夢の中の ” 道 ” が意味すること|人生の一齣

夢の中で ” 道 ” が出てくる場合、それは、しばしば、人生の縮図を意味することがあります。

ただ、それが背景の一部として描かれているなら、夢全体を視野に入れた解釈が必要になるかもしれません。

例えば、駅が夢の舞台となった場合、駅前にある通りは駅の一部として捉えるか、もしくは、” 建物 ” と ” 道路 ” という形で別々に捉えるか、というようなことです。

夢の内容によって、正解は変わります。

また、車を運転している夢ならば、車内の様子に焦点が当たっている場合と、走行中の道に焦点が当たっている場合とでは、やはり、解釈も違ってくるでしょう。

車が走っているわけですから、付随して、道路が背景に描かれるのは自然の成り行きにも見えますが、” 道 ” が印象に残っているというなら、それは、潜在意識が意図的に、印象に残る形で夢を作っているのです。

逆に、印象に残っていない、どこを走っていたかよく覚えていない・・といった曖昧な認識ならば、その曖昧な設定も潜在意識によって選択されたものです。

その認識は、あなたの記憶力の問題ではなく、潜在意識が、伝えるべきメッセージの輪郭を際立たせるために、その周囲をぼかした結果です。

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一本道

次は、とある女性が見た夢の一例です。

どこかに向かって、一本道を自転車で走っている。
 
人気もなく、なだらかな田園地帯のような景色が続く。
 
かなり、進んだところで道を間違えたことに気づく。
 
迂回ルートを探したが、結局、来た道を戻るしかないようだ。
 
なぜか、帰り道が険しくなっている。

女性の話では、一本道は、架空の道だったということです。

夢に描かれたものが架空の道だった場合と、実在する道の場合とでは、やはり、解釈のアプローチは違ってきます。

架空の場合は、冒頭で言ったように象徴的な意味合いが強く、実在する場合は、その特定の場所について考えていく必要があります。

今回のケースでは架空の道ということなので、何かを ” 道 ” という形に置き換えて表現している、と読むことが出来そうです。

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まず、移動手段が ” 自転車 ” であるという点に注目してみましょう。

普段から自転車に乗る人ならば、それは、いつものことなので、取り立てて深い意味は無いかもしれません。

ただ、この夢を見た女性は、自転車は持っておらず、主な移動手段は車ということです。

なぜ、わざわざ ” 自転車 ” なのか? という点が気にかかります。

こういったいつもと違う状況が描かれる場合、その部分に重要な意味が隠されていることがあります。

例えば、夢の中で乗っている車が自分の車ではなかったり、携帯の着信音がいつもの音ではなかった、というような ” 違い ” は、あえて仕組まれたものです。

移動手段としての自転車

では、” 移動手段 ” という視点から、彼女の置かれた現在の状況について考えてみます。

車ならば運転席に座り、アクセルを踏めば前進します。大きな労力を必要としません。

徒歩ならば、進む速度が遅く、100%自力によって進まなければならない。

自転車は人力ではありますが、ある程度の推進力があります。夢の中では、移動手段として ” 自転車 ” が選択されている。

そこから、一つの方向に進んではいるが、いくらかの労力が必要であり、それほど安定した強い加速ではないという状態が読み取れます。

筆者は彼女に尋ねました。

「何か、目標に向かって、努力されていることはありますか?」

彼女は、絵を描くことが好きで、将来はイラストレーターの仕事をしたいと言います。

現在、就いている仕事は生計を立てるためのもので、彼女の進みたい方向とは全く違っていた。

仕事をする傍らイラストレーターになるために、通信教育を受けながら勉強を続けているという状況でした。

*

彼女は、現在受講している通信教育について、次のように言います。

” 今、通信教育を受けてはいるが、これがイラストレーターの仕事に繋がると思えなくなってきた ”

