もし、あなたが夢を見たとして、そこにどんな意味があるのか知りたいと思ったら、スマホを開いて検索するでしょう。あるいは、AIに尋ねるかもしれない。
でも、キーワード入力画面で手が止まってしまう。そして、何から尋ねるべきか迷う。
” 何て入力したらよいのだろう? ”
夢とは見ている間は、そこが不自然な世界だとは思わないのです。むしろ、全てを理解し、感じ取ることが出来る。
しかし、目覚めていざ思い返してみると、支離滅裂なストーリー、特殊な設定、あまりにも個人的過ぎる内容、現実には存在しないあらゆるもの・・
言葉では、到底、言い表すことが出来ない様々な演出。
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例えば、蛇に足を噛まれるといったシンプルな内容なら入力するキーワードは、” 夢 ヘビ ” と言った感じでしょうか。
しかし、夢とは、必ずしも検索しやすい内容で作られるわけではありませんし、AIでも理解できる形でストーリーが構成されているわけでもない。
多分、あなたの見る夢は分かりにくい内容、説明しにくい内容であることの方が、断然、多いでしょう。
それが簡潔な内容であれば、回答を得られることもありますが、そうでないなら、キーワード検索やAIに訪ねたとしても、それっぽく答えているだけで、ほとんど参考にならなかったりする。
出来ることと言えば、夢占いの数ある項目から関係ありそうな解釈を拾い、それらを組み合わせて答えを推測してみることぐらい。
もしくは ” 占い ” としてではなく、心理学的な視点から夢の意味を知りたいと思うかもしれません。インターネットからある程度の情報を得られますが、それはあくまで 一般的な見方であって ” あなたへの答え ” ではない。
では、自身の見た複雑な夢の意味を知るには、一体、何が必要なのでしょう?
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言葉の必要の無い世界
まず、夢は言葉で表現することが困難な世界であることは確かです。
そもそも、言葉とは現実世界で意思疎通を図るために設計されたものですから、潜在意識の世界を表現するための仕様にはなっていない。
そして、潜在意識の世界は、私たちにとってあまり重要とされていません。誰もが夢から目覚めて5分も経てば忘れてしまう。日常には何ら関係無く、それが無くなったとしても誰も困らない。
故に、夢を言葉で表現するということについて、探求されることもなかった。夢日記を書いたことのある人なら、言語の限界を感じたことがあるでしょう。夢を文章に変換するのは至難の業です。
なぜ、言語表現の限界の話をしたかと言うと、夢の世界では ” 言葉 ” を使う必要が無いからです。
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普通、現実世界では、言葉によって相手に自分の意思を伝えます。
きっと長年連れ添った夫婦なら目を見ただけで何を言おうとしているのかを悟ることが出来る。あうんの呼吸です。もし、自分にクローン人間がいたとしたら、言葉を越えて何か通じ合うものがあるかもしれません。
では、自分が自分に意思疎通を図るとしたら、どうなるでしょう?
そこに言葉は必要ない。
悲しいという気持ちを伝えるために、いちいち ” 悲しい ” と言葉にする必要はありません。そもそも、悲しいという感覚がダイレクトに伝わるのですから。
いえ、厳密には伝える必要すらありません。だって、それは自分の感覚ですから。
つまり、夢の中で使われている言葉とは、悲哀や、喜び、怒りなど ” 感覚 ” そのものなのです。
論理的思考の欠点
夢とは、そもそも、言葉を必要としない世界ですから、現実世界の言葉で説明しやすいように一つ一つが論理的に構成されていない。
ストーリーの前後が支離滅裂とか、二つの場所に同時に存在するとか、二次元的三次元とか、猫を母親だと思って話しかけていると言った矛盾した認識が、何の疑問も無く受け入れられる世界です。
インターネットを使って夢の意味を調べようとすると、必ず夢の内容からキーワードを抜き出すという作業が必要になってきます。AIに尋ねる場合も同じです。曖昧な世界を言語化しなければならず、何をどうやって言語化するのかを選択しなければならない。
しかし、冒頭でも言ったように、夢を言語に変換するという作業はとても難しい。
やもえず、キーワードを入力するために夢の中に現れた様々なものから、検索出来そうなパーツ、言語化できそうなパーツのみを抜き出してサーチするわけです。
この夢をパーツごとに分割する方法には欠点があります。
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潜在意識が夢によって伝えようとしているのは、言葉ではなくて ” 感覚 ” 言い換えるなら、夢の中であなたが何を体験し、何を感じるかということです。
例えば、一本の映画を通して観たときに初めて伝わるメッセージがあります。それを断片的なシーンだけをいくつか取り出して、何を伝えようとしているのかを探るという状態に似ています。
映画の製作者は、作品を分析してほしいわけではなく感じてほしいのです。だから、作品を構成するパーツを個別に分析しても正しいメッセージを得ることが出来ない。
この場合、映画製作者とは潜在意識であり、映画とは、夢です。
もしくは、自分のお気に入りの音楽を友達に伝えるために言語化するとして、友達には、多分、あなたの感じた感動の一割も伝わらないでしょう。
強いて解説するなら、ジャンルは何かとか、ルーツは1990年代のブリッドポップだとか、プロデューサーはどのアルバムを手掛けた有名人だとか・・
そういった言語化された予備知識で音楽そのものを理解することは不可能であり、結局、ヘッドホンに耳を当てて聴くしかない。
言語化された時点で、言語化できなかった ” 何か ” は、削ぎ落とされ、その多くを失うのです。私たちは、そういった ” 省略 ” を無意識のうちに行っている。
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唯一の方法
ここまで説明しましたが、夢は全体で判断しなければ意味が無いということは、何となく分かってもらえたのではないでしょうか。そして、全体とは、言語化できる部分と、出来ない部分を合わせた ” 全体 ” です。
つまり、夢はバラバラには出来ない。
言語化する過程で夢を解体してしまうために、その時点で本来の意味を失ってしまう。
と言っても検索エンジンに、夢の内容全てを文章として入力するわけにはいきません。また、人間の会話をようやく理解しはじめたAIに、人間ですら理解できない潜在意識の意図を汲み取ることは不可能です。
そもそも、夢の内容をデータベースから検索して調べるというアプローチは、夢を読み解く作業には不向きなのです。
夢とはプライベートな領域から生まれたものであり、あなたが先ほど眠っている時に作り出した出来立ての創造物。インターネットは公共物であり、過去の履歴に過ぎません。
方法は、一つしか無いのです。自分で読み解くしかない。
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さて、心理学の知識も無く、夢占いの知識も使うことが出来ないとすれば、一体、何を手掛かりに夢を読み解けばよいのでしょう?
