気分が落ち込んだ時の対処法|心の疲労感と思考力

人生、常に順調とはいかないものです。

体調が悪いというなら原因は明らかですから対処のしようがあります。しかし、メンタルの不調、精神的に辛い時期というのは対処が難しい。

よく ” 気晴らし ” と言いますが、それが出来るぐらいの精神状態ならば何の問題も無いのです。気晴らしをする必要すら無いかもしれません。

本当に厄介なのは、気晴らしをする気が起こらないほど落ち込んでいる状態。

だから、巷で紹介されている気分転換の方法は効果的とは言えない。そもそも、それをする気分では無いのですから。

筆者も普通の人間ですから、何かをきっかけに憂鬱になることがあります。

例えば、メンタルが不安定で落ち込んでいる時には瞑想をすることで心を静める。それが出来れば理想的でしょう。

でも、筆者はその時期、瞑想をする気にもなれませんでした。むしろ、心が安定している時期に就寝前の瞑想を習慣にしていたのです。

瞑想でなくても、音楽でも、ヨガでも、スポーツでも何でもよいのですが、それをすれば気分が変わるとしても、そもそも、それをする気分ではないという状況。

この救いがたい状況を打開するために、一体、何が必要なのでしょう?

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” 漠然とした不安 ” の仕組み

例えば、ここに将来に漠然とした不安を抱えた若者がいたとします。

ただ、毎日が何の希望も無く、何のために生きているのかも分からない。

それは、あくまで ” 漠然 ” としたものですから、その若者を地獄に突き落とすほどのインパクトは無いわけです。

にもかかわらず、若者から情熱と行動力を奪い、無気力状態へと導く。

なぜでしょう? 

言い直しましょう。
なぜ、漠然としているのでしょう?

答えはとてもシンプルです。
” 視野を広げ過ぎた ” からです。

視野の中にいくつものリスクが存在し、その一つ一つが不安材料である。

そして、それを全て把握しきれない、つまり、キャパを越えた状態になった時、それらは ” 漠然とした不安 ” 化する。

この何から手をつけてよいのか分からないという状態に陥った時、人は無力感を感じ、無気力になる。それも当然です。エネルギーを差し向ける方向が分からないわけですから。

例えば、大きな脅威にさらされた時にも人は無力感を感じます。

しかし、その場合、不安材料は一つですから、それが起こる時期や場所、どうやって始まるかといった具体的状況がつかみやすいので、かろうじて何をすべきかを考えることが可能。

景気低迷の原因が明らかに経済政策ということなら、” 政府が悪い ” と怒ればよいのです。

問題は、不安材料がいつくあるかすら分からない状態、それが何となくぼんやりと将来のどこかで待ち構えているという状態です。

心が健全な状態の場合、視野内に存在するリスク、そして、キャパシティの関係は次のようになるでしょう。

A. リスクの数 < キャパ

無気力に陥った精神状態の場合は、

B. キャパ < リスクの数

つまり、無気力状態を脱するためには、Aの状態に心を導かなければならない。これを調整する方法は三つ、

1. キャパを拡張する。
2. 視野を狭くする。
3. リスクを一つ一つ潰していく。

まず、キャパを拡張するというのは、それぞれが本来持っている能力に依存するので簡単ではありません。

ただ、アドバイザーの助けを得たり、ツールを使うことで一応は拡張することができます。

例えば、試合中のスポーツ選手がコーチの分析を聞いて試合の流れをを把握するように。経営者がEXCELを使って自社の経営分析をするように。

視野を狭くするというのは、一度、視野に入れてしまったものを後から消し去ることは出来ないため、すべきことは ” それ以上深く考えない ” ということで処理します。

それによって時間が経過していくごとに、視野の面積を小さくすることが出来る。

器用な人はこれを自然に体得していて、キャパを越えそうだと感じると、視野のスイッチを切ってしまうのです。

誰かに重たい面持ちで人生相談をすると、決まってこう答える人がいます。

” 気にするな ”
“あまり 深く考えるな ”

