夢は、それを見ている本人が作っている。
ただ、なぜか夢に出てきては欲しくない
” 嫌いな人物 ” が登場することがあります。
そして、時には、その人物のせいで
嫌な思いをすることもある。
まるで、潜在意識が私たちに嫌がらせでも
しているかのような設定。
なぜ、自ら、そのような不快な夢を
作る必要があるのでしょう?
次のような解釈があるかもしれません。
実は、その人物に対して深層心理では、
” 親しみ ” を感じており、それが夢になった。
それは、あくまで深層心理であり、
あなたは、それを自覚していないだけ・・・
ただ、その解釈では腑に落ちない。
どう考えても、その人物に親しみを感じない
という場合、もう少し
夢を深堀りする必要があるかもしれません。
今回は、夢に登場する ” 嫌いな人物 ” について
考えていきましょう。
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そっちの意味で気になる人
次は、とある女性が見た夢の一例です。
社員食堂で休憩していると、
とある男性が入ってくる。
私は見つからないように下を向いていたが、
男性は私を見つけ声をかけてくる。
関わりたくないので無視をしていたが、
馴れ馴れしい男性はしつこく話かけてくる。
これ以上、長引くようなら、
席を立って立ち去ろうと思っていると、
男性が不意に腕をつかんできたので、
私は、それを振り払って叫ぶ。
” 私に近づかないで! ”
” 夢に登場していた男性は実在の人物ですか? ”
” はい、同じ会社に勤めている人です ”
” では、毎日、顔を合わせている? ”
” いえ、私の働く部署とは別の部署にいるのですが、
頻繁にうちに顔を出すと言うか、わざわざ
用事を作って来ていると言いますか・・ ”
” どういうことですか? ”
” 仕事中に現れては、
いちいち私の方を見るんです。
私は彼の仕事とは一切関りが無いんですが・・ ”
” つまり、彼はあなたに好意を持っており、
仕事にかこつけて、あなたの職場に
度々顔を出しているということですか? ”
” ええ、無視すれば済む話ですが、
どうしても気になってしまって・・・
あっ、好きだから気になっているという
ことではありませんから。
一応、言っておきますが、私は彼が嫌いです ”
” 夢の内容を見ても、
そうだとは思いましたが ”
彼女は、夢のことを親しい友人に話したが、
友人からは ” 本当は好きなんじゃない ”
という返事が返ってきた。
しかし、その回答に納得できなかった彼女は、
夢の意味を見極めるために今回の依頼に至った
という経緯でした。
” 深層心理では、
彼に好意を持っているんでしょうか?
自分でも段々分からなくなってきました ”
*
” なぜ、嫌いなのですか?
何かきっかけとなる出来事があったとか ”
” 最初は、全く気にしていませんでした。
ただ、私に好意を持っていると分かってから、
視線を感じるようになって・・
会う回数が多い人に好意を持つ「単純接触効果」
というのがあるらしいんですが、私は全く逆で、
顔を見る度に嫌いになっていくと言いますか、
今は、彼が来ることが憂鬱の種です”
” では、過去、何かあったというわけでは
ないんですね? ”
” ええ、全く無いです ”
この夢の作り手は彼女自身ですから、
夢にその男性を登場させて、自分に
話しかけさせているのも彼女による演出なのです。
一見すると、正直になれない彼女の心が、
自ら行動することに抵抗があるため、
向こうからアプローチを仕掛ける設定を
あえて、選んでいるようにも見える。
しかし、セッションを通して、
筆者には、彼女の中に ” 素直になれない気持ち ”
があるようには見えなかったのです。
” サイン ” という暗黙的意思表示
” ところで、夢の中では彼はあなたに
話しかけていますが、現実では、
彼に話しかけられたといったことは? ”
” 一度もありません ”
” では、職場に顔を出している以外に
あなたに対して、何かアプローチのようなことは? ”
” 以前、社員食堂でランチを食べていた時に
気づいたら真後ろに座っていたので、
ちょっと気味悪くなって、
それ以来、食堂には行かなくなりましたが・・ ”
” では、彼は、取り立てて、
あなたにコンタクトを取るといった
明確な行動は起こしていないのですね? ”
” まあ、そうですね・・
特に何かされたという訳でもないのですが・・
でも、私の勘違いではないと思います ”
筆者は、ここまでの経緯を聞いて、
彼女の単なる思い過ごしである可能性について、
明確にする必要は無いと考えていました。
夢は、その人の主観を描くわけですから、
彼女が ” 事実だと思ったこと ” が
描かれるわけです。
それが実際に事実かどうかは、
潜在意識にとっては意味を持たない。
また、恋愛においては言葉を使わなくとも、
当事者にしか分からない
” サイン ” というものがあります。
仕草や視線など、第三者には分かりにくい、
ちょっとした所作・・
それは、あくまで言葉でもなく、
明確な態度でもないので、使い方によっては
責任を背負う必要のない行為。
都合が悪ければ ” そんな事実は無い ”
と無かったことに出来ますし、
自分の意思を0リスクで伝えることも可能。
恋の駆け引きが上手い人は、
この ” サイン ” を使い分け、
自分の身を守りながら優位な状況を作ろうとする。
筆者は、彼女がこの ” サイン ” によって、
妙な状況に追い込まれていることが、
今回の夢と何か関係があるのかもしれない
と感じました。
*
” 友人に相談したら、気にしなきゃいいじゃん
と言われてしまったのですが、
なぜか気になっちゃうんですよね ”
” 好意的な意味ではなくて ”
” はい。でも、私が意識しているということを
相手には知られたくないんです。
変な勘違いをされても困るので ”
” なるほど ”
では、夢の内容を振り返ってみましょう。
夢の舞台は、
社員食堂ということになっています。
そこは、以前、彼女が利用していたが、
男性を避けるために使わなくなってしまった。
避けているはずの社員食堂に
なぜ、彼女は来ているのか?
