夢は様々な要素によって
組み立てられています。
ストーリー、登場人物、セリフ、
動作、効果音、背景、
小さなアイテムから大きなものまで、
まるで一本の映画のように、
いくつものパーツが組み合わさって
完成した一つの作品です。
もし、夢を記録するとしたら、
目に見えるこうした部分に
注目することでしょう。
ただ、それだけが全てではない。
目に見えた映像以外にも
夢を構成するパーツがあります。
夢を記録する時にそられは
単なる個人の感じ方に過ぎないとして、
大抵、省略されてしまう。
それは、” 雰囲気 ” です。
言い換えるなら ” 空気 ” でしょうか。
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ドアを叩く男
むしろ、夢を読み解く上では、
目に見える映像より、
全体に漂う ” 空気 ” の方が、
夢の核心に近い場合があります。
なぜなら、夢は最初から最後まで
” 感覚の世界 ” だからです。
次は、とある男性の見た夢の一例。
薄暗いリビングでソファーに
ぐったりと横たわっている。
突然、玄関から、
激しくドアをノックする音。
ドアの向こうから
緊迫した様子の男の声がする。
何となく重たい空気が漂っている
感じの夢です。
この夢を見た男性は、当初、
ドアの向こうで叫んでいた男が
気にかかっていたようでした。
何かを訴えるドアの向こう男は、
一体、誰なのか?
何を言いたかったのか?
筆者は、尋ねました。
” ドアの向こうにいた男性は、
何を主張していたのでしょう? ”
彼は次のように答えます。
” すみません。具体的に
何を言っていたのか覚えていないんですが、
焦っているというか、怒っているというか、
とにかく緊迫した雰囲気だけ覚えています ”
彼の記憶に残っていたのは、
ドアの向こうから、
伝わってきた緊迫感だけだった。
夢には、こうした
” 謎の人物 ” が、しばしば
登場することがあります。
夢の作り手は、あくまで
夢を見ている本人の潜在意識なので、
もし、登場人物に明確な身元が必要なら、
初めから顔が見えるシチュエーション
として人物を登場させるでしょう。
つまり、ドアの向こうに配置した
その男は誰でもよかったのです。
男は緊迫した様子で
何かを訴えさえすればよい、
初めから顔の無い存在です。
*
筆者は尋ねます。
” 男がドアを叩く前の部屋の雰囲気に
何か感じたことはありますか? ”
彼は、次のように説明しました。
” 薄暗いからなのか、
部屋の空気が凄く重たく感じた。
何か、水中にいるような ”
それから、ドアを叩いて叫ぶ声が聞こえたが、
まるで耳栓をしているように、遠くて
他人事のような感覚があったと言います。
彼はソファーから体を起こして
立ち上がろうとしたが、
体が重たく立ち上がる気力がなかった。
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彼の抱えている問題
ストーリーとしては、
単にリビングで寝ていたら
男が玄関のドアをノックした
というだけですが、
実際には、彼は夢の中で
様々なことを感じ取っていたのです。
ただ、それが彼には
ストーリーとは無関係な個人的感覚に
過ぎないと思えてしまった。
*
彼の感じ取った空気や感覚は、
この夢において重要な鍵になっています。
セッションを進めて行くうちに、
彼の抱えている問題が次第に分かってきました。
それは、アルコールに関する問題で、
そのことで、一度、体を壊し、
家族と喧嘩になったことがある
という過去がありました。
それ以来、ずっと控えていたのですが、
最近、仕事のストレスから
また、こっそりと飲み始めてしまった。
その経緯を聞いて、筆者は、
夢の中で彼が感じていた
” 水中にいるように体が重たかった ”
” 耳栓をしているように声が遠くに聞こえる ”
という奇妙な感覚が何を意味しているのか
ようやく理解出来たのです。
彼はこれまで控えていた悪習慣が、
再び戻ってきてしまったことを
酔った時の状態として夢に再現していたのです。
*
ドアを叩く男は、悪習慣を
呼び戻してしまったことに
罪悪感を感じているもう一人の彼。
それがドア越しに叫び続け訴えている。
” また、同じ失敗を繰り返すぞ!
今すぐ引き返せ! ”
夢が映像化される前
夢の中の雰囲気というのは、
人物や場所といった有形物とは違い、
無形なので、見落としやすい要素です。
しかし、夢の世界では、そういった
雰囲気や空気、印象といった感覚で
感じ取るタイプの要素が、
とても重要になってきます。
なので、夢のストーリーがどうだったか
という実際に目で見たものだけを
観察するのではなく、
ストーリーの中で自分は何を感じ取り、
何を思ったかという ” 感覚 ” に
注意を向けることが大切です。
*
例えば、一見、何でもない日常風景が
夢になったとします。
それは至っていつも通りなのですが、
あなたは何となく違和感を感じる。
それが、なぜなのかは分からない。
こういった状況で、まず、すべきことは
自分の感じた ” 違和感 ” を掘り下げることです。
ここでは単に
” 違和感 ” という言葉を使いましたが、
実際は様々な種類の違和感があると思います。
今回の夢では ” 水中のような ” という
表現が出てきました。
夢の中で感じた違和感が
” どこかで感じたことがある気がする ”
というなら、それを思い出してみてください。
そうしているうちに、
不意に夢が何を意味しているのか、
見える瞬間がやってくる。
*
夢は、あなたの感じたことが、
そのまま映像化されるのです。
本来は、夢という形になる前は、
全てが ” 感覚 ” から始まっている。
それは、映像化される以前の ” 原型 ” です。
あなたが夢の中で感じた感覚は、
その夢が作られることになった理由であり、
核心です。
関連記事 : 夢の中で何を感じたか?|” 感覚 ” という鍵
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