大切な人との別れが来るその時まで|夢、そして、約束

人生、生きていれば、必ず
出会いがあり、別れがあります。

筆者が最も嫌いな言葉は、
” さようなら ” です。

ある意味、この言葉が
最も人を傷つける。

” お前の顔なんか二度と見たくない! ”
と罵られるよりも、心の底に
深く刻まれるのです。

しかし、誰しも、必ず
それを誰かに言われる時が来る。

そして、いつか自分の口から
それを言わなければいけない
時も来るのです。

人生の必然。自然の摂理。

私たちは、それを
乗り越えなければいけない。

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娘の思い

とある高齢の女性がいます。

女性は、実の娘さんと自宅周辺を
ウォーキングをするのが毎日の
日課でした。

無論、娘さんは働いていますので、
仕事終わりに母親のウォーキングに
毎日付き合うというのは大変な
ことでしょう。

一見すると、娘さんは孝行者で
微笑ましく見える。

しかし、内情は違っていたのです。

すでに八十代に差し掛かった
母親は身体機能が衰え始めており、
長距離を歩き続けるという
日々の日課は相当な負担だった。

本人は ” 休ませてくれ ” と言うが、
娘さんが家から引っ張り出して、
無理やり歩かせているのです。

そして、怠けようとする母に
手を上げたこともあった・・・

*

なぜ、娘さんがそこまでするのか?

彼女は年老いた母と二人暮らし。

経済的にもゆとりの持てる状況ではなく、
もし、母親が寝たきりにでもなれば、
母一人残して働きに出ることも
困難になる。

彼女は、年老いた母親という
大きな荷物を抱えて、今後、
予想される未来を回避しようと
必死だった。

あるいは、年老いていく母親を
間近に見ながら、その先にある
” 別れ ” を認めたくなかった
からなのかもしれません。

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後悔

” 叩いたというのは、
その一度だけですか? ”

” はい。あの時、初めて母に
手をあげてしまったんです。
自分でも、なぜあんなことを
したのか・・・ ”

彼女は、筆者の質問に答えながら、
母に手をあげてしまったことを
とても悔やんでいるようでした。

” ウォーキングは続けて
いらっしゃるのでしょうか? ”

” いえ、その件があってから
気まずくなってしまって、母とは、
ちゃんと話もしていない状態です ”

また、彼女は母をほっておけば、
家にこもりきりになり、
運動機能がより低下していくことを
心配しているようでした。

” お母様の夢を見られたのは、
手をあげてしまったその夜、
ということですね? ”

” はい、深夜二時ぐらいに
目が覚めまして ”

彼女の見た夢の内容は、
次のようなものでした。

仏間で母が座っている。
 
” お母さん ”
 
私が呼ぶと、母は軽く頷いて
ニッコリとほほ笑む。

” 母の座っている場所が
仏間だったので、もしかしたら、
何か悪い予兆のような気がして・・ ”

彼女は、母親の身に何か
起こるのではないかと心配を
しているようでした。

*

” ご自宅に仏間があるのですか? ”

” はい。父の遺影があります ”

筆者は、夢の内容を確認しながら、
次のように考えていました。

夢の作り手である彼女の潜在意識は、
なぜ、自分の母親を仏間に
配置したのか?

そして、仏壇には父の遺影が
置いてある・・

筆者は、尋ねました。

” あなたが仏間に入った時、
お母様は仏壇に向かって座って
おられたのでしょうか? ”

” いえ、私が来るのを待っていた
という感じで、こちらに向かって
座っていました ”

” 夢の中でお母様を呼ばれた
ということですが、それは、
仏間に入る前ですか? ”

” いえ、仏間に入り、
母の姿を確認した後です ”

” つまり、あなたは仏間に入ってから、
こちらに向いているお母様に向かって
「お母さん」と声をかけたという
ことですか? ”

” はい。そういうことに
なりますね・・何か変ですか? ”

” お母様が、
あなたに気づかれなかったから、
呼んだわけではない? ”

” 母はすでに私を確認済みだった
と思います ”

” お互い間近で向き合っている状態で
わざわざ名前を呼ぶ必要があるように
感じないのですが「お母さん・・」
と呼んだ後に、あなたは何か言おうと
していたということですか? ”

