夢の中の ” 煙 “|意味を与えられた演出効果

夢占いでは、” 煙 ” は、トラブルの暗示とされています。

ただ、トラブルと言っても様々なケースがあるでしょう。人間関係なのか、仕事なのか、プライベートに関することなのか、

夢の中で ” 煙 ” がどのようなシチュエーションで発生しているのかは観察ポイントです。それによって、どういった形のトラブルかを推測することが出来るかもしれません。

また、煙が必ずしも “トラブルの暗示 ” とは限らない場合もあります。

例えば、何か不都合なものを隠すための煙幕の役割を果たすこともありますし、誰かに合図を送るための狼煙として登場している可能性も。

夢のストーリー全体から、潜在意識がどのような効果を期待して ” 煙 ” を演出に組み込んだのかを考えます。

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職場でのトラブル

次は、とある女性が見た夢の一例です。

現場に薄い霧がかかっている。
 
不思議に思って周辺を見回ると機械から煙が出ている。
 
消火器を取りに行くが、なぜか途中で目的が変わり、勤務表を確認している。

この夢を見た女性は、工場勤務のパート従業員として働いていました。夢は彼女の職場での ” ぼや騒ぎ ” を描いています。

そして、最後の場面ではストーリーに若干の不整合が起こっています。

この夢を見てから数日経った頃、彼女はとある出来事に遭遇します。シフトスケジュールでは、当日、休暇ということになっていましたが、職場で無断欠勤があり、彼女が、その穴を急きょ埋めなければならなかった。

そして、無断欠勤したのは、丁度、夢の中で煙の発生源となっていた機械を担当しているオペレーターだったと言います。

この夢では煙の出ている場所によって、出来事を断片的に伝えています。

ストーリーの最後に、消火器を探すという行為が、途中から勤務表を確認するという目的にすり替わっているという部分も、それが勤務スケジュールに関する問題であることを示唆しています。

さて、ここで疑問なのは、夢は、今回、彼女に降りかかった予期せぬトラブルを、なぜ、” 工場のぼや騒ぎ ” という遠回しな表現に置き換えたのかということです。

単なるスケジュール上の問題ならば、最初から、そのように描けばよかったのではないでしょうか? 夢の終盤では、実際にそうなっています。

最適な演出

潜在意識が直接描写を避け、別の何かに置き換える理由は事実を都合良く書き換えるためです。

夢の内容は自由にコントロール出来るわけですから、それが都合が悪いことならば、無論、都合の良い形に書き換える。

潜在意識には、事実を忠実に再現しなければならない理由など何もありません。もし、それを要求すれば、” 夢をどうしようと勝手だよね。どうせ私が見るんだから ” と言うでしょう。

では、今回の夢については、どうでしょう?

職場仲間の無断欠勤が、担当する機械の火災に置き換えられている。

彼女にとっては誰かの欠勤のせいで休日返上となるよりは、機械の故障であった方が状況としてはマシです。

なぜなら、機械は会社の設備ですし、パート従業員である彼女が責任を取るようなものではない。火を消し止めれば、後は管理者が修理業者を呼ぶだけです。

トラブルの暗示を表現する方法は、” 煙 ” だけではありません。

シチュエーションによっては、吠え続ける犬であったり、鳴り響く携帯であったり、激しくドアを叩く人影であったり、それは、状況によって選択されるのです。

今回の夢の舞台が ” 工場 ” という場所なので、機械から火災が発生するという演出は自然な発想です。

つまり、” 煙 ” がトラブルを暗示しているわけではなく、トラブルを暗示する演出にこのシチュエーションならば ” 煙 ” が最適だった、ということなのでしょう。

最後の場面で消化器を探していたはずが、いつの間にか、勤務表のチェックをしているという一見すると奇妙に見える場面転換。

これは、目覚める直前によく起こる現象で、夢が伝えるメッセージが直接的表現として露呈しているのです。

つまり、潜在意識が目覚めを察知して、処理の仕方を直接効果のある方法に切り替えている。

” ああ、目覚めてしまう。煙に例えている場合じゃない。こうなったら勤務表を書き換えてしまおう ”

