なぜ、このタイミングで夢を見たのか?|夢が作られた ” きっかけ “

人が夢を見るのは、どういった時でしょう?

例えば、今日、
あなたが何かに追われる夢を見たとして、
なぜ、今日なのでしょう?

一週間前でも一週間後でもなく、
昨日でも明日でもない。

なぜ、今日というタイミングで
得体の知れない存在に
追いかけられなければならなかったのか?

一見すると、夢は支離滅裂で
日常とは何の関りも無いようにも思える。

なので、依頼者に
” 今回の夢を見たきっかけになるような
出来事に心当たりは? ” と尋ねると、
大抵は次のような回答が返ってきます。

” 全く、心当たりが無いです ”

仕方がありません。その時点では
夢の意味を知る由もありませんし、
そもそも潜在意識は事実を隠蔽するため、
それは日常とかけ離れた設定となる。

今回は、夢を見た ” きっかけ ” について
見ていきましょう。

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紛れ込んだ棘

夢を見るきっかけ、 別の言い方をすれば
” トリガー ” ですが、これは夢解釈において
重要な要素の一つです。

それを現在や過去の出来事から見つける
ことが出来ない場合もありますが、
トリガーは何らかの形で必ず存在します。

日常において、それほどインパクトの無い
出来事であってもトリガーになる場合も
ありますし、状況によっては、
昨日見た夢がトリガーとなり、
今日の夢になるというケースもあります。

重要なのは出来事の大きさではなく、
それが心理的にどういったストレスを
与えるか、どうかです。

例えば、小さな棘であったとしても、
靴下に紛れ込んだそれは
歩く度にチクチクとして、
気になって仕方がないというような。

心の問題は
目で見て確認出来るわけではないので、
日常生活の中で無視されがちですが、
実際は少しずつ血を流しながら、
私たちの心のバランスを崩していく。

トリガーとは、いつの間にか
心に刺さってしまった棘のように、
見過ごしてしまいそうな小さな刺激である
可能性も頭の隅に入れておきましょう。

次は、とある女性が見た夢の一例です。

二階の自分の部屋から窓を眺めている。
 
外の景色が
列車の車窓のように動きだす。
 
家は崖に向かって
ゆっくりと移動している。

” つまり、あなたの家自体が、
動いていたということですか? ”

” 始めは、外の景色がゆっくりと横に
移動していくことに気づいて、
あれ? と思って・・・
窓から顔を出すと、景色じゃなくて
自宅の方が動いているということに
気づきまして・・”

” 家が宙に浮いていたということですか?
もしくは、レールの上とか・・ ”

” 分かりません。
宙に浮いていたんでしょうか?
レールのようなものは無かったと思います ”

” 家は崖に向かっていたとありますが、
それは、どういった? ”

” 巨大な窪みというか、クレーターというか、
それがなぜか住宅地の中にありまして、
このまま行くと落ちてしまう!と思いました ”

” 結果、落ちてはいないんですね? ”

” ええ、途中で目覚めたので。
それに、まだ距離があったように思います ”

もちろん、彼女はこの夢を見たきっかけに
全く心当たりがありませんでした。

そもそも、家が動くという非現実的な
設定ですから、日常とは全く無関係に
思えるでしょう。

一体、この夢は何を意味しているのか?

住宅地の中のクレーター

世界でコロナが猛威を振るっている
時期ですから、気軽に外出することが
出来ないということで、
家そのものを動かして行きたい場所へ
移動しているという解釈も可能です。

要するに、自粛期間のストレスという線。

ただ、家が動いている方向には繁華街や
観光地があるわけではなく、
巨大なクレーターがあり、
そのまま行けば転落するという状況が
筆者には腑に落ちませんでした。

” 気軽に外出できないことに
ストレスを感じるといったことは? ”

” 確かに、今はあまり外出してません。
元々、家にいることが多いので、
自粛と言われても、
あまり苦痛を感じないですね ”

インドア派である彼女に、
家を動かしてまで遠くに行きたいという
強い欲求があるようには見えませんでした。

” ところで、巨大なクレーターが
住宅地に出現したとしたら大惨事ですよね。
周辺の状況は覚えていますか? ”

