見たくない夢を見る理由|悪夢はなぜ作られる?

人は、日々、様々な夢を見ます。

全てが思い通りになる良い夢もあれば、幽霊に追われるといった悪夢を見ることもあります。

ここで一つ、忘れてはならないのは、夢の作り手は、あくまで夢を見ている本人だと言うことです。つまり、自ら作った夢を自ら見ている。

そうなると、単純な疑問が浮かびます。

” 自分で作っているなら、なぜ、見たくもない夢を見る?”

言われてみれば、確かに奇妙な行為です。その結果、自らを苦しめているのですから。

なぜ、このような夢が作られるのでしょう?

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復讐を遂げた後に

次は、とある女性が見た夢の一例です。

いつものように、上司が小言を言ってくる。
 
私に仕事を押し付けて、さっさと帰ってしまう。
 
上司が、駐車場に止めた車に乗り込んだ瞬間、車体が爆発炎上。
 
炎の中に黒こげになった上司。それを見て、気分が悪くなり目が覚める。

何か、スパイ映画の1シーンを彷彿とさせる過激な夢です。

この夢を見た彼女の職場には、嫌いな上司が一人いて、彼女は、常に仕事を監視されているように感じていた。それがストレスになっているということでした。

夢を見る数日前にも仕事のやり方について、長い時間、説教を受けた。

今は、顔を思い出すだけで気分が悪くなってしまうほど、その上司のことが嫌いだと言います。そして、とあるアクション映画を鑑賞した晩に、この夢を見た。

では、このケースで悪夢の仕組みについて、少し説明してみましょう。

夢のストーリーは見たとおり、憎たらしい上司に対するリベンジを描いています。

さて、復讐するためには、まずは、顔も見たくない上司を夢に登場させなければならない。全くの他人を犠牲にしても意味がありません。

夢の中で、いつも彼女が聞いている小言をあえて言わせることで、上司を ” 燃えてもらっても構わない存在 ” にしています。

つまり、自分の夢に招きたくもない上司を招き入れ、職場で怒られるという演出を組み込んだのは、全て最後の結末に向けた ” 前振り ” なのです。

そして、ラストシーンは、車の中で上司の亡骸が燃えているという不快でおぞましい場面。ここは、極悪人に罰が与えられたことを確定するための演出。

これを映像化することで、ようやく復讐劇は完成する。しかし、一方では、その場面に嫌悪感を抱いている。

仮に、夢の中で上司が転倒して擦りむいた程度では、彼女の気持ちは収まらなかったということでしょう。彼女の中に蓄積された爆発寸前のフラストレーションが、この過激な設定を選んだ。

彼女にとって、上司は、それぐらいの仕返しをするに値する存在。

想像以上にグロテスクな結果になったとは言え、スカッとするためには、そこまでする必要があった。

つまり、一方の何かを満たすために、自分の中の別の部分を犠牲にしたのです。これが、悪夢の原理です。

箱の中

さて、夢というものは、現実世界とは全く違うルールで構築された精神世界の産物です。

そのことを理解しておくと、夢が支離滅裂であったり、悪夢になる理由が理解できます。

では、精神世界のルールとは、一体、何でしょう?

” 箱 ” を思い浮かべてみてください。

箱の上部には穴があり、手を入れられるようになっている。中をのぞくことは出来ません。

テレビ番組でよく見かける箱の中身を当てるゲームに似ていますが、テレビの場合は予め何かが入っている。

この場合は何も入っていない。

そして、札束を思い浮かべれば、箱の中に札束が出現し、蛇を思い浮かべれば蛇が出現します。

実は、その箱はとても大きい。

あなたが一軒家ほどの大きさだと思えば、その大きさになり、無限だと思えば、まさしく ” 無限 ” の広さを持つ。

ポッカリと空いた穴から、あなたは箱の中にダイブする。

箱とは、” 夢 ” です。

夢の中で ” 素敵な異性とデートがしたい ” と思えば、その異性が登場します。しかし、その反面、

” 自分のような存在に、振り向いてくれるわけがない ”