彼女は夢の内容をもう一度、
振り返り、次のように答えます。

” ・・・私は、何かを伝えようと
していて、母が笑顔で頷いたので
それ以上、何も言わなかったんです ”

” つまり、お母様は、あなたが
何を伝えようとしているのか、
すでに知っているという意味で
頷かれた? ”

” ああ、そうです。
あれは、そういう頷きでした ”

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彼女が伝えたかったこと

” あなたは何を
伝えようとしていたのですか? ”

” 私は・・・・ すみません。
何て言おうとしていたのか
思い出せません。とても大事なこと
だったというのは分かるんですが ”

” 手をあげてしまったことに
ついての謝罪ではない? ”

” 違うと思います。
手をあげた後に
私は、母には謝ったんです ”

” それは、現実世界のことですね? ”

” はい。確か、当日の夜、
ご飯を食べた後でした ”

” お母様は、
どんなご様子でしたか? ”

” 何ともないから、
気にしなくていいと・・・ ”

” 怪我は無かったんですね? ”

” はい、幸い。年齢だけに、
冷っとしたんですが・・ ”

*

当初、筆者は、彼女の母に対する
罪悪感が今回の夢になったのだと
考えていました。

しかし、彼女の話を聞く限り、
この夢には、より深い意味が
隠されているように思えてきました。

彼女は、何かを伝えようとしていた。
謝罪よりも、ずっと大切な何か。

彼女は ” お母さん ” という
言葉の後に続くセリフを
思い出せないのではなく、
” お母さん ” という一言に
彼女の伝えたいことの全てが
要約されていたのかもしれない。

長い人生を一緒に歩んできた
母と娘だけにしか分からない
様々な思いが。

*

” 私が目先のことばかり、
考えていたのかも・・・ ”

翌日、セッションの終盤、彼女は、
そんなことを呟きました。

” 目先とは、どういう意味ですか? ”

筆者が尋ねると、
彼女は次のように答えました。

” 母が年老いていくことは
止められない。
必死に止めようとしたけど・・
母には長生きしてほしいんです。
でも、それが母を苦しめている ”

” それに、母を最後まで
責任を持って見ると約束したので ”

” お父様ですか? ”

” はい。逝く前に父は、
母のことばかり心配していました。
母に先に逝くことをすまないと
謝っていました。
もう、十年も前のことですが ”

*

セッションが父親の話に
差し掛かった時に、彼女は、
次のように言いました。

” 今回のセッションで自分でも
色々考えみて分かったんですけど、
私、誤解していたようです ”

” 何を、誤解されていたんですか? ”

” 父が言った「お母さんを頼む」
というのは、長生きとかじゃなくて、
母が一番望んでいる最後を過ごす
ことなんじゃないかって・・・

そうだ。私、それを
お父さんとお母さんに言おうとして、
仏間に・・・”

*

この夢で最も重要な要素は、
母の背後にあった父の遺影だったのです。

父との約束の本当の意味。

それを彼女は悟り、両親に
報告しようと仏間に行った。

そして、「お母さん」という
一言でその全ては伝わるのです。

仏間に座る母は、彼女の心の中の母、
それは、いずれ悟ることを知っていた
潜在意識が投影した彼女自身の姿。

にっこりとほほ笑んで頷いたのは、
潜在意識が言っているのです。

” そう。それが、
あなたが探していた答えよ ”

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後日・・

後日、彼女から一通のメールが
届きます。

メールの内容は、彼女が
介護支援センターの窓口に相談
したところ、リハビリ機能を兼ねた
高齢者専用のフィットネスクラブの
紹介を受けたと言います。

値段もそれほど高くなく、
送迎バスがついている。

今日、母とその下見に行くと、
ジムの方もとても親切にしてくれて、
母は自宅の周りを歩くよりは
こっちの方がいいと言って、
週二回のペースで通うことになった。

” 少し肩の力が抜けた気がします ”

彼女は言いました。

筆者には、セッションを
受けている時の思い悩んだ彼女と、
後日、送られてきたメールの文面
から伝わる雰囲気が、少しだけ
変わったように感じました。

いつか大切な人と
別れなければいけない。

それは、誰にでも訪れる
受け入れなければならない現実。

彼女は口に出して
言いませんでしたが、多分、
” 覚悟 ” を決めたのでしょう。

 

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