” 寝室 ” と言えば眠る場所ですから、
寝室を舞台とした夢は、よくある設定です。
例えば、寝落ちした直後に見る夢。自分が
ベッドに横になって天井を見つめている。
つまり、本当は意識を失って眠っているが、
夢の中では、まだ眠っていないという設定
の夢です。
こうした現実の延長として作られた夢は、
それが夢であることに気づきにくく、
ベッドの上で起こった現象を ” リアル ”
だと錯覚してしまうことも。
現実と夢との区別が付きにくいというのも
寝室を舞台にした夢の特徴です。
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布団の中に紛れ込んだもの
次は、とある男性が見た夢の一例。
ベッドで寝ている。
布団の中に何かが紛れ込んでいる。
布団を捲ると女性用の櫛が見つかる。
どこかで見たことのある櫛。
夢占いでは、男性が女性物の櫛を拾う
という場合、結婚、もしくは、恋愛の予兆
とあります。
この夢を見た男性は、既婚者ということ
なので、そうなると妻以外の女性と不倫を
する暗示と解釈することも出来そうです。
もし、現実、そういった女性が他にいる
ならば可能性としてはあるでしょう。
ただ、彼に尋ねたところ、そのような女性
はいないし、そもそも、自分には不倫を
するほどの経済力も甲斐性も無いという
ことでした。
*
さて、この夢には、一つ気がかりなポイント
があります。布団の中に紛れ込んでいた櫛に
どこかで見覚えがあるという部分。
夢の中で彼はその櫛を見て、前から、
家にあったような気がしたと言います。
彼自身は櫛を使わないということなので、
筆者は奥さんが使っている櫛を確認する
ようお願いしました。
しかし、夢の中の櫛と同じものは無く、
それは ” 架空の櫛 ” だった。
それが架空のものということならば、
実際の櫛ではなく、別のものを ” 櫛 ” に
置き換えているのかもしれません。
さて、夢の中の櫛は、一体、
何を置き換えた結果なのでしょう?
夫婦の事情
セッションが続く中で、彼の夫婦関係
について話が及びました。
現在、夫婦は別々の部屋で寝ており、
彼が言うには、隣に妻が寝ていると気が
休まらないということでした。
” なぜ、気が休まらないのですか? ”
彼は言いました。
最近、プレッシャーを感じるようになり、
別々で寝ているのもそれが理由だと。
つまり、こういう事です。彼は日頃から、
妻に ” 子供が欲しい ” と言われ続けていた。
” 全く父親になる自信が無いです。
経済的なことを考えても、この先どうなる
のかも分からないのに・・ 妻も年齢的な
ことがあって焦るのは分かるんですが・・ ”
どうやら、夫婦間で子供を持つということ
に意見の相違があるようでした。それは、
いつしか彼にとってストレスになっていた。
*
夢の中に登場した架空の櫛は、夫婦間で
度々持ち上がっていた家族に関する問題を
表しています。それは、まさに
” 前から知っていた気がする ” 問題の象徴。
現実では、一旦は妻を寝室から追い出し、
一時的に回避することが出来たが、実際は
解決されたわけではありません。それは
” 棘 ” となって彼の心の中で引っかかり
続けている。
潜在意識はぐっすりと眠りたい彼の
布団の中に、寝心地を悪くする異物を
紛れ込ませて、問題が終わってないことを
伝えています。
では、なぜ、夫婦関係の問題が ” 櫛 ” に
置き換わったのでしょう?
