あなたの部屋は綺麗ですか、それとも汚いですか?
” 綺麗な方だと思う ”
” 綺麗とは言えないけど特別汚くもない ”
色々な回答があると思います。
まず、その人にとっての ” 綺麗な部屋 ” が
どれぐらいの状態を指しているかが分かりません。
” 綺麗な方だと思う ” と回答した人の部屋に
あなたが足を踏み入れ、
” 何これ、ありえない! ”
と叫んでしまうことも、十分考えられます。
” 部屋 ” というものはプライベートな空間なので、
その感覚のズレがよりはっきりと出る
ということだと思います。
今回は、人それぞれの感じ方
” ズレ ” について考えてみましょう。
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表出する溝
さて、” 部屋 ” というプライベートな空間でも、
感覚のズレは起こるわけですから、
さらにプライベートな空間である ” 心の中 ” は、
どうなってしまうのでしょう?
多分、はるかにズレている。
ただし、他人の心の中はのぞくことが出来ないので
どれぐらいズレているのか、
直接確かめることは出来ません。
ゆえに、ある種の ” 幻想 ” を
人々は追いかけることがある。
例えば、恋愛において、自分と同じ価値観を持った
気の合う人を選んだりします。
付き合っている間は、
お互いに心は一つだと感じている。
しかし、人が全ての面で同一の価値観を
持っているというのはおかしな話です。
意見が違っていて当然ですし、それぞれが
心の成長に伴い変化していくわけですから、
付き合いが長くなれば、
お互いに相手の変化や個性を尊重し、
許容しなければならない場面が必ずやってくる。
同一価値観を相手に求め続ければ、
やがて関係が破綻するのは明白です。
*
恋愛以外でも、そういった人々の価値観のズレが、
表出する場面というのはあります。
以前の話ですが、報道番組で
アメリカ大統領選の模様を見ていた時のことです。
カメラの前でヒラリー・クリントン氏の支持者と
ドナルド・トランプ氏の支持者が激しく
口論していました。
お互いに、
” なぜ、あんな奴を支持するんだ。気は確かか? ”
と、罵り合うのです。
そして、つかみ合いになり、一触即発、
暴動になりかかるという衝撃的シーンでした。
きっと、両者が頭の中で思い描く
” アメリカの未来 ” は全く違っているのでしょう。
この時、筆者は、現代のアメリカ社会に
大きな溝があることをようやく認識したのです。
唯一残されたアプローチ
人は、一人一人違う。
あなたは誰かのコピーではないし、
テンプレートにはめ込まれ、
大量生産された鋳造品の一つでも無い。
世界で唯一の存在。
誰もが、唯一なのです。
そして、個性を持った私たちが社会を形成している。
*
あなたはジョギングの途中、休息を取るために
公園のベンチに腰かける。
隣に同じように腰かけて、
空を眺めている会社員がいる。
” いい天気ですね ”
あなたは、その人に話しかける。
会社員は ” ええ ” と答えただけで沈黙している。
二人が見上げる青空は同じ空ですが、
本当に、同じように見えているのでしょうか?
なぜなら、その会社員は、
今日、会社をクビになったのです。
あなたは、憂いを帯びたその横顔から
何かを察して、そっと立ち上がりその場を去る。
*
人は、” 共感 ” によって、
本当に救われるのでしょうか?
会社員と同じように、
気力を失い明日さえ見えない憂鬱な気持ちで
空を見上げることが、
果たして正解だったのでしょうか?
” 今は、一人で居させてくれ ”
という彼の心の声を感じ取り、
その場を去ったあなたの行動こそが、
今の彼にとって最も適切な労いだったのでは
ないでしょうか?
思想の違い、文化の違い、生き方の違い、
置かれた状況の違い、それらが統一されて
一つになる世界は永久に訪れないでしょう。
どれだけ爆撃機を飛ばしても、
どれだけ敵陣営の粗を探しても、
どれだけ共感出来ない意見を叩いても、
それは、絶対に無くならない。
なぜなら、
人は、本来 ” 自由な存在 ” だからです。
違う価値観を排除するといった
相手に共感を要求するアプローチでは、
この世界から争いを無くすことは出来ない。
私たちに唯一残された方法は、
違いを認め、互いを尊重し合うことだけです。
関連記事 : ” 共感 ” という幻想|理解されたいという感情の先に
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