夢の中で周りの人の注目を浴びてしまう。
様々なシチュエーションが考えられます。
会社の会議室でプレゼンを行ったり、
自宅の前で周りの住民からじろじろ
見られたり、ロックスターになって
ステージで演奏するというような設定も
あるでしょう。
自ら注目されることを望んでいる場合も
あれば、不本意に注目されて恥ずかしい
思いをするという場合もあります。
まず、理解しておくべきは
” 注目を集めた ” という部分のみで意味を
判断することは出来ないということです。
どの夢にも言えることですが、ストーリー
の全体を視野に入れる必要があります。
そして、その夢が作られた理由と自身の
私生活との関連性を見つけることが
夢を読み解くための近道です。
つまり、全てはケースバイケース。
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架空の講演会
次は、とある女性が見た夢の一例です。
講演会が開かれている。
壇上で講師がスピーチをしている。
舞台袖でそれを見ている自分。
誰かが背中を押したので舞台に
出てしまう。
慌ててカーテンの隙間に隠れる。
夢の中では、彼女は客席ではなく、
舞台袖から講演を聴いているという状況
から、運営スタッフのような立場として
ストーリーに参加しているようにも
伺えます。
” 講演会の運営スタッフとして働いた
経験などはありますか? ”
筆者が尋ねると、彼女は次のように
答えます。
会社の研修でそういった集まりに出席した
ことは何度かあるが、運営スタッフとして
働いた経験は一度も無いということでした。
また、今後の予定についても尋ねましたが、
特に講演会に参加する予定も、運営に参加
する予定も無いそうです。
*
彼女の回答を聞く限り、夢の中の講演会と
彼女の私生活とは何ら関わりが無い
ようにも思えます。
潜在意識は、なぜ、夢の舞台を講演会とし、
彼女をステージの袖に配置している
のでしょう?
この夢の作り手はあくまで彼女自身なので、
ステージを用意したのも、誰かに押され、
一瞬、人目に晒されてしまう演出も彼女自身
が仕組んだものです。
そう考えると、この夢は人々の注目を
集めるためのものであり、彼女の中の
” 目立ちたい ” という隠れた願望が
描かれているかに見える。
彼女の性格を知らなければ、筆者も
そのように解釈したかもしれません。
夢を読み解く上で、夢を見た人、つまり、
夢の作り手の性格を把握しておくことは
重要です。
夢はその人のプライベートの側面が表れる
ものとは言え、夢の内容だけで判断できる
ことには限界があります。
解釈する側の思い込みによって全く誤った
解釈を導くこともある。
*
セッションを進めていくうちに、彼女が
どういった人柄なのか段々と分かって
きました。彼女は、ある告白をします。
実は、人前で喋ることが全く出来ない
と言うのです。
それは大勢の前に限らず、1対1で話す
ときも、自分から発言したりしませんし、
意見を求められても自分の意見など
ありません。
そもそも、周りの誰も彼女に
意見を求めたりはしなかったのです。
ただ、彼女の中には、この性格を
どうにかしたいという切実な思いが
あるだけでした。
理想の影で
彼女の人見知りの強い性格を知ると、
別の解釈が見えてきます。
筆者は、夢の中で彼女が、なぜ、舞台袖に
立っていたのか尋ねてみました。
彼女は出番を待っているわけではなく、
運営スタッフとしてそこにいたという
認識もなかったと言います。
一体、そこで何をしていたのでしょう?
