夢の中の ” 無表情な人物 “|作り手の ” 痕跡 ” を見つける

例えば、あなたが通りを歩いていると、
一人の男性が向こうからやってくる。

それは、赤の他人ですから、何の情報も
与えられていないわけです。それでも、
その外見から第一印象ぐらいはあるでしょう。

” どこにでもいるおじさん ”

” 芸能人の誰かに似ている ”

” この先にあるドラッグストアの利用客
かもしれない ” など、

それは、結局、見た目や状況から感じ取った
イメージに過ぎないので、実際、どういった
人物かは分かりません。

もし、男性が取材のために現地を訪れた
名の知れた小説家であったとしても、
あなたは彼を知らないので地元の人だと
思い込んでしまう。

要するに、見た目から得られる印象と実際は
違っているということです。

しかし、これが夢の中の話だった場合、
少々、事情が変わってきます。

夢の中に登場したその男性を見て、
あなたは瞬時に理解する。

” ああ、この人は有名な作家なんだ ”

なぜ、そう思ったのかその理由を尋ねた
ところで ” 最初からそういう設定だった ”
としか答えようのない状況。

そして、次回の小説の舞台となるこの地に
やってきて、取材を兼ねて散歩をしている
最中だという背景も全て把握しています。

なぜなら、その男性は、あなたが
キャスティングした ” 役者 ” だからです。

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表情の中の表情

あなたは夢の作り手です。

映画で例えるならば、映画監督であり、
主役です。登場人物は、全てあなたが
キャスティングした役者です。

なので、あなたが夢の中で見知らぬ人物に
感じた憶測や印象は常に的を得ている。
そもそも、あなたがそういう設定にした
からです。

ゆえに、夢の世界で再現された設定の中に、
制作者の ” 痕跡 ” を見つけることが出来る。

それは時に、演出によって巧妙に隠される
こともあるが ” 感覚 ” として垣間見る
ことが出来る。

あなたが、すれ違った単なる通行人から、
どことなく ” 一般人とは違う知性 ” を
感じ取ったように。

次は、とある男性が見た夢の一例です。

歩道を歩いている。
 
通り過ぎる通行人が、なぜか
” ある表情 ” でこちらを見ている。
 
通り過ぎていく人々は、
皆、同じ表情でこちらを見る。

この夢の特徴は、通り過ぎていく通行人が
” ある表情 ” で彼を見るという部分です。

” ある表情というのは、どういった? ”

” 一応、無表情ではあるんですが・・ ”

筆者の質問に彼は、夢の中で見たものを
どう言い表すべきか困っているようでした。

” ただ無表情というわけではない? ”

” 表現しようのない表情と言いますか、
何だろうあの顔は・・ ”

彼いわく、それは、怒っているとか、
泣いているというような分かりやすい
ものではなく、不快な気分にさせられる
顔だったと。

一見すると、単に無表情な人々に対して、
彼が不快な気分を感じているだけのよう
にも見えます。

しかし、これは彼が作った夢。

” 無表情を演じるように ” と、夢に出演する
エキストラたちに指導しているのも彼です。

なぜ、そのような指導をしたのでしょう?

それは、本当の表情を隠蔽するための
カモフラージュなのです。言わば、
” 作り笑顔 ” ならぬ ” 作り無表情 ”

そして、隠蔽した張本人である彼自身は、
その表情の本当の意味を知っているため、
不快感を感じている。

その ” 感覚 ” は、夢の核心です。

心の内側へ・・

では、この夢は、
どう解釈すべきでしょうか?

まず、彼の感じた ” 不快感 ” が、どういった
ものかを深く知る必要があります。
具体的には、どういったタイプの不快さ
だったのか?

例えば、誰かに蔑まされたときに感じる
屈辱に近いものだったか?

