夢の中の ” 幻の一曲 “|架空の歌

夢の中で音楽が流れている。

それは、映画のBGMのように映像と共に
聞こえるという場合もあれば、
車のステレオから流れてくるといった
シチュエーションもあります。

そして、その音楽には、
歌詞がついている場合がある。

実際に存在する歌ではなく、
全く架空の歌ですが、私たちは、
なぜかその歌詞に心打たれるのです。

しかし、目覚めてみると、
歌詞もメロディーも覚えていない。

ただ、感動したということ
だけが記憶に残っている。

さて、夢の中で時折、演奏される
この ” 幻の一曲 ” は、一体、
私たちに何を伝えようとしているのでしょう?

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心に刺さる名曲

次は、とある青年が見た夢の一例です。

ユニクロの店内にBGMが流れている。
 
最初は、悲しそうな音だったが、
段々と明るく弾むような音になっていく。
 
つられて口ずさむ。
 
買い物かごを持って
カウンターまで行くと行列が出来ている。
 
列に並ぶとスマホを見て時間を潰す。

服を買うためにショッピングをしている
という日常的な夢です。

筆者は尋ねました。

” ユニクロには、
よく行かれるのですか? ”

彼は、あまり、服に気を使わない質で、
いつも古着を着ているということで、
ユニクロに行くことは一年に
一回あるか無いかだと言います。

なぜ、彼は、
ほとんど行くことのない場所を
夢の舞台に選んだのでしょう?

*

筆者は、質問を続けます。

” 店内にかかっていた音楽は、
実在する曲ですか? ”

” 架空のだと思います。
歌詞があったのですが全く覚えていません ”

彼は、なぜか、その曲を
よく知っているかのように思えて、
自然に口ずさんでいたと言います。

そして、
その歌詞が心に突き刺さったと。

それほど印象深い曲だったにも関わらず、
メロディーも歌詞も目覚めると忘れてしまった。

*

夢の中で聴いた ” 幻の一曲 ”

なぜ、それほどまでに
心に刺さるのでしょう?

それは、夢を見ている本人が、
その曲を作ったからです。

メロディーも歌詞も、
自身の中から出てきたものですから、
心を打つのは当然と言えばそうです。

しかし、それが夢の中であっても、
音楽の才能も技術も無い人が、
そのような素晴らしい音楽を
果たして作曲できるのでしょうか?

そもそも、それが本当に
音楽の体を成していたかどうかは
定かではない。

夢の中で音楽に思えたそれは
単なる音の集合体だったのかもしれません。

要は、心の波長と一致さえしていれば、
それが何であれ名曲に思えてしまう。

と言うより、その調べは、
心の波長そのものです。

告白

” 聴いていて、とても
今の自分にピッタリだと感じました ”

彼は夢の中で聞いた音楽について、
そう述べました。

” 今の自分というのは、
どういった自分ですか? ”

” 説明しづらいんですが、何と言うか・・
ようやくやる気が戻ってきたというか・・ ”

*

筆者は、彼が何か言葉を濁している
ようにも感じました。

確かに、夢の中で流れていた音楽は、
悲しい音から明るい音へと変化している。

それは、彼の心境の変化を
表しているのかもしれません。

筆者は、次のように質問しました。

” つまり、それ以前に、何か
落ち込むことがあったということですか? ”

” ええ、まあ、正直に言いますと・・ ”

*

彼いわく、最近、失恋したばかりで、
店内にかかっていた曲は、
失恋ソングだったと言います。

歌詞自体は、忘れてしまったが
前半部は、嘆き、後半は、
前向きな歌詞が続いた。

彼の告白によって、どうやら、
この夢は失恋から立ち直ろうとしている
彼の心理がテーマになっているようだ
と理解出来ました。

*

では、普段、行くことのない
ユニクロという場所を夢の舞台に
選んだ理由は何だったのか?

そして、いつも古着を着ている彼が
新しい服を買い求める。

普段、行かない場所ですから、
よほどの理由があって、
そこを訪れているわけです。

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自分を変える

彼は言いました。

” 多分、ボロばかり着ていては、
モテないからだと思います。
何か自分の中でパターンを
壊したかったのかもしれない ”

彼は、失恋を機に
自分を変えようとしています。

新しい服を買い、店内にBGMを流して、
変化する自分自身を鼓舞している。

*

ここで、引っかかるのが、
カウンターの前に並ぶ行列です。

彼の夢です。

なぜ、わざわざ行列を配置して
彼自身が待たされるという
不便な状況を作ったのか?

さっさと新しい服を買って、
新しい自分を手に入れればいいはずなのに。

彼は、変わりたいと思っている。

しかし、その一方では、
簡単に変わることが出来ない自分もいる。

行列は、自身が変わることに、
少なからず抵抗している心理が表れています。

*

” 行列に並んでいるとき、
スマホで何を見ていたのですか? ”

彼は、筆者の質問に
歯切れ悪そうに答えます。

” 実は、失恋前に二人で撮った写真を・・ ”

変わってしまう前に
少しの間だけ過去の思い出に浸ろうとしている
彼の未練がこの場面から伺えます。

運命の作り手

セッションの終わりに、
彼は次のように尋ねました。

” この夢は、結局、
何を暗示しているのですか?
僕は変われるんでしょうか? ”

筆者は、次のように答えました。

” 夢は行列に並んだところで終わっています。
もし、夢に続きがあったとしたら、
あなたは無事に清算を終えたと思いますか? ”

彼は、言いました。
” 多分、清算したと思います ”

” では、それがあなたの未来だ ”

*

夢は、それを見る本人が作るものです。

自分とは無関係の外部の意思
によって作られるわけではありません。

それが将来の自分を暗示していたとしても
その性質は変わらない。

夢が彼の未来を決めるのではなく、
彼が夢に何を暗示させるのかを決めるのです。

つまり、彼の未来は、彼が決める。

それ以外の誰が
決めるというのでしょう?

 

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