夢の中の ” 家族 ” |父と母の役割、家庭事情から分かること

夢には様々な人物が登場します。そして、それらの人物一人一人に意味がある。

なぜ、その人物が登場したのか? 
なぜ、その配役なのか?

また、登場するはずの人物が、あえて登場しないといった形でメッセージを伝える場合もあります。

なぜ、いるはずの人がいないのか?

登場人物のそれぞれの意味を探ることで、その夢が何を伝えたいのか読み解くためのヒントになるのです。

とりわけ、” 家族 ” が登場する夢は、日常的に近い存在であるということから、他の夢に比べ、見る頻度は高いかもしれません。

また、家族とは ” 最も自分に近い他者 ” と言うことも出来る。他人でも無く、自分自身でも無い ” 家族 ” という特別な存在。

そして、両親は自身のルーツでもある存在。

もし、夢の中で、この ” 特別な存在 ” が登場した場合、どのように解釈していけばよいのでしょう?

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夢の中の ” 両親 “

次は、とある受験生が見た夢の一例です。

部屋で歴史の漫画を読んでいる。
 
父親が部屋に入ってきて怒鳴る。
” 勉強はしたのか? ”
 
向こうの方で母の声がする。
” いいじゃないですか、たまには ”

ストーリーとしてはシンプルな構成で、日常的な風景がそのまま夢になったように見えます。

この夢には、三人の人物が登場している。
自分、父、母。

父が部屋に入ってきて、漫画を読んでいる自分を叱るという場面。

この夢を見た彼女の話では、父は心配して様子を伺うことはあるが、部屋に来て怒鳴るということは、まず、ありえないと言います。

むしろ、それは母の役目だと。

一見、日常的に見える今回の夢の最も不可解な部分は、父と母の態度が逆転しているという点です。

無論、夢の中のこの奇妙な設定に気づけるのは、いつもの両親の態度を知っている彼女自身だけ。夢の作り手である潜在意識も、彼女にだけ分かる設定で夢を作っています。

さて、なぜ、彼女の潜在意識は、夢の中で両親の態度を逆転させたのでしょう?

” いつもどおり ” を壊す

この問いについて考える前に、もう一つの疑問について考えてみましょう。

それは、なぜ、漫画を読んでいる自分を注意する役が、母ではいけなかったのか?という点です。

いつもどおりでは、いけなかったのでしょうか?

この夢を作ったのは彼女自身です。要するに、彼女にとって、夢の中の状況がいつもどおりではいけなかった。

彼女の潜在意識は、常々、小言ばかり言う母ではインパクトが小さく、自分自身に対する警告としては効果が薄いことを知っています。

より強い警告を与えるためには、いつもは怒らない人が怒った方が効果がある。そして、その役にピッタリなのが、日頃は温和な父です。

では、潜在意識はこの逆転効果によって、彼女に何を警告しようとしているのでしょう?

無論、夢の作り手である潜在意識は、彼女そのものですから、結局のところ、それは自分自身に対する警告となります。

つまり、今の自分自身を戒めようとしている ” 心の声 ” というわけです。

筆者は、彼女に受験勉強の状況を尋ねました。

「勉強の方は、順調ですか?」

話によると、最近になって集中力が無くなってきている、と言います。

” 勉強をしなければ ” という気持ちの焦りはあるが、それが実際に行動に結びつかない煮詰まった状態。

” リフレッシュが必要なのかもしれない ”

と彼女は言いました。

控えめな擁護者

この夢は、勉強が思うように進んでいない自分を戒める気持ちが、父の姿を借りて自分を責めています。

母ではなく、あえて効果的な父をキャスティングしているという点からも、彼女の中の焦りの強さが伺える。

ただ、夢には、姿こそは出てきませんが、母が声だけの出演として登場している。

” いいじゃないですか、たまには ”

そして、なぜか、漫画を読んでいる彼女を控えめに擁護しています。

つまり、自分を戒める気持ちとは裏腹に、勉強をしたくないという気持ちを母に代弁させているのです。

ただ、声だけの出演ということで、部屋に入ってきた父を制するほどのインパクトはありません。

この控えめな演出は ” 自身を戒める心の声 ” に対するささやかなる抵抗。

そして、両親の態度を逆転させている理由のもう一つは、父と母の夫婦関係にあります。

彼女の家庭では、日頃、母が主導権を握っているように見えますが、大事なことを決める時は、最終的に父に実権があることを彼女は知っています。

潜在意識は ” 勉強しなければ ” という自身を戒める心と、” 怠けたい ” という抵抗、二つの感情の代弁者を割り当てる際、より優先度の高い戒めの心を父に、ささやかなる抵抗を母に割り当てています。

二つの感情の割合が、丁度、両親の主導権の割合と一致していたということでしょう。

これも、家族でなければ分からない家庭内の事情を前提にしたキャスティングです。

この夢で描かれている ” 勉強への焦り ” と ” 怠けたい気持ち ” の葛藤は、夢の中で彼女が読んでいる漫画にも垣間見える。

ただの娯楽漫画でもなく、歴史の参考書でもなく、” 歴史の漫画 ” という中間的なアイテム。

” 怠けたいけど、勉強もしなきゃ ” という彼女の矛盾した気持ちを表しています。

家族にしか分からないこと

さて、今回は夢の中の父と母は、彼女の中で葛藤し合う二つの気持ちの代弁者として登場しています。

そして、” 家族 ” であるからこそ知っている家庭事情を巧みに夢の演出として取り入れている。

家族が登場する夢で重要なのは、その家族でしか分からない習慣や、価値観、考え方、夫婦関係、兄弟や親子の関係など ” 家族ならではの文化 ” を理解することです。

なので、内情を知らない第三者が、誰かの見た家族の夢を解釈するのはとても難しい。

長い間、一緒にいる人には遠く及ばないからです。

夢占いには、” 母 ” や ” 父 ” という項目もありますが、まず、こうした一般的な解釈を当てはめるよりも、自分の家族について、一度、振り返ってみることの方が大切です。

現実世界でもそうであるように夢の中に登場している ” 家族 ” は、間違いなく唯一の存在。

そして、特別な存在には、特別な意味が与えられている。それは、家族であるあなたにしか、分からないことなのです。

 

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