それは、男性に会うためです。
とは言え、彼女は夢の中で顔を伏せて、
見つからないようにしていた。
” こっちに来るな、来るな ”
と思うほど、
男性は彼女の方へ呼び寄せられていく。
彼女が男性に対して考えを巡らし
意識するという心の動きが、
自ら対象に接近を試みている行為そのものです。
男性は彼女の元にやってきたのではなく、
彼女が設定の中に取り込み、男性を
自分のすぐ近くに配置しなおしたのです。
ただ、この場合、好意を持っている
という意味で会いに来ているわけではない。
彼女は男性を登場させて、
” 憂鬱の種 ” を解決する必要があった。
では、彼女の抱えている ” 憂鬱の種 ” とは、
具体的に何でしょう?
夢が果たすべき目的
” 今の状態が、とても居心地が悪いです。
私はどうすればいいんでしょう? ”
” つまり、
彼に好意を持たれることにですか? ”
” ええ、脈が無いということを
伝える何かいい方法はありませんかね。
告白されたわけでもないのに、
こっちから行って振るというのも
おかしな話ですし・・ ”
” ああ、なるほど、そういうことですか ”
*
彼女にとって今の状態は、
とても中途半端なものになっています。
男性の一方的な ” サイン ” に
気持ち悪さを感じながらも、それは
発言でも明確な行動でもないということから、
彼女からは、リアクションを取ることが
出来ないという少々困った状況。
男性が話しかければ、ある意味、彼女は
冷たくするチャンスを得るわけです。
告白を受けたなら、断ることで
脈が無いことをはっきり示すことができる。
しかし、男性が ” サイン ” だけを使い、
安全圏から遠距離射撃を続けている以上、
一般的視点から見れば、
” 何もしていない人 ” でしかないのです。
ゆえに、夢の中で男性に積極的な態度をとらせ、
最後には彼女の腕をつかむという
” 行き過ぎた行為 ” を行わせることで
潜在意識は、彼女に意思表示をするための
口実を与えているのです。
要するに、なかなか踏み込んでこない相手に
あえてボーダーラインを越えさせて、
振ったのです。
*
さて、嫌いな相手が夢に登場したとしたら、
そこには、どんな意味があるのでしょう?
今回に夢では、彼女置かれた複雑な状況を
解決するために ” 嫌いな人物 ” を登場させています。
そして、目的を達成するために、あえて
不快な状況を作り出した理由もあった。
無論、どの夢にも、それはあります。
例えば、嫌いな人物と一つ屋根の下で暮らしている
という夢を見たとしましょう。
あなたは、夢の中で思う。
” なぜ、こんな奴と
一緒に暮らさなければいけないの? ”
あなたが常に嫌いな人物に対する
不満を持ち続けている状況を、潜在意識が
” 家 ” として表現した結果だとしたら・・
つまり、憎しみによって心の中に
” 嫌いな人物 ” が居座っている状況を
家に居座っているという ” 置き換え ”
によって描いているわけです。
それが家ならば、相手を追い出すか、
自分が外出すれば顔を見なくて済みます。
ただ、本当は、その人物は
心の中に存在しているわけですから、
それを知っている潜在意識は、
追い出すことも離れて暮らすことも出来ない
ストーリーを描く。
夢を見ている本人に、
” 大丈夫、家からはいつでも出られる ”
という嘘を信じ込ませることができれば、
夢を作った目的は果たせるのです。
無論、上記の解釈だけが全てではありません。
ケースによって判断しながら、
夢の内容について考えていく必要はあります。
*
” 夢の意味が分かれば、何か良いアイデアが
見つかるかもと思ったんですが、
私の願望が夢になっていただけなんですね・・ ”
” 申し訳ありません。力及ばず ”
” いえいえ、私が彼に好意を持っている
わけじゃないということが分かっただけでも、
スッキリしました ”
彼女は続けて、次のように言いました。
” もし、私に好きな人が出来れば、
多分、気にならなくなるとは思いますが・・ ”
” サイン ” とは、意識的に行うことばかり
とは限りません。
それは、私たちが知らず知らずのうちに、
発信している場合もある。
何かに打ち込んでいる人を見れば、
誰もが ” 邪魔してはいけない ” と思うでしょう。
明るく朗らかな人を見れば、
人生に失望した人は距離を取りたがるでしょう。
逆に、希望を抱く人には、夜の海で
光を放つ灯台のように見えているかもしれない。
恋人のいない独り身であれば、
同じく恋人のいない人に対して
” 満たされない心 ” が伝わってしまう。
確かに、彼女が言うように
” 気にしていない ” というサインを
送ることが出来れば、いずれ男性は、
それを受け取ることになるでしょう。
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