と思えば、その異性は消えてしまう。

夢の世界では、頭にネガティブな思考が過れば、それが、実現してしまい、希望を抱けば、それをそのまま描く。

頭に浮かんだ瞬間に映像化される ” 想念の世界 ” です。

それが、耐えがたい屈辱や不安を伴うイメージであっても、あなたが一瞬でも必要としてしまえば、映像化される。

どんな理由であれ、それは、必要とされたわけですから、ある意味、” 願望 ” です。

潜在意識は、その ” 願望 ” を満たすために夢を作る。

素敵な異性が消えることで ” いつもどおり ” を取り戻せるなら、そうするでしょう。

夢の中とは限らず、ネガティブな思考を必要とする瞬間は、現実世界にもあります。

野性動物は恐怖感によって危険を回避する。私たちが保険に入るのも、万が一のトラブルに対する恐れからです。

日頃から運動や食生活に気を使うのも、老いや死に対するネガティブな感情から。

学生が受験勉強をするのも、将来への不安、または、夢を実現できなかった人生を送る喪失感から逃れるためです。

” 理想の状態 ” を望むということは、裏を返せば ” 理想でない状態 ” を恐れるということ。

最もネガティブな人とは、ある意味、最もポジティブな人です。

夢の世界では、その感情がポジティブであるか、ネガティブであるか、その区別は、それほど重要ではありません。

潜在意識にとっては、どちらも ” 感情 ” に過ぎない。

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ネガティブ思考から始まること

次は、とある女性の夢の一例です。

今日こそ、意中の男性に話しかけようと決意する。
 
彼はいたが、近くにいた何人かの女性と、自分の方をチラ見しながらヒソヒソ話をしている。
 
女性の一人が ” ありえないじゃん ” と言うのが聞こえた。

彼女は恋愛には消極的で、自分に自信を持つことが出来ずに悩んでいました。自分の殻を破りたくても、現実、うまくはいかない。そんな状態の中、今回の夢を見た。

この夢は、彼女が自分の殻を破って、恋愛に積極的になろうとする思いを挫くためのものです。

挫けるようなシチュエーションを設定し、心の中に生まれた ” 自分らしくない考え ” を打ち消そうとしている。

彼女にとって、意中の人に話しかけるというのは相当なストレスでしょう。潜在意識が心の平穏を保つために ” 現状維持 ” をしようとしている。

女性の一人が言った ” ありえないじゃん ” という一言が彼女に留めを刺す。

このセリフは、彼女のネガティブな一面が、変わろうとしている自身に対し、身の程をわきまえるように警告しているのです。

この夢は、彼女の恋愛に対するネガティブな感情を満たすために作られた。

つまり、彼女自身がバッドエンドを望んだ結果、作られた悪夢なのです。

受け入れたくないもの

夢とは、受け入れたくない内容であったとしても、本人が、それを必要としている限り作られます。

” とても自分が求めているとは思えない ” というような夢にも、存在理由はあるのです。

例えば、周りからポジティブなキャラだと思われている人が、自己否定するような陰鬱な夢を見る。

それは、心の底に押さえつけられたネガティブな一面が、叫び声を上げているのかもしれません。

” 自分は、いい奴なんかじゃない。もう演じるのはたくさんだ!”

日常生活では、自分の抱えている問題を無視したり、隠したりすることが出来ても、潜在意識には通用しません。

それは、自分自身の声だから。

潜在意識からのメッセージが、常に前向きで心地よいものばかりとは限りません。

人は、誰でも ” 影 ” の一面を持っている。

と言うより、それが無ければ、ポジティブな感情を持つことすらできないでしょう。

” 恐れ ” を知らなければ、克服することの価値も理解できない。それを目標に歩き出すこともない。

もし、あなたの中にネガティブな一面があったとしても、それが悪夢になったとしても、極めて自然なことです。

悪夢は、罪でも罰でもない。

それは、潜在意識が心のバランスを取り戻すために、試行錯誤して作り上げた一種の ” 苦い薬 ” なのです。

 

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