夢の中の ” 暗闇 “|演出効果としての ” 暗さ “

夢の中では様々な場所が舞台となります。屋内、野外、架空の場所など。

そして、潜在意識は ” 明るさ ” によって、それらロケーションに効果的な演出を加える。

例えば、真夏のような強い日差しでその場所を眩しく演出したり、薄暗い照明によって憂鬱な雰囲気を演出したり、

暗闇の中に僅かなネオンを置いて、私たちを誘導することもあれば、真っ暗なトンネルのように ” 暗闇 ” によって近づくべきではない場所を警告することもある。

今回は、” 暗闇 ” による演出効果について見ていくことにしましょう。

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欠けた情報

次は、とある男性が見た夢の一例。

約束を破った恋人を責め立て続ける。

黙っていた恋人が言い返す。

「じゃあ、そっちはどうなん・・・ 」そう言いかけると ” パチン ” と音がして、部屋が真っ暗になる。

部屋の中で恋人を責めているという険悪な雰囲気の夢です。筆者は男性に尋ねました。

「約束とは、何だったのですか?」

彼いわく、内容ははっきりとしないが、二人の関係が破綻してしまうほどの裏切りという認識だった。

彼はこの夢が、恋人の裏切り行為の前兆ではないかと心配しているようでした。

「今現在、二人の関係で、何か心配されるようなことがあったのですか?」

「いえ、特に思い当たることは無いんですが・・」

「今、実際に約束されていることは?」

「・・これといって無いと思います」

「では、これまでに、約束が破られたことはありますか?」

「いや、そういったことも無いです。待ち合わせに遅刻したとか、小さな事はあったかもしれませんが、喧嘩になるようなことでは・・」

ここまでの彼の話をまとめると、恋人が裏切る素振りがあるわけでもなく、二人の先行きに影響を与えるほどの約束があるわけでもない。

筆者は、彼の回答を聞きながら、何かが欠けているような気がしたのです。

セッションの中断

夢の中で、彼は約束を破ったと恋人を責め立てている。何の落ち度も無いはずの恋人を。

夢を作ってまでして、処理しなければならないその怒りは、一体、どこから来たのか?

