夢の中の ” 煙 “|意味を与えられた演出効果

夢占いでは、” 煙 ” は、
トラブルの暗示とされています。

ただ、トラブルと言っても、
様々なケースがあるでしょう。

人間関係なのか、仕事なのか、
プライベートに関することなのか、

夢の中で ” 煙 ” がどのような
シチュエーションで発生しているのかは、
観察ポイントです。

それによっては、
どういった形のトラブルかを
推測することが出来るかもしれません。

*

また、煙が必ずしも “トラブルの暗示 ”
とは限らない場合もあります。

例えば、何か不都合なものを隠すための
煙幕の役割を果たすこともありますし、

注目を集めるための狼煙として
登場している可能性もあります。

夢のストーリー全体から、
潜在意識が、どのような効果を期待して
” 煙 ” を演出に組み込んだのかを
考える必要があります。

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職場でのトラブル

次は、とある女性が見た夢の一例です。

現場に薄い霧がかかっている。
 
不思議に思って周辺を見回ると、
機械から煙が出ている。
 
消火器を取りに行くが、なぜか
途中で目的が変わり、勤務表を確認している。

この夢を見た女性は、工場勤務の
パート従業員として働いていました。

夢は彼女の職場での
” ぼや騒ぎ ” を描いています。

そして、最後の場面ではストーリーに
若干の不整合が起こっています。

*

この夢を見た後、
彼女はとある出来事に遭遇します。

シフトスケジュールでは、当日、
休暇ということになっていましたが、
職場で無断欠勤があり、彼女が、
その穴を急きょ埋めなければならなかった。

そして、無断欠勤したのは、
丁度、夢の中で煙の発生源となっていた
機械を担当しているオペレーターだったのです。

この夢では煙の出ている場所によって、
出来事を断片的に伝えています。

ストーリーの最後に、
消火器を探すという行為が、
途中から勤務表を確認するという目的に
すり替わっているという部分も、
それが勤務スケジュールに関する問題
であることを示唆しています。

さて、ここで疑問なのは、

夢は、今回、彼女に降りかかった
予期せぬトラブルを、なぜ、
” 工場のぼや騒ぎ ” という遠回しな表現に
置き換えたのかということです。

単なるスケジュール上の問題ならば、
最初から、そのように描けば
よかったのではないでしょうか?

夢の終盤では、実際にそうなっています。

最適な演出

潜在意識が直接描写を避け、
別の何かに置き換える理由は、
事実を都合良く書き換えるためです。

夢の内容は自由にコントロール出来るわけですから、
それが都合が悪いことならば、
無論、都合の良い形に書き換える。

潜在意識に真実を伝えようとする
ジャーナリズム精神などありません。

では、今回の夢については、
どうでしょう?

職場仲間の無断欠勤が、
担当する機械の火災に置き換えられている。

彼女にとっては誰かの欠勤により、
休日返上となるよりは、機械の故障
であった方が状況としてはマシです。

なぜなら、機械は会社の設備ですし、
パート従業員である彼女が
責任を取るようなものではない。

火を消し止めれば、後は、
管理者が修理業者を呼ぶだけです。

*

トラブルの暗示を表現する方法は、
” 煙 ” だけではありません。

シチュエーションによっては、
吠え続ける犬であったり、
鳴り響く携帯であったり、
激しくドアを叩く人影であったり、

それは、状況によって選択されるのです。

今回の夢の舞台が ” 工場 ” という場所なので、
機械から火災が発生するという演出は、
自然な発想です。

つまり、” 煙 ” がトラブルを暗示している
わけではなく、トラブルを暗示する演出に
このシチュエーションならば ” 煙 ” が
最適だった、ということなのでしょう。

*

最後の場面で消化器を探していたはずが、
いつの間にか、勤務表のチェックをしている
という一見すると奇妙に見える場面転換。

これは、目覚める直前によく起こる現象で、
夢が伝えるメッセージが
直接的表現として露呈しているのです。

つまり、潜在意識が目覚めを察知して、
処理の仕方を直接効果のある方法に
切り替えている。

” ああ、目覚めてしまう。
煙に例えている場合じゃない。
こうなったら勤務表を書き換えてしまおう ”

