夢の中で、あなたの周りに家族や友人、
職場の同僚、過去の人物、
もしくは、見知らぬ人物がいて、
行動を共にしているというケース。
車の助手座席に乗っていたり、
黙って後ろに立っているだけだったり。
その ” 同伴者 ” は、ある時は、
偶然、そこに居合わせたような
シチュエーションで登場し、
またある時は、ストーリーの流れの中で
必然として登場している場合もあります。
どちらかと言えば、積極的に
ストーリーに関わるというよりは、
控えめな形で登場している。
一見、ストーリーとは
あまり関係が無さそうに見えるその人物は、
なぜ、登場しているのでしょう?
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ここではない、どこかへ
次は、とある女性が見た夢の一例です。
列車に乗っている。
どこか遠くに旅をする予定。
少し離れた後ろの座席で、
若者がふざけて騒いでいる。
聞きなれた声だと思い振り返ってみると、
兄貴が、友人らしき男性
二、三人と宴会をしている。
この夢を見た女性に尋ねたところ、
彼女に、今後、旅をする予定は
ありませんでした。
実際に旅の予定がある場合は、
早く目的地へ行きたいという
気持ちの焦りが、願望夢として
” 旅 ” の夢になることがありますが、
このケースはそうではないようです。
*
この場合の ” 旅 ” は、彼女自身が、
現在の状態から別の状態への変化を表している
と考えることが出来ます。
精神的な成長、変化を ” 旅 ” という形で
表していると解釈することも出来ますし、
今後、彼女を取り巻く状況が、
実際に変化するという可能性も考えられます。
例えば、職場で新しい役職を与えられて
立場が変わったり、何気ないことが
きっかけで人生観に変化があったり、
それが、物理的な変化にせよ、
精神的な変化にせよ、
” ここではない、どこか ”
” 今の自分ではない、別の自分 ”
に移り変わる機会が訪れる暗示
とも読むことが出来る。
*
” 変化 ” と聞くと、
人生のターニングポイントのような
大きなイベントを連想するかもしれませんが、
必ずしも大掛かりなものとは限りません。
夢は、その人の ” 主観 ” が映し出される。
友達が遠くに引っ越してしまっただけでも、
テストの成績が少し悪かっただけでも、
そのショックが大きければ、
心境の変化に繋がります。
それが、どのような夢になるかは、
個人の感じ方次第なのです。
兄と妹
さて、この夢における注目すべき点は、
後ろの席で騒いでいる若者たち。
そのうちの一人が ” 兄 ” という設定です。
そして、その兄の座席は、
自分の座席よりも前ではなく、
通路を挟んだ隣席でもない。
後ろの少し離れた位置に
兄を含む若者たちを座らせています。
この位置関係には、
何か意味があるのでしょうか?
このシチュエーションから考えられるのは、
彼らを視界に入れたくない、もしくは、
近くに置きたくないという心理の表れ
と読むことが出来ます。
実際、彼女は、兄のことが、
あまり好きではなかった。
少し離れた後ろの席と彼女との距離は、
丁度、兄と妹の ” 距離感 ” を
表現しているかのようにも見えます。
*
ここで、一つの疑問が浮かびます。
なぜ、好きでもない兄を
自分の夢に登場させたのでしょう?
視界に入れたくなければ、
そもそも夢に登場させないという
選択も出来たはず。
つまり、夢の中で、兄には
果たすべく ” 役割 ” が与えられているのです。
この夢は、彼女が心の中で感じている
” 変化 ” が ” 列車の旅 ”
という形で描かれている。
その変化が、
具体的にどういったものなのかまでは、
この夢から伺い知ることは出来ません。
ただ、後ろの席で騒ぐ兄たちの存在によって、
あることに気づかされます。
*
彼女が兄のことを好きではない理由は、
二人の性格が全く正反対だった
という事情がありました。
彼女は、どちらかと言えば
神経質であれこれ考えて動くタイプでしたが、
兄は何事にも楽観的で
賑やかなことが好きなタイプでした。
では、この夢で賑やかな兄を
キャスティングした意図は何でしょう?
彼女は自身の変化を感じながらも、
今まで馴染んていた場所から
離れることに対する不安を抱いています。
一人旅が心細いのと同じように彼女には、
同伴者が必要だった。
でも、同伴者として両親や友人などではなく、
あえて嫌いな兄を選んだ理由は、
その楽観的なキャラクターによって、
不安を中和させることが出来るからです。
” おふざけ ” に興じる兄を近くに置けば、
自分の抱えているものが、大した問題ではな
” 馬鹿げたもの ” に感じられる。
*
ただ、兄を自分の近くに置くには
抵抗があるので、少し離れた後ろの席に
彼らを座らせ、宴会をさせている。
兄を毛嫌いしながらも、
その楽観的な人柄に頼っている
彼女の複雑な心境が
この夢から見てとれます。
また、兄は血の繋がった ” 家族 ” であり、
彼女の中で変化が始まる前から
一緒にいた人物。
それは、ある意味 ” 元の居場所の一部 ”
という一つの要素でもある。
” 一人じゃ心細いから一緒に来てくれ。
でも、彼氏じゃないんだから
少し離れて歩いてよ ”
この夢は、仲があまり良くないと言いながらも、
結局は、家族であるという兄と妹の
微妙な関係が描かれています。
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同伴者の役割
夢における ” 同伴者 ” は、
今回のケースのように
不安を和らげる中和剤になったり、
夢の本当の意味を隠蔽するための
カモフラージュになったり、
はたまた、怒りの矛先を反らすための
身代わりになったりします。
夢を見た本人にとって ” 同伴者 ” が、
どんな存在かによって意味は変わります。
それが、” 兄 ” ならこう解釈する。
” 母 ” ならこう解釈するというような、
固定的な答えは無く、あくまで、
その人の ” 主観 ” によって人物の意味は決まる。
ただ、全く無意味な人物が登場する
といったことは無く、
必ず、何等かの役割があります。
その人物が無意味に見えたとしたら、
潜在意識が、あえて無意味に見えるように
しているのです。
今回の夢で言うなら、兄はあくまで ” おまけ ”
として登場しなければならなかった。
妹にとって、兄に頼ることは、
事実ではあるが、認めたくない感情なのです。
*
もし、あなたの夢の中に
” なぜ、この人が出てきたのだろう? ”
” なぜ、一緒にいるのだろう? ”
” 別に居なくてもよくない? ”
と思うような人物が登場したなら、
まず、その人が、あなたにとって
どんな存在なのかを考えてみてください。
例えば、学生時代の厳しい先生が
登場したとしたら、潜在意識が、
なぜ、その先生を登場させているのか、
その意図を探っていくということです。
それは、あなたが元々感じていた緊張感を
” 先生がいるからだ ” と思わせるための
演出なのかもしれませんし、
厳しくはあったが学生時代に出会った
教師の中で一番生徒と向き合っていた人
という意味で ” 頼れる存在 ” として
登場しているのかもしれない。
*
もし、何の心当たりも無いというならば、
今後、その人物に関する出来事が
待っている暗示という解釈も出来ます。
ただ、出来事と言っても、
必ずしも本人と出会って何かする
という形とは限りません。
単なる噂話や、何らかのアイテムによって、
その人を思い出す瞬間があるという
” 内面的な出会い ” の可能性もあります。
私たちは、視覚だけで物事を
認識しているわけではなく、捉えた対象を
脳によって、ようやく認識します。
なので、潜在意識にとって、
その人物と現実世界で会うのと、
脳内で会うことに違いは無い。
夢の作り手は、その潜在意識なのです。
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