” スケープゴート ”
つまり、生贄のことですが、
夢の中で、一人だけが選び出され、
どこかに連れていかれるとか、
罰を与えられるとか、閉じ込められる
というような後味の悪い夢。
大抵の場合、自分がそれに選ばれるか、
候補として名前が挙がり、
怖くて怯えているというストーリーに
なることが多いようです。
果たして、それは、
神に捧げる聖なる儀式なのか、
単なるトカゲの尻尾切りなのか、
” 生贄 ” の役割が何か?
という部分がポイントです。
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組織の中のスケープゴート
次は、夢の一例です。
人事異動の辞令が張り出された掲示板の前で
社員たちが集まり、ざわついている。
” 今年は、あいつが生贄か ”
と誰かが言う。
入社して間もない自分は
近くにいた同僚に事情を尋ねるが、
” まあ、いいじゃん。
決まったことだからさ ”
と言って、同僚は笑って
話を誤魔化そうとしている。
周囲の社員たちは笑顔を作ってはいるが、
自分に質問されるのを避けるように
目を合わせようとしない。
何か不穏な空気を感じる夢です。
この夢を見た男性は社会人として働き始め、
丁度、一年目を迎えたところでした。
今回の夢は、一体
どんな意味があるのでしょう?
*
彼に夢の詳細を尋ねたところ、
生贄となったのは自分ではなかったが、
選ばれた社員は自分と同じ年に入社した同期
という設定で、直感的に「処刑」
されるのだと思ったそうです。
そして、なぜか、
そのことについて周囲の反応は冷ややか。
彼には、この会社の理不尽なシステムを、
皆が見ないふりをしているように思えた。
無論、彼が、現在働いている会社に、
社員を定期的に生贄に捧げるシステム
などありません。
しかし、夢を見ている最中は、
彼はその奇妙な設定に疑問を持つこともなく、
それを昔から続いていることだと
自然に受け入れていたと言います。
このように、よく考えるとおかしな設定でも、
夢の中で当然のことのように受け入れて
しまっているという奇妙な現象が
しばしば、起こります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょう?
彼の抱えているもの
夢はリアルな日常を描く場合がありますが、
大抵、そのリアルにオリジナルの演出が
加えられるのです。
今回は、会社の辞令が張り出された
掲示板の前という現実的な場面に
” 生贄 “という現代の日本社会では
ありえない設定がねじ込まれています。
無論、それが、このストーリーに
どうしても必要だったために、
ねじ込まれているわけですが。
つまり、この夢における ” 生贄 ” は、
何らかの例えなのです。
そして、その ” 何らか ” は、
昔から続いていること。
*
筆者は、彼に次の質問をしました。
” 現在の仕事で、何かストレスに
感じることはありますか?
例えば人間関係とか・・ ”
彼は職場の人間関係には特に問題は無い
と言います。ただ、最近、感じていた
会社に対する不満があると言います。
会社に就職してから、
社会人としてそれなりの期待を
持って働いてきた彼でしたが、丁度、
一年が過ぎようとしている頃に、
会社組織の窮屈な ” しがらみ ” が
見えてきたと言います。
若い社員の意見がほとんど無視されることや、
全ての決定は上層部だけで決まることなど、
彼は自分がシステムの中に組み込まれた
歯車の一つに過ぎないということに
失望を感じていたのです。
*
この夢は、彼の感じている会社組織への
不信感、違和感が描かれています。
彼はコントロールされた人生に
疑問を持っているが、周囲の人たちは
普通の顔をして仕事をしている。
” なぜ、皆は、
この状況を疑問に思わないのだろう? ”
そんな、彼の周囲に対する不信感、
そして、温度差を
夢の中で疑問に答えようとしない
冷ややかな社員たちとして表現しています。
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何のための生贄か?
さて、この夢における ” 生贄 ” は、
何を意味しているのでしょう?
この夢で、特徴的なのは、
彼が生贄に選ばれたのでもなく、
候補者でもないという部分です。
もし、彼が選ばれし者、もしくは
候補者ということならば、
この夢における生贄は、
” 異端者の排除 ” と読むことが出来ます。
自分を ” 迫害される異端者 ”
という立場に置き、
集団に組み込まれるぐらいなら、
処刑される方がマシだという
彼の強い意思が描かれていると
解釈することも出来る。
この場合の処刑は、実際の ” 死 ”
というより、意志を貫いて死んだ
” 殉教者 ” のような意味を持ちます。
しかし、今回の夢では、彼は、
選ばれし者でも候補者でもありません。
この場合、どう解釈すべきでしょう?
*
彼には、覚悟が無かった。
会社の ” 暗黙の了解 ” に調子を合わせて、
黙って働き続けることに抵抗を感じながらも、
集団から抜け出し、
” 自分 ” を貫くほどの勇気も無い。
そもそも、この夢は彼自身が作ったものなので、
誰が生贄になるのか、
それは、彼自身が決めているのです。
彼は周囲に不信感を抱きながらも、
辛うじて ” 自分 ” であり続けている。
そして、夢の中では、
同期の社員が生贄として選ばれている。
本来は、彼が行くはずだったのです。
つまり、選ばれた社員は、
彼が身代わりとして差し出した
” スケープゴート ” です。
それぞれの意味
彼が、夢の中で ” 生贄 ” という
奇妙なしきたりを自然に受け入れている理由は、
それが、これまで彼の感じてきた会社組織の
不条理に対する ” 例え ” だからです。
それは、昔からあり、
どうすることも出来ないもの。
夢の作り手である彼は、
” 生贄 ” が何を意味するのか、
すでに理解しています。
*
さて、今回は、夢の中の ” 生贄 ”
という演出について解説していきましたが、
無論、この解釈が全ての夢に当てはまる
ということではありません。
今回の夢では、そうだったというだけです。
あなたの夢に生贄に関する内容が
あったとしたら、はやり、
あなたの個人的な事情を踏まえて、
読み解かなければいけない。
また、” 生贄 ” と言っても、
宗教的儀式のような形もあれば、
日常的に他人の変わりに犠牲になる行為
のことを皮肉を込めて ” 生贄 ”
と呼んだりすることもあります。
言葉のニュアンスは、
その時の状況によって変わる。
” 生贄 ” という演出にも
様々なケースがあるでしょう。
それら全てに固定的な意味を
はめ込んで解釈するわけにはいきません。
*
重要なのは、生贄に関わる部分だけでなく、
夢の内容全体を視野に入れることです。
そして、先ほども言ったとおり、
” 個人的事柄 ” に目を向けること。
後は、時間を割いて、夢について
考えるだけの ” 心のゆとり ” が必要です。
忙しい現代人には、
最も難しいことですが・・
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