” そうですね・・ 
落ちていく家もいくつかあったと思います ”

” つまり、あなたの自宅以外にも、
動いている建物があったということですか? ”

” ええ、隣の家も動いているようでした ”

” それは、住宅地全体が移動している
ということでは? ”

” いいえ、大半が動いてませんが、
その中に、ポツポツと動いている家がある
という感じですかね ”

この時点で、筆者は、彼女の潜在意識が、
住宅地の全てがクレーターに飲み込まれる
というストーリーを描こうとしている
のではないかと推測しました。

しかし、なぜ、全部ではなく、
一部の建物だけが動いているのか、
その理由が分かりませんでした。

” 自宅は自発的に動いていたのでしょうか?
それとも、クレーターに引き寄せられている
といった感じすか? ”

” ああ・・そう言えば、そうですね。
動いていたんじゃなくて、
引っ張られてたのかも・・ ”

” クレーターの大きさは、
具体的にはどれぐらい? ”

” ・・・かなり大きな窪みに見えました。
直径100mぐらいかな・・・すみません。
全体像を見ていないので曖昧です。
最初は、何があるか分からなかったんです ”

” どういうことですか? ”

” 二階の窓から顔を出して、
家が動いると思って・・それから、
遠くの住宅の間に何か見えて・・・
何だろうと思っていました。
50mぐらい近づいたところで大きな穴が
あると気づいて、慌てて家を出ようと・・
そこで目覚めました ”

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間接的影響

” 家が動いているとき、ご家族などは? ”

” 家にいたのは私だけだったと思います ”

” 一人暮らしということですか? ”

” いえ、今は両親と三人で暮らしています。
先月までは一人暮らしだったんですが ”

” なぜ、ご実家に戻られたか
お尋ねしてもよろしいですか? ”

” ああ・・ ちょっと仕事で色々とあり、
お給料が減ってしまったので ”

” コロナの影響ですか? ”

” 出勤日数や残業が減ったのは、
私的には楽になったのですが、やはり、
生活費の方がキツくなってしまって・・ ”

コロナ禍によって、彼女は、
これまでどおりの生活を続けることが
難しくなったと言います。

” すぐ近くにある実家の母に電話したら、
一つ返事で「戻っておいで」と言われ、
今はご飯も作ってもらえるし、凄く助かっています。
でも、両親も稼ぎが良いわけではないので、
あまり、頼るのも良くないなと・・”

筆者は話を聞きながら、
彼女の今置かれている窮状と今回の夢に
何か関係があるのかもしれないと思いました。

” ところで、夢の中では、
お隣の家も動いていたということですが、
あなたの家とお隣に思い当たる共通点などは
ありませんか? 例えば、家族構成とか ”

” 共通点ですか・・そうですね・・”

彼女いわく、隣には老夫婦が住んでおり、
定年後も働きながら二人で身を寄せ合って
暮らしているということで、自分の両親の
少し先の未来の姿のようにも見えると言います。

” 駐車スペースを借りてるんです ”

” 何の話でしょうか? ”

” 実家には、車二台分しかスペースが無くて、
私が戻ってきた時、車を止める場所が
無かったので、お隣の空きスペースに
置かせてもらってるんです ”

” それは、現実の話ですよね? ”

” ええ、お爺さんも快く承諾してくれて、
ずっと使ってもいいよと言ってくれるので ”

” いい人ですね ”

” はい、私も迷惑をかけてはいけない
と思って、有料の駐車場を探したりも
したのですが・・今の現状、
甘えてしまっているという状態です ”

” 夢の中では、お隣の老夫婦は
ご在宅だったのでしょうか? ”

” 私、家が動いているので、
お隣の様子を見に行こうと思って・・
そう言えば・・”

” 何か、思い出されました? ”

” 夢を見る晩、
アプリでシュミレーションしていたんです ”

” シュミレーション? ”

” 有料駐車場を借りたら、
生活費にどれぐらい影響が出るか ”

” なるほど、お金の計算ですね ”

彼女は就寝前、布団に入ってスマホを開き、
家計簿アプリを使って予め入力しておいた
収支のデータを見直していたと言います。

削れそうなもの、必要なものをあれこれと
考えているうちに頭が痛くなってしまった。

” ところで、
就寝前にスマホを見るというのは、
いつもの習慣ですか? ”