それとも、誰かを傷つけたときに感じる
罪悪感に近いものだったか? など。

つまり、自分が、夢の中で何を感じたのかを
一つ一つ思い出す作業になります。これは、
極めて内向的で繊細な作業です。

考えを整理するとか、アイデアをひねり出す
といった作業とは、また違った
” あの時に何を感じていたのか? ” という
” 感覚 ” に焦点を当てる作業は、仕事や
日常生活では、あまり行われない行為
ですから、少々、難しいかもしれません。

彼は、言います。

” 何でしょう・・蔑すまされている
というのとは少し違うかな・・ ”

” 罪悪感ではない? ”

” ええ、罪悪感じゃないことは確かです ”

彼は言葉を選びながら続けます。

” ・・誰かが失敗した時に、それを
見ている人の気まずさと言いますか・・
でも、所詮、他人事みたいな・・
すみません。分かりにくい説明で ”

” 大丈夫ですよ。そもそも説明しづらい
ことが夢になるわけですから。つまり、
冷たい視線のようなものを感じていた、
ということですか?”

” ええ、そうですね。簡単に言うと、
そうかもしれません。そこに気まずさ
のようなものがあったように思います ”

” 失敗した時とおっしゃいましたが、
それについて何か心当たりは? ”

” 失敗したことにですか?
別に、特には・・
ああ、あれのことかな・・ ”

*

彼の説明では、一週間後に予定されている
会社でのプレゼンテーションが心配だと
言います。

彼の会社では、一年に一度、社員が複数の
グループになって、業務効率化の改善案を
発表するという催しがあるそうです。

そして、チームリーダーを任された彼は、
準備がまだ不十分であることに不安を
持っていた。

この密かに感じていた不安が、今回の夢に
描かれたということかもしれません。

” 確かに、プレゼンで失敗すれば、
見ている他のグループは、あんな顔に
なるかも・・夢は、もしかして暗示ですか? ”

” あなたが感じていることが夢になった、
ということだと思います。それに結果は、
今の状況からある程度推測できませんか? ”

” そうですね。
恥をかく可能性は高いかも・・”

” 準備の方は、まだ、かかりそうですか? ”

” 実は、チームに纏まりがなくて、皆、
仕事の傍ら参加しているものですから ”

” それは大変ですね ”

” でも、ほぼ強制参加のイベントなので、
辞退できないんです。ちょっと発破を
かけなければいけませんね。一週間前に
分かって逆に良かったのかもしれません ”

二種類の ” 感覚 “

夢の中に登場する人物や場面に感じた
” 感覚 ” について振り返ることは
夢解釈のヒントになります。

ただ、悪夢などによく見られることですが、
インパクトの強い場面があると、精神的
ショックを受けるといったことがあります。

それが強烈であれば、その恐怖感や不安
といったものだけが目立ってしまい、
冷静な分析を妨げる。

夢の中で感じる ” 感覚 ” には、核心を
知っているがゆえに感じ取ったものと、
夢の出来栄えに対して感じた単純な
リアクションの二つがあります。

前者は、普通なら何でもないと思える
設定に、なぜか脈絡の無い感情を持つ
といった場面になったりする。

今回の夢で言うなら、単なる無表情の
はずが、そこに言い知れぬ不快感を
感じたという点です。

そして後者は、なぜ、そう感じたのか、
その理由が明確です。誰でも幽霊が
追いかけてきたら怖くてたまらない
でしょうし、自分と瓜二つのクローンが
登場したら驚きますよね。

無論、この二種の感覚が一つの場面で
同時にやってくるということは、
よくあることです。

別のショックを与えることで、
核心を隠蔽するわけです。

例えば、ざわつく胸騒ぎを夢の中で危険運転
をしているスリルに置き換えたりする。
私たちは、胸騒ぎの原因が危険運転を
しているせいだと思い込んでしまう。

こういった場合は、感覚の見極めが
難しいかもしれません。

まずは、一旦、夢から距離を置き、
落ち着きを取り戻した上で、もう一度、
振り返ってみると良いでしょう。

すると、今まで気づかなかったことに、
気がつく。

自分は、なぜ、ブレーキを踏んで、
車を止めなかったのか?
止めようと思えば、止められたのに。

つまり、その設定は、
後から付け加えられた演出なのです。

 

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