筆者には、一つ思い当たることがありました。彼に尋ねます。

「あなたが約束を破ったことはありますか?」

彼は「一度だけある」と答えます。ただ、それは、ちょっとした行き違いで起こったことだと。

それから、いくつかの質問をしましたが、彼は何だか歯切れの悪そうな答えを繰り返すのです。

彼の心に何らかの ” 壁 ” があるのを感じました。

夢を読み解く上では、依頼者の協力が必要不可欠です。この状態では、セッションを進めることが困難だと思いました。

仕方なく、筆者は彼に、今回の依頼をキャンセルしたらどうかと申し出ます。

「そうですか・・ここまで来て、やめるのは何だかすっきりしませんね」

「あなたのご意思に任せます」

「・・続けてください。実は・・ちょっと言ってないことがありまして・・」

彼は、現在、恋人には知られていない他の女性と会う約束をしていると言います。

一度だけ約束を破ったというのも、浮気が原因で、今回は、二度目。

つまり、この夢において、彼は恋人と自分の立場を入れ替えている。

恋人が裏切り行為をしたということになれば、自分の裏切りを帳消しに出来る。ゆえに、夢の中で必死になって、彼女に ” 逆ギレ ” しているのです。

そして、夢の後半部分では、彼の罪の意識が描かれている。この夢を作った彼自身は恋人を責めながらも、本当は自分に非があることを知っている。

夢の中で恋人が言い返したセリフは、まさに彼の自責の念が自分に投げ返した言葉。

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善良な心

さて、最後の部分、パチンと音がして部屋が真っ暗になる。ここでは ” 暗闇 ” が効果的に使われています。

パチンという音は、ブレーカーが落ちたような音だった。

彼がこの夢を見た経緯を知ると、この部分は罪の意識による演出だと考えることが出来ます。

恋人の口を借りて、彼の自責の念が反撃を始めようとした矢先、都合良くブレーカーが落ちる。その先の批判の言葉を聞かずにすむように話を中断させています。

そして、部屋が真っ暗であれば、恋人の厳しい視線から逃れることが出来る。

その視線は、彼の ” 善良な心 ” です。

セッションを終えて、彼は次のように言いました。

「夢の中で彼女を責めながら、凄く嫌な気分でした。いくら責めても自分が勝った気がしないんです」

「セッションを終えて、ご気分に何か変化はありましたか?」

「そうですね・・今は、あまり、いい状態ではないかもしれません。最近、よく眠れていないんです」

「なぜ?」

「分かりません。寝つきが悪いと言うか、内容が全く違うので、今回の件とは関係ないとは思うんですが、変な夢をよく見るんです」

彼の中の善良な心が悲鳴を上げている。

事実の直接描写を避け、不都合なことを隠蔽しながら、それは形を変えて彼を責め続ける。あたかも彼の行いとは無関係であるかのように装いながら。

もし、再び、恋人との約束を破るなら、きっと悪夢は続くでしょう。これまで以上に不快なシチュエーションによって。

いずれにせよ、それを止める方法は一つしかないのです。

演出効果としての ” 闇 “

よく恥ずかしい思いをしたとき ” 穴があったら入りたい ” と言いますが、暗闇に身を置く設定にも似たような効果があります。

暗闇に身を置くことで、誰にも見られずに周りの視線をシャットアウト出来るので、罪の意識と暗闇は、夢の中では関連づけて使われることがあります。

と言っても、夢の中の暗闇は、全て ” 罪の意識 “と解釈するわけではありません。

自身の身を隠すという以外にも、不都合な事実を直視しないため、見たくないものを隠すという意味でも暗闇が使われる場合もあります。

テレビで痛々しい場面が出てきた時に目を覆い隠す、というような ” 遮蔽物的効果 ” です。

今回の夢では、この両方が使われている。

それ以外でも、日の出前の薄暗い早朝が夢になっている場合は、状況が改善するには、まだ時間がかかると解釈することもある。

その薄暗さは、” 停滞 ” を意味する。

日が沈み、薄暗い公園で一人ぼっちでブランコに座っている夢なら ” 孤独 ” もしくは ” 会社に行きたくない ” というような精神的な疲労感や憂鬱さを表しているのかもしれません。

次は筆者の見た夢です。

ビルの一室にいる。

通路に出てみると、暗く、ほとんどの部屋は照明が消えている。

自分のいる部屋は辛うじて照明がついているが、他の部屋は暗いという状態。

何となく、遅くまで残業した会社員が目にする光景のようにも見えますが、ビル自体は架空の建物です。

これは、筆者の ” 視野 ” に関する夢です。

” 自分には、まだ見えていないことがあるのではないか? ” という筆者の中の疑念を象徴的表現として描いている。

自分が見えている範囲が照明のついた部屋であり、それ以外の範囲は ” 自分にはまだ見えていない事実 ” です。

この時期、逃亡犯条例改正案を巡って、香港で大規模なデモが行われていました。日本でもニュースになっていましたから、筆者も何となく認識していました。

” ああ、あっちの方で何か騒ぎが起きているらしい・・ ”

ある日、動画でデモの状況を見たのです。暴徒と化したデモの群衆と警官隊が激しく衝突している映像でした。

それは筆者が想像していた ” デモ ” ではなかった。

それまで、多くの市民が広場に集まって、プラカードを持って声を上げているというイメージでいたのです。

日本のすぐ近くで、まさに今、この ” 騒乱 ” が起こっている。

ネットニュースだけを見て、世界の情勢を知ったつもりになっていたことに後味の悪さを感じました。

そして、その翌朝、この夢を見た。

潜在意識は、世界の情勢についての筆者の認識の甘さを平和な日本のオフィスビルで起こった出来事として処理している。

” 大丈夫、君の視野が狭いわけじゃない。見えないのは暗いからさ ”

視野の問題を視覚の問題にすり替えて、やり過ごそうとしています。

いずれにせよ、夢の中の ” 暗闇 ” が何を意味しているのかは、夢を見た本人の置かれた状況を把握しなければ、正確に読み解くことは難しいでしょう。

もし、暗闇に関する夢を見たとしも、それが悪い出来事の暗示というようなイメージだけの安易な判断はすべきではありません。( イメージが重要な場合もありますが )

潜在意思にとって、それが光であろうと闇であろうと、夢に必要であると判断すれば、演出効果として採用するのです。

そして、そこには必ず理由がある。

なぜ、そこが暗かったのか? その理由を探してください。

 

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