” ええ、大抵は、動画を見たり、
ゲームをしたり、
その晩はアプリでしたが・・ ”

ナイトルーティン

就寝前にいつものように開かれた
スマホ画面。

入力された数字を眺めながら、
あれこれ考えてみたが、余裕の無い現状を
打破できるような秘策は見つからなかった。

彼女が抱えている経済的な問題が
発端となり、今回の夢が作られた。

彼女いわく、実家に戻った時から、
ずっと不安に感じていたと言います。

これからの先行きについて。

” コロナが終息すれば、今の厳しい状況から
抜け出られると思いたいですが・・ ”

” それ以外にも、
不安要素があるということですか? ”

” ええ、以前から、その日その日を
生活するのがやっとで、
将来の夢も何も無いと言いますか・・・
両親も年老いていきますし、
私も一人っ子なので・・ ”

建物を飲み込んでいく巨大なクレーターは、
” 貧困 ” の象徴。

経済力の無い世帯が順番に、
一つ、また一つ、ゆっくりではあるが、
ズルズルと引きずりこまれ、
” 貧困 ” へと、落ちていく。

彼女の ” 貧困 ” へのイメージが、住宅地に
巨大なクレーターとして出現したのです。

今回の夢が作られるきっかけとなった
アプリによる家計のシュミレーション。

それは、彼女にとって、
いつもの生活習慣の断片に過ぎませんが、
見過ごしてしまいそうなその日常事が
” 小さな棘 ” となり、
知らず知らずのうちに彼女の中で鬱積し、
生活環境の変化によって膨張していった
” 将来への不安 ” を一刺しした。

日常のちょっとした出来事だけでも、
それが大掛かりな夢が作られるトリガー
となることは、十分考えられるのです。

スマホに届いた一行のメッセージ、
帰宅時間に見かけた通りすがりの光景、
テレビドラマの一場面、
どこかで聴いたJ-POPの歌詞の一節、
冷蔵庫で丁度切らした食料品、
ネットサーフィンで見た広告、
ゴミ出しの日・・

一日の終わりには、
忘れていそうな数々の雑事。

それが、心の中の ” 何か ” を
刺激するのであれば。

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もし、夢を見たきっかけに思い当たる節が
無いとしたら、何かを見過ごしている
のかもしれません。

小さな出来事にも目を向けてみましょう。

ただ、トリガーが存在しない夢
というのもあります。

それは、現在や過去ではなく、今後、
起こるであろう出来事に起因するケース。

ただし、きっかけが見当たらなければ、
未来を予知していると
安易に結論づけるべきではありません。

まずは、夢が何を伝えようとしているのか、
それをしっかりと見定める作業が大切です。

現代社会で生きる誰もが、
常に何らかの ” 不安 ” を抱えています。

でも、いつも抱えているものですから、
それが ” 普通 ” になってしまう。

そして、それらが心の負荷に
なっていることに気づかないまま、
長い間やり過ごし続ける。

” 現実とは、元々、こういうものだ ”
と割り切ったふりをしながら。

切り詰めた生活を続けていると、
夢を持つこと、将来について
計画を立てることが無意味に思えて、
考えなくなっていく。

こうして、社会に関心を持つことをやめ、
対話することをやめ、
他者に思いやりを持つことやめ、
自身の心の声に耳を傾けることをやめ、
目の前の利益だけを求めるようになる。

そんな時、潜在意識は、
夢を通して私たちに語りかけるのです。

” それは普通じゃないから。
分かってるの? ”

彼女の潜在意識は、
なぜ、今回の夢を作ったのか?

それは、厳しい現実を描くためでしょうか?

ならば、クレーターなど必要ありません。
単に、彼女の住む家だけを消し去れば
よいのです。

しかし、潜在意識は、
住宅地に巨大なそれを配置した。

彼女は理解しています。

これは、” 私 ” の問題ではなく、
” 私たち ” の問題であると。

彼女自身が、
多くの人々とそれを共有するために、
誰が見ても分かるように、
住宅地の真ん中に穴を開けたのです。

 

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