夢の中の ” ストーカー “|恐れている状況が夢になったら

夢の中で、元彼や別れた元夫が登場
するといったケースがあります。

そして、しばしば、
険悪な状況がそこに描かれる。

別れる直前の気まずい状況を
再現する場合もあれば、
一つ屋根の下でお互いを無視しあったり、
円満に別れたはずなのに、なぜか、
夢の中では罵倒し合っていたり、
様々なシチュエーションが考えられます。

夢は自ら作るものですから、
このような不愉快な設定の夢を
作る必要はないはずです。

なぜ、自分の夢の中でまで、
嫌な思いをしなければならないのでしょう?

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夢の中の ” ストーカー “

次は、とある女性が見た夢の一例です。

オフィスの窓から駐車場に一台の車が
止まっているのが見える。
 
どこかで見覚えのある車。
 
ロビーの方から
怒鳴り散らす男の声が聞こえる。
 
遠くから、こっそりと
確認すると元彼が暴れている。

彼女の説明では夢に登場している男性は、
以前、交際していた実在の人物で、
彼とは、二か月前に、
すでに終わっていると言います。

破局の理由は、一度、彼に暴力を受け、
それ以来会っておらず、何度か
謝罪のメッセージが送られてきたものの、
彼女は一度も返信せずに放置している
という状況でした。

” つまり、同意の上で別れた
わけではないということですか? ”

筆者がそう尋ねると、彼女は
現在の複雑な状況を加えて説明します。

こちらから、はっきりと
” 別れたい ” と意思を示せば、
男性がどんな反応をするのか分からない。 

別れ話をすれば揉めるのは避けられず、
出来ればこのまま自然消滅してほしい
というのが本音だと言います。

” 多分、彼は反省を促すために
私が一時的に距離を置いているのだと
勘違いしているみたいで、私は、
もう、二度と会うつもりは無いんですが・・ ”

二人の間には、今の状況認識に
食い違いがあるようでした。

*

夢の中で、彼女は元彼の姿を見て、
動揺し、とっさに身を隠したそうです。

実際に職場にまで押しかけて
きたことはありませんが、夢の中では、
その元彼が職場に現れるという
ストーリーになっています。

” 彼ならリアルにありえそうなので・・ ”

今回の夢を見た彼女は、
本当に元彼が現れるのではないかと
心配しているようでした。

果たして、この夢は悪い出来事の
前兆なのでしょうか?

実現可能なシェルター

まず、この夢を作ったのは彼女自身
だということを理解しておく必要があります。

つまり、夢の中で元彼をキャスティング
しているのも彼女だということです。

なぜ、今、最も現れて欲しくない人物を
自ら夢の中に呼び込んでいるのか?

彼女の話を聞く限り、男性に対する
気持ちは既に無いということで、もう一度、
やり直したいという訳でもなさそうです。

*

” 夢の中で男性は暴れていたとありますが、
具体的にはどういった状況だったのですか? ”

筆者の質問に彼女は次のように答えます。

” 男性社員がニ、三人で取り囲んで、
今にも取り押さえようとしている
といった感じでした ”

それから、直接、目撃したわけでは無いが、
武器を所持しているというような設定
だったと言います。

” 彼が、あなたの自宅に押しかけてくる
ということは、実際にありましたか? ”

彼女は答えます。

” 今のところはメッセージが入ってくる
というだけで自宅に来たことはないです。
自宅の場所は知られているので、もしかしたら
今後そういうことがあるかもしれませんが・・ ”

また、彼女は、一人暮らしで
自宅が小さなアパートの一階ということで、
万一のことを考えると不安だと言います。

*

こうして彼女の置かれている現在の状況を知ると、
この夢が、なぜ、舞台を会社に設定して
いるのかが理解出来ます。

一人暮らしの自宅では、
自分を守ってくれる人はいませんから、
もし、万一、元彼が押しかけてくるとしたら、
彼女にとって自宅よりは
会社の方が都合がよいわけです。

会社ならば男手が何人もいますし、
” 敷地に侵入した部外者 ”
という扱いで元彼を追い出すことが出来る。

つまり、彼女は元彼から身を守るために、
会社という環境を利用した。

もし、夢の舞台が自宅でも会社でもなく
架空の場所だったらどうでしょう?

