例えば、不快な夢を見た後に、夢占いを
調べてみると、以外にも吉夢だった
ということがしばしばあります。
その逆のパターンで、一見すると何でもない
普通の夢、良い印象の夢であっても、実は
悪い出来事の暗示だったというような、
実際、夢から受け取った印象と夢占いで
調べた結果が食い違っている。
こういった場合は、夢の中で感じていた
不快感は無視し、夢占いを信じて幸運の訪れ
を待つべきでしょうか?
もしくは、それが悪い出来事の暗示なら、
予定をキャンセルして外出を控えるべきでしょうか?
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基準としての不快感
筆者は次のように考えます。もし、あなたが
夢の中で不快感を覚えたのなら、それは
悪い夢であり、楽しい気分でいられた
のなら、良い夢であると解釈することは、
あながち誤りではない、基本には。
ただ、人の感情とは複雑です。常に快感と
不快感によって、明確に区別されているわけ
ではありません。
あなたにも経験があるでしょう。
仕事が予定より早く終わり、いつもより早く
家に帰ることが出来るとして、それを素直に
喜こぶことが出来ない。周りを見ると、まだ
仕事が終わっていない疲れ顔の同僚たちに
” お先に失礼しまーす ” と言ってその場を
立ち去らなければいけないとしたら。
早く帰れることが嬉しくもあるが、同僚に
対する気まずい気持ちもある。
良い出来事かもしれないが、手放しでは
喜べない瞬間、悪い出来事ではあるが、
心のどこかで ” これで良かったのかも
しれない ” と安堵する瞬間、何とも
言えない複雑な心境。
人の感情とは大抵、明でも、暗でもなく、
その中間です。
無論、夢は感情が反映されたものですから、
その複雑な感情を映像によって忠実に表現する。
また、何を持って快感とするのか、
何を持って不快感と呼ぶのか、人それぞれ
によって定義が変わるため、夢に固定的な
解釈を当てはめることが出来ない。
*
さて、自身の感覚に従って夢を読み解く
となると、一つの問題が生じます。それは、
何が正解か分からないということです。
数学のように世間一般の共通認識として
正しい答えが存在しており、調べることで
答え合わせが可能なら、とてもシンプルです。
ですが、夢解釈ではそれが出来ない。
なぜなら夢とは、人の心が作り出すもの
だから。
心に定義はありません。形も無い。
しかし、心自体は、あなたの中に確かに
存在する。そして、その心が夢を作る。
まず最初に、明確にしておきたいのは、
その夢は誰が作ったのか? ということです。
無論、あなたの夢は、あなたが作った。
厳密には、あなたの潜在意識が作ったと
言うことも出来ますが、あなたが夢の中で
不快感を感じたというのであれば、それは、
潜在意識があなたに不快感を与えたくて、
作っているわけです。
( 不快感そのものを作るわけではなく、
不快感を催すための演出を作っている )
例えるなら、ホラー映画の制作者が観客を
怖がらせるために様々な演出をシーンに施す
のと同じように、潜在意識は観客である
あなたに不安や不快感を提供している。
ただ、映画製作では観客を怖がらせる
目的は、商業的成功ですが、潜在意識の
目的は ” 感情の処理 ” です。
一見すると、心の中に引っ掛かる何らかの
わだかまりを処理するために、私たちに
不快感を与えるという行為は、余計に心に
負担をかけるようにも見え、全く逆効果に
思えます。
しかし、それは与えられる。なぜでしょう?
