荷物が届く夢|日常に紛れた不自然な点

一見すると、単なる日常を描いている
ように見える夢。不整合の無いストーリー。

一応は話の筋が通っているので、ある意味、
リアルな夢と言えるかもしれません。

ただ、そういったリアルな夢であっても、
ストーリーの中に不自然な部分を見つける
ことがあります。表面的には何となく
まとまっているが、よくよく考えてみると、
不自然な設定。

自分の夢にそういった部分を見つけたら、
こう考えてください。潜在意識が
カモフラージュしていたストーリーの
” ほころび ” を発見したのだと。

その ” ほころび ” は、夢を読み解くための
手掛かりになります。

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自宅に届いた荷物

次は、とある女性が見た夢の一例です。

宅配便で荷物が届く。
 
業者が荷物を宅配ボックスに入れるのを
眺めている。
作業に時間がかかっているようだ。
 
しばらくすると、諦めたのか、
荷物を持って帰ってしまう。

自宅に宅急便が届くという日常的な夢。
この短いストーリーには、特に奇妙に
思える点は見当たりません。

筆者は尋ねました。

” 何がおかしいのですか?
日常を描いているようにも見えますが ”

” うちに宅配ボックスは無いんです ”

” それは留守中に宅配便が届いたときに
荷物を一時保管する箱のことですよね? ”

” はい、それです ”

” つまり、宅配ボックスを
利用されてないということですか? ”

” ええ、少し前に設置しようかどうか
迷っていたんですが・・ ”

” 迷っていた? ”

” 仕事の都合で今後、在宅時間が増える
かもしれないので必要無くなったと
言いますか・・ ”

” もしかして、
テレワークのようなことでしょうか? ”

” そうです。会社でそういう話が出てて、
今後、部分的に切り替えていくらしいです ”

彼女の説明では、夢の中では、なぜか
設置していないはずの宅配ボックスが
置かれていたと言います。

” ところで、夢の中では、あなたは
宅配業者を眺めていたとありますが、
モニター画面で見ていたということですか? ”

” それがちょっと違いまして、
壁についている小さいモニターではなくて、
ノートPCで外の様子を確認してました。
多分、PCでも見られるタイプだと
思うんですが・・ ”

” ご自宅の玄関には、そういったカメラが? ”

” あります。インターホンのところに
小さなモニターがついています ”

” つまり、夢の中では、そのモニターを
使わずにノートPCで確認していた? ”

” ああ、そう言われると変ですね・・ ”

” 実際にPCで見ることは出来ないん
ですよね? ”

” 多分・・出来ないと思います。そういう
設定があるかどうか分からないですが ”

” なるほど。
それ以外に不審な点はありましたか? ”

” そうですね。何て言うか・・業者が
ずっとゴソゴソやってるんです。
箱の使い方が分からないのか、結構長い
時間でした。
最後に諦めて帰ってしまうんですが、
チャイムも鳴らしませんでしたし、
不在連絡票も置いていかなかったな・・
それぐらいですかね ”

” 設置されていた宅配ボックスは
どういったものか覚えてますか? ”

” 画面越しで見た限りですが、防犯のため
なのか、何重にもチャックがついている
ように見えました ”

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荷物の中身

この夢における不可解な点とは、本来は
利用していないはずの宅配ボックスが
設置されているということ。

そして、インターホンのモニターではなく、
PCで外の様子を確認しているということ。

” 業者が納品に手間取っていたのを
あなたは見ていたんですよね?”

” ええ、ずっと見てました ”

” なぜ、玄関に足を運ばなかったんですか? ”
引き返そうとしている時に、取りに出よう
とは思わなかった? ”

” ああ、そうですね・・・ぼやっと
モニターを眺めていただけでした。
取りに行くという考えは無かったと
思います。面倒くさかったから・・
かもしれません ”

” ところで、
荷物の中身は何だったんでしょう? ”

” 段ボールの箱だったと思いますが
中身までは分からないです ”

” 何かを注文をした認識も無かった? ”

” 無かったと思います。どちらかと言えば、
自分ではなく、どこかから勝手に送られて
きたという認識でした ”

