夢の中の ” 過去の人物 “|なぜ、あの人が今頃?

なぜか、何年も会っていない過去の人物が
夢に登場することがあります。

学生時代の旧友、昔付き合っていた恋人、
子供の頃に苛められたいじめっ子、以前、
お世話になった恩師など、

また、特定の人物だけでなく、
前に住んでいた家や働いていた職場など、
過去にまつわる場所が人物と共に登場する
こともあります。

夢は記憶の整理だという説もありますが、
何年も前の過去を、今頃、整理する必要が
あるのでしょうか?

その人物が、” 今 ” というタイミングに
現れたことには、何か別の意味があるよう
にも思えます。

果たして、夢の中に現われた過去の人物は、
なぜ、今、現れたのでしょう?

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許されないホームシック

次は、とある女性が見た夢の一例です。

車の後部座席に乗って、
懐かしく見慣れた街並みを眺めている。
 
運転席にAさんが座っている。
 
途中、以前働いていたバイト先の
建物が見える。建物の前に数人の
見たことのある人々。

車に乗って以前住んでいた街を眺めている
というノスタルジックな夢です。

車が走っていた通りは実在するもので、
以前、勤めていたバイト先の通勤経路
だったということです。その当時は、
毎日、その道を使って仕事場へ通っていた。

彼女は希望する仕事に就くために二年ほど
前に実家を離れ上京し、現在は都心近くで
生活しているということでした。

” 車に乗って、
どこに向かっていたのですか? ”

筆者が尋ねると、彼女は、Aさんが何か
用事があって運転している後ろで自分が
何となく座っているという状況。
それが自分の実家のある方向と同じだった
と言います。

つまり、この夢は帰郷を描いている。

だとすれば、単純に彼女のホームシックが
夢になったと考えることも出来ます。

そこで、筆者は、彼女の現在の状況について
知っておく必要があると感じました。
何か辛いことがあり、今の生活に問題を
抱えているかもしれない。

” 現在、実家から離れて暮らしているという
ことですが、実家に戻りたいと思う時は
ありますか? ”

彼女は自分の希望していた仕事で生活
出来ていること自体には満足しているが、
その一方で、アグレッシブな今の生き方に
疲れを感じているとも言います。

時々、もし、自分が地方で就職をして
いたら、どんな人生が待っていたのだろう
と思うことがある、と。

しかし、自分が好きで始めたことなので、
途中で投げ出すわけにもいかず、
仕事上の人脈を放り出して周りに迷惑を
かけるわけにもいかない。

また、上京するときに両親に無理を言って
世話をかけてしまったという経緯もあり、
今は、そうしたくても引き返すことの
出来ない状況だと説明しました。

忘れかけていた過去の人物

さて、この夢には、” Aさん ”
という一人の人物が登場しています。

彼女は、その人物が運転する車に
同乗するという形で夢に参加している。

” Aさんは、どういった方ですか? ”

Aさんは、以前、地元で働いていた時の
バイト先の同僚の一人ということでした。
彼女とは親しい間柄でもなく、夢を見るまで
Aさんのことはすっかり忘れていた。

ただ、思い出と言えば、Aさんは一度
バイトを辞め、どこかで別のバイトをして、
そこも続かず、結局、また、戻ってきた
という経歴の持ち主でした。

潜在意識は、なぜ、車のドライバーに
この忘れかけていた人物を
キャスティングしたのでしょう?