彼女は、既に
ステージ上に立っているのです。
正確には、彼女の ” 理想の自分 ” が
演台の前に立つ講師として再現されている。
演台の前に自分の理想の姿を描きながらも、
彼女自身は舞台袖で甘んじている。
そこは聴衆には見えない位置ですが、
一応、ステージの端には立っている
わけです。
そこを降りて、客席から話を聴くわけには
いかない。なぜなら、それは彼女のために
用意されたステージだから。
*
そして、後ろから何者かによって背中を
押された。
自らの口で意見を言わなければならない
という彼女の中の ” 意思 ” が、演台に
進めと言うかのように背中を押したのです。
彼女は、ステージに飛び出した後、
自分に注目する聴衆を見て、怖気づき、
隠れてしまう。
正確には舞台袖に戻ったのではなく、
ステージの中央に垂れ下がっていた
カーテンの隙間に隠れた。
位置関係として舞台袖に戻るには、
一度、カーテンから出て、聴衆の前を
横切らなければならなかったと言います。
しかし、彼女は、怖くて出ることが
出来なかった。
*
この夢は、彼女自身が作っているわけ
ですから、ステージの状態や位置関係
といった演出は、全てコントロール
出来るのです。
つまり、聴衆の前を横切らなければ、
舞台袖に戻ることが出来ないという状況も
あえて、仕組まれたもの。潜在意識は、
もう一度、聴衆の前に出るための機会を
彼女に与えているのです。
これら仕組まれた演出からも、彼女が、
どうにかしてコンプレックスを克服しよう
と葛藤している姿が見えてきます。
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彼女が見ている風景
さて、彼女は、なぜ、
このタイミングで夢を見たのでしょう?
先ほどの解釈でいけば、彼女には、今、
コンプレックスを克服しなければならない
差し迫った理由があるか、もしくは、今後、
そういった状況になるか、どちらかです。
筆者は、尋ねます。
” 最近、コンプレックスを克服しなければ
いけないと思ったことはありますか? ”
彼女は、一つの事柄に思い当たります。
現在、働いている職場に、来週、二人の
新入社員が入ってくるので案内役を
頼まれたと言います。それは他の社員が
忙しく自分だけが空いていたから、
という理由のようでした。
つまり、何も知らない新入社員が、
職場で最初に出会う人になるということが、
彼女にとっては大きなプレッシャーに
なっていた。
普通の人ならば取るに足らないことでも、
極度の人見知りである彼女には、
初対面の人に自分から話しかけなければ
いけないという状況が、途轍もない重責に
感じられたのでしょう。
彼女はコンプレックスを克服する必要に
迫られていたのです。
*
ただ、たった二人の新入生が相手です。
これが、どうして大勢の聴衆を前にしての
講演会という夢になったのでしょう?
夢の中の架空の講演会は、彼女の ” 主観 ”
を描いている。
つまり、普通の人なら何でもないことでも、
彼女にとってそれが一大イベントのように
感じられたのなら、夢はそのスケールで
描かれるのです。
例えば、十代の若者が失恋して、
世界が終わったと感じれば、潜在意識は、
巨大隕石が地球に衝突する夢を作ります。
それと同じで、彼女にとって初対面の人に
話しかけるというのは、大勢の聴衆の前で
スピーチをするぐらいのプレッシャーを
与えている。
” まるで、講演会でスピーチするぐらい
緊張すること ”
という彼女の感じている緊張感が
ストレートに映像化されています。
悪意の無い世界
人の悩み事は、いくつかのパターンに
類別出来る。仕事、恋愛、人間関係、
健康など、大抵の悩みはそのどれかに
当てはまる。
そして、それに合わせて、
用意される答えも予め決まっている。
筆者は、この考え方はナンセンスだと
思います。
統計の数字だけを目で追って ” 人 ” を
見ていない。これは、夢への理解を妨げる
要因の一つです。
*
夢は、その人の最も奥深くから生まれる
ものです。それは、繊細で外側からは
見えないものです。そのプライベートな
領域に踏み込まなければ、本当の理解は
得られない。
あなたが何か夢を見たとして、そこには
あなただけの ” 答え ” があるはずです。
そして、必ずと言っていいほど、
あなた自身の性格、人生観、思想、
コンプレックスといった普段は人前で
口に出さないコアな部分が反映されている。
” 人前で言うようなことじゃない ”
と思っていることを潜在意識は夢のテーマ
として扱うのです。夢の中で、それを
隠し続けて身を守る必要はありません。
なぜなら、潜在意識とあなたは一つ。
あなたが傷つけば、それは潜在意識に
とっての痛み。
そして、潜在意識が抱えているものは、
あなたが抱えているもの。
夢という世界に現実世界のような
” 悪意 ” は存在しない。全ては、
あなたのために創造された純粋な世界です。
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