という具合に。

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会社のロビーで

では、煙に関する夢を
もう一つ、紹介しましょう。

次は、会社員男性が見た夢の一例です。

会社のロビーで煙草を取り出して
最後の一本を吸う。
 
どこからともなく煙が漂ってくる。
 
火災かと思い様子を見に行くが、
煙がどこから来ているのか分からない。
 
視線を下ろすと、自分の着ている
背広の裾が燃えていることに気づき、
慌てて服を脱ごうとする。

夢の中で彼は衣類が燃えているのを見て、
慌てて飛び起きたということです。

一見すると、
職場で火災が発生するという内容から、
先ほどの夢と同様に仕事に関するトラブルを
暗示しているようにも見えます。

*

” 会社のロビーで煙草を吸う
といったことは日常的な習慣ですか? ”

筆者の質問に彼は答えます。

” ちょっと、そこが変なんですが、
僕は今、禁煙中なので・・ ”

” つまり、夢の中で、禁煙を破って
煙草を吸っていたということですか? ”

” そうなんでしょうか?
感覚的には禁煙をしていることすら
頭に無かったというか・・
最初から吸っていたという認識でした ”

夢の中で彼が持った奇妙な認識。

もしかすると、これは煙草を吸うという
日常的行為のように見せかけた
別の ” 何か ” を描いているのかもしれません。

*

まず、夢の舞台について考えてみましょう。
そこは会社のロビーだった。

禁煙している彼が煙草が欲しくなって、
夢の中で吸っているというのであれば、
わざわざ会社のロビーを用意するまでもなく、
普通に自宅で吸うこともできたはず。

潜在意識は、あえて自宅ではない場所を
選択しているように見えます。

” 禁煙中に煙草が欲しくなるといったことは、
ありましたか? ”

” 最初は結構イライラしたりしましたが、
今は落ち着いています ”

” 禁煙を始められたきっかけは? ”

” 妻が妊娠をしまして、
以前から止めてくれと言われていたんです ”

*

彼の家庭の内情を聞き、夢の舞台が
自宅ではないという理由が分かりました。

煙草を自宅でプカプカ吸うわけには
いかなかった彼は、誰にも咎められることのない
会社のロビーで一服をしている。

” 奥さんは、何カ月目になるんですか? ”

” ああ、お腹もかなり大きくなってきて・・
どうだろう・・
8カ月ぐらい、いや、9ヵ月・・・ ”

” では、もうすぐですね ”

” ああ、はい・・そうみたいです ”

セッション中、彼との会話の中で筆者が気になったのは、
彼が出産についてあまり関心が無いような素振で
それを話すことでした。

それから、仕事についての質問をした時。

” 現在、奥さんが妊娠されているということで、
仕事への影響に何か思い当たることは? ”

” そうですね・・今のところは無いかな。
ああ、でも、妻から、
寄り道せずに早く帰ってこいと言われてます ”

” 奥さんは家で一人? ”

” ええ、仕事が忙しくて、
残業せずに帰るのは周りの目があって、ちょっと・・ ”

” 会社の方は、知ってるんですよね?
妊娠の件は ”

” ああ・・・いや・・
その・・言いそびれてしまって・・ ”

” 言ってないんですか?”

筆者は彼の話を聞いていて、
彼が根っからの仕事人間であることが
ようやく理解できたのです。

仕事、そして、家庭を持つということ

独身時代からずっと勤めてきた会社で、
結婚をしても、妻がもうすぐ出産を迎えようと
しているこの時期も、仕事量を調整することもなく
同じペースで働き続けている。

彼は、次のように言いました。

” 仕事をしている時が、
一番、自分でいられると言いますか・・ ”

彼が守らなければならない ” 自分 ” とは、
一体、何か?

” つまり、家庭ではそれが難しい? ”

” そうですね・・自分でも分かってるんです。
結婚した時もそうでしたし・・・ ”

” 何か事情が、おありのようですね ”

彼いわく、結婚した後も
独身時代の生活が抜け切れていないと言います。

会社の同僚と共に目標に向かって仕事に熱中している時、
” 家庭を持つ身 ” というしがらみを
ひと時でも忘れることが出来る。

しかし、今回、一つの命を授かるといった
大きな出来事を前に彼は怖くなった。

” 妻から妊娠の報告を聞いた時、
喜んだフリをしましたが、本当は動揺していたんです ”

” 父親になることに? ”

” ええ、僕みたいな男が父親なんて務まるのかと思って・・
それを考えると憂鬱になってしまって、
それで妻とも、あまり話していません。
これからどうするとか、将来のこととか・・”

*

では、夢の内容を振り返ってみましょう。

夢の舞台は会社のロビー。

つまり、潜在意識は、
” 自分を取り戻せる場所 ” を舞台として選んでいる。

そこで結婚以前からの習慣だった喫煙を行うことで
” 独身時代 ” の中に身を置いています。

彼の ” 最初から吸っていた ” という奇妙な認識は、
そこが禁煙を始める以前の時代だからです。

ロビーに漂ってきた原因不明の煙については
どうでしょう?

これら経緯から文脈を読み取るなら、
夢の中の ” 煙 ” は、住み心地の良かった
独身時代から彼を追い立てるための ” 燻煙 ” です。

( 燻煙とは、煙を焚いて動物を巣穴から
いぶり出すこと )

彼は、古巣を追い立てられる前に、
独身時代の最後の一本を吸っているのです。

*

そしてラストシーン、自分の裾が燃えている。

よく追いつめられた状態を ” 尻に火がつく ”
と言いますが、いよいよ、自分は
ここにいられないと感じた彼の危機感が
” 火 ” として表現されています。

それは、彼にとって仕事着である背広を
燃やしているのです。

火のついた背広を慌てて脱ぎ捨てる。

仕事人間だった彼が
” 仕事への執着 ” を手放すという象徴的場面。

*

” まさに、僕は巣穴から追い出される
ネズミだったわけですね。
しかし、困りましたね・・ ”

” 何をです? ”

” 会社にどうやって言おうかな・・
今から妊娠の報告は遅すぎますよね ”

” もしかして、勤め先には、
産休が取りずらい雰囲気があるのでしょうか? ”

” まあ、あると言えばありますかね・・
女性社員も少ないので ”

” 会社には
既婚者の方もいらっしゃるんですよね? ”

” ああ、そうか・・
ちょっと相談してみようかな・・ ”

演出に意味を与える

最初に紹介した工場火災の夢のように
トラブルの暗示を煙に置き換えて表現する理由は、

煙ならば原因となる火元を見つけて消火すれば、
容易に問題は解決します。

しかし、実際のトラブルというのは、
そう簡単に解決することが出来ない。

潜在意識は、夢の中で
解決しやすいシチュエーションに置き換えることで、
心の負荷を減らそうとしているのです。

また、二つ目に紹介した夢では
煙はトラブルの暗示ではなく、彼が抱えている
現在の問題を描くために必要とされた演出でした。

*

潜在意識にとって ” 煙 ” は、
演出に使うためのツールに過ぎません。

” 煙 ” 自体に意味があるわけではなく、
潜在意識が夢を作る過程で、
その時に必要な意味を与えるのです。

無論、これは煙に限ったことでなく、
夢に登場する人物や、景色、セリフ、行為、物、
時間、あらゆるものに対して言えることです。

丁度、画家が絵に目的とする情感を吹き込むために、
筆や色、構図、技法を選択するように、
潜在意識は、それらを選択する。

その青は、海として使われることもあれば、
空として使われることも、
時には、悲しみを表すこともある。

それを決めるのは、画家です。

そして、私たちは完成した作品を見ている。

潜在意識にとって、夢の中で活用した演出が何であれ、
それは、さして重要ではないのです。
重要なのは、夢を見たあなたに、結果、
何を感じさせることが出来たのか、ということ。

もし、あなたの夢に、
煙が演出の一つとして表れたなら、
その部分だけではなく夢のストーリー全体、
そして、自身の私生活について
一度、振り返ってみてください。

それが仮に、
将来起こるトラブルの暗示であったとしても、
自身の日常を振り返れば、
芽を出す前のトラブルとなる種を
見つけることが出来るかもしれません。

見つけることが出来れば、
小さなうちに摘み取ることも可能でしょう。

 

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