思い返してみてください。夢は、あなた自身が作った創造物です。あなたの中から生まれたものですから新しい知識は必要ない。
材料も答えも、全てあなたの中にある。
夢を読み解くということは、すでにそこにあるものを発掘する作業であり、新しい知識を誰かに授かって読み解くものではないのです。
つまり、外側の世界に目を向けて情報収集するよりも、自己の内面を掘り下げるという作業が重要になってきます。
では、内面を掘り下げるとは、具体的に何をすればよいのでしょう?
結局、それが ” 感覚 ” なのです。
夢の世界の標準言語
その場面で何を感じたのか、何を思ったのか、夢を見ている途中で感じた ” 感覚 ” というものがあるはずです。
それは、誰かに伝えることが出来ない。
例えば、あなたが何か悲しいと感じるとき、それは、いわゆる、この ” 悲しい ” ですか? それとも、こっちの ” 悲しい ” ですか?
言葉にすると同じに見えますが、そうではない。
自分の感情を言葉として声に出して発音してみたり、活字にしてみたときに ” ちょっと違うんだけどな ” と感じたことはありませんか?
こんな優しい印象ではないとか、こんな堅苦しい感じではないと自分の感じている ” 感覚 ” と実際に形として表現したものとのギャップ。
それは、ちょっとではなく、明らかに違うのです。
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もし、失恋したことを親しい友人に打ち明けて共感されたとしても、その ” 共感 ” は、厳密にはあなたの感じたものと一致しているのでしょうか?
多分、違っている。
友人には友人の体験がありますし、それは、あなたとは違うものです。
感覚は、どれだけ言葉を尽くしても誰かに伝えることは出来ない。夢の世界では、その ” 感覚 ” こそが、標準言語なのです。
だから、具体的には、夢の中にヘビが登場したなら、ヘビが登場した意味を探るというよりは、夢の中でヘビを見たときに、自身が何を感じたのかを探る必要がある。
例えば、そこであなたが言い知れぬ嫌悪感を感じたとしたら、そのヘビの意味はそれに関するものと推測することが出来ます。
インターネットで金運が上昇するとか、性的な意味合いがあるとか、夢占いや心理学の視点からもっともらしい解説を見つけたとしても、あなたの感じた ” 感覚 ” を覆すことは出来ない。
あなたの感じたことが、全てです。
夢に登場したあらゆるものの意味を決めているのは、夢の作り手であるあなた自身だということを忘れてはいけません。
知識の断捨離
と言っても、検索結果で参考になりそうな情報が全く無いとは言えない。
夢占いで調べてみて、実際に当たっていたということは事実ありますし、心理学のウェブサイトでピッタリと当てはまる回答が見つかることもあります。
その情報が有用ならば参考にすべきでしょう。そこで納得出来れば、それに越したことはありません。
ただ、夢という曖昧な創造物ですから、必ずしもインターネットの情報が全てをフォローアップしてくれるわけではない。
最終的には、自分の感じた ” 感覚 ” を基準にしなければならない。
まず、あなた自身がそうだと思える答えを見つけてください。そして、それが見つかったなら、否定的な情報を目にしたとしても、自分の見つけたものをまずは信じてみる。
あなたが作った世界です。他の誰が否定出来ると言うのでしょう?
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さて、今回は言葉で表現出来ない夢をどのように解釈すべきかということに焦点を当て、基本となる ” 感覚重視 ” のアプローチについて説明しました。
夢を読み解くという作業は、技術やノウハウの比重はそれほど大きくはないのです。
わざわざ心理学の本を読む必要もありませんし、夢占いの全ての項目を暗記する必要もありません。自身の心の中で起こっていることを純粋に見つめる。ただ、それだけのことなのです。
むしろ知識ばかりが先行して、内面を見つめることを蔑ろにすれば、かえって正しい答えから遠ざかってしまう。
そういった場合は、断捨離が必要なのかもしれません。
身に着けてしまった知識を捨て去ることは出来ませんが、一時的にその視点を忘れてゼロから考えるということは可能です。
やってみてください。
夢の中で自分が何を感じたのか ” 感覚 ” を深く、探っていくのです。
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