夢の中の ” 遊園地 “|外観を取り去った後に

現実の中で、唯一、存在するファンタジー
の世界と言えば、いわゆる、テーマパーク、
アミューズメントパークといった遊園地の
ような場所でしょうか。

例えば、ディズニーランドやユニバーサル
スタジオ、または、クリスマス季節限定で
イルミネーションされた広場なども、
ある意味、現実世界にありながら非日常的な
” 幻想の世界 ” と言えるかもしれません。

夢は全てが幻想。

ピーターパンのように空を飛ぶことも、
怪獣を登場させてビルを破壊することも、
着ぐるみではない本物のミッキーマウスに
会うことも、全てが可能になる世界。

しかし、時に潜在意識は、それらを容易に
創造できるにも関わらず、リアルと
ファンタジーが共存する遊園地のような
場所を夢の舞台に設定することがあります。

なぜ、そのような場所を設定する必要が
あるのでしょう?

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寂しげな遊園地

次は、とある女性が見た夢の一例です。

遊園地に到着する。
なぜか、自分以外誰もいない。
 
遠くの方で着ぐるみのキャラクターが
寂しげにポツリと一人立っている。

彼女が目的地に向うと、到着した遊園地は
閑散としており、倒産寸前のように寂しげ
だったと言います。

それを見て、悲しい気分になった。

一体、この夢は、
何を表しているのでしょう?

” 遊園地に向かったというのは、
お一人で行かれたということですか? ”

” ええ、一人で自分の車に乗って ”

” 実際、そういった場所に
お一人で遊びに行くといったことは? ”

” 一度も無いです ”

この夢で筆者が最初に引っかかった点は、
遊園地に一人で行くという設定です。
大抵、遊園地は家族や友人と行くことが
多い場所ですが、なぜか、彼女は一人で
そこへ向かった。

” 到着した時の状況を
もう少し詳しく教えて頂けますか? ”

” ああ、はい・・駐車場に車を止めて、
他の車が全然無かったので定休日に
来てしまったのかと思いました ”

” 入場口に誰かいましたか? ”

” いえ、開きっ放しで勝手に入ったという
感じです。 ”

” 着ぐるみのキャラクターが立っていた
というのは? ”

” 風船を持って、入場口近くの広場の
真ん中にポツンと立ってました ”

” あなたに対して手を振るといった
ジェスチャーは? ”

” いえ、遠くから見ただけなので・・
少し向きを変えたりして、そこにずっと
いました ”

” 因みに、どういったキャラクター
だったのでしょう? ”

” 何でしょう・・
何かの動物だと思うんですが・・ ”

仮に、遊園地が定休日だったとしたら、
入場口は閉じていたでしょう。
着ぐるみを着た従業員が広場に立っている
こともなかった。

人がいない遊園地を舞台として選ぶなら、
単純に定休日設定でもよかった。
潜在意識は、なぜ、このような設定を
選んだのでしょう?

それは、本来、人で賑わっているはずの
場所が、どういうわけか賑わっていない
という状態を示すためです。

到着するまでは、彼女の想定では遊園地で
楽しい時間を過ごすはずだった。しかし、
実際に行ってみると、そこには程遠い状況
が待っていた。

そこにあったのは ” 寂しげな現実 ”

つまり、この夢には ” 理想 ” と ” 現実 ”
との乖離が描かれている。

彼女が抱えていたこと

そこは架空の場所ということですから、
何かを置き換えた結果として ” 遊園地 ” が
選択されたわけです。

” 何か ” とは?

