夢の中で身体のある部分だけが
不自然だったり、
異常な状況になっている場合があります。
例えば、顔色や皮膚がおかしな色だったり、
手足の長さが左右違っていたり、男性なのに
妊娠をしているといった奇妙な設定もある。
自身の体が異常な状況になっている
わけですから、夢を見た本人にとっては、
かなりショッキングな映像です。
心配症の人なら、何か病気になる前兆では
ないかと怖くなってしまうかもしれません。
では、こうした夢は、
どのように解釈していけばよいのでしょう?
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身体の一部分の異常
次は、筆者自身が学生時代に見た
夢の一例です。
朝、目覚めると腹部が異常に出っ張り、
牛のように垂れ下がっている。
一体、何が起こっているのか分からず、
慌てて家族を起しにいく。
この夢から目覚めて、思わず服をめくって
確認してしまうほどショッキングな夢でした。
腹部が大きく垂れ下がってしまい
歩行も困難の状況の中、
夢の中で右往左往しているという到底
人には見せられない何とも無様な姿だった。
一体、この夢は
何を意味しているのでしょう?
*
夢は私たちが現実で抱えている問題を
身近な身体の問題に置き換えて
表現することがあります。
例えば、頭を悩ませている人間関係の問題。
それを目の上の瘤として表現したりする。
まさに諺のように。
他にも、選択肢に迷っている人が
夢の中で、なぜか足が三本あり、
歩こうとすると絡まって進めないといった
奇妙な状況を描くこともあります。
この夢も、やはり自身が抱えている問題を
” 垂れ下がった腹部 ” として表現した結果
なのではないかと思いました。
丁度、大きな問題を抱える状態を
垂れ下がった腹部へと置き換えたという線。
ですが、随分、過去に見た夢なので
当時の筆者が何について悩んでいたのか
思い出すことは出来ませんでした。
*
ただ、今考えてみると、
あれは ” 誇張 ” だったのではないか、
そう思っています。
十代の頃の自分について回想すると、
思い当たるのは、ちょっとした体の不調
を大袈裟に捉えてしまう性格でした。
筆者は昔から胃が弱く、ちょっと
食べ過ぎたり、お腹を冷やしたリすると、
すぐに調子が悪くなる体質なのですが、
” もし、重大な病気が隠れていたら
どうしよう・・ ”
と頭を抱えて病院で検査を受けるべきか、
悩むこともありました。その時の辛さは、
一緒に住んでいる家族にはほとんど
伝わりません。
そこで、潜在意識は見るからに
分かりやすい形で
インパクトのある状況を夢として描いた。
この状況ならば、家族も
大いに心配してくれるでしょう。
つまり、この夢は家族の同情を
買うための大袈裟な一人芝居なのです。
夢の中でもその状態を見てもらおうと
寝ている家族を起そうとしていた。
中年の危機
では、別の例を見てみましょう。
次は、とある男性が見た夢の一例です。
人さし指の先に、よじれた
糸のようなものがついている。
引っ張って取ろうとすると、
螺旋状に指の皮が剥がれていく。
どこまでも続くので怖くなって
途中で止めて皮を元通りにするため
糊を探している。
指先の皮が際限なく剥がれるという
どことなく” 脱皮 ” を連想させる夢です。
もし、この夢が ” 脱皮 ” を意味するなら、
男性は何らかの変化を求めているのかも
しれません。
” 最近、変わりたいと思うことは
ありますか? ”
筆者は彼に尋ねます。
*
彼はもうすぐ40歳を迎えようとしている、
いわゆるアラフォーでした。
その年齢の節目に人生を振り返って、
次のように思ったそうです。
” このまま行くべきか、
別の人生を考えるべきか・・ ”
職場で彼の地位は確立されており、
部下からは頼られる存在として
親しまれていた。
” 多分、このまま働き続ければ、
生涯安泰だと思う ”
と彼は言います。そして、その一方で、
” 本当にこのままでいいのだろうか? ”
という疑問が、
常に頭にこびりついていると。
要するに彼は、
” 中年の危機 ” を迎えていたのです。
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問題をスケールダウンする
先ほど夢は、自身の抱える問題を
身体の問題に置き換えることがあると
言いましたが、この夢はそれにあたります。
中年の危機を迎えた彼の心理が、
指先の皮が剥がれるという身体の
小さな異常という形で表現されています。
彼は夢の中でよじれたそれを引っ張り、
皮が剥がれていくことに不安を覚え、
途中で止めて元に戻そうとしている。
この部分から、彼の微妙な
心理を読み取ることが出来ます。
彼は新しい自分、新しい人生を
望みながらも、変化することに
尻ごみしているのです。
長い人生を走ってきた。
若者が変化を望むように、
そう簡単に受け入れることは出来ない。
これまで培ってきたものを捨て、
新しい生き方を試すには
それなりの覚悟が必要です。
そこで彼の潜在意識は、
人生の大きな課題を身近な身体の問題に
” スケールダウン ” して夢を作った。
言わば、” 指先の出来事 ”
という小さな範囲で、ちょっとだけ
” 脱皮 ” を体験しようとしているのです。
*
しかし、それが指先の出来事であっても、
彼は途中まで来て引き返そうとしている。
剥がれた皮を元に戻そうとしています。
長い時間かけて積み上げたものがあり、
そう簡単に捨てることは出来ない。
夢の作り手である彼は指先の出来事が、
本当は何を意味しているのかを
知っているのです。
この夢では、潜在意識が解決困難な
大きな問題を処理しやすいサイズの
別のものに置き換えるという
” スケールダウン ” が行われています。
また ” 将来に対する漠然とした不安 ”
と言ったつかみどころのない問題が、
幽霊や悪魔に置き換えられるという場合も、
問題を小さく限定するという意味では
スケールダウンと言えます。
幽霊や悪魔に置き換えてしまえば、
” 漠然 ” とはしていませんから、
単純な方法で回避出来ます。
例えば、出来るだけ遠くに逃げる。
隠れる。反撃するなど。
夢の中で問題を小さく限定的に
描くことで解決しやい状況を作り、
処理するという手法です。
衝撃の後に見えてくるもの
今回は身体の異変に関するニ例の夢を
紹介しましたが、無論、あなたが見た
夢とは全く違うシチュエーションだと
思います。
上記の解釈は、
あなたには当てはまらないでしょう。
ただ、これだけは確かです。
それがショッキングな映像だったとしても、
すぐに ” 悪い出来事の予兆 ” に
結び付けるべきではないということです。
インパクトが強いほど、その夢は
、重要なのかと言えば
必ずしもそうとは言えない。
そのインパクトは注目を集めるための
” 張り子の虎 ” である可能性もあるからです。
最初に紹介した筆者の見た夢は、
身体の一部を変形させて
自身に都合の良い状況を作っていた。
まさに、見せかけだけの演出です。
*
もし、夢の中であなたの体の一部が、
異常な状態になっているというなら、
その状態になることで都合の良いことが
何か無いか探ってみてください。
一見、それがショッキングな映像
だったとしても、
グロテスクに見えたとしても、
そこには何らかの意味があるのです。
映像の衝撃に圧倒されて、
冷静さを失ってはいけません。
その意味を解き明かしたとき
見えてくるのは、
もっと現実的なテーマなのです。
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