夢の中の ” 群衆 “|人の集団の役割、その目的

夢の中に大勢の人が登場すると言った場合、
その人たちは単に背景に映り込んだ
エキストラというわけではありません。

無論、必要があって夢に登場しているのです。

また、夢の中で描かれる ” 群衆 ” は、
個人の集まりではなく、あくまで
一つの意思によって動く一つの存在です。

群衆の全ては、夢を見ている本人の意思によって
生み出されたものだからです。

結局、それは、一人の人間を
” 人の集団 ” として描いている。

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群衆の反乱

次は、とある男性が見た夢の一例です。

群衆が門の前に群がっている。
 
誰かが叫ぶ。
” 門を破れ! ”
 
その声をきっかけに人々が
門を叩き始めて、やがて破壊される。
 
自分は行くべきではないと思ったが、
人の流れに逆らえず
門の方へと押しやられてしまう。

何かの心理状態を抽象的に
表現しているような感じの夢です。

さて、この夢における
注目すべき点は ” 門 ” です。

この夢を見た男性にとって
” 門 ” は、何を意味するのでしょう?

*

筆者は、夢の内容から、
彼の心の中に何か大きなエネルギー
ののような流れがあり、
それが ” 群衆 ” として表現されて
いるのではないかと思いました。

そこで、彼にいくつかの質問をしました。

現在の彼が、何らかの悩みや
ジレンマを抱えていないか。

セッションを通して分かったのは、
彼は今、会社を辞めるかどうかを
悩んでいるということでした。

新しい人生を踏み出すか、
このまま安定的な生活を守るために
今の職場で働き続けるべきか、
一年近く結論を出すことが出来ずにいた。

*

筆者は、夢の内容を聞いて、
最初、大勢の人々は、
大使館のような敷地に入ろうとして、
殺到しているのだと思っていました。

しかし、そうではなく、彼の話によると
全く逆で、敷地から外に出るために
人々は門の前に殺到していたと言います。

つまり、門のこちら側は、
” これまでどおり同じ会社で働き続ける人生 ”

そして、門の向こう側にあるのは
” 未知の人生 ”

夢の中で彼は、敷地内に留まり、
これまでの人生を続けようとしている。

しかし、彼以外の群衆は門の外へと
押し寄せるのです。

彼は、結局、それに抵抗できずに、
最後は門の方へと流されてしまう。

群衆の役割

この夢における群衆には、
二つの役割が与えらえています。

その一つは、彼の強い動機です。

今までとは違った別の人生を
歩みたがっている彼の強い思いが、
群衆となって心の中で反乱を起している。

ある意味、” 群衆 ” は、
彼の ” 抑えきれない衝動 ”

群衆の前に立ちはだかる
” 門 ” は、彼自身が置いた障壁です。

彼が、人々の流れに抵抗するのと
同じ理由で閉ざされた門を置き、
止まらない衝動を足止めしようとしている。

つまり、夢の中で門を閉ざしているのは、
彼が一年近く結論を保留させているのと
同じ理由です。

もし、彼が望めば、門ではなく、
戦車を並べることも出来たでしょう。
もしくは、脱出不可能な刑務所として
群衆を隔離することも出来る。

群衆を阻む障壁が
” 門 ” である必要はないのです。

それは、群衆が打ち破るという前提で
設置された演出、
言わば ” 見せかけの障壁 ” です。

*

群衆のもう一つの役割は、
彼を門の外へ連れ出すための口実です。

群衆の流れに巻き込まれてしまったとなれば、
彼は自らの意思によって、
門の外に出たわけではないので、
” 不可抗力 ” として片づけることが出来る。

ただし、群衆の行動も彼の意思なのです。

抵抗をしながらも、本心では
門の外に出たがっている彼の心境が伺える
シチュエーションです。

積み重ねてきたもの全てを投げ捨て、
新しくスタートを切ることに対する不安が、
自分を足踏みさせていると彼は言いました。

今回の夢では群衆は、
抵抗の象徴である門を破壊し、
彼を外に運び出そうとしています。

この夢は、抵抗する気持ちよりも、それを
打ち破ろうとする意思が優勢に転じる瞬間を
切り抜いて映像化されたのです。

彼が決断する時期が、すぐそこに
迫っているのかもしれません。

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奇妙な教室

では、大勢の人が登場する夢を、
もう一つ、紹介しましょう。

次は、とある女学生が見た夢の一例です。

放課時間が終わり、授業開始までの間、
生徒たちはひっそりと息を静めて、
教師が来るのを待っている。
 
遠くから教師の足音が聞こえてくる。
 
親友の席だけがなぜか空いている。

よくある学校の日常風景のようにも見えますが、
彼女に夢の具体的な内容を尋ねると、
この夢がとても奇妙なシチュエーション
であることが分かってきました。

彼女の通う学校では、
クラスの人数は30人ほどでしたが、
夢の中では、それよりもっと多く、
5、60人ほどの生徒が座っていたと言います。

そして、彼女の座っている席は最前列のはずが、
夢の中では最後尾になっていた。

なぜ、彼女の潜在意識は、
生徒の人数を割増しにして、
自分の席の位置を変えたのでしょう?