彼女の説明を聞いて、筆者は、潜在意識が普段は乗ることのない ” 自転車 ” を選択した理由について、次のように考えました。

夢の中の自転車は、丁度、彼女の言う通信教育の仕組みに似ています。

決められたスケジュールに沿って、授業を受ける学校とは違って、通信教育は仕事の隙間時間を利用する形で、自分の意思でどこまで進めるかを決められる。サボれば、その分遅れていくという仕組みです。

レールは敷かれているが、自動的に進むわけではない。

つまり、ある程度の推進力は持ちながら、自分の足で漕がなければ止まってしまう自転車は ” 通信教育 ” のことを指している。

背景の意味するもの

夢の中で彼女は、道に沿って自転車を漕いでいる。

はっきりと目的地に向かっているという感覚はなく、何となく道に沿って進んでいたと言います。

イラストレーターになりたいという夢を持ちながらも、自身の努力が夢の実現に繋がっているという実感が、いまいち持てない彼女の心理が表れている部分です。

” 本当にこっちの方で、いいのかな? ”

彼女は夢の中で、そんなふうに感じていたのかもしれません。

背景には、人気の無いなだらかな田園地帯が延々と続いている。彼女は、突然、自転車を止める。

どれだけ進んでも、変わり映えの無い景色に気がつくのです。

この夢における延々と続く同じ景色は、成果らしきものが、何一つ見えてこない状態を意味しています。

” もしかして、自分のしている努力は、無意味なのかもしれない ”

*

今、行っている努力に疑問を持った彼女は、迂回ルートを探します。実現するための他のアプローチがあるのではないか?

夢の中です。

夢の作り手は彼女自身なので、迂回する別の道をそこに出現させることも可能でしょう。

しかし、彼女は、あえて迂回ルートを用意していません。これには、二つの心理が読み取れます。

それ以外のアプローチが思い当たらないから。

もう一つは、ここまで続けてきた努力を棒に振ることが出来ないから。

彼女はUターンをして道を引き返そうとするが、さっきまで走っていた道が、なぜか、険しくなっており、引き返すことも出来ない。

これは、何を意味しているのでしょう?

チェックポイント

彼女の走行した距離。その距離は、これまで積み重ねてきた努力の総量です。

夢の中では、かなり進んでしまっているようなので、相当の時間と労力を投入したのでしょう。

帰り道が険しくなっているというのは、

” これまで積み重ねてきたものを捨てるべきではない ”

という彼女の抵抗する心理が、引き返すことの出来ない状況を作っている。

*

” 道 ” は、夢の中で、切り取られた ” 人生の一齣 ” を象徴するものとして描かれることがあります。

それは、様々な形として夢に登場する。

今回のケースでは、引き返すことの出来ない一本道として、彼女の心境を表現していました。

それ以外にも、人生の分岐点という意味で、一本の道が二手に分かれる様子を描いたり、新しい可能性や方向性を草むらで見つけた ” 別の道 ” という形で表すこともあります。

また、いまだ解決されていない人生の課題を、路上に放置された荷物や車として表現することもあります。

*

もし、あなたの夢の中で ” 道 ” が登場したなら、それは、人生を省みるためのチェックポイントなのかもしれません。

道の状態、幅、長さ、周辺の景色、どのように進んでいたのか、道の上で何をしていたのか、何を考えていたのか、よく観察してみましょう。

例えば、道幅が狭く、対向車とすれ違うことが出来ないとしたら、どちらかの譲歩が必要になります。それは、あなたの人間関係を表しているのかもしれない。

もし、何車線もある幅広い道路を走行しているなら、あなたにはいくつかの選択肢がある、という意味かもしれません。

道の途中で車を止めて修理しているなら、一旦、進むのをやめてメンテナンスが必要だという潜在意識から、注意喚起なのかも。

無論、夢全体から判断して、全く別の解釈をすることもありえます。それは、ケースバイケースで判断していくしかないのです。

 

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