夢の中の ” 墓地 “|夢が作られた背景を探る

夢の舞台が ” 墓地 ” だった場合、
それが死者にまつわる場所というだけに
良いイメージではありません。

心配症の人なら、
お墓や墓地が登場する夢を見て、
不吉な出来事の予兆なのではないかと
不安になるかもしれません。

夢占いにも ” お墓 ” という項目がありますが、
まずは、そこだけをフォーカスするのではなく、
夢のストーリー全体、そして、
自分が置かれている現在の状況を踏まえて
総合的に判断することが大切です。

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バックグラウンド

次は、とある女性が見た夢の一例です。

薄暗い墓地にいる。
 
数匹のカラスが木の上に止まって
こちらをじっと見ている。
 
私は帰ろうと思って通路を歩きだす。
 
閉園時間が過ぎてしまったのか、
門の鍵がかかっていて外に出られない。
 
振り向くと先ほどのカラスたちが
真後ろに来ている。

暗く不吉な感じのする夢です。

夢占いでは ” お墓 ” が登場する夢は、
現世と来世の間の節目という意味で
” 運気の転換 ” を暗示するとされています。

これまで不調だった人は好調に、
好調だった人は不調に。

そして、” カラス ” は、
” 災いの予兆 ” とされている。

さて、必ずしも
上記の解釈に従う必要はありません。

忘れてください。

まず、注目すべきは、なぜ、彼女が、
この時期にこの夢を見たのか
という ” 経緯 ” です。

夢とは、極めて個人的な創造物です。
夢を見た本人が抱えているものや、
私生活が深く関わっている。

本人の私生活を知らずして、
夢を一方的に解釈することは出来ない。

*

まず、筆者は、この夢を見た女性に、
最近、気分を暗くするような出来事は
あったか尋ねてみました。

夕暮れに墓地を訪れるという陰鬱な夢が、
筆者には彼女の今の気持ちそのもの
のように感じたのです。

彼女は、このところ、ずっと夫の両親
について頭を悩ませていると言います。

夫の両親が夫婦間の問題や子育てのことで、
必要以上に詮索してくるために
彼女はうんざりしていたのです。

夢を見た数日前にも、
親戚一同が集まる機会があったのですが、
そこでも、とても気まずい思いをした。

夫婦間のプライベートなことを
親戚の集まる場所であけすけに話す
義母と自分の夫に心の中でイライラしていた。

どうやら、夫の家系には、
” 隠し事なく何でも話す ”
という文化が浸透しているらしく、
それが彼女には理解しがたいものだった。

*

この夢は文化の違う家系に嫁入りしてしまった
彼女が周囲に感じている” 疎外感 ” が
描かれています。

” 墓地 ” とは、
死後、自分の骨を埋める場所。

” この人たちと同じお墓に入らなきゃ
いけないんだろうか? ”

そんな不信感を持ちながら、
夫の家族と上手くやっていかなければならない
という責任を背負った彼女の陰鬱な気分が、
日の暮れた薄暗い墓地として表現されています。

彼女にとって、墓地は、
” 親族とのしがらみ ”
を感じさせる象徴的な場所なのです。

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板挟み

では、夢の中で彼女の取っている行動には、
どういった意味があるのでしょう?

彼女は夕暮れの墓地から
立ち去ろうとしている。

筆者は尋ねました。

” なぜ、墓地にいたのですか? ”

彼女いわく、墓参りなど
何か目的があって来たわけではなく、
なぜか、最初から墓地にいて、
日が沈んで辺りが段々と暗くなっていくので
実家に帰ろうとしていたと言います。

” 親族のしがらみ ” によって
暗い気分になっていく過程を
日が暮れて辺りが暗くなっていくという
” 風景 ” として描写しています。

そして、その場を立ち去り、
実家に帰ろうとしているのは、
面倒なそれから逃れて、実家に戻りたい
と願う彼女の気持ちの表れ。

*

では、木の上から鋭い視線を送っている
数匹のカラスは、
何を意味しているのでしょう?

