夢解釈で陥りやすいバイアス問題|冷静な判断のために

夢とは、曖昧な創造物です。

解釈の仕方によって、どのような回答でも
導き出せる。自分にとって都合の良い解釈
をすることも出来てしまう。

だから、私たちは、常に葛藤しなければ
ならない。

都合の良いことだけを言う声と、それを
否定する声を聞き分けながら、何を選択し、
何を選択しないか。

心に一点の迷いも無いというなら、
それは理想的状態ではなく、単に客観性を
見失っているだけです。

心に迷いがある状態こそが、
冷静であることの証。

広告

人の性質

都合の良い解釈とは、別に夢に限った話
ではなく、現実世界でもよく見られる
光景です。

例えば、会社のミーティングルームで
上司と部下がアイデアを出し合っている。

上司の提案に部下が賛成しない時、
上司はこう言うのです。

” まず、行動しないと何も始まらない ”

逆に、部下の提案に上司が難色を示す時は、
次のように言う。

” ちょっと待て、
しっかりとしたリサーチが必要だ ”

まずは行動するべきか、もしくは、
しっかりと精査すべきか、
どちらが正しいのでしょう?

どちらも正しいのです。考えとしては・・
上司は、その時々で自分に都合の良い
考えを選択しているだけです。

そして、選び取る考えは、いずれも
理に叶っており、一見すると、理論的に
正しいことを言っているように見える。

人は、理論的に考えているようで、結局は
感情に流される。その時々で都合のよい
考えを使い分けながら。

恋愛についても、同じです。

誰かを好きになれば、その人の悪い部分
ではなく、良い部分を見つけようとする。

単なる ” 子供っぽさ ” は ” 純粋な心 ” と
言い換えられ、

” 自己中心的な性格 ” は、
” 押しの強さ ” や ” 頼り甲斐 ” と呼ばれ、

” 優柔不断な性格 ” は ” 優しさ ” と呼ばれる。

裏切られた過去を持つ人ならば、
近づいてくる異性は、全て自分を騙そうと
しているように見えてしまう。

単なる親切心も、その人には下心前提の
” 見え透いた優しさ ” に見える。

一度、嫌いになってしまうと、その人に
良い所があっても、それを素直に認める
ことが出来なくなる。むしろ、粗探しを
始めてしまう。

全ては ” 主観 ” によって判断されている。
そして、悪いことに自分は至って冷静な
判断をしていると思っている。

その時にネガティブなイメージが
欲しければ、そういった捉え方が
出来ますし、ポジティブなイメージが
欲しければ、そのように捉えることが
出来る。

どちらが正解か、という話ではなく、
都合の良い方を正解だと思い込みたがる
人の性質、いわゆる ” バイアス ” を
理解しておく必要があります。

解釈とは一つではない

夢をどう解釈するか?

結局、現実世界と同じです。自分にとって
都合の良い解釈を知らず知らずに選択して
いる可能性がある。

夢解釈が難しいのは、それっぽい解釈を
無数に作り出せる点にあります。そこに、
解釈する側の ” 主観 ” が入ることで、
バイアスがかかり、誤ったものを選択して
しまうという問題です。

次は、とある未成年の女性が見た
夢の一例です。

デパートのような場所で
エスカレーターを上がっている。
 
店内アナウンスで自分の名前が
呼ばれる。
 
母親が一階で
自分を探しているようだ。
 
自分は途中で降りられず
そのまま進んでいく。

デパートで母親とはぐれてしまった
という夢。この夢の意味は何でしょう?

例えば、次のような解釈が考えられます。

彼女は、母親の支配から、少しの間
離れたかった。

途中で降りられないエスカレーターは、
母親と距離を置きたがっている彼女に
口実を与えている。

しかし、次のように解釈することも
出来ます。

親から自立をすることが出来るという
暗示。

母親は一階に残り、自分は二階へ
行こうとしている。自分は一つ上の
高いステージに上がるという意味で、
大人に成長すると解釈する。

もしくは、一階の母親は自分の
あるべき姿を象徴し、そこから自分が
離れつつあることに不安を感じ、それが
名前を呼びかける店内アナウンスに
なっているのかもしれません。

もしくは、今後、デパートではなく
別の外出先で母親とはぐれてしまうという
実際の出来事の暗示なのかもしれない。

そこには、いくつもの解釈を見つける
ことが出来る。

無論、やり方次第では解釈を強引に
捻じ曲げて、欲しい結果に結びつける
ことは可能でしょう。そもそも、
答え合わせなど出来ないのですから。

結局、どの解釈を選び取るかは、
彼女自身が決めることなのです。

広告

自分で自分をブロックする

あなたが夢を見たとして、その意味を
探る時に、まず、整理しておかなければ
ならないのは、自分がその夢に何を
期待しているのか?ということです。

例えば、恋多き乙女が、好きな人が登場
する夢を見たなら、それがどんな内容で
あっても ” 恋の進展 ” を暗示する夢で
あって欲しいと願うでしょう。

繰り返される毎日に飽きてしまっている
人が神秘的な夢を見れば ” 人生の変化 ” を
期待してしまう。そして、実際にその夢を
そのように解釈することが出来てしまう。

しかし、誰しも、心の中には、期待する
気持ちとは裏腹に
” それは、ちょっと都合良すぎない? ”
という冷静な考えも頭の片隅にある。

片隅に追いやられてしまったこの考えを
引っ張り出して、証言台に立たせる必要が
あります。

傍聴席からは証言にヤジが飛ぶでしょう。

” せっかく、まとまりかけていたことに
水を差すな! ”

” 誰がどう見ても、
正しいに決まっているだろ! ”

法廷で例えるならば、あなたは裁判官です。

夢解釈が難しいことのもう一つの理由は、
自分の中にある不都合な声に耳を傾けること
が極めて難しいというのが挙げられます。

大抵は、傍聴席に煽られて、判決に
バイアスがかかってしまう。

例えば、友達が何か手厳しい指摘をした
としましょう。

しかし、それが自分に都合の悪いことなら、
簡単に耳を塞ぐことが出来る。ブロック
してしまえば、自分の人生から嫌な事を
言う友達を跡形もなく抹消出来る。

それが、自分の中の声となると
そう簡単に片づけられない。

自分自身をブロックするわけですから、
当然、ブロックされたダメージを自ら
受けることになる。

ダメージとは ” 自己否定 ” です。

夢解釈につきまとうバイアス問題を
回避するためには この ” 自己否定 ” が
必要になります。ただし、否定される
” 自己 ” が違います。

あなたの中には、二人の人物がいる。
一人は、物事を都合よく考えてしまう
利己的な自分。もう一人は、客観的視点
を持った冷静な自分です。

友達をブロックし、自身さえブロック
したのは利己的な自分です。
ブロックによって排除され、ダメージを
受けたのは客観的視点を持った自分。

これによって、あなたは客観的視点を
失うことになる。

もし、あなたが利己的な自分を殴りつける
勇気があるなら、バイアス問題は解決
できる。

無論、その拳でダメージを被るのは
利己的な自分を内包するあなた自身です。

その痛みに耐えられるか、どうか、
それが鍵です。

 

関連記事


読む

読む

読む

広告

 

この記事をシェアする