という具合に。

会社のロビーで

では、煙に関する夢をもう一つ、紹介しましょう。

次は、会社員男性が見た夢の一例です。

会社のロビーで煙草を取り出して最後の一本を吸う。
 
どこからともなく煙が漂ってくる。
 
火災かと思い様子を見に行くが、煙がどこから来ているのか分からない。
 
視線を下ろすと、自分の着ている背広の裾が燃えていることに気づき、慌てて服を脱ごうとする。

夢の中で彼は衣類が燃えているのを見て、慌てて飛び起きた。

一見すると、職場で火災が発生するという内容から、先ほどの夢と同様に仕事に関するトラブルを暗示しているようにも見えます。

「会社のロビーで煙草を吸うといったことは日常的な習慣ですか?」

筆者の質問に彼は答えます。

「そこが変なんですが、僕は今、禁煙中なので・・ 」

「つまり、夢の中で、禁煙を破って煙草を吸っていたということですか?」

「感覚的には禁煙をしていることすら頭に無かったというか・・最初から吸っていたという認識でした」

夢の中で彼が持った奇妙な認識。

もしかすると、これは煙草を吸うという日常的行為のように見せかけた別の ” 何か ” を描いているのかもしれません。

まず、夢の舞台について考えてみましょう。そこは会社のロビーだった。

禁煙している彼が煙草が欲しくなって、夢の中で吸っているというのであれば、わざわざ会社のロビーを用意するまでもなく、普通に自宅で吸うこともできたはず。

潜在意識は、あえて自宅ではない場所を選択しているように見えます。

「禁煙中に煙草が欲しくなるといったことは、ありますか?」

「最初は結構イライラしたりしましたが、今は落ち着いています」

「禁煙を始められたきっかけは?」

「妻が妊娠をしまして、以前から止めてくれと言われていたんです」

彼の家庭の内情を聞き、夢の舞台が自宅ではないという理由が分かりました。

煙草を自宅でプカプカ吸うわけにはいかなかった彼は、誰にも咎められることのない会社のロビーで一服をしている。

「奥さんは、何カ月目になるんですか?」

「ああ、お腹もかなり大きくなってきて・・どうだろう・・8カ月ぐらい、いや、9ヵ月・・・ 」

「では、もうすぐですね」

「ああ、はい・・そうみたいです」

セッション中、彼との会話の中で筆者が気になったのは、彼が出産についてあまり関心が無いような素振でそれを話すことでした。

それから、仕事についての質問をした時。

「現在、奥さんが妊娠で、仕事への影響に何か思い当たることは?」

「そうですね・・今のところは無いかな。ああ、でも、妻から、寄り道せずに早く帰ってこいと言われてます」

「ご帰宅は何時ぐらいになるのでしょう?」

「9時とか、遅いときは10時・・」

「その間、奥さんは家でお一人?」

「ええ、残業せずに帰るのは周りの目があって、ちょっと・・」

「会社の方は、知ってるんですよね? 妊娠の件は」

「ああ・・・いや・・その・・言いそびれてしまって・・」

「言ってないんですか?」

筆者はその話を聞いて、彼が根っからの仕事人間であることがようやく理解できたのです。

仕事、そして、家庭を持つということ

独身時代からずっと勤めてきた会社で、結婚をしても、妻がもうすぐ出産を迎えようとしているこの時期も、仕事量を調整することもなく同じペースで働き続けている。

彼は、次のように言いました。

「仕事をしている時が、一番、自分でいられると言いますか・・」

彼が守らなければならない ” 自分 ” とは、一体、何か?

「つまり、家庭ではそれが難しい?」

「そうですね・・自分でも分かってるんです。結婚した時もそうでしたし・・・」

「何か事情が、おありのようですね」

彼いわく、結婚した後も独身時代の考えが抜け切れていないと言います。会社の同僚と共に目標に向かって仕事に熱中している時、” 家庭を持つ身 ” というしがらみをひと時でも忘れることが出来る。

しかし、今回、一つの命を授かるといった大きな出来事を前に彼は怖くなった。

「妻から妊娠の報告を聞いた時、喜んだフリをしましたが、本当は動揺していたんです」

「父親になることに?」

「ええ、僕みたいな男が父親なんて務まるのかと思って・・それを考えると憂鬱になってしまって、それで妻とも、あまり話していません。これからどうするとか、将来のこととか・・」

では、夢の内容を振り返ってみましょう。

夢の舞台は会社のロビー。つまり、潜在意識は、” 自分を取り戻せる場所 ” を舞台として選んでいる。

そこで結婚以前からの習慣だった喫煙を行うという形で ” 独身時代 ” の中に身を置いています。

彼の ” 最初から吸っていた ” という奇妙な認識は、指先に挟んで嗜んでいるものが本当は ” 煙草 ” ではなく、禁煙を始める以前の時代、そして、今も続けている ” 独身時代 ” だから。

要するに、彼は、昔から何も変わっていないのです。

ロビーに漂ってきた原因不明の煙についてはどうでしょう?

これら経緯から文脈を読み取るなら、夢の中の ” 煙 ” は、住み心地の良かった独身時代から彼を追い立てるための ” 燻煙 ” ( 燻煙とは、煙を焚いて動物を巣穴からいぶり出すこと )

彼は、古巣を追い立てられる前に、独身時代の最後の一本を吸っているのです。

そしてラストシーン、自分の裾が燃えている。

追いつめられた状態を ” 尻に火がつく ” と言いますが、いよいよ自分はここにいられない、と感じた彼の危機感が ” 炎 ” となって現れている。

最後に彼にとっての仕事着である背広が燃え、火のついたそれを慌てて脱ぎ捨てる。仕事人間だった彼が ” 仕事への執着 ” を手放す象徴的場面。

「つまり、僕は巣穴から追い出されるネズミだったわけですね。耳の痛い夢だ・・・さて、困りましたね・・」

「何をです?」

「会社にどうやって言おうかな・・今から妊娠の報告は遅すぎますよね」

「勤め先には、産休が取りずらい雰囲気がある?」

「まあ、あると言えばありますかね・・男ばっかりで女性が少ないので」

「でも、お生まれになったら分かることですよ」

「・・そうですね。会社の上司に相談します。妻とも今後のことを話し合おうと思います」

演出に意味を与える

最初に紹介した工場火災の夢のようにトラブルの暗示を煙に置き換えて表現する理由は、煙ならば原因となる火元を見つけて消火すれば容易に問題は解決します。

しかし、実際のトラブルというのは、そう簡単に解決することが出来ない。潜在意識は、夢の中で解決しやすいシチュエーションに置き換えることで心の負荷を減らそうとしているのです。

また、二つ目に紹介した夢では煙はトラブルの暗示ではなく、彼が抱えている現在の問題を描くための演出でした。

潜在意識にとって ” 煙 ” は、演出に使うためのツールに過ぎません。” 煙 ” 自体に意味があるわけではなく、潜在意識が夢を作る過程で、その時に必要な意味を与えるのです。

無論、これは煙に限ったことでなく、夢に登場する人物や、景色、セリフ、行為、物、時間、あらゆるものに対して言えることです。

丁度、画家が絵に情感を吹き込むために、筆や色、構図、技法を選択するように、潜在意識はそれらを選択する。

その青は、海として使われることもあれば、空として使われることも、時には、悲しみを表すこともある。それを決めるのは、画家です。

そして、私たちは完成した作品を見ている。

潜在意識にとって、夢の中で使った演出が何であれ、それは、さして重要ではないのです。重要なのは、夢を見たあなたに何を感じさせることが出来たのか、ということ。

もし、あなたの夢に、煙が演出の一つとして表れたなら、その部分だけではなく夢のストーリー全体、そして、自身の私生活について一度、振り返ってみてください。

それが仮に、将来起こるトラブルの暗示であったとしても、自身の日常を振り返れば、芽を出す前のトラブルとなる種を見つけることが出来るかもしれません。

見つけることが出来れば、小さなうちに摘み取ることも可能でしょう。

 

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