あるべき場所に無いもの|夢の中の ” ドア “

本来、あるべき場所にあるものが、
夢の中では、なぜか
跡形もなく無くなっている。

見知らぬ人物が登場するとか、
見覚えの無い物がテーブルに置かれている
と言った見慣れない、もしくは、
架空のものが夢の中で登場する
という設定はよくありますが、

その逆のパターンとして、
あるべきはずのものが登場していない
といった設定に気づくのは、少し、
難しいかもしれません。

” 存在する ” よりも ” 存在していない ”
という設定は分かりにくいものです。

それゆえに、
重要なヒントを見落としてしまう。

*

また、登場しないものを挙げれば、
きりが無いというのも解釈を
難しくしている理由の一つです。

例えば、家族の登場する夢を見て、
それ以外の人たちは登場してないわけですから、
そこに意味があるかと言えば、
単にその夢には必要が無かったから
としか言えません。

もし、そういった消極的なシチュエーションを
夢の中に見つけたとき、
どのように解釈すべきでしょう?

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ドアが無くなっている

次は、とある女性が見た夢の一例です。

眠っていると廊下の方から、
子供のような泣き声がする。
 
薄暗い廊下に出ると、
突き当りの壁の前に男性が後ろ姿で立っている。
 
彼は、両手で顔を覆い、
子供のように泣いている。
 
可哀そうだから、
手を引いてリビングに連れて行く。

” 夢に登場した男性は実在の人物ですか? ”

筆者の質問に、女性は次のように答えます。

” いえ、見知らぬ人物です。
ただ・・夢の中では、なぜか、長い間、
家に居候をしている親戚という認識でした ”

見知らぬ人物を親戚だと思い込んでいた
彼女の奇妙な認識は、
一体、何を意味しているのでしょう?

*

ここまでの話を聞く限り、 
この夢の中で、本来は存在しない人物が
登場しているという部分が目立ちます。

彼女も、登場した男性の正体を
知りたがっているようでした。

筆者は、この話に何か、
抜け落ちた部分が無いか調べるために
いくつかの質問をします。

” 男性は、なぜ、廊下の突き当りで
泣いていたのでしょう?
その場所に何か気がつかれたことなどは
ありますか? ”

筆者には、何も無い場所で、
壁に向かって立っているという設定が、
少し、不自然だと感じたのです。

彼女は、何かに思い当たったようでした。

” そう言えば、父の書斎が、
廊下の突き当りにあるのですが、
なぜかドアが無かったんです ”

ここで、セッション中、見過ごしていた
もう一つのピースが見つかったのです。

*

次に筆者は、
見知らぬ男性の年齢について尋ねました。

年齢は、父と同じか、それより上ということで、
かなり、年輩だということです。

その男性は子供のように泣いていた。

彼女は夢の中で、その男性を
発達の遅れた障害を持った人で、
私たち家族が世話をしているという
認識だったと言います。

筆者は、ここまでの話を聞いて、
思い当たることが一つあり、次のように尋ねました。

” ペットを飼っていますか? ”

彼女は、10歳ぐらいの雄猫を
飼っていると答えます。

猫の10歳は人間の年齢で言うと、
50歳半ばぐらいになります。

彼女もそのことは知っていました。

子供のような大人、そして、
家族で世話をしており、
家族ではないが家族のような存在。

しかし、セッション中に分かったことと言えば、
それだけで、
肝心の書斎のドアが無くなっていたという点、
そのドアの無い壁に向かって男性が泣いていた
という点は、結局、読み解くことが出来ずに
セッションは終了したのです。

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数日後・・

それから、数日が過ぎた頃、
再び、彼女からメールが届きます。

そこには、昨晩あった出来事が記されており、
それが、今回の夢に関係するのか、
確かめたいという内容のものでした。

昨晩、猫が書斎に入り込んで、
仕事の大事な書類をダメにしてしまい、
そのことで父が怒り出したと言うのです。

そして、猫を家の外へ出すように言った。

家族がたしなめ、その場は何とか収まりましたが、
元々、動物が好きではなかった父が、
今回のことで猫を嫌いになってしまい、
困っているということでした。

以前から、ペットを飼う事に父は賛成しておらず、
これまで家族の中でくすぶっていた問題が
表面化したかもしれないと彼女は言いました。

*

このエピソードを聞く限り、夢の中で、
あるべきはずの書斎のドアが消えてしまった
という不可解な設定は、
二つの意味を持っているように思えます。

一つは、父をこれ以上怒らせないために
書斎に侵入するルートを断つという意味、

もう一つは、ペットに対する父の心の扉が、
完全に閉じてしまったという意味です。

猫を人間の男性として、登場させたのも、
動物嫌いの父の怒りを買わないための
演出なのかもしれません。

仮に、この解釈ならば、夢の中で
ドアに鍵をつければ済む話のようにも思えます。

しかし、ドア自体が無くなっている。

つまり、この問題は、鍵一つで解決出来るような
問題では無くなってしまったということです。

そこは、もはや ” ドア ” ではなく、
問題解決の糸口を失った ” 障壁 ” だと。

実際、彼女は、書斎に誰も入らないよう
鍵をかけたらいいといいましたが、
父は面倒だからと言って、
その案を受け入れてはくれなかった。

接点を見つける

とある出来事がきっかけで、
家族の間で起こったペットに関する問題。

ただ、これは、彼女の夢なので、あくまで、
彼女の潜在意識から見て解決困難な問題に
見えているというだけで、本当に
解決の目途が全く無いということまでは
保証されていません。

それから、何か良い対処は無いかと
彼女に尋ねられましたが、
こればかりは筆者も困り果ててしまったのです。

” いつか融和できるタイミングが来るのを
待つしかない ”

これといった解決法も出ないまま、
二人の辿り着いた結論は、とにかく
時間をかけて待つということだけでした。

*

さて、今回は、あるべきものが無くなっている
という設定について解説しました。

今回の夢では、ペットをめぐる
家族のトラブルを予見したものでしたが、
それは、彼女の家族、家庭の事情という
プライベートの部分が夢になっています。

夢は、それを見る人のプライベートと
切っても切り離せない関係なのです。

ですから、闇雲に誰かの解釈を
自分の見た夢に当てはめようとせずに、
まず、自分の置かれたプライベートな状況と
夢との接点を見つけることが大切です。

そして、夢をよく観察してください。

目に見えるものばかりではなく、
姿無き人物、何かが足りない景色、
欠落したもの、省略されたもの、
そういった消極的な設定にも意味はあるのです。

 

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