夢の中でヒソヒソと小声で何かを
話している。
自分が話ていることもあれば、
誰かが話しているのを近くで耳を立てて
聞いているという場合もあります。
現実世界では、
誰かが小声で話していたところで、
大抵は、自分とは無関係の話題でしょう。
しかし、夢の中では、
赤の他人が話しているその会話は、
全て自分に関係すること。
故に、会話を盗み聞きしながら、
どこか身に覚えのある話題だったりする。
なぜなら、全てのシチュエーションは、
夢を見ている本人によって仕組まれた
ものだからです。
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人には言えない話
次は、とある女性が見た夢の一例です。
教室のような部屋にいる。
少し離れた席で、
女性二人がヒソヒソと話をしている。
聞きたくない内容だったので
耳を塞いだが、なぜか二人は、自分の
隣に席を移動してきて噂話を続ける。
こういったヒソヒソ話を黙って聞いている
といったシチュエーションの夢は、
やはり、会話の内容が何であったか
という点が気になります。
” 女性二人の会話は、
どういった内容でしたか? ”
筆者の質問に、彼女は答えます。
” 私に対しての噂話ではなくて、
全く知らない人について話していました・・ ”
” では、あなたは、内容までは
聞き取ることが出来なかった? ”
” いえ、聞こえました ”
” それは、どういった・・? ”
” あー、内容は、
ちょっと言いたくないですね ”
彼女が噂話の内容について話すことを
避けたがっている様子から、筆者は、
彼女の中に人には言えない秘密がある
のだと理解しました。
” 話したくない場合は、
無理に話す必要はありません。
話せる範囲で結構ですから ”
彼女の説明では、女性二人が
話していたのは、自分とは関係の無い
見知らぬ誰かについての噂話だった。
ただ、その内容は自分にも
身に覚えのあるコンプレックスに
関するものだったと言います。
” 誰にも話したことが無いんですが・・ ”
” ああ、それ以上は、
話さなくても大丈夫ですよ ”
*
人に言えない秘密やコンプレックスが
夢になることは、ごく自然なことです。
それが口に出して言うのも憚られる
生々しい告白であるほど、心の中では、
その思いが抑えつけられている。
そういった思いほど心の叫びとなり、
夢になりやすい。
噂話の内容がどういったものかは
分かりませんが、今回の夢は
彼女の抱えているコンプレックスと深く
関わっていることだけは確かなようです。
舞台に教室を選んだ理由
さて、夢の舞台は、
教室ということになっています。
と言っても、彼女は学生ではなく、
社会人なので、なぜ、あえて教室を
選んでいるのかという点も
何らかの意味がありそうです。
” それは、学校の教室ということですか? ”
彼女の説明では、そこは学校と言うよりは、
会議室で講義を受けるといった感じで、
自分は参加者という認識だったと言います。
そこで、授業が始まるのを
座って待っていた。
彼女の潜在意識は、なぜ、
舞台を ” 教室 ” に設定したのか?
*
つまり、その設定でなければ、そこに
留まる理由が無くなってしまうからです。
この夢は、最初から
不快な噂話を聞くために作られている。
不快だからといって、彼女が
どこかに去ってしまわないように、
あえて、その場に留まるための口実を
与えているのです。
” あの噂は、私のじゃない。
本当は聞きたくないが、もうすぐ
授業が始まるからここにいるしかない・・ ”
*
つまり、彼女は、女性二人の無関係な
誰かの噂話をどうしても聞かなければ
ならなかった。
なぜなら、その噂は、
本当は自分に対するものだから。
心の葛藤、もう一人の声
夢の中で、二人の女性は、彼女ではなく、
赤の他人に対する噂話をしています。
これは、シンプルなカモフラージュです。
彼女は、夢の中で自身のコンプレックス
について何か気がかりがあり、
それと向き合わなければならなかった。
しかし、直接、向き合うには抵抗が
あったので、あえて、自分には無関係の
噂話ということにして、間接的に
向き合う状況を作っているのです。
*
彼女は、途中で聞きたくない噂に耳を塞ぐ。
すると、どういうわけか、女性二人が
席を移動して、耳を塞ぐ彼女のすぐ近くで
会話を続行する。
この夢で最も奇妙な場面です。
無論、女性二人を彼女の近くに再配置
したのは、彼女自身による演出です。
つまり、彼女の中のもう一人の自分が
こう言っているのです。
” あなたは、この問題から
目を逸らしてはダメ。
ちゃんと最後まで聞きなさい ”
自身のコンプレックスを解消したいと
思いながらも、それに目を向けることを
ためらってもいる。
この場面に、二つの感情の板挟みになり、
苦しんでいる彼女の葛藤が描かれています。
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ファーストステップ
今回の夢では、向き合わなければならない
問題を ” 自分とは無関係の噂話 ” という
形に置き換えて、間接的に向き合おうと
している彼女の姿が描かれていました。
夢は、相反する感情のバランスを
取るために、こういった間接的な方法で
問題を克服しようとすることがあります。
問題から距離を置くために、
当事者の立場から一旦、自分は外れ、
問題を全く別の形に変えて
自身の近くに再配置するのです。
これによって ” 身近な他人事 ” として
自身の問題と向き合うことが出来る。
これは、噂話の夢だけに限らず、
それ以外のシチュエーションでも
よく使われる技法です。
例えば、携帯に間違い電話が
かかってきて、突然、見ず知らずの人に
無関係な話をされるとか、
通りすがりの人に
言われのない批判を受ける。
誰かの用事に付き合わされて、
行きたくも無い場所に行くなど。
様々なシチュエーションに組み込まれる。
*
自身と向き合うことに抵抗があるうちは、
こうしたカモフラージュを使って、
問題と間接的な接触を試みますが、
問題と向き合う心の準備が出来上がって
くると、他人事ではなく、当事者として
夢のストーリーに参加していくようになります。
今回のケースならば、誰かの噂話ではなく、
二人の女性が彼女に直接話かける
という展開になったかもしれません。
そして、いつか、彼女は鏡の前に立って、
これまで目を背けてきたもう一人の自分と
対決することになるのです。
そういった意味では、今回の夢は、
彼女にとってコンプレックス克服のための
ファーストステップと言えるかもしれません。
*
夢は、観察し続けることで、
様々なことを教えてくれます。
今、自分の心がどういったレベルで
立ち止まっているのか、
その先に何が待っているのか、
そして、どういった結末を迎えるのか、
潜在意識は、あなたより
一足先にそれを見ているのです。
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