夢解釈のリスク|他人の夢を分析してはいけない

他人の夢を解釈するというのは、自分の夢を読み解くのに比べ、とても難しい作業です。

そこには依頼者と鑑定者との間にしっかりとした意思疎通が必要です。でなければ、夢の内容を誤って解釈してしまう可能性がある。

事実、筆者にも依頼者との意思疎通の不足が原因で失敗した経験は何度かあります。そして、意思疎通の障害となる要因の一つが、夢解釈に対する認識の食い違いです。

依頼者側が、夢の内容さえ伝えれば、その意味が分かると思っていることはよくあることです。

丁度、生年月日と何について占ってほしいかを伝えると、後は占い師が仕事をするだけ、というタロット占いや四柱推命と同じイメージでアドバイスを求めるのでしょう。無論、夢の内容だけでは何も分かりません。

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世間一般から見た ” 夢解釈 “

巷では、” 夢占い ” と ” 夢解釈 ” が同義として扱われることがしばしばあります。夢占いは、スピリチュアルな側面から、心理学的な夢分析までを幅広くカバーしているという認識です。

それを ” 夢占い ” と呼ぶのか、” 夢解釈 ” とするのか、といった言葉の定義は、あまり重要ではありません。夢を読み解く上で、何を軸足にするのかを見失わなければ。

ここで夢解釈への誤認識に関するちょっとしたエピソードを紹介しましょう。

随分、前の話になりますが、筆者がインターネットで夢について検索していると、とある掲示板に妙なやり取りを見つけました。

夢を見た相談者が詳しい方に夢の意味を尋ねているのですが、その経緯は次のようなものでした。

相談者は、昨晩、雨の中でタクシーに乗るという夢を見た。

それをインターネットで検索しているうちにずぶ濡れの女性がタクシーに乗るという有名な怪談を知り怖くなったと言います。

タクシーに乗った後、トンネルに入るという夢の内容から、彼女は ” トンネル ” というキーワードで検索をしたところ ” 別の世界へ行く ” という解釈を見つけて不安になった。

” 私が霊になってあの世に行く。つまり、死を予兆しているのですか?”

相談者が、そう尋ねると、詳しい方は次のように答えました。

” タクシーに乗る夢が死の予兆だなんて、聞いたことがないです。トンネルにもいくつかの解釈があるのでもっとネットリサーチが必要かと・・”

二人の情報源のほとんどが、どうやらインターネットのようでした。

このエピソードのどこが妙かと言いますと、二人の会話にあるのは夢の内容とネット情報だけという点です。

相談者の悩みを聞いてもいませんし、私生活と夢の因果関係にも触れていません。” 答え ” は、調べればどこかに載っているという前提のやり取りです。

結局、その夢が何を意味しているのか分からないままでしたが、これが夢解釈に対する世間一般の認識です。

依頼者の防衛本能

” 夢解釈 ” は、他の占いとは違って特殊な側面を持ちます。

そもそもそれは、未来を知るためのものではありません。どちらかと言えば、自己分析のためのツールと言った方がいいでしょう。単に、そこに付随して未来を暗示する要素が含まれているというだけで。

それは日記をつける行為に近い。一日あったことを振り返って考えに耽る。夢は心に刻まれた ” 感覚 ” の記録であり、夢解釈はその記録に対する分析です。

” 夢占い ” とは、夢解釈に含まれる未来の暗示としての側面だけがクローズアップされてしまった歪な形のカテゴリーです。

筆者が夢に関する相談を受ける時、たまに夢の内容だけを送ってこられる依頼者もおられます。

一応、ウェブサイトには、セッションの進め方の詳細をご説明してはいるのですが、それを読まれていないのか、夢の内容を一通り書いた後に、

” これは、どんな意味ですか? “と尋ねられる。

筆者としては依頼者のことを何も知らない段階で、そう聞かれても困ってしまうのですが・・

ただ、夢の内容だけを送る心理も理解は出来るのです。誰しも自分のプライベートな情報や何に悩んでいるかというような心の内を見ず知らずの人間に話したくはないでしょう。

極力、プライベート情報を伏せたまま ” 答え ” だけを知りたい。今の情報社会では当然の防衛本能です。

とは言え、夢を解くには、そうしたプライベートの情報にどうしてもアクセスしなければならないのも事実です。

それが、夢を読み解く” 鍵 ” となるのです。ただし、そこには一定のリスクが伴う。

深いレベルでの意思の疎通

例えば、人と上手く会話が出来ないことに強いコンプレックスを持った一人の女性がいたとします。

その思いが強ければ、それはいずれ夢になるでしょう。彼女は、ある晩、次のような夢を見る。

地球上から空気が無くなる。

多分、夢の内容だけを見れば、意味不明、酸素が無ければ人類は生きていられないわけですから、それは人類滅亡の予兆ということでしょうか?

