夢の中で表現しようのない不快感を
感じることがあります。
あえて言葉で説明するなら、
針のむしろに座っているような、
イジメの現場を見て見ぬふりするような、
ホラー映画で目を覆いたくなるような
場面を見た時のような、
どんな表現もしっくりと来ない
言い知れぬ不快な気分。
あなたが、もし、そういった不快な感覚を
夢の中で体験したとしたら、それを言葉で
説明することは極めて難しいでしょう。
ただ、それを感じたあなただけが、
どんな感覚だったかを知っているのです。
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目に見える要素
通常、夢占いでは、夢を見た時の登場人物や
場所、振る舞いなど、目に見える要素を
中心に解釈をしていきます。
例えば、夢に登場した馬が
美しい毛並みならば吉兆を暗示し、
それが、暴れ馬ならば騒乱を暗示する
といったような具合に。
こういった目に見える要素から入る
解釈には、一つの問題があります。
つまり、項目に無い状況が夢となった時に
解釈出来ないという問題です。
登場したのが分かりやすい ” 馬 ”
などではなく、架空の動物であったり、
意味不明の物体だったりした場合、
調べようがありません。
*
また、夢を見た人が何を感じたのか、
という部分に焦点が当たる解釈もあります。
例えば、一羽の鳥が空を飛んでいる。
それが、ポツンと寂しそうに飛んでいれば
” 孤独 ” を表し、のびのびと気持ちよく
飛んでいるように感じれば ” 開放感 ”
を表すといったように。
この場合も、言葉として表せる
分かりやすいものならばよいのですが、
言い表すことの出来ない複雑な感覚
だった場合、もはや、
入力する検索ワードすら思いつきません。
仮に、” 夢 寂しそう ”
” 気分の悪い夢 ” というような
キーワードで検索しても、出てくる結果は、
多分、話が広すぎて要領を得ないでしょう。
言い知れぬ感覚
では、言い知れぬ感覚とは具体的には、
どのようなものか見ていきましょう。
次は、筆者自身が見た夢です。
部屋に太陽の光が差し込んでいる。
綺麗に片付いた窓辺。
一見、何気ない部屋の風景が
夢になっただけのように見えます。
太陽に光が差し込む窓辺。
美しい光景と言えばそうですが、筆者には
その部屋にいることが居たたまれず
苦痛だったのです。
他に登場人物がいたわけでもなく、
何かストーリーがあったわけでもない。
ただ、不協和音を聞いている時のような、
心臓を鷲づかみされているような
不快な雰囲気が部屋中に充満していた。
あまりに不快な夢なので、
目覚めてしまいました。
筆者の感じていた感覚を言葉で説明する
のは難しいですが、あえて言うならば、
事故物件か心霊スポットを訪れたときの
ような感覚とでも言いましょうか。
とにかく、二度と体験したくない感覚です。
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存在しないという ” 存在感 “
この夢のポイントは、やはり、
不快な感覚です。
これが全てを物語っている。
そして、筆者には心当たりがありました。
それは、夢の中では
綺麗に片付いていた窓辺。
実際には、そこに観葉植物が置いてあった
のですが、つい最近、それを枯らして
しまったのです。
筆者が世話を怠ったせいで枯れてしまった
のですが、今思えば、水をやるぐらいの
ことはいつでも出来たはず、
もともと、面倒くさがりの性分なので
植物の世話が後回しになっていたのです。
それも、枯らしたのは、
一度ではありませんでした。
*
たかだか、観葉植物です。
新しく買い替えればそれでよいわけですが、
潜在意識では植物を粗末に扱った罪悪感、
そして、治らない自分のだらしなさに対する
嫌悪感が混ざり合って、言い知れぬ不快感
となっていた。
それが、今回の夢となった。
夢の中の窓辺は、なぜ、片付いているのか?
” あなたが、また観葉植物を枯らしたから
でしょう。ほら、よく見なさい! ”
潜在意識が筆者に、目を逸らしておきたい
事実を突きつけているのです。
窓辺に差し込む光、
しかし、あるべきものがそこに無い。
存在しないという消去法的演出によって、
その存在感を伝えています。
シグナルとしての性質
植物を枯らしてしまった。
それほど重大な事件ではありませんが、
心の奥底でそれが ” 小さな骨 ” となって
心に引っかかり続ける。絶えずチクチクと
痛みを伴いながら。
例えば、深夜にふと目が覚める。
お風呂場の水道の蛇口をしっかり締めて
いなかったために、ポタポタと音が
しているのが聞こえてきます。
一度、気がつくと、その小さな音が
気になって仕方なくなり、それを無視して
眠ることが出来なくなる。
そして、結局は起き上がり、
蛇口を閉めに行くのです。
*
朝になるとそれほど、大したことに
思えなくても、夜、布団の中の考え事は
大きく膨らんで、人生における重大な
問題のようにも思えてくる。
夢を見ている時は、この現象と同じことが
起きています。心の声のボリュームが
大きくなっていくのです。
心の中に、たった数ミリの罪悪感があった
として、それ以外に考え事などが無い限り、
その罪悪感にスポットライトが当たる。
そして、私たちの注意を惹きつける。
それが夢の中で、
一粒の水滴が洪水として描かれたリ、
ちょっとした不満が戦争として描かれたリ、
好きな異性に一度、無視されただけで、
人類さえ滅亡させるのです。
*
筆者の感じた罪悪感は、目覚めている時
には感じ取ることが出来ないほど
小さなものだった。
それが、夢の中でスポットライトを
当てられ、映像として明確に表現された。
ゆえに、この夢の性質は、私たちが
普段気づかないことに気づかせてくれる
シグナルになるのです。
言葉が必要がない世界
今回、筆者が感じた不快な感覚は言葉として
言い表すなら、
植物を枯らした罪悪感と、自己嫌悪だった
わけですが、これは夢を読み解いた後に
ようやく認識できたのです。
夢を見ている最中は、何だか分からないが、
とにかく嫌な感覚という認識しかありませんでした。
潜在意識は、既存の言葉で説明しやすい
ように夢を作ってくれたりはしない。
それが理解しにくい感覚であったとしても、
そのままの形で私たちに投げかけてくる。
” 言葉で理解するな。感じろ ” と、
潜在意識が言っているようにも思えます。
*
私たちに投げかけられたこの ” 感覚 ” が、
潜在意識からのメッセージそのものなのです。
メッセージと言うと、言葉によるものだ
と思いがちですが、潜在意識とあなた
との間に言葉は必要ないのです。
なぜなら、それは、一人の中で行われる
” 意思の疎通 ” だから。
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