苦しみを緩和するために|失恋した時に見る夢

多分、誰もが失恋をした経験を持つ
でしょう。あなたが、まだ、未成年で
誰かを好きになったことが無いというなら
話は別ですが。

無論、筆者にも失恋をした経験はあります。

思い描いていた未来が、単なる ” 幻想 ” に
過ぎないと悟る。生きている意味を失い、
脳裏で過去の記憶が巻き戻され、何度も
再生される。

何か見落としたことはないか・・
何が悪かったのか・・
どこから間違ってしまったのか・・

” 答え ” は永久に謎のまま。深い霧の中で
彷徨う亡霊のような日々が続く。

こんな時、
どうすれば心は救われるのでしょう?

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残酷な解釈

次は、とある女性が見た夢の一例です。

雑踏の中で好きな人を見つける。
 
自分は気づいてもらおうと
近づいていくが、
行きかう人々に紛れて見失う。
 
深い喪失感。

彼女はこの夢を見る二週間ほど前に失恋し、
心がボロボロの状態でした。

失恋後、好きな人に関する夢を全く見て
おらず、二週間経った今、その男性が夢に
現れたということで、どうしてもこの夢の
意味を知りたいと思った。

” この夢は、彼にもう一度会える
という逆夢の可能性はありますか?”

唐突に彼女は、筆者に向かって
質問を投げかけました。

” なぜ、そう思われるのですか? ”

筆者が、そう尋ね返すと、
彼女は次のように答えます。

” 私は自分が生きている意味も分かりません。
なぜ、こんな状態なのに彼を見失う夢なんて
見る必要があるんでしょう? 
余計に落ち込むだけです。これが逆夢なら、
まだ、理解できますが・・ ”

彼女の心が、今回の失恋によって重傷を
負っているのは明らかでした。

この時点で筆者は、
夢を次のように解釈していました。

彼女が抱えている深い喪失感を潜在意識が、
雑踏の中で意中の人物を見失っただけ、
という状況にすり替えて処理しようとしている。

人混み中で見失っただけなら、本当に
” 失った ” わけではなく、後で会える
可能性もある。

” 完全に失った ” という現実を受け入れ
られない彼女の心理がこの夢に描かれて
います。

筆者は、この解釈を彼女に話すことは
ありませんでした。それは、傷ついた
彼女にとっては、あまりにも残酷な解釈
だったからです。

心を治癒する者

筆者は、彼女に今必要なのは、正確な
夢分析ではなく、心のケアなのだと
思いました。

” 夢 ” という幻想に希望を託すほど彼女の
心は消耗している。しかし、筆者は
セラピストではありませんので、
心のケアについては専門外でした。

現実に打ちのめされた彼女の心を
救えるのは、やはり ” 現実 ” でしか
ないのです。

そして、それには膨大な時間が必要になる。

人によっては、数年間、いや、一生
トラウマとして爪痕を残し、その後の
人生に影響をもたらす可能性もある。

筆者では、彼女の心を救うことが
出来ないのは明白でした。

失恋の苦しみを解消するために私たちが
最初に行うことは、相手を ” 悪者 ” に
することです。これは筆者自身もそう
でしたし、多分、失恋経験者の誰もが
心当たりのあることでしょう。

しかし、筆者の場合は、それによって
心の苦しみが軽くなったということは
無かった。

人々が己の幸せのために自分勝手に行動
するということは極めて自然なことです。

そして、それぞれの行動が他人が幸せに
なろうとする意思と衝突することがある。

誰かと誰かが結ばれれば、
その二人と結ばれたかった他の人たちは、
理想としていた未来を奪われるわけです。
そんな分かりきった事実を受け入れる
ことが出来なかった。

過去については、取り立てて
笑い話にする必要もありませんし、
良い思い出にすることも、
悪い夢にする必要もありません。

それは、昨日の夕食は何だったか?
ということのように、
” どうでもよいこと ” です。

” 時間が解決する ” と言います。しかし、
実際は、時間によって解決されたわけ
ではない。心の執着が時間を置くことで
緩和されていくというプロセスが必要
なのです。

” 執着の緩和 ”

これは、どのようにして行われるのか?

