就寝前の小さなエピソード|旅先での思い出

筆者は、旅が好きではありません。

と言っても、嫌いというわけでも
無いのですが・・

準備をしたり、移動に心身共に疲れて
しまうために、進んで行こうとは
思わないというだけです。

それでも一応は、いくつか旅の経験が
あります。今回は数少ない旅の思い出を
お話しましょう。

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北海道の公園にて

バスツアーに参加して北海道に一度だけ
行ったことがあります。

北海道の印象を一言で言うなら、
やはり ” 広大 ” でしょうか。そして、
バスの移動距離が尋常じゃなく長い。

土地が広い分、移動時間がかかるのは
当然ですが、ずっとバスに乗っていた
気がします。

なので、観光スポットに着くと、
観光するためというより、足が伸ばせる
ということで乗客たちがこぞってバスを
降りるわけです。

まるで、遠洋漁業の漁師が、港について
久々に陸に上がるみたいな。

ただ、もう、十年以上前の話なので
北海道の観光スポットについてはほとんど
何も覚えていないのです。
 
延々と続くハイウェイと牧場、それから
山林。そんな味気の無い北海道旅行で
一つだけ覚えていることがあります。

記憶が確かならば、どこかの森林公園
だったと思うのですが、とにかく、
木が大きい。

巨大な広葉樹があちこちにそびえ立って
おり、それを見上げて関心していました。

まるで、不思議の国のアリスのように、
自分の方が小さくなってしまったような
錯覚すらあった。

暫く筆者がそびえ立つ樹木を見上げて
いると、一匹の小動物が太い幹をつたって
降りてきたのです。

それは、手の平ほどのサイズのリスでした。

リスは地面を覆った枯れ葉の上をカサカサ
音を立てながら走り回り、枯れ葉の中に
ダイブして潜り込んだり、ヒョコと頭を
出したリして、筆者の目の前を行ったり
来りしていました。

しばらく観察していると、リスは
枯れ葉に頭を突っ込んで穴を掘り始めます。

そして、一個の大きなドングリを両手で
抱えて立ち上がった。

” 食べるのか? ” と思ったのですが、
リスはそれを持ったまま、こちらをジッと
見つめて静止状態。

3、4メートル先のリスと筆者は数秒間
にらみ合っていましたが、不意にリスが
背中を向けると、2メートルほど移動して、
再び穴を掘り始める。

” そうか、ドングリを隠そうと
しているんだ ”

リスは作業を終えると、辺りを
キョロキョロしていました。

” ここなら見つからないはずだ ”
と言う感じで。

無論、筆者は、背後から、ずっとそれを
見ているわけですが、リスはそれが
見えていない様子。

それから、再び、振り返ったリスと
目が合います。

筆者の存在に気づいたリスは、慌てた
様子で埋めたばかりのドングリを
掘り出し始める。

リスは掘り出したそれを口の中に入れて、
ほっぺたをフーセンガムのように
膨らませると、降りてきた木の幹を
よじ登っていきました。

空を覆った広葉樹の葉が太陽の光を遮り、
木漏れ日を一面の枯れ葉に落とす。

筆者はしばらくベンチに座って、また、
リスが降りてこないか待っていたのですが、
それっきり姿を現してはくれなかった。

ゼロ磁場での思い出

” ゼロ磁場 ” というのをご存じでしょうか?

” ゼロ磁場 ” とは、地中にある磁気の
両極が衝突し、拮抗しあう場所、いわゆる
パワースポットです。

プラスとマイナスの力がぶつかり合って
動かない状態。つまり、動きの止まった
” ゼロ ” の状態をゼロ磁場と言うそうです。

日本にあるゼロ磁場の一つ、
長野県の分杭峠という場所があります。

もう、十年以上前の話ですが、
テレビ番組の中で、中国の有名な気功師が
来日した際に発見したパワースポット
として分杭峠を紹介していました。

当時の筆者は、それを何となしに
見ていました。

それから、何年か経って、予定も無く
過ごしていた連休中に、ふとそのことを
思い出し、急きょ分杭峠に行くことに
したのです。

分杭峠は険しい山道の中にあるので、
山の麓の駐車場から小型のシャトルバス
に乗って、坂道を登っていくという
道のりです。

インターネットで調べると連休中は
大変混雑するとありましたが、案外、
バスはガラガラで、実際に分杭峠に
到着した時も、思っていたより人が
少なかった。

訪れた人たちは、細い山道を少し下った
ところにある斜面に腰を下ろして、
ぼやっと目の前の景色を眺めているのです。

景色と言っても、目の前は生い茂った
木々があるだけなのですが、それでも、
まばらながら人が集まるということは、
そこに人を惹きつける何かがあるのか?

筆者も他の観光客たちと同じように、
段差に座ってしばらく時間を潰して
いました。

特殊能力のある人ならば、何か不思議な
パワーを感じ取ることが出来るのかも
しれませんが、筆者には、何も感じとる
ことが出来ませんでした。

ここに来たら
一つ試そうと思っていたこと。

話によると、ゼロ磁場では方位磁石の針は、
北を指すことなくグルグル回るらしい
のですが、ポケットに入れておいた
方位磁石を取り出すと、針は普通に北を
指し、少し拍子抜けでした。

後でこの記事を書きながらYouTubeで
確認すると、確かに方位磁石の動きが
おかしいですね。

動画の撮影場所は筆者の座った段差
ではなく、道の途中といった感じの
場所でした。

もしかしたら、少し位置を変えるだけで
磁場が変わるということなのかも
しれません。

結局、段差に座っていたのは、10分ほど
だったと思います。

食べる場所などありませんし、当時の
状況では、ほとんど観光地化されて
いませんでした。

ふと思い立った旅先でちょっとした
” 奇跡体験 ” を期待していましたが、
何も起こらず。

人生に起こる出来事には全て意味がある
と言いますが、一体、あの旅行は
何だったんだろう?

その答えは、今でも見つかっていません。

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旅路の先にあるもの

人は、なぜ、旅をするのでしょう?

長い道のりを走り続ける一台のバス。

その先に何があるのか分からないが、
何かに向かっていることだけは確か、
という希望だけを持って、

乗客たちは、ただ、座って、
流れる窓の景色をぼんやり眺めたり、
トランプをしたり、お喋りをしたり、
お弁当を食べたりして思い思いに過ごす。

運転手でさえ、その行く先を知らない。

ただ、果てしなく続く一本道を
走り続けている。

小さな少年が落書き帳に絵を描いている。

隣に座った父親がそれをのぞき込んで
こう尋ねる。

” 何なの、それは? ”

少年は答える。

” 今から僕たちが行く遊園地 ”

画用紙一杯に描かれたユートピア。

先頭に座っていた乗客が不意に
窓の向こうを見て、叫ぶ。

” おい、見ろ! ”

希望を失いかけていた乗客たちの表情が、
次第に明るくなっていく。

バスはスピードを上げて走り出す。

 

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