼女は、男性は運転に集中しているようで、
話しかける隙は無かったと言います。
さて、夢の作り手は彼女ですから、
この見知らぬ男性を運転席に配置したのは、
彼女自身です。
そして、話しかけづらい状況を作っているのも
彼女自身の演出。
なぜ、彼女は、運転席に見知らぬ男性を
座らせているのでしょう?
座席の位置
夢の内容を振り返ってみましょう。
運転席に見知らぬ男性、助手席に恋人、
後部座席に自分・・
筆者には、
この座席の配置が妙に不自然に感じたのです。
自分と恋人が前の席、
見知らぬ男性が後ろの席でもなく、
見知らぬ男性が運転席、
自分と恋人が後ろの席でもない。
筆者は、尋ねました。
” あなたは後部座席のどちら側に
座っていましたか? ”
彼女は ” 助手席側 ” と答えます。
” つまり、恋人の真後ろに座っていた? ”
” そうです ”
” 運転席側に座ることは可能でしたか? ”
” スペースは空いているので
座ろうと思えば可能だった思います ”
運転席側に座れば、斜め前に座る
恋人の横顔を確認出来ます。
しかし、彼女は、あえて恋人の死角に座ってる。
*
次に、筆者は車の向かう先が
全く逆方向という部分について尋ねます。
” 車は、逆方向に走っていたそうですが、
つまり、目的地は別にあったということですか? ”
彼女は、次のように答えます。
” いえ、はっきりとした目的地というのは無く、
絶対にこっちじゃないという認識だけがありました ”
続けて、次のように言いました。
” 方向が真逆なので、そのことを伝えたかったが、
運転している男性に話しかける隙が無くて
言えませんでした ”
そして、助手席に座る恋人が黙って乗っていることに
内心腹を立てていたと言います。
” 何で黙ってるの?
隣の男に言ってよ。逆だって・・ ”
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理想と現実
” 恋人との交際期間はどれぐらいになりますか? ”
” 一年程です ”
彼女は、現在、夢に登場した恋人と交際中で、
一年が経過しようとしていました。
そして、最近になって、二人の間に ” ズレ ” を
感じるようになったと言います。
” ズレ ” というのは会話が噛み合わないとか、
その日の気分がお互い合わないとか、
会える日や時間帯が合わないなど、
日常のちょっとしたことなのですが、
それが、最近、度重なるようになり、
彼女自身、合わせることが
段々と面倒になってきているということでした。
” 彼の方も何となく会いたがらない雰囲気なので、
私も気まずくなって・・”
筆者はこの話を聞いて、この二人が倦怠期に
入りかけているような印象を持ちました。
そして、尋ねます。
” 現在の恋人と、
結婚について考えたことはありますか? ”
” 最初は、その方向に進んでいると思っていました。
でも、最近になって分からなくなってきたんです ”
*
夢の中で彼女が恋人の死角に座るのは、
彼と距離を置きたいという心理。
車が彼女の意に反する方向に進んでいるのは、
恋人との関係が、彼女が望んでいる形とは
全く違う方向に進んでいるということを
表しています。
潜在意識は、恋人との関係が
彼女の描く未来からかけ離れ始めている
という状況を車のドライブに置き換えて
描いています。
では、運転席に座る見知らぬ男性は、
何を意味しているのでしょう?
おとり
今回の夢のテーマが ” 恋人との距離感 ”
ということならば、見知らぬ男性は、
必要ないようにも思えます。
シンプルに恋人が運転席、
その後ろに彼女が座れば
それで成立するような気もします。
しかし、潜在意識は、あえて
見知らぬ男性をストーリーにねじ込んでいる。
もし、彼女が単に恋人と距離を置きたいと
考えているならば、夢の中で
同じ車に二人が乗る必要はありませんし、
そもそも恋人を登場させる必要すらありません。
彼女は、恋人と距離を置きつつも、
完全に離れてしまうことまでは
望んでいないのです。
運転席に座る見知らぬ男性は、
恋人と彼女の間に配置された
” 緩衝材 ” の役割を与えられています。
間違った方向に車を走らせているのは、
自分でも、恋人でもなく、あくまで見知らぬ男性。
そうなれば、二人の関係が
望まない方向に向かっているとしても、
二人に責任はありません。
運転席の男性に話しかけずらい状況を
作っているのも彼女自身による演出。
この事態を招いた張本人が見知らぬ男性である限り、
悪いのは自分や恋人ではないと思うことが
出来るからです。
*
見知らぬ男性には、緩衝材の他に
もう一つ役割が与えられています。
男性の存在によって
車内に気まずい沈黙が漂っている。
恋人と彼女との間にある気まずさを誤魔化すために
潜在意識は男性を配置して、彼女に
車内の気まずい沈黙は赤の他人が同乗しているからだ
と思わせようとしています。
言わば、男性は気まずさの原因を引き受けるための
” おとり ” です。
助手席で黙って座っている恋人。
彼女は自分の気持ちを察してくれない恋人に
内心腹を立てている。
この時の恋人に対する苛立ちは、
二人の距離が離れてしまった原因は
本当は恋人にあるという彼女の本心なのです。
つまり、
” 何で黙ってるの? 私たちこれでいいわけないよね ”
という意味です。
この夢は、恋人に対する苛立ちを緩和するために
作られたのです。
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全てに意味がある
今回の夢は、彼女と恋人、
二人の問題を描いているわけですが、
そこに、一見、無関係に思える人物が登場し、
ストーリーを複雑にしています。
しかし、不要とも思える人物には、
重要な役割が与えられていた。
もし、夢に見知らぬ人物が登場し、
その人物に対し何かを感じたというなら、
やはり、そこには何らかの意図があるのです。
まず、その人物がいなかったら、
そのストーリーはどうなっていたかを
考えてみてください。
*
例えば、
あなたが暗い森の中にいるとしましょう。
そして、なぜか見知らぬ子供を連れている。
もし、子供がいなければ、
どうだったのでしょう?
暗い森の中で、あなたは一人ぼっちで
途方に暮れていたかもしれません。
しかし、あなたよりも弱い存在が
すぐそばで指をくわえて
あなたの顔を見上げていたらどうでしょう?
あなたは、きっと、
” 私が、しっかりしなきゃ ”
と自分を奮い立たせる。
強くなるために、
弱き者をそばに置いたのです。
夢の中の登場する全てのものに意味がある。
無意味な存在など無いのです。
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