しかし、彼女が会話についてコンプレックスを持っているという事実を知っている場合は次のような解釈も可能です。

音が空気の振動によって伝わるならば、地球上の大気が無くなってしまえば、会話をせずに済む世界になる。

彼女にとっては、好都合です。

無論、酸素無しで生存可能か、会話以外の音も無くなるという問題はありますが、彼女にとってそれは自身のコンプレックスよりも重大な問題ではない。

ここに一つの問題があります。彼女は果たして自分のコンプレックスのことを簡単に教えてくれるでしょうか?

多分、隠すでしょう。

相当、突っ込んだ質問をしなければ、きっと、その情報は得られない。

また、ある意味、それは彼女の ” 心の傷 ” ですから、それに触れるということは、傷口に塩を塗り込むような行為にもなりかねません。

そのために依頼者と鑑定者の間には、普通の会話以上に深いレベルでの意思の疎通が必要になるのです。

核心に触れるリスク

夢の核心が依頼者のコンプレックスや蓋をして目を背けてきた問題だった場合、もはや、鑑定者は地雷を踏むのと同じです。

核心を突くことは出来ても、その後に残るのは依頼者の拒絶反応と傷ついた心だけです。

占いならば、気持ちよく核心をついて、依頼者を唸らせたいところですが、夢解釈に関しては、的中実績のために依頼者の心を蔑ろにするべきではない。

もし、あなたが夢に詳しく、友人や恋人が見た夢について会話が及んだとしたら、親切心からそれを分析したくなるかもしれない。

しかし、それは、とてもリスクの高い行為です。その友人と今後も友好な関係でいたいなら夢の話は聞き流すべきです。

決して、地雷を踏まないように。

その破壊力は、友情や愛情を粉々にします。大袈裟に言っているわけではありません。

人は、心の動揺を悟られないよう平静を取り繕うものです。その時は傷ついていないように見えても、地雷を踏んだ効果は時間差で現れる。

普通ならば、友人や恋人の夢を読み解くというような機会はないと思いますが、もし、あなたが夢解釈をした後、気がつくと友人が距離を置くようになったとしたら、何か触れてはならないことに触れたのかもしれません。

自分が空気が読めない性格だと思う場合は、注意が必要です。

最も、夢解釈に適した人

そもそも、夢とは自己完結した世界です。

故に、他人の夢を分析するという行為は、夢の作り手である潜在意識が想定しないアプローチです。

例えるなら、” 夢 ” とは一人暮らしの人が自宅で着る部屋着のようなものです。場合によっては素っ裸で歩き回る人もいるかもしれませんが、状況としては似ています。

部屋着に求められるのは、機能性。涼しいとか、暖かいとか、パーカーの胸元に悪趣味なイラストがプリントされていようと、ズボンがしわくちゃだろうと構いません。それが一番過ごしやすいなら。

潜在意識は、あなたさえ良ければ見た目はどうだっていいという基準で夢を作る。だから、自身のコンプレックスや黒歴史といった誰かに見られると困るようなこと、誰にも話さなかった本心、意識さえしていなかった思いを夢に描く。

他人の夢を読み解くという行為は、そういった状況の中で部屋に入るのと同じです。だから、細心の注意が必要になる。

そして、部屋の主が ” お帰りください ” と言えば、それ以上踏み込むことは出来ない。

夢が自己完結的創造物であるとするなら、夢解釈に最も適した人材とは、夢を見た本人です。

自分の夢を自分で解釈するならば、意思疎通の問題や地雷を踏んで誰かを傷つけることもない。

誰かにプライベート情報や隠してきたコンプレックスを話す必要もない。私生活や秘密、不謹慎な願望、好きな異性、最近悩んでいること、全てを把握している。

そして、映像を直接見た唯一の人です。

夢の内容について言葉で説明出来ないあらゆることを、すでに理解した状態からのスタート。他人に分析してもらうよりは、ずっといい条件です。

そして、自己をより深く理解できる。

もし、あなたが誰かを救いたいと考えて、他人の夢に関心を持っているのだとしたら、その救済活動は上手くいかないでしょう。

なぜなら、自身を救えるのは、誰かに与えられる綺麗に仕上がった ” 答え “ではなく、それが粗削りであっても自分で導いた ” 答え ” だけだからです。

厳密には、” 答え ” である必要すらありません。

夢解釈で大切なのは、明確な答えを導き出すことではない。自身の夢を読み解いていくその過程が、その人に新しい視点や気づきを与えるのです。

そのプロセスの途中で頭にかかった霧が晴れることもある。それは、夢の意味を解き明かすよりも前に潜在意識からのメッセージを自ら見出した瞬間です。

それが、潜在意識が望んでいること。

夢とは自身を救い出すためのきっかけに過ぎません。” 答え ” があなたを救い出すわけではない。

それをつかむために差し出したその手が、あなたを救い出すのです。

 

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