この夢は彼女が作ったものですから、
極論、架空の場所で暴れる元彼を
スーパーヒーローが現れて宇宙の彼方に
投げ飛ばすというストーリーにすることも可能です。

さらに言うなら、そもそも
このような悪夢を作らなければいい。

しかし、彼女の潜在意識はそれを作り、
あえて、元彼が会社に押しかけてくる
というリアルな状況を描いています。

この夢においてシチュエーションは
リアルでなければならない。

なぜなら、彼女の不安を少しでも減らすために、
説得力のある ” 実現可能なシェルター ” が
必要だったからです。

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理想的なピリオド

ここで、ある疑問が浮かびます。

彼女は身を守るために舞台設定を会社にした。

しかし、そもそも、危険な状況を
描いているのも彼女自身なのです。

つまり、危険な状況に身を置きながら、
同時に身を守ろうともしている。

この一見、矛盾しているように
見える設定は何を意味しているのでしょう?

彼女が今、置かれている
” 何事も起こらずに済んでいる ”
微妙な状況は、元彼との間にある
ちょっとした認識の行き違いによって
支えられています。

元彼は、彼女がメッセージに答えないのは、
一時的な冷却期間だと思っており、彼女が
別れたいという明確な意思を示さない理由が、
” 揉めると厄介だから ” だとは
思っていないという点です。

いずれ、長過ぎる冷却期間を不審に思い、
元彼の追求が始まるかもしれません。

もしくは、彼女の望みどおり、
元彼が気持ちを察して自然消滅してくれる
かもしれない。

丁度、回転し続けるコインのように、
それはいつか倒れて裏か表かになる。

彼女は、そのことを自覚しているのです。

コインが回転し続けている限りは、
彼女は、はっきりとした結論を出すことも出来ず、
事の成り行きを黙って見守るしかない。

元彼の呪縛から逃れたいと思いながらも、
揉めるのを覚悟して別れを切り出すことも
出来ないという中途半端な状況が
ストレスになっている。

故に必要だったのです。

自分の身を守りながらも、
この中途半端な状況を手早く終結させる方法が。

*

” 彼は武器を持っていたということですが、
それは、どういったものですか? ”

” 夢の中では、多分、カッターのような
小さなものだという認識でした。
実際に見たわけではなくて、
誰かがそう言っていたのを聞いたような・・ ”

” つまり、元彼はあなたに怪我を負わせに来た
という設定だったということですか? ”

” 脅しのためか、はっきりとはわかりませんけど、
それで、誰かが警察に連絡しようとしていました ”

彼女は、元彼に小さな武器を持たせて、
この一件を ” 事件 ” にしたがっているのです。

この設定ならば、彼女は元彼と
一切、接触することなく二人の関係を法律によって
完全に終結させることが出来る。

彼女にとっては、最も、
負担のかからない理想的なピリオド。

この夢は、彼女が今最も望んでいるリアルが
描かれているのです。

簡単なようで難しいこと

もし、あなたの夢に別れた元恋人や
配偶者が登場したとして、そこで何か
問題が起きているというなら、

まず、最初に必要なのは、
自分が今置かれている状況、そして、
自分が何を抱えているのかを再確認することです。

例えば、今回の夢で言うなら、
元彼との問題が棚上げされたまま、
微妙なバランスの上に自身が
置かれているということを
彼女の潜在意識は認識しています。

それが、不安の原因となり、
問題を早めに終結させたいという
願望が夢を作る動機になった。

*

自身の状況を再確認するというのは、
一見、容易に思えます。

” 自分のことぐらい分かっている ”
と思えてしまうのです。

例えば、自分の親に
ああだこうだと要らぬ指摘をされて、
腹を立てた経験は誰にでもあると思います。
そんな時、

” 言われなくても分かっている ”
” 大きなお世話だ ”

と言って、親の指摘に反発して、
問題に取り組むのを先送りにしたり、
無視をしたりする。

もし、指摘するのが、親ではなく、
もう一人の自分ならどうでしょう?

はやり、指摘された方の自分は、
同じ反応を示します。

問題に蓋をして考えないようにする。
もしくは、無かったことにする。

つまり、再確認とは誰かに指摘されたら
腹を立ててしまうようなこと、
不都合だと感じることにも目を
向けなければならないということです。

今回のケースで言えば、彼女にとって
いずれ表面化する元彼との問題は、
遠ざけておきたい不都合な事実です。

しかし、潜在意識は、それをわざわざ夢にした。
来るべき試練に対応するために。

夢とは、もともと触れたくない
タブーを扱うものですから、
それが描かれるのは必然なのです。

そう言った意味で、状況を再確認するというのは
誰にとっても難しいのです。

 

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