このありきたりに思えるアドバイスは、全く的を得ています。

そして、最後に ” リスクを一つ一つ潰す ” という方法。

無論、実践すれば視野内のリスクの数は、事実、減っていくのでAの状態へと近づくことが出来る。そして、これが最も有効な手段であるかのように見える。

・・罠です。

真面目な人は、存在するリスクをなるべく把握するべきだと視野を広げ過ぎてしまう。そして、リスクを一つ一つ潰すことが最善だと考え、そこだけに注力する。

しかし、この思考は、自身にキャパがどれぐらいあるのか、という視点が欠けているのです。

さらにこの方法は、現実の問題を解決するためのアプローチですから最もエネルギーが必要。

もちろん、現時点では解決出来ないリスクというのもあるため、必ずしも上手くいくとは限らない。

また、そもそも、状態が無気力ですから、解決するためのエネルギーは残されていないのです。

よって解決不能となり、悪循環を呼び、無気力からの脱出がより難しくなっていく、八方塞がりの状態。

もう一度、思い出してみましょう。

B. キャパ < リスクの数

この状態が無気力を作るというならば、それはどのレベルでも起こりうることです。

例えば、何不自由のない生活を送る裕福な人にも、それは訪れる。

彼らは、自分の所有している株価が下落することを想定して、どこに分散投資するかを心配しなければならない。

子供が一流の大学に行けるかどうかを心配しなければならない。

事業をより拡大させるために長年付き合いのあったパートナーに、どう解雇を切り出すか考えなければならない。

むしろ、選択肢が多い分、問題は山のように出てくるため、Bの状態になりやすいと言えるかもしれません。

子供の世界でもあります。

成績、進学、いじめ、友達との関係、家族との関係、子供は元々キャパが小さいので、視野が狭く無ければ途端に無気力に陥ってしまう。

ある意味、視野の狭さが子供を守っている。

親が心配するあまり、世間のあれこれを教え込もうとすることは、返って良くないのかもしれない。

要するに、キャパ不足により無気力に陥ることは誰にで起こりうる。

では、もし無気力へと陥ってしまった時、その悪循環から抜け出すためには何が最善策なのでしょう?

” 気力 ” という燃料

メンタルがボロボロだと、まず、頭が働かないので、あらゆることが不安や脅威に思えてしまう。真っ暗な場所にいて、怖がりだすと、恐怖感がエスカレートしていくように。

” 問題意識の増幅現象 ” とでも言いましょうか。

視野内に存在する本来のリスクを過大に想定してしまうわけです。まず、何よりも、この現象をどうにかしなければいけない。

この本来は必要の無い不安、言わば幻想によって、心が疲弊し、唯一、解決のために必要なリソースである ” 思考力 ” が奪われてしまっているのです。

あなたの心が、今、疲れ切っているというなら、そして、解決方法を考えるほどの思考力が残っていないとしたら、残された僅かなリソースを節約しながら使わなければいけない。

今の状況を改善するには、どうしても、それを燃料として消費しなければならないのです。

言わば、思考力は機関車で言う ” 薪 ” です。

大抵、問題解決をするための思考法、ビジネス書などで紹介されているものは、思考力が無限にあるという前提で語られます。

” アイデアとは新しい組み合わせを・・ ”
” 問題を切り分けて一つ一つ・・”
” 目標を細かく分割し、計画を立て・・ ”

と正論を説いたところで、精神的にまいってしまっている人にとっては、意味の無い教えです。

それをするための気力が無いのですから。

家庭問題を抱えているとか、職場の人間関係に悩んでいるとか、恋愛について悩んでいると言った、思い当たる原因があるなら、無論、それが解決することが、憂鬱を吹き飛ばす最も効果のある方法に決まっている。