まだ、寄りを戻せる可能性があるかも
しれないと思い続ける限り、
” 戻ってこない現実 ” に苦しみ続けなければ
ならない。

時間が経過するごとに、待ち人が戻らない
可能性が高まっていくわけですから、
信じることが困難になっていく。

つまり、” 可能性の減少 ” が執着の緩和へと
繋がっていく。

なので、時間が経過したとしても可能性が
減少しない限りは、それは緩和されない。
また、急激な減少は、本人にとって大きな
心の負担となる。

先ほど挙げた夢では、彼女はその夢が
逆夢である可能性を信じたがっていた。

そして、実際、夢の内容は、理想とする
未来を永久に失ったという現実を
受け止めきれない彼女の心を潜在意識が
シチュエーションを置き換えて処理を
しています。

夢の中で行われた別の状況に置き換えて
妥協線を探るという手法は、今の彼女の
心を修復するためには適切な処理です。

潜在意識は最も本人の心を熟知する者。
そして、その心を修復する最も有効な
手段を知っている者。

と言うより ” 心 ” そのものです。

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今、すべきこと

ただ、これは現在の彼女にとって有効な
手段であって、振られた直後、もしくは
少し先の未来の彼女にとって適切かと
言えばそうとは限りません。

あくまでリアルタイムな対処です。

そして、一般的に知られた
メンタルコントロール、例えば、
瞑想やアフォメーションといったものが、
今の彼女に最適な手段であると言い切る
ことも出来ない。

それらは、あくまで一般に向けて体系化
された知識であって、彼女一人のために
作られたものでは無いからです。

今の彼女にとって、好きな人と、
もう二度と会うことは無い。永久に失った
という現実を突きつけるのは心の負荷が
大き過ぎる。

だから、潜在意識は少し工夫して、
” 永久に失ったわけではなく、
単に再会の機会を失っただけ ” として、
” 永久に ” という部分を取り去った。

今の彼女にも受け入れられる現実だけを
シュチュエーションとして用意しています。

つまり、彼女は、現実を
部分的に受け入れようとしている。

筆者は、この現実を切り分けて、その一部を
承認するという手法が、今の彼女にとって
最も適切な対処だと考えます。

見方によっては、

” そんなのは、現実逃避だ。
ちゃんと事実を教えてあげなければ ”

” 時間が解決するから、
ほっておけばいいんだ ”

” 毎日、15分の瞑想を習慣にしましょう ”

と言う声もあるかもしれませんが、それは、
” 今 ” の彼女にとって押しつけでしかなく、
” 余計なこと ” なのかもしれません。

夢には彼女自身が望んでいることが
描かれているわけですから、最も負担の
軽い対処が選択される。

ところで筆者には、今回の夢の内容に
一つの疑問点がありました。

彼女は、なぜ、人々が行き交う雑踏の中で
意中の人を目撃するというシチュエーション
を選んだのか?

単に見失うという状況を描きたかった
とするなら、車を運転している彼を
見かけるとか、建物に入っていく姿を
目撃するという形でもよかった。

人々の雑踏は、必要だったのでしょうか?

ガラスの心

筆者は、彼女に尋ねました。

” 人混みの中で見かけたということですが、
何かのイベント会場やスクランブル交差点
というような場所だったのですか? ”

” 私が都会暮らしというのもあるのかも
しれません。イメージとしては秋葉原の
歩行者天国のような感じだったと思います ”

” それは、架空の場所だった
ということでしょうか? ”

” 多分、架空の場所です。私自身
そういった人混みのある場所には、
あまり行かないのですが・・ ”

彼女の潜在意識は、なぜ、普段は行くこと
のない人混みの中にわざわざ夢の舞台を
設定したのか? 

無論、その人々は、彼女自身が用意した
ものです。そして、意中の人を自分から
少し離れた人混みの中に配置している。

彼女は理解しているのです。

人生における出会いは、ちょっとした
タイミングですれ違うこともあれば、
意図しない形で全くの他人同士が知り合う
こともある。

全ては偶然の配置によって起こると。

意中の人との出会いも、その中の一つに
過ぎない。彼女の潜在意識は ” 人々の雑踏 ”
という形で人生の縮図を描こうとしている。

意中の男性との再会の可能性を
残しながらも、その一方では、すれ違った
多くの人々の中の一人として、男性との
出会いを俯瞰的に受け止めようともして
います。

夢の内容を見て、筆者には、彼女は苦境に
打ちひしがれながらも、思った以上に
冷静に現実と向き合っているように
思えました。

セッションの終わりに彼女は、
次のように言いました。

” こちらからお願いしておいて
申し訳ないのですが、分析結果は
頂かないということは可能でしょうか? ”

” あなたがそれでよいと言うなら、
そうしましょう。ただ・・なぜですか? ”

” 多分、自分でも結果は分かってるんです。
それをはっきり言われてしまうことに、
今の私が耐えられるか分からないんです ”

彼女のガラスの心は、待ち人との
再会の僅かな可能性に支えられている。

それ以外の現実ならば受け止めることが
出来ても、再会の可能性だけは残して
おかなければならないのです。

それすらも取り上げてしまえば、
彼女のハートは砕け散るでしょう。

それが、現実逃避だとしても、幻想に
縋り付いていると思われても、今の彼女に
最も適切なアプローチであることには
変わりないのです。

運命共同体

さて、あなたが理想としていた未来を
奪われてしまったとしたら、そして、
希望の無い日々を送り続けているとしたら、
その苦しみから逃れるには、一体、
どうすればよいのか?

今回の夢を見た彼女のように
現実から目を逸らすべきでしょうか?

ここでその解答を示すことは出来ない
のです。筆者は、あなたのことを何も
知らない。ネット上に見つかる様々な
情報も同じです。

一方的なアドバイスに意味が
あるでしょうか?

それは、あなたを最も理解する存在に
尋ねるべきです。つまり、あなたの
心の中に生き続けるもう一人のあなた。

そして、必ず導いてくれる。

なぜなら、あなたの絶望は、その存在の
絶望でもあるから。本当の意味で
” 運命共同体 ” です。

誰かのアドバイスに無理矢理、納得しようと
努力する必要はありません。

もし、そのアドバイスがあなたの心を
打ったとしたら、それは、あなたが
最初からそうすべきだと思っていたことを
偶然、言い当てたのでしょう。

それは、実質、あなた自身の言葉です。

ただ、必ずしもそういった偶然が起こる
わけではありません。自力で泥沼から
這い上がらなければならない時がある。

あなたには、再生の可能性が残されている。

まだ、終わっていない。

でなければ ” 答え ” を求めて、
こんな場所に来たりはしないでしょうから。

 

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