筆者は推測しました。彼女には何らかの
理想があり、実際、それを手に入れたが
期待したものとは違っていた・・
ということなのか、もしくは、まだ、それを
手に入れておらず、今後、手にした時に
失望する未来が待っているのか・・

” 今現在、不足していると感じることは
ありますか? ”

” 不足・・ですか? ”

” そうですね・・例えば、配属された部署で
自分の望んでいた仕事が出来ないとか、
引っ越しをしたが実際に住んでみて
あまり住み心地が良くないと思ったなど、
理想と現実のギャップを感じる瞬間・・
でしょうか ”

” 理想と現実・・何でしょう?
これといって思い当たることは・・ ”

” なぜ、遊園地なんでしょう? ”

” ・・・あ・ ”

彼女の話では、ここ十年以上遊園地のような
場所へ遊びに行ったことは無いと言います。

” 子供の頃に行ったことがあるだけです。
ただ・・ 最近、写真の整理を・・”

夢を見る数日前に、彼女がパソコンに
保存していた過去の画像を整理していると、
子供時代に撮った写真が見つかった。

そこには、あどけない表情した子供の頃の
自分と両親の姿が写っていた。

” 写真の中に、遊園地に行った時の
思い出が・・? ”

” ええ・・すぐに閉じたので、
すっかり忘れていました ”

” 夢の中の遊園地は、
その写真にある場所ではない? ”

” 写真に写っている場所とは違いました。
・・でも、今考えてみると、運転中、
前にも行ったことがあるような感覚が
ありました ”

架空の遊園地ではあるが、彼女は夢の中で
その場所に、どことなく懐かしさを
覚えていた。

筆者は、この夢が彼女の中の寂しさを
描いているように思えました。子供時代に
描いていたものと、今の自分が置かれた
状況にギャップを感じているのではないか・・

” お仕事は上手くいってますか? ”

” ・・仕事ですか? ”

” ご職業について、お答え辛いということ
でしたら、無理にお聞きしませんが ”

” えっと・・今は・・・無職です。
半年ほど前に会社を辞めまして・・
今は実家で両親と暮らしています ”

” 辞めた理由について、お尋ねしても? ”

” 仕事で大きなミスをしてしまって、
そこから鬱になって・・ ”

” なるほど・・ ”

” 父も母も急いで復帰しなくていいって
言ってくれるんですが・・私だけ家で
ぶらぶらしてていいのかなって・・ ”

” ご両親はお仕事を? ”

” はい、共働きです ”

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着ぐるみのキャラクター

今、彼女は休養を取りながら、一人自宅で
留守番をしている。社会から弾き出されて
しまったような、誰にも必要とされて
いないような ” 寂しさ ” を抱えながら。

この夢における ” 遊園地 ” は、現在の
彼女にとって、避難所のような役割を
持っています。

そこは現実をひと時の間忘れさせてくれる
唯一の幻想世界。彼女はそこに逃げ込む
ことで傷つき疲弊した自身のメンタルを
守ろうとしている。

しかし、現実社会から遠ざかりたいと
言うのであれば、それは夢ですから、
遊園地ではなく、本物のネバーランドに
だって行けるわけです。

でも、彼女の潜在意識はそうしなかった。

完全に現実社会からドロップアウトする
わけにはいかないのです。
本物のネバーランドに行ってしまえば、
戻ってこれなくなる。彼女の危機意識が
あくまで、リアルの中に再現された
ファンタジーを夢の舞台として選択した。

彼女が数日前に見た子供の頃の写真。
そこには、社会の厳しさをまだ知らない
自分のあどけない笑顔。

彼女が夢の中で感じた ” 懐かしさ ” とは、
遊園地という場所に対する感情ではなく、
そこに ” あの頃の自分 ” を見たから。

では、なぜ、駐車場や園内に来園者が
いなかったのでしょう?

言い変えるなら、なぜ、彼女の潜在意識は、
駐車場や園内に来園者を配置しなかった
のでしょう?

