夢の中で鏡を見ているという設定。
鏡と言っても、姿身や手鏡、
車のバックミラー、もしくは、水面や
ガラスなど、自分の姿を映すいう意味で
鏡と同じ効果を果たすものもあります。
また、” 鏡 ” というアイテムは、ある意味、
向こう側にもう一つ別の世界があるようにも
感じて、ちょっとしたミステリアスな雰囲気
を持っています。
それゆえに、鏡が登場する夢は
ある種の不安や恐怖感を伴うことがある。
さて、夢の中で鏡を見ているという
シチュエーションは、
どのように解釈すべきでしょうか?
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鏡の特徴
もちろん、鏡に映るものは夢によって
様々なので、それによって解釈の仕方も
違ってくるでしょう。
ただ、自分の姿を客観的に見るために、
写真でも、映像でもなく、
なぜ、鏡だったのか?
という問いかけは必要かもしれません。
一つは、リアルタイムであること。
写真は、過去の自分を静止した状態でしか
確認できず、映像は動画ですが、
やはり、過去の自分を映したものです。
また、写真を撮るときは、何でもない日常
というよりは、それなりに記録の意味を
込めて撮るものですから、
その瞬間に焦点が当たります。
映像の場合も、
わざわざ記録するという意味では、
写真と同様に、そのときに
映っていることに焦点が当たるわけです。
*
鏡の場合は、日常から身の周りに置かれた
身近なアイテムなので、
特に意識することなく鏡に映った日常的な
自分の姿を映し出すという意味では、
素の自分に最も近い姿を映している
と言えるかもしれません。
いずれにせよ、潜在意識は、
鏡の性質を知った上で、
それを夢に組み入れているのです。
夢の中の ” 鏡 “
次は、とある男性が見た夢の一例です。
洗面台の前、鏡に映った自分。
妙な違和感を感じ、口を動かすと、
数秒遅れで鏡の中の自分が口を動かす。
” え?”
もう一度確認するために笑顔を作ると、
鏡の中の自分も少し遅れて笑顔を作る。
ただ、その笑顔は自分の表情と若干違っている。
次に、素早く動くと鏡の中の自分は、
何もせず虚空を見つめている。
何だかホラー映画の1シーンにも
見えますが、この不気味な夢を見た彼も、
何か不吉な出来事が起こる予兆では
ないかと心配しているようでした。
さて、この夢は、
何を意味しているのでしょう?
*
夢の特徴としては、やはり、鏡の中の彼と
実際の彼との動作に ” ズレ ” が
生じているという点です。
現実世界では、鏡は自分の現在の姿を
忠実に映し出しますが、夢の中のそれは
” 鏡 ” のように見えるだけで、
実際はそうではない。
つまりは、夢を見た人の持っている
” 鏡 ” というイメージに過ぎないのです。
それを踏まえると、鏡に自分の姿が
映っているように見えますが、
そうではなく、
わざわざ鏡に自分の姿を映している。
さも、自分が鏡に映っているかのように
見せかけている。
もちろん、そこに映るものを自由に選ぶ
ことも出来ますし、映さないことも出来る。
それは、潜在意識にとって
必要なものを投影するスクリーンなのです。
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リアルタイムから、タイムラグへ
では、夢の中の鏡に映るものとは、
一体、どういったものでしょう?
夢自体が、その人の ” 主観 ” を映している
という意味では、鏡の中に映っているものも
その人の ” 主観 ” には違いないのです。
例えば、鏡の中の自分が思ったより
若く見えたとしたら、それは、
あなたが思っている自分自身に対する
イメージが鏡に投影されていると
考えることも出来ます。
今回の夢では、鏡の中の自分の動作に
” ズレ ” が生じるという
少々変わった演出になっている。
この時点では、彼の中に
何らかの ” ズレ ” が生じている
ということが何となく分かるだけです。
*
筆者は、彼に尋ねました。
” 洗面台の鏡の前に立つのは、
どういった時ですか? ”
彼は、朝、起きてから仕事に行く前に
髭を剃る時、夜、寝る前に歯を磨く時、
ぐらいだと答えます。
それから、生活習慣について
いくつかの質問をしていくうちに、
彼が随分、夜更かしをしていることが
分かりました。
深夜2時まで、インターネットで
SNSにアクセスしていた。
そして、ただ閲覧をしているだけでなく、
自分で何かを書いて、日々、
投稿しているということでした。
*
筆者は、一つ思い当たることがあり、
彼に尋ねました。
” 夢の中では、深夜でしたか? ”
彼は、夢の中で、深夜、寝る前に
鏡の前に立っていたという設定だった
と答えます。
それから、SNSについて
いくつかの質問をしていくうちに、
次のような事情が浮かび上がってきた。
彼がSNSに何かを投稿すると、
周囲から必ずリアクションがあり、
それが楽しく、充実感を得るために
現在も投稿し続けているそうです。
しかし、最近になり、
実際の自分とSNSで演じている自分が、
かけ離れてきてしまっていることが
何となく気にかかっていた。
この段階で、彼は、
夢の意味に気づいたようでした。
*
この夢は、彼の中で、
SNSで築いてきた自分のイメージが
実際の自分とズレてきているという
違和感が映像化されているのです。
本来は、今現在の自分を
リアルタイムに映し出すはずの ” 鏡 ” が、
少しだけずれた形で自分を映している。
彼は自分の心の中で感じている
自己イメージの ” ズレ ” を
鏡の中の奇妙な現象に置き換えています。
鏡の中の出来事ならば、目の錯覚、
悪い夢だと思って見て見ぬ振りを
することも出来る。
鏡を選んだ理由は、
彼がリアルタイムの自分の姿を
確認したかったからなのかもしれません。
” 確かに、俺だよな・・ ”
自分を見つめることへの抵抗
現実世界では、鏡、写真、映像という形で
自分を客観視することが出来ますが、
夢の世界では、それ以外の方法で
自分を見ることが可能です。
クローンやドッペルゲンガーとして、
もう一人の自分を登場させることも
出来ますし、見知らぬ人物として
自分の ” 分身 ” を登場させ、
その人物に話しかけることも出来ます。
現実では、あり得ない設定を
夢の中で実現することが出来る。
*
ただ、今回の夢でもそうですが、
別の方法がありながらも、あえて、
鏡を使って自分を客観視するという演出を
選んだのは今の自分を見つめることに、
それほど抵抗が無いことを表してもいます。
例えば、今の自分が嫌いな自分ならば、
それを身近な鏡でわざわざ確認したくは
ないでしょう。
夢の中の鏡に写った酷い顔をした人物が
明らかに自分のことだと認めなければ
ならない。
もし、クローンとして登場するなら、
少し話が違ってきます。
クローンや双子の兄弟としての登場なら、
彼らが酷い顔をしていても
嫌な気分にはなりますが、最終的には
” 自分の事じゃない ” と
他人事を決め込むことが出来る。
さらに、それが見知らぬ人物ならば、
なおさら ” 他人事 ” です。
*
つまり、今の自分と向き合うことに
抵抗があるほど、自分から遠い存在へと
置き換えていく。
” 鏡 ” に自分を映しているという状態は、
まだ、自分を見つめるだけの余裕が
あることを示している。
なので、夢の中で鏡を見るという行為は、
素直に自身の現状を見つめ直そうとしている
という気持ちの表れでもあるのです。
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