この家で櫛を使うのは妻だけ。そして、
夫婦間の問題は簡単には解決出来ない。
櫛一本ならば、それを布団から取り除けば
解決できる。
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ベッドから落ちる
では、寝室に関する夢について、もう一例
紹介しましょう。次は、とある女性が見た
夢です。
何か奇妙な感覚。
寝返りで体を横にすると、窓の位置が
いつもより下にある気がする。
ベッドが浮いていることに気づく。
ガタンとベッドが傾いて、私は落ちる。
何かポルターガイストを思わせるような
現象だったと言います。
” 確認しますが、それは、
夢の中で起こったことですよね? ”
” 分かりません・・どこから夢だったのか。
だけど、落ちたのは本当です ”
” どれぐらいの高さから落ちたか、
分かりますか? ”
” ベッドの高さは30~40cmぐらいです。
でも、1mぐらいの高さから落ちたように
感じました ”
” お怪我は? ”
” 大丈夫です。1mの高さから落ちたら、
もっと痛いと思うんですが・・ ”
” つまり、あなたは夢の中で起きた
錯覚だと思っている・・? ”
” そうですね・・ ”
*
普通に考えるなら、彼女が体験したことは
” 夢 ” でしょう。問題は、なぜ、この夢が
作られたかという点です。
” 奇妙な感覚があった・・というのは? ”
” 最初はベッドが浮いているとは
思わなかったんです。多分、あれは
浮遊している感覚・・でしょうか ”
” ベッドが浮いているように感じた
ということですか? ”
” はっきりと感じたわけではないですが、
自分の錯覚だったのかも・・ ”
筆者は、以前、睡眠中に起こした眩暈が
奇妙な夢になる事例を思い出し、日常、
眩暈に襲われるといったことが無いか確認
しましたが、彼女は一度も無いと答えます。
今回の夢が彼女にとって初めて体験する
眩暈であった可能性もありますが、
もう少し掘り下げる必要がありそうです。
” ベッドから落ちるといったことは、
今回が初めて? ”
” ・・初めてだと思います。自分では、
寝相はそんなに悪くない方だと思って
るんですが ”
*
筆者は、ここまでの話を聞いて、
この夢の構成全体が、最初の奇妙な浮遊感
を発端として後から付け加えられた演出
のように感じました。
つまり、彼女の中に元々 ” 浮遊感 ” があり、
その奇妙な感覚を自身の外側で起こっている
現象として処理しようとした。
そこで潜在意識はベッドを浮かせて、彼女に
こう思わせようとした。
” この奇妙な感覚は、
ベッドが浮いているからだ ”
それが自分自身ではなく、ベッドの問題
であるなら、そこから降りれば浮遊感は
無くなるはず。
それで、彼女はベッドから降りた。
” ベッドが傾いて落ちた時の状況を
もう少し詳しく教えて頂けますか? ”
” ベッドが突然傾いて、落ちる!と思って、
うつ伏せになろうとしたんです。
体を捻って・・でも勢いで落ちてしまった
という感じでした ”
つまり、ベッドの端で眠っていた彼女は
この夢を見ながら、実際に体を回転させ、
ベッドから本当に落ちてしまった。
扉の隙間
上記の解釈が合っているとして、ベッドを
傾けて彼女を降ろすというのは、少々、
乱暴な気もします。彼女が自ら飛び降りる
ことも出来たでしょう。
” 浮遊感についてですが、
最近、お体の調子はどうでしょう? ”
” うーん、よく分かりません。
絶好調ではないです ”
” 体調が優れないといった実感が? ”
” いえ、特に症状は無いんですが・・
寝つきが悪くなってる気がします ”
” 眠れない? ”
” 多分、深い眠りが出来てないと思います。
翌朝も疲れていますし、深夜に目が覚める
といったことも度々あります ”
” この夢を見たのは? ”
” ええ、深夜に目覚めました ”
彼女が夢の中で感じた ” 浮遊感 ” とは、
しっかり寝付けくなっている体の異変を
潜在意識がいち早く感じ取っていた・・
そう考えると、ある意味、彼女は
より深い場所へと ” 落ちる ” ことを
望んでいたのかもしれません。
*
さて、今回は寝室に関する二つの夢に
ついて解説していきましたが、寝室が
舞台となる夢には様々なシチュエーション
があります。
そして、それは身体の不調から始まること
もあれば、心の不調から始まることもある。
つまり、何らかの ” 不調 ” が発端です。
しかし、私たちには、それが大したこと
ではないようにも思えてしまう。
頭痛があるわけでも、眩暈や吐き気を
伴うわけでもありませんから、対処を
しようという動機は起こらない。
そうして、心や体の歪が少しづつ蓄積
していき、ある時、緩んでいた何かが
音をたてて外れるのです。
でも、その音は、
どこかで聞いたことのある音。
寝室です。扉の隙間を覗いてみましょう。
そこには、あなたが眠っている。
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