公園で起こったこと
次は、とある女性が見た夢の一例。
近くの公園で事件が起こったらしく、
人だかりが出来ている。
息子が私の手を引っ張って
現場を見たいとダダをこねている。
何となく不穏な空気の漂う夢です。
彼女は、もしかしたら自宅の付近で物騒な
ことが起こる暗示では無いかと心配して、
夢占いで ” 死体 ” 関する項目を調べて
みたが、彼女の予想に反して、それは吉兆
の暗示とされていた。
彼女は、筆者に尋ねました。
” 息子が私を現場に連れて行こうと
していたのは、この夢が良い出来事を暗示
しているから、ということなんでしょうか? ”
” 確かに、辻褄は合いますね・・ ”
” でも、そうじゃない気がするんです ”
” 何か、心当たりが? ”
” 心当たりはありませんが、夢の中でとても
嫌な気分でしたし、息子が執拗に現場に
行きたがるのが変だと思いました。
そういう子じゃないので・・ ”
” それで、現場に足を運んだのですか? ”
” いえ、行けば悪いことが起こると思って、
息子を力尽くで止めていました。あの子の
身に何か起こるとかじゃないですよね・・? ”
*
” 現場に足を運んでいないとすれば、人だかり
を確認したというのは・・ご自宅から公園が
見えたということですか? ”
” いえ、公園は少し距離があるので、自宅から
は見えません。ただ、なぜか映像が頭に
浮かんだと言いますか・・
私の勝手な妄想かもしれませんが ”
” どういった映像でした? ”
” あまり思い出したくは無いんですが、
人だかりの中で、それらしきものがシートに
覆われていて・・見たのはその一瞬だけです ”
彼女は現場に行くことはなかったが、
妄想の中で現場を間接的に目撃している。
さて、夢自体が彼女の脳裏に写しだされた
一種の妄想ですから、夢の中で行った
妄想は、ある意味、夢の中で実際に見た
というのとあまり変わらない気もします。
では、なぜ、彼女の潜在意識は、その映像を
” 頭に浮かんだ妄想 ” という形で夢の一場面
に挿入したのでしょう?
つまり、
” 私は現場を目撃していない。あの映像は
単なる妄想に過ぎない ” という設定が
この夢には必要不可欠だったということです。
それは、なぜか?
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” 妄想 ” という枠の中で
彼女の手を引っ張って現場を見たがる息子。
日頃は怖いことに興味を示すような性格では
ない我が子の不自然な行動。
夢の作り手は彼女自身であり、息子の行動も
全て彼女が書いた脚本です。つまり、彼女を
連れていきたがっているのは彼女自身。
現場の映像が妄想の中でなければならない
理由とは ” 葛藤 ” です。
本来、彼女にとって公園は足を運ぶべき
場所。何らかの事情でそこに行くことが
できないために ” 妄想 ” という設定によって
疑似的に現場を訪れている。
それは、あくまで ” 疑似 ” なので、そこに
訪れたことで生じる ” 何か ” を回避する
ことができる。また、いつまでもそこに
留まる必要がなく、抜け出そうと思えば
簡単に抜け出せる。
これら演出から夢の作り手の思惑を
理解すると、彼女の中に ” 行きたくない ”
という感情、そして ” 行かなければならない ”
という相反する感情の葛藤が見えてきます。
彼女は、一体、
何について葛藤しているのか?
*
” 最近、気が進まないが、やっておかなければ
ならないことに心当たりは? ”
” やっておかなければ・・何でしょう?