それは、Aさんの存在を ” 忘れかけていた ”
ということが理由です。

例えば、この夢が ” 実家に戻りたい ” という
ホームシックな感情を解決するために
作られたものなら、単に自分が車を運転して
実家に戻るというストーリーでもよかった。

または、両親のどちらかが運転して、
彼女を迎えにくるというストーリーでも
同じです。

しかし、この自然な設定を選ばずに、
あえて忘れかけていた人物を記憶から
呼び出して運転席に座らせている。

彼女は、実家に戻って地方で暮らすという
選択が許されない状況だということを
十分理解しています。

つまり、この設定は、
” ちょっと疲れたからと言って簡単には
戻れない ”
という自分への ” 戒め ” なのです。

ゆえに、自分でハンドルを握って、実家に
戻ることも出来ず、両親に甘えて迎えに来て
もらうことも出来ない。

唯一、出来るのは、他人が運転する車に
同乗して ” どこに行くのだろう? ”
と思うことだけです。

” これは帰郷ではない。私は
Aさんの用事に付き合っているだけだ ”

無論、目的地は彼女の実家なのですが。

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置き換えられた認識

今の都会の生活に疲れた彼女の心の中に、
ふと差し込んでしまった郷愁への思いが
この夢に描かれています。

一方では、素直に帰ることの出来ない
状況が彼女を苦しめてもいる。

彼女にとって故郷の風景を思い出すことが、
ホームシックな気分を余計に刺激して
しまう。故に振り返ることなく故郷のことは
忘れたままにしておく必要があった。

ただ、その思いを無視することが
できなかった潜在意識は、ちょっとした
認識の ” すり替え ” を行うのです。

” 私が思い出したのは、
しばらく忘れていたAさんのことだ。
故郷に帰りたいわけじゃない ”

だから、” 忘れかけていた人物 ” が
必要だった・・

そして、Aさんは彼女の中では、一度
出て行った後に戻ってきた人物として
記憶されている。

ある意味、現在の彼女がそうしたくても
出来ないことを実際に行った人物です。
その人物が運転する車に彼女は乗っている。

彼女にとって、Aさんは自身の抱える
ジレンマを解決した象徴的人物に見えた
のかもしれません。

さて、夢の最後の場面、以前、働いていた
バイト先の建物の前で立ち話をしている
人々。

彼女がそこで働いていた時、休憩時間に
なると従業員が集まって、よく立ち話を
したそうです。彼女も雑談に付き合って
時間を潰したりした。

この場面は、彼女が、もし上京せずに
地方で人生を送っていたらどうだったか?
という彼女の中の問いに答えるものです。

そこには、わたいない世間話と、
和やかな雰囲気と、笑顔、気を張ること
のない保守的な人生が描かれている。

彼女が都会の喧騒の中で忘れかけていた
ものです。

現時点の過去とは?

さて、今回の夢には、Aさんという
過去の人物が登場しています。

潜在意識が、その人物を記憶から呼び出し、
夢の中に登場させたのは、彼女が現在
抱えている心の問題を処理するためでした。

” 過去の人物 ” と言うと、昔の知り合い
というイメージがありますが、例えば、
あなたが5分前に手を振って別れた現在の
友達も現時点から見れば ” 過去の人物 ”
と言えます。

明日も、その友達と顔を合わせることに
なったとしても。

つまり、この瞬間、目の前に立ってるのでも
無い限りは全ての人物が過去の人なのです。

それが、5年前の知人であっても、5分前に
別れた友人であっても、大した違いは
ありません。

潜在意識にとっては、単なる記憶の断片
に過ぎない。

潜在意識は、必要であれば、
伝えるべきことに最も適切な人物を
記憶から選び出します。

ただ、それが私たちには過去を
振り返っているようにも見えるのですが、
実際は現在の問題を処理するために
過去の記憶を利用しているだけなのです。

もし、あなたの夢に過去の人物が登場
したなら、過去ではなく現在のあなたの
置かれた状況を一度、整理してみてください。

潜在意識がその人物を呼び出した理由は
必ずある。

例えば、それが十年前にお世話になった恩師
であれば、その人は今のあなたに必要だから
登場しているのです。

例えば、昔付き合っていた恋人が登場した
というなら、今、あなたの中にある何らかの
問題を処理するために呼び出されたのです。

潜在意識は、思ったよりも現実的な視点で
夢を作ります。目の前に問題があれば、
それに対して手を打とうとする。

常に、その視線は、
現在のあなたに向けられているのです。

 

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