それは、分かり切ったことです。

それゆえに、状況を打開するためには、本丸を攻めることが、唯一、すべきことだと思ってしまう。

今、持ち合わせている小さなハンマーで、闇雲に巨大な岩を叩き続けることであなたの大切なリソースが失われていく。

先ほども言ったように、これが悪循環に陥るための ” 罠 ” なのです。

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越えられない壁

一人の男が壁の前に立っている。

目の前の高い壁を越えれば、向こう側には理想の状態がある。

そこで男はあれこれと思案する。
どうすれば壁を越えられるか。

ロープになりそうなものをあちこち探し回ったり、

知り合いに聞いて回ったが、何の情報も無く空振りに終わったり、

壁を打ち砕くべく大きなハンマーを引きずってはきたが、それを振り回す腕力が自分に無いと後で気づいたり、

そうしているうちに日が暮れてしまう。

越えられない壁は、やはり、どう足掻いても越えられないという現実。

無駄な努力でへとへとになって男は、少しずつ思考力を奪われていく。アイデアは枯渇し、絶望感だけが残る。

やがて、自分の前に立ちはだかる壁が実際の高さの10倍にも、20倍にも見えてくる。

” 不可能だ・・ ”

彼は、そう呟き、壁の前で力尽きる。

しばらくすると別の男がやってきて、積み上げられた石の隙間に小さな杭を打ち始める。

それに足をかけ、一段上がると、さらに上に杭を打ち、それに足をかける。最後は、壁を越えて向こう側に消えていく。

一体、何が起こったのでしょう?

後から来た男は見ていたのです。あらゆる方法を試す最初の男の姿を遠くから、ずっと。

ただ、見ていただけ。

そして、最初の男がしなかった方法を一つだけ試した。体力を消耗せずに済む方法を。

こうして見ると、後から来た男はずる賢くて、あらゆる努力をした最初の男は、健気で可哀そうにも思えます。

ただ、遠方から訪れた後から来た男は、疲れ切っていて、ほとんど体力が残っていなかったのです。

最初の男のように、色々と試すゆとりが無かった。だから、彼は自分に残された僅かなリソースを節約したのです。

もし、彼が最初の男と同じ量の努力をしたならば、きっと、もっと早く力尽きて倒れていたでしょう。

壁の正確な高さ

つまり、体力、気力が充分ある人が取る戦略と、心が疲れ切っている人がすべきこととは、違っているということです。

人生が充実している時期にヨガやスポーツを愉しんで、豊かな生活を送ることは誰にでも出来る。

それは、あくまでプラスαであって、マイナスをゼロに戻すためのものでは無い。

だから、もし、あなたが、今、落ち込んでいる時期なら、焦って解決法を探すことにエネルギーを使うよりも、まず、リソースを温存することを考えるべきです。

リソースとは、先ほど言った ” 思考力 ” もそうですが、問題解決に体力や時間が必要なら、それらも貴重なリソースです。

そして、少しずつでもよいのでリソースを蓄積してください。

体力が必要というなら、最低限しっかりとした食事や睡眠を取る。時間が必要なら、病気でなくても仕事を休むという判断をするべきかもしれません。

会社によっては休みを取りにくいかもしれませんが、今のあなたには必要なこと。

そして、なるべく心の負担になることは避ける。

忘れてはならないのは、それらが問題解決のための努力ではなく、あくまで、それに取り組める精神状態に自分を戻すためのものだということです。

解決するための方法を捻り出すために、貴重な思考力を使わないようにしてください。

特に、寝る前には。

そのうち、10mに見えた壁が、たった3mに見えるようになる。

そう。それが、壁の正確な高さです。

正確に状況が分析できるようになれば、何か別の手立てを思いつくかもしれません。その時のために必要なのです。それまでに温存しておいた思考力が。

無論、こうすれば頭を悩ましている問題が必ず解決するということではない。まだ、その段階では無いのです。

あくまで、戦える体力を取り戻すための対処に過ぎません。それを飛び越して、高い壁に挑めば、怪我をしてしまうかもしれない。

今の自分に合った対処を、まず、見つけてください。そして、焦らずに一つ一つ、目の前のことだけを考えて片づける。

休息を取りながら、疲れない程度に。

 

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