ここまで話を聞いて、筆者は届いた荷物が
彼女にとって、受け取りたくない何らかの
出来事、もしくは事実を物体化したもの
ではないかと思いました。

この夢は、荷物を受け取らずに済む
いくつかの仕掛けが施されている。

まずは、本来は設置されていない
宅配ボックス。直接手渡しという確実に
受け取らざる得ない状況を封じています。

そして、宅配ボックスに何重ものチャック
をつけて時間稼ぎをしようとしている。

業者が玄関のチャイムを鳴らさなかった
のも、不在連絡票を置き忘れたのも、
荷物を受け取らないために仕組まれた
演出です。

また、初めから受け取るつもりが無かった
彼女は、PCの前から動かず玄関に行こうと
していません。

ただ、疑問なのは、夢の作り手である
潜在意識が、なぜこの設定を選んだのか
ということが気にかかります。

受け取るつもりが無いのなら宅配ボックス
など置かずに居留守を使えばいい。
そもそも宅配便で荷物が届く夢など
作らなければいいのです。

つまり、彼女は、本当はその荷物を受け取ら
なければならないことを知っているのです。
ゆえに、表面的には受取りの意思がある
ような設定を選択している。

この夢における設置された宅配ボックスは、
彼女の ” 消極的な受取りの意思 ” を表しています。

” もしかしたら、
あのことかもしれません・・ ”

” あのこと? ”

彼女は筆者の解釈を聞いた上で
一つ思い当たる節があると言います。

” ズーム? ”

” オンラインの会議ツールです ”

” 先ほど言っていたテレワークのことですね?
家に居ながら会議に参加できるという・・
それが何か問題でも? ”

” 嫌なんです ”

” 導入に反対ということですか?
会社に出勤せずに仕事が出来るのは
便利だと思いますが・・ ”

” プライベート空間に会社の人が
入ってくるのが嫌です。気持ち的な問題
ではあるんですが、プライベートと仕事は
分けておきたいんです ”

” 画面越しでもダメなのでしょうか? ”

” 上司の声がリビングから聞こえてくる
なんて。
家にいてまで顔を見たくありませんし、
向こうに自分の部屋が見られるのも嫌です ”

” ズーム用のスペースを作れない? ”

” うちに、そんなスペースはありません ”

ほころび

どうやら彼女の自宅は会社から徒歩で
いけるぐらい近いということで、在宅で
仕事が出来るというテレワークを導入
してもメリットが無いということでした。

同じ職場で働く同僚たちは、
通勤しなくて済むということで導入案には
賛成しているが、彼女だけはそうではなかった。

” 確かに、そう考えると、
インターホンのモニターではなく、
ノートPCを見ていたという設定は
テレワークの状況に似ていますね ”

” ということは、箱の中身は・・ ”

彼女にとって夢の中の箱とは、
プライベートの空間に入り込んできた
” 仕事 ” の象徴だったのでしょう。

会社方針に従わなければならない。

しかし、どうしてもそれを家の中に
入れたくないという彼女の心理が、本当は
設置するはずだったが、テレワーク案の
ためにやめてしまった宅配ボックスを
夢の中で設置して ” 仕事 ” の仮置き場
とした。

宅配ボックスのシステムが職場でも
自宅でもない丁度良い一時保管場所として
機能しています。

ただ、夢の中では結果的に荷物を受け取って
いません。彼女の中で、まだ、納得できない
部分があったということでしょう。

この夢は、仕事の在り方が変化することへの
彼女の抵抗する気持ちが描かれている。

人は日常的な夢を見ても関心を持たない。
なぜなら、よくある風景だから。しかし、
日常的な夢であっても意味はあるのです。

また、日常的に見えるように
カモフラージュされた夢もあります。

今回の夢も、仕事に関する悩みを宅配便が
届くという日常風景として描いたのも
彼女にとって重大な問題を、あたかも
” 大したことではない ” と思わせるための
置き換えなのです。

玄関先であった宅配業者のエピソード
ならば、彼女のプライベートを脅かす
ことはない。

一見、この日常風景を描いた夢にも
いくつかの ” ほころび ” が見つかりました。

設置するはずだった宅配ボックスや
ノートPCによる監視カメラ映像、
不在連絡票、それらは夢を見ている
時点では、ストーリーの流れで何となく
受け入れてしまいそうな特に注目する
ほどでもない細かな設定。

潜在意識は、
” これぐらいなら分からないだろう ” と
言うような、よく観察すると、ちょっと
おかしな設定を紛れ込ませるのです。

細かく観察する視点が必要です。

潜在意識としては、都合の悪い事実から
目を背けるために、わざわざ日常風景を
設定しているのです。

私たちが何となく誤魔化されたような、
何となく夢を見ているという状態が
潜在意識が理想とする状態。ゆえに、
夢を観察する視点というのは、ある意味、
潜在意識の意図を裏切る視点でなければ
ならない。

ストーリー全体から、
小さなほつれた糸を探すのです。

 

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