ある晩に夢を見た。夢占いで調べると、
” 新しい恋の始まり ” とある。
期待してそれを待っていたが、結局、
一週間経っても一ヵ月経っても何も
起こらない。
そのうち ” 夢占いなんて当たらない ”
そう思って、夢に対する関心を失って
しまう。そんな体験をした人は意外に
多いのではないでしょうか。
実は、夢に関する一つの誤解が、
このような結果を招いてしまっている
のです。そして、ほとんどの人が、
それに気づいていない。
では、その誤解とは、一体、何でしょう?
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見過ごされた出来事
そもそも、夢占いが当たったとか、
外れたという判定は、何を基準に
考えればよいのでしょう?
例えば、” 思わぬ収入が入る ” という暗示
を示す夢を見たとき、いくらだったら
納得しますか?
通り道に十円が落ちていても ” 思わぬ収入 ”
ですし、宝くじで五千円を当てたのはいいが
親戚の祝い事で消えてしまったとしても、
一時的ですが、それも ” 思わぬ収入 ” と
言えます。
ここで、忘れてならないのは、夢は、
その人の ” 主観 ” によって作られている
ということです。
例えば、とある男性が財布を忘れたまま
車で遠出してしまい、途中で喉が渇いて
しかたがなかったとします。
車内の小銭入れには百円しかなく、
ジュースを買うことが出来ない。そこで、
必死に探し回り、運転席の足マットを
捲ると、そこには五十円が落ちていた。
この時の彼にとってこの五十円は、とても
大きな臨時収入に思えるでしょう。
実は、彼はその数日前に次のような夢を
見ている。
自宅の敷地内にある駐車スペースから、
貴重な遺跡を発掘する。
まさに、彼にとって、マットの裏に
落ちていた五十円は遠い昔に紛失した
” 貴重な遺跡 ” だったわけです。
夢を見た時点では、彼は、まだ、財布を
忘れたまま遠出をしていませんので、
遺跡の夢を見て、こう思う。
” これは、とんでもない大きな幸運が
舞い込んでくるという暗示だ ”
それから数週間過ぎた頃、夢を思い返して
次のように思う。
” どういうわけだ。
何も起こらないじゃないか、
あの遺跡の夢は一体何だったんだ?”
彼は見過ごしているのです。夢を見た
数日後に車の中で小銭を見つける出来事
があったことを。
夢は事実を映す鏡ではない
夢は、その人の ” 主観 ” を描いている。
まず、夢が客観的に描かれることは
ありません。なぜなら、夢の作り手である
潜在意識にとって、客観的に出来事を描写
するメリットが無いからです。
例えば、明日、会社で上司にお説教を
されるという悪い出来事が待っている
とします。あなたは、そんな未来が
待っているとは知らずにいつもどおり
就寝する。
そこで見る夢は、上司にお説教を
受けているあなたの姿そのものでは
ありません。
あなたの潜在意識は夢を都合良く脚色し、
自分ではなく、お説教を受けている同僚を
あなたがかばうという夢を作る。
もしくは、なぜか職場に上司の飼っている
ポメラニアンがいて、あなたに向かって
キャンキャン吠え続けるという夢を作る
かもしれません。
*
いずれにせよ、潜在意識は明日の悪い
出来事を夢の中で何とか回避しようと
内容を作り変えるのです。
それを私たちは未来を暗示する夢として
見ている。
潜在意識は私たちに警告するために
夢を作っているわけではありません。
自らその出来事に対処し、心の平静を
取り戻すために夢を作るのです。
ゆえに、未来の出来事をそのまま
描写することは無い。
この仕組みを知らない人は、
先ほど遺跡の夢を見た彼と同じように、
自分の見た夢と実際に起こる出来事に
ある因果関係を見過ごしてしまい、
” 単なる夢 ” として片づけてしまう。
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潜在意識の見ているもの
先ほどの男性のケースでは、
小銭が落ちていたという小さな出来事が、
あたかも世紀の大発見のように夢に
描かれたのは、財布を忘れてしまった
その時の彼にとっては、それが、まさ
” 大発見 ” だったからです。
つまり、出来事自体は大したことでは
ありませんが、彼の窮地を救うほどの
インパクトがあった。
潜在意識が見ているのは出来事そのもの
ではなく、心に与えた衝撃の方です。
*
では、次のような例はどうでしょう?
とある女性が、突然、意中の男性に
話しかけられる。
ドキッとしたのも束の間、男性の反対側の
耳にスマホが当てられていることに気づく。
彼女の単なる勘違いです。
しかし、すぐ間近で男性の声がした瞬間、
胸が高鳴ったなら、潜在意識は
” 恋の始まり ” を暗示する夢を作る。
それが、事実だろうと勘違いだろうと、
本人がそう感じたのなら、
その ” 主観 ” を元に夢は作られる。
潜在意識にとっては、出来事に対して
あなたが ” どう感じたのか ” が全て
であって、実際の出来事がどうだったかは
どうでもよいのです。
*
こうした潜在意識の性質を理解していない
と何か夢を見たとしても、当たったとか、
外れたという表面的な視点でしか、
捉えることができず、その内容に一喜一憂
することになります。
夢が描くのは、常にその人の中の認識や
感覚という主観のみですから、夢の中に
再現される現実世界の風景は、常に主観
というフィルターを通した結果でしかない。
例えば、あなたが自分のことを
” もう若くない ” と感じているなら、
夢の中で鏡をのぞけば、いつもより老けた
自分の姿が映る。
精神的に大人になり切れないというなら、
鏡の中には学生時代の頃のあなたが映る。
*
夢は ” 主観 ” でしか描かれない。そして、
その夢が未来を暗示する場合も、やはり、
主観でしか描かれない。
これは重要なポイントです。
あなたはとある夜、鏡の前に立つ年老いた
自分の姿を夢に見る。
目覚めてから、こう思う。
” なぜ、あんな夢を見たのだろう? ”
それから、数日後、顔を洗っている最中に
おでこの異変に気づく。必死にこすったり、
伸ばしたりしてもそれは消えない。
間違いないく小じわだと分かったあなたは
衝撃を受ける。
数日前に見た夢の中の自分は、年齢を
感じてしまったあなたの主観を映し出した
わけです。
実際は、小じわであってもあなたが受けた
衝撃が夢に過度な演出を加えるのです。
*
夢は忠実に再現します。現実世界ではなく、
あなたの感じたことを。
あなたは現実世界を生きている。
潜在意識が見ているのは、
現実世界を見ているあなたの心です。
現実世界そのものは見えていない。
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