彼女は、そのカラスたちに
常に監視されているように感じたと言います。

霊園の出入り口で振り返ったときにも、
カラスがまとわりついてきた。

彼女の頭を悩ませている
” 親族のしがらみ ”
そして、これまでの文脈から考えれば、
カラスは彼女が夫の両親や親戚の人々
に感じている” 詮索する視線 ”
と読むことが出来ます。

彼女はカラスの視線に居心地悪さを感じ、
墓地を立ち去ろうとしている。

しかし、門は閉ざされ
外に出ることが出来ない。

門を閉ざして彼女を墓地に閉じ込めたのは、
この夢を作った本人、つまり、
彼女自身です。

なぜ、そのようなことを
する必要があるのでしょう?

*

門の前で、彼女は、なぜか、
夫の顔を思い浮かべたと言います。

彼女は現状に悩んではいますが、
夫と結婚したことを後悔しているわけではなく、
別れたいわけでもない。

夫婦で居続けるには、
自分がこの状況に耐えなければならない
という彼女の責任感が門を閉ざしているのです。

振り返ると、すぐ真後ろにカラスたち。

詮索に対する嫌悪感と責任感の間で板挟みに
なって追いつめられる彼女の苦悩を
描いた場面です。

*

人は、それぞれの立場や、
様々な悩みを抱えながら現実世界を
生きています。

今回のケースは文化の違う家系に嫁入りした
一人の女性の悩みという背景があり、
それによって夢が作られている。

このプライベートな事情を知らずして、
夢を読み解くことは出来ないのです。

また、彼女が抱えていること、
そして、夢の文脈からカラスの意味を
探っています。

架空のお墓

次は、以前、
筆者自身が見た夢の一例をです。

お墓に供えた花が枯れている。

とても短い一場面のみの夢です。

この夢から目覚めて、初めは
昨年のお盆にお墓参りに行けなかった
ことが気がかりとして
夢になっているのかと思いました。

ただ、今年のお盆が近いというならば
分かりますが、夢を見るタイミングが
少々早すぎる気もします。

そして、そのお墓は実家のものではなく、
架空のお墓だった。

なぜ、潜在意識は、見知らぬお墓を
夢に登場させているのでしょう?

*

この夢における ” 墓地 ” は、
” 敬う気持ち ” を象徴しています。

お盆に帰郷し先祖のお墓に手を合わせる。
そこに見返りがあるわけではありません。

あるのは ” 礼を尽くす心 ” だけです。

供えた花が枯れていたのは、
筆者にそれが不足しているということを
表しています。

ただ、不足していたのは、
死者への敬いではなく他人に対する敬いです。

その頃、筆者は精神的にゆとりを
持つことが難しかった時期でした。

誰に対しても厳しい視線を向け、
心の中で批判していた。

潜在意識は礼を尽くす心を
忘れかけているという事実を
生きている人たちへの態度ではなく、
死者に対する態度に置き換えています。

死者ならば、
何も言い返して来ないからです。

” 大丈夫。お墓に供える花が
ちょっと枯れただけだから ”

大切なことを忘れている事実から
目を逸らすために ” 何でもないこと ”
として片づけようとしています。

*

もし、自分の夢を読み解くならば、
夢の内容をネット検索する前に
自分の今の現状を
もう一度、振り返ってみてください。

抱えている悩み、予定されている出来事、
願望、理想・・

夢の内容が自身のプライベートと
全く無関係に見えたとしても、
それは、潜在意識の視点から見た
表現だからです。

夢には作られた背景というものがあります。
そして、実際に読み解いてみると、

” 何だ、結局、そういうことか・・ ”
” ああ、あのことね・・ ”

と分かり切った答えに肩透かしを
食らうかもしれません。

それは、夢を作った当事者が
夢を見ているわけですから、
答えに覚えがあるというのは必然なのです。

まずは、あなたにとっての
” あのこと ” を振り返ってみると
よいかもしれません。

 

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