いえ、配置しても同じです。大勢の来園者が
いたところで、彼女が心の中で感じている
” 寂しさ ” が消えることはない。

彼女の潜在意識は、この ” 避難所 ” が
偽装であることを知っています。だから
” 寂しさ ” の原因を後付けで作る必要があった。

夢を見ている彼女は思うでしょう。
” この寂しさは、きっと誰もいないからだ ”
しかし、彼女が実際に感じているのは、
社会に対する ” 疎外感 ” です。遊園地の
来園者数ではない。

彼女が遊園地に一人で訪れた理由も
これです。

さて、この夢における最も不可思議な演出、
風船を持った着ぐるみのキャラクターは、
一体、なぜ、そこに立っているのか?

これまでの経緯で行くなら、そこに立って
いることが矛盾します。

着ぐるみのキャラクターは、言わば、
” 遊園地 ” の逆説です。

この夢における ” 遊園地 ” がリアルの中に
存在する ” ファンタジー ” であるならば、
着ぐるみのキャラクターは、
” ファンタジー ” の内側に ” リアル ” が
存在するという逆の状態を示している。

つまり、この夢が伝えているのは、
” ファンタジーに対するアンチテーゼ ”
なのです。

彼女の潜在意識は、過去の写真から
インスピレーションを受け、今回の夢を
作った。

完全なファンタジーの世界を再現せずに、
現実に存在する ” 遊園地 ” を舞台として
選び、一時的な避難場所を提供しています。
いつでも現実世界に戻れるように。

そして、広場の真ん中に着ぐるみの
キャラクターを配置して、それを彼女に
目撃させる。

自身が逃げ込んだ場所が、結局は、
” 偽装されたファンタジー ” でしかない
ということを改めて示すために。

外観を取り去った後に

彼女は全ての解釈を聞き終えて、夢の内容
で思い出したことがあると言います。

” 頭を取ったんです ”

” 頭? ”

” 着ぐるみのキャラクターが頭を取って・・
中の人が見えて・・ ”

” そこで目覚めた ”

” ええ、ちょっと残念な気持ちでした・・ ”

今回の夢では、” 遊園地 ” は、一応は、
避難所という役割を与えられています。
リアルとファンタジーの中間地点と言える
場所が選択された。

そこに、完全なドロップアウトを
望んでいるわけではないという彼女の
心理が表れています。

着ぐるみのキャラクターが頭を取る場面は、
自分が逃げ込んだ場所が ” はりぼて ” に
過ぎないことを自覚する瞬間です。

多分、潜在意識が念を押したのでしょう。

” 分かってるよね。ここに、
ずっといるわけにはいかないって ”

もし、あなたの見た夢の舞台に遊園地
といった場所が選ばれた場合、
どう解釈していけばよいでしょう?

遊園地にも、様々なアトラクションが
あります。ジェットコースター、観覧車、
回転木馬、お化け屋敷、パレード、
グッズ売り場、レストラン・・

そういった特定の乗り物や建物が登場する
というのであれば、なぜ、その部分が選択
されているのかを考えなければいけません。

例えば、アトラクションの多くは、
一旦、乗ったら終わるまで離脱できない
という ” 性質 ” があります。

眠っている最中にトイレに行きたく
なったとしましょう。

夢の中で観覧車に乗っているとしたら、
一周するまで身動きが取れません。
そして、それは永遠に到着しない。
あなたに ” 到着すればトイレに行ける ”
と思わせ続けるための ” 嘘の目標 ” です。

また、この性質を利用すれば、人生の選択、
後戻りが出来ない状況を抽象的に表現する
ことも可能です。

もし、その人が就職活動の最中なら
観覧車の夢が何を意味しているのか・・

また、スタート地点とゴール地点が同じ
であるという性質を利用して、紆余曲折
あれど最終的には元に戻るという状況を
表すことも出来ます。

もし、夢を見た人が交際相手と破局しかけて
いるなら、夢の中のジェットコースターは
何を意味しているのか・・

つまり、アトラクションであれ、イベント
であれ、そこから外観を取り除いた後に
残る ” 性質 ” だけに注目すると、潜在意識
が伝えようとしている本質が見えてきます。

あなたが訪れた夢の中の ” 遊園地 ” は、
本来は別のものかもしれません。

 

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