特に思い当たることはありませんね ”
” ストーリーが公園を中心に構成されている
ようなので、公園に関係することかも
しれません。その公園を利用したりは? ”
” ええ、利用することはあります。
先週も息子を連れて・・ ”
彼女は何かを思い出したようでした。
その公園には息子を連れて訪れることが度々
あると言います。そこには彼女と同じように
小さな子供を連れたママ友たちが数人集っては、
砂場で遊ぶ子供たちを眺めながら
井戸端会議をする日常的風景があった。
彼女も最初のうちはママ友たちに交じって、
雑談に加わったりしていたのですが、
とある出来事がきっかけでママ友の間で
関係がギクシャクし始めていると言います。
*
” 子供が喧嘩をしてしまいまして、
相手の子が怪我を・・ ”
” それは大変ですね ”
” うちの子が砂をかけて、
それが目に入って大泣きしまして、すぐに
水で洗って、その子のお母さんが動揺して
眼科に連れていくと言って ”
” そうですか・・ ”
” 一応、電話で謝罪して、お子さんの様子を
伺ったら大丈夫だということで
安心はしたんですが、その日から公園には
行ってないんです ”
” 気まずくて・・ですか? ”
” ええ、何となく
行きづらくなってしまって・・ ”
息子の問いかけ
彼女は砂場の一件がきっかけで、実際に
公園に足を向けることが出来なくなっていた。
” 電話で話した時も何となく、相手方が
まだ、怒っているような感じがして・・
息子が嫌われたらと思うと・・ ”
” 息子さんはどんなご様子ですか? ”
” 本人はふざけて砂をかけたみたいで、
喧嘩だという認識は無かったようです。
今は家でおとなしくしていますが、
夢を見る晩に聞かれました ”
” 何を聞かれたんです? ”
” 何で公園に行っちゃダメなのかと ”
我が子から言われたその一言が、今回の夢を
作るきっかけを与えたのかもしれません。
公園に行ってはいけない理由、それは、
子供の間で起こったちょっとした出来事。
幸い、大事には至ることなかった。
彼女にとって、それは ” 気が進まないこと ”
だった。だから公園に行かずに済むように
大きな事件を起こしたのです。
それが警察沙汰になるような出来事なら、
砂場で起きた小さな事件など、微塵もなく
忘れ去られるでしょう。そして、誰も
公園には寄り付かなくなる。
今の彼女にとってそれは都合の良いこと。
*
しかし、その一方では、公園に行こうとする
意思もあるわけです。息子が手を引いて、
無理矢理、彼女を連れて行こうとしている。
” 公園に行ってはいけない理由を聞かれた時、
私、答えられなかったんです。これは、
私の都合じゃないか、と思いまして・・ ”
問いかけに答えるため、直接会って修復を
図りたいという気持ちが我が子の姿を借りて
登場しています。
彼女が妄想の中で見たというシートに
覆われたもの・・
それは、” 死体 ” ではありません。彼女の中
にある ” 片づけておかなければいけない問題 ”
であり、事件はそこから目を反らすための
カモフラージュです。
筆者の解釈を聞き、彼女は言います。
” 悪い出来事の暗示とかではなく、私の気持ち
が夢になっていたということですね。
少しホッとしました ”
” そうですか。それは良かった ”
” 息子も遊びたがっているので、
今度、公園に顔を出してみようと思います ”
*
さて、解釈は以上ですが、彼女がこの夢を
見て感じ取った不快感とは、公園で発生した
事件に対するものではありませんでした。
それは、あくまで不快感を誤魔化すために
後付けされた設定。
不快感の源は、シートに覆われた ” それ ”
ではありません。ただ、潜在意識は ” それ ”
が原因だと思わせたいのです。もし、
そうであれば、全ては警察の仕事となり、
彼女がすべきことは無くなる。
彼女がこの夢に不快感を感じたのは、
まさに、彼女にとって都合の悪い事柄を
テーマに作られているからです。
しかし、同時に良くない状態を打破する
ためのヒントが隠されてもいた。
フィーリングだけで夢を ” 良い ” ” 悪い ” で
判別することは確かに可能です。ただ、
悪い夢だからといって、全くプラスに
ならないということではない。
今回紹介した夢のように、それは
彼女にとって大切なことを伝えるために
潜在意識が用意した ” 苦い薬 ” でも
あるわけです。
夢から感じ取った ” フィーリング ” は、
解釈を行う上での大まかな方向性を示します。
不快であれば、自分にとって都合の悪い
事柄を取り扱っていると推測はできる。
また、快い夢であれば、それはその時の
あなたに必要とされた快感です。
無論、フィーリングだけで夢の詳細を
解明することは難しい。いずれにせよ、
より確かなものを求めるとしたら、時間を
かけて向き合っていくことが必要です。
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