*

最初の段階では、この奇妙な演出の意味が
分かりませんでした。

しかし、セッション開始から、
二日後、彼女から
とある出来事について聞かされます。

それは、親友が校則を破り、学校から
厳重注意を受けたという経緯でした。

彼女は、夢の中で親友の席だけが
空いていたことを指摘して、
筆者に次のように尋ねます。

” これは親友の災難を予知したのですか? ”

筆者は次のように考えました。

仮に、そうだったとても、
生徒の人数が増えたことと、
彼女自身の座席の位置が変わっていた理由が、
いまいちつかめなかったのです。

それで、この考えを話した上で、
次のように答えました。

” この夢の奇妙な設定は、
あなた自身が仕掛けたものですから、
あなたに直接関わることのように思えるのですが・・ ”

*

彼女いわく、実は親友が校則を破った時に
自分も一緒に行動していたが、
運良く自分だけは目撃されなかった。

その後、親友は教師に呼び出されたのですが、
彼女の名前を言わなかったそうです。

一人難を逃れた彼女は、
いつ教師に呼び出されるか不安だった。

その不安を解消するため、潜在意識は、
夢の中でクラスの人数を増やし、
座席の位置を一番後ろにして、
自分が目立たない状況を作ろうとしています。

親友を欠席させているのも、
唯一、事実を知る証人を
” 学校 ” という裁きの場所に
出廷させたくなかったからなのでしょう。

バラバラに見せかけた目的意識

この夢では、生徒数を割増しにし、
自分の存在感を薄くするという、
少々、込み入った演出を行っています。

” 木は森に隠せ ” という諺と
同じ効果を狙ったものです。

例えば、あなたの夢に
一箇所に集まった多くの人々や、
動きを伴った群衆が登場した場合、

それら人々は、あなた自身が配置した存在
であることを思い出してください。

言い換えるならば、その人々は、
全てあなた自身であり、
” 見せかけの他人 ” なのです。

教室の生徒たちは、
ひっそりと息を潜め静まり返っていた。

まさに、彼女の心境が、
教室全体の雰囲気として描かれています。

*

無論、人の集団、群衆が登場する夢は、
全てこのような解釈になるというわけでは
ありません。

もっと、違った形で群衆を
効果的に使う夢があるかもしれない。

やはり、ケースバイケースで
読み解いていくしかないのです。

また、今回の教室の夢では、
将来に関する出来事、つまり、夢占いで言う
” 暗示 ” として描かれていたわけですが、
こういった現象は珍しいことではありません。

夢を解釈するには、夢と現実の時間的な
” ズレ ” を視野に入れた
幅のある視点が必要な場合もあります。

*

現実世界の群衆は、個人の集まりです。

” 世論 ” というような
一つの意思を持っているように見えて、
実際はバラバラだったりします。

例えば、同性婚について賛成している人々の
集団があったとしましょう。

しかし、その中には
同性愛者の方もいらっしゃいますし、
そうでない方もいるでしょう。

それぞれが賛成している理由は、
自分の人生に直接関わる問題として賛成しているのか、
幸福を追求する権利という憲法上の理念に
賛成しているのか、という違いがあります。

結論が一致しているだけで、
実際、心が一つというわけではない。

しかし、夢の中に登場する群衆は、
元々、一つであるものを
大人数に見せかけるための演出なのです。

行きかう雑踏の中に立っている夢を見たとして、
あなたの前を横切る人々は、あなた自身が
何らかの意図を持って配置したエキストラです。

なので、問いかけるとすれば、
” なぜ、自分はこんな場所に立っているのか? ”
ではなく、

” 私がこの人々を配置したのはなぜか? ” です。

*

夢の中で行われる様々な演出には、
全て目的があります。

それは、いくつかの目的の集まりではなく、
一つの目的を達成するために緻密に
噛み合った歯車のようなものです。

それら歯車が回ることで